ULTRAMAN GATUS ~Rescue Cebu Island!~(ウルトラマンガトス ~セブ島を救出せよ!~)   作:地獄星バロー

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〜五年前・フィリピンの何処か〜

その日、地球に光が落ちてきた。


光は誰にも気付かれずにフィリピンのある場所で動きを止めた。


そして光は巨人の姿へと変わっていく。


しかしエネルギーが足りず、光の巨人は今にも力尽きようとしていた。

「おい見ろよ!ピクト、ケイン!!何だ、あれは!?俺達はお化けでも見ているのか?」

「そうだな、これは驚きだ!でも俺にはとてもお化けには見えない。なんだが心が温まるぜ。その姿は……まるで光の巨人だ。未知のUMAなんじゃないか?」

「ピクトの言う通りかもしれないよ、ギャラック。なんだかとても苦しそうだね。僕達で助けられないのだろうか」

モール帰りにたまたま近くを歩いていた三人の青年達は、光輝く巨人を見て驚いて慌てて駆けつけた。三人は目の前の光の巨人に恐れたが、同時に苦しそうな彼の様子を見て何とかして助けてやろうと考えた。

「あーあー。聞こえているか!そこの光の巨人!!俺の名はギャラック メイデイ。こっちは俺の友達の、」

「ピクト マカーだ!」

「ケイン ドレイクです」

「俺達は君を助けたいんだけど、君は話せるのか?できたらセブアノ語で話してほしいけどさ……」

光の巨人はギャラック達に体を向けた。お互い暫く沈黙するも、巨人はゆっくりと指を海に向けて刺して答えた。

『……遠くない未来、悪魔のような恐ろしい怪獣軍団が誕生してこの国を滅すだろう。私はそんな運命を覆すべく、遠く離れた宇宙から君達のような尊い生命を守り、救助する使命を帯びてフィリピンへとやってきた。しかし既に私は力の大半を使い果たしてしまった。ましてや太陽のエネルギーがないと私は体を保たせることができない』

光の巨人が言った数々の驚愕の発言にギャラック達は驚いた。だが彼等はその話を信じた。ギャラックは聞いてみる。

「それはヤバいな。それに君もこんな状態じゃ……。俺達で良ければ何とかできないのか?」

光の巨人は申し訳なさそうに言った。

「私は力を取り戻すべく暫く眠りにつこうと思っている。ギャラック メイデイ、それまで君の体と一つになることは出来ないだろうか?」

ギャラックはまたもや驚いたが、迷わず答えた。

「大丈夫だ!フィリピンを救うためなら何だってやってやるよ!!」

「ありがとう……だが私が力を取り戻すまでに怪獣達が現れるかもしれない」

ピクトとケインは答えた。

「そうなったらお前が復活するまで俺達が戦うぜ!」

「例えば防衛組織を作ったりしてね。僕達に任せてよ」

光の巨人は感激した。こんなに勇敢な青年がこの国にいるとは。

「ギャラック、ピクト、ケイン。突然のことなのに本当に感謝する。約束だ、私が力を取り戻すまでフィリピンを守ってくれ……」

「ああ、約束するぜ!だからしっかりと俺の精神の中で休んでいろよ!!」

三人は頷いた。光の巨人も頷きながらギャラックの中へと入り、一つに融合したのだった。

ピクトは言った。

「……これからどうする?」

ギャラックは答える。

「決まってるだろ。当然答えは一つしかないさ」

ケインも笑いながら言う。

「そうですよね、だったら今すぐ準備しましょう」

三人は円陣を組んで手を重ねた。ギャラックは叫ぶ。

「俺達が力を合わせて、怪獣軍団からこのセブ島を救出する!」


ULTRAMAN GATUS ~Rescue Cebu Island!~(Japanese ver.)

美しい青い海と眩しい白い雲が広がる島。フィリピンにはそんな素晴らしい島が存在していることをご存知だろうか?その島の名前はセブ島である。そんなセブ島で英語研修をするべくやってきたとある日本人の女子大生は思わず声を上げた。

 

「わー!きれーい!!」

 

彼女の名前は句沿一 彩(くぞいち さやか)。日本では到底見られない美しい海を見て大層幸せな気持ちに入り浸っている。そんな海の向こうにある小さなマクタン島やオランゴ諸島に機会ができれば行ってみたいなとも考えていた。しかしそんな思いとは裏腹に、今まさに恐怖の怪獣軍団が現れようとしていたのだった。

 

「日本では充分に学べないスピーキングやリスニングを重点的に置いた英語もちゃんと勉強できて、なおかつこんな素晴らしい観光スポットを見ながら暮らせるなんて本当に素晴らしい町だわ。物価も安いし、このままフィリピンに住んじゃおうかしら。うん!それがいい!!」

 

彩は自問自答をして微笑む。ついさっき屋台で買ったばかりのマンゴー味のスムージーをゆっくりとストローで吸い込む。

 

その時であった。突然地響きが起こり、彼女は思わず尻もちをつく。

 

「キャッ!一体何事なの!?」

 

彼女はびっくりして周囲を見回した。現地の人々にも予想外の出来事だったらしく、呆然と困惑しているばかりだ。彼女は尻もちをついても決して離さなかったスムージーを持ちながら立ち上がろうとする。

 

「何が起きているの?」

 

そう言うと彼女達は更に驚いた。何故ならばさっきまで目の前に会った美しい海が荒れ狂い、今にも津波が起きるような災害が起きる光景へと変貌していたからだ。そればかりか空も暗くなり、雲からは雷が鳴り響いている。そして遂に混沌は現れた。

 

 

『グゥゥ……ギェヤァアアアアアアアッッーーー!!!』

 

その姿の全身は暗い藍色に染まり、その上から黄色の返り血を浴びたような色合いをしていて、グロテスクな禍禍しい体型と何処を見ているのが全く分からない目付きをしていた。

 

「モンスターだ!巨大なモンスターが現れた!!」

 

「これは夢じゃない!食われる、早く逃げるんだ!!」

 

人々はその姿に恐れ入って一目散に逃げ出した。その様子に反応したのか、モンスターも再度大きな咆哮をあげて暴れ出す。その際に生じた強い水しぶきが彩の全身にかかる。微動だしない彩だったが、とてつもない恐怖が後ろ姿から伝わってくる。数秒後に彼女の手からスムージーが離れ落ち、ぐしゃぐしゃに飛び散った。

 

『ギェヤァアアアアアアアッッーーー!!!』

 

「……違う。唯のモンスターじゃない、アレは''怪獣''なんだ」

 

彼女の目からは完全に輝きが失われていた。

 

 

 

〜とある組織の本部・セブ島の何処か〜

 

一方その頃、海から現れた怪獣が街を壊している場所から少し離れた場所にある大きな施設。そこではオペレーター室で一連の映像が部屋全体の大きさのスクリーンに流れていた。それをまじまじと見つめるこの施設の隊長となっていたケイン ドレイクは呟いた。

 

「遂に現れましたね、怪獣。しかし僕達はそのために何年間もかけて立ち向かう準備をしてきたんです。これ以上フィリピンに手出しはさせません」

 

「そのようデースネー。しかしワターシはケイン隊長が言った通り、本当に現れるとは思ってもマセーンデーシター」

 

隣でケイン隊長に語りかける年老いた男は、この施設の長官であるロイド アンドゥ。彼はすぐさま部下に怪獣のデータを取って特徴を調べるよう命令した。

 

「今から五年前、私たちが光の巨人から聞いた予言に備えるため、私はあなたに無理を言ってこの対怪獣防衛組織・HDYを設立させてもらいました。今こそその恩を返す時が来たようです」

 

対怪獣防衛組織Hunter DestroY monster、通称HDY(ハーディ)。これがこの組織の名前である。HDYは今から五年前に光の巨人から予言を聞いたあの三人が中心となって人知れずセブ島に設立された組織で、共存不能な凶暴な怪獣を討伐することを目的としている。またそれだけでなく、貧困や重い病、麻薬といった様々なフィリピンで起きている問題にも日々尽力的に取り組んで解決を勤しんでいる素晴らしい組織でもあるのだ!

 

「マーマーそのくらい私たちの仲じゃないデスカ、ケイン隊長。……ワオッ、怪獣コンピューターのラーニングが完了しましたヨー!あの怪獣は熱帯魚怪獣・コードネームは''ラゴガーマモンス''デェス!!元々水中で眠っていた魚介類に何か異常な出来事が起こってしまい、変貌してしまったものがあのラゴガーマモンスだと思われマァス」

 

「なるほど。ありがとうございます、ロイド長官」

 

それを聞いたケイン隊長は、アップルウォッチのような通信機を起動して他の隊員達に連絡を入れる。

 

「遂に私達が長年続けてきた練習の成果が出る時がきました。あの怪物、ラゴガーマモンスを空中戦で退治します。各隊員は至急戦闘機のコックピット内に入ってください!ピクト副隊長、空中戦の指揮を頼みますよ」

 

画面の向こうの先に映ったピクト マカー副隊長はニヤリと微笑んでサムズアップをした。

 

「任せろケイン!俺達の力があれば一網打尽だぜ!!」

 

「やれやれ、プライベートじゃないんだからちゃんと''隊長''と呼んで下さいよ。……では、全員出動!!」

 

「T,G,I,F!!!」

 

隊長からの命令を聞いたピクト副隊長や他の隊員達は「了解」の意味を持つ符丁・「TGIF(ティージーアイエフ)」と元気よく叫んだ。隊員の中でただ一人、握り拳を作って何か意味ありげに小さな声で呟く。

 

「……T,G,I,F。必ず約束は守るからな、光の巨人。それまで俺達がフィリピンを死守するんだ!」

 

そう言った彼はケイン隊長の指示を従わずに怪獣がいる場所へと突っ走って行った。

 

 

〜コロンストリート〜

 

「きゃあああ!!」

 

場所は移り、セブ島最古の市街コロンストリート。我に返った彩は他の人々と一緒にラゴガーマモンスから逃げ惑っていた。ラゴガーマモンスの強力な歯牙でコロンストリートの建物は噛み砕かれてしまう。半壊し、ビルが次々と崩れていく。

 

「なんでこんなことに……。フィリピンに一体何が起きているというの?」

 

彩はとてつもない悲しみに暮れた。自分が好きだったセブ島が目の前で何もできないままどんどん壊されていくからだ。同時に彼女は何も出来ない無力差に嘆いていた。そんなことなど微塵も知る由もなくラゴガーマモンスは雷よりも大きいな暴音を町中に轟かせる。

 

『ギェヤァアアアアアアアッッーーー!!!』

 

彼女は人気のない一本道を発見して、そこに逃げ込んだ。しかし彩に目を付けてロックオンしていた怪獣は彼女一人を追いかけ回してくる。

 

「きゃああ!!私を狙っている!?」

 

それに気付いた彼女は必死に周囲の崩れた建物を避けながら追いつかれないように距離を取ろうとする。しかし怪獣は決して逃そうとせず、どこまでも追いかけ回してくる。とうとう彼女はつまづいて転んでしまい、怪獣がすぐ後ろに迫ってくる。

 

「ダメ……やめて!!」

 

彼女の叫びも虚しく、スピードを緩めずに近づいてくるラゴガーマモンス。あと数メートルというところまで来たとき、彼女は死を覚悟して目を瞑った。

 

『ギェヤァアア!?』

 

悲痛な怪獣の叫び声を聞いて彼女は目を開く。先程ケイン隊長の指令で飛んできた複数のHDYの戦闘機が怪獣に攻撃したのだ。

 

「あれはなに!?」

 

彩は勿論のこと、市民達はいきなり現れた戦闘機群に呆気に取られた。怪獣も怯んで驚くものの、すぐに自慢の俊敏さと強力な歯牙を活かして戦闘機に立ち向かう。

 

『ギェヤァアアアアアアアッッーーー!!!』

 

目にも留まらぬ速さで一機捕まえて、戦闘機は墜落させる。指揮を取っているピクト副隊長は思わず声を上げる。

 

「くそぉー、あの野郎なんでも噛み砕くことができるのか!?」

 

周囲は緊迫した雰囲気で怪獣とHDYが戦闘を行っており、その隙を狙って彩や大半の人々は避難することに成功した。しかし、逃げて行った先にも……。

 

 

 

 

〜HDY本部〜

 

オペレーターがロイド長官に伝える。

 

「長官!大変です!!アヤラモールにも新たな怪獣が現れました!?」

 

それを聞いて驚いたロイド長官は部下にすぐに指示する。

 

「なっ、なんですトォー!?ペーター君、すぐに映像を出してくだサァイ!!」

 

するとどうだろうか。画面の向こうには全く新しい怪獣が現れているではないか!?

 

『ブイゥゥウウウウン!!!』

 

「注射のような鋭いクチバシに、大きな二枚の羽。まるで蚊のような怪獣じゃないデースカ。私達フィリピン人の天敵デェス!」

 

ケイン隊長は顔を引きつらせて言った。

 

「あらかじめその可能性は考えていましたが、まさか本当にもう一体も怪獣が現れるなんて……」

 

オペレーターは青ざめる二人に言った。

 

「怪獣コンピューターの結果によりますと、ヤツはマンゴー畑の奥底に眠っていた幼態が覚醒した巨大蚊怪獣。コードネームはドスギーモンスです!」

 

「やはり蚊ですか。昔からフィリピン中を困らせている害虫の変異体だけあって、嫌な予感がします」

 

「マズーイですヨー隊長!このままじゃフィリピンは本当に終わってしまいマス」

 

新たに現れた怪獣を討伐するのに、ケイン隊長は良いアイデアを思いついたわけではなかった。しかし心配させまいとロイド長官たちを励ます。

 

「弱音を言ってる場合じゃないですよ皆さん!私達はHDY、全ては今日の恐怖に勝つために今までやってきたんじゃないのですか!!」

 

それを聞いて一同は落ち着きを取り戻す。しかし映像の向こうでは、ドスギーモンスがセブ島でも一、二を争う大きなショッピングモール、アヤラモール全域に突風を吹き散らして、周囲の大きなビルが次々に分散しながら飛ばされていく様子が映っている。どうやらアヤラモールは怪獣のせいで壊滅してしまったようだ。そしてドスギーモンスは次の狙いを定めて巨大な二枚な羽で喧しい音を立てながら飛んで行った。

 

 

 

 

〜サントニーニョ教会〜

 

フィリピン最古にして最大のカトリック寺院・サントニーニョ教会の元へ逃げ込んでいった彩達。彼女はヘトヘトになって地面に座り混んだ。カトリックの信教者達は協会の中に入って自らの無事を祈り出す者もいる。しかしその思いも虚しく、サントニーニョ教会に大きな影が立ち込める。

 

「今度は何なの……」

 

彩は用心してすぐに立ち上がると、空からポタポタと謎の液体が降ってくる。彼女は濡れないよう慌てて屋根の下へと駆け込んだ。

 

「ぐぅぅ……苦しい!!」

 

「誰か、助けてくれーー!」

 

その怪しい液体が体にかかってしまった人達は次々に頭痛や吐気、発熱を起こしてしまった。頭を抱え込んだり、口を押さえ込んだり発熱でフラフラになって倒れていく。

 

「これはまさかデング……。でもそんな筈は有り得ないのに!?」

 

その有様を見て彩は考えた。この症状はまるで毎年フィリピン中で流行しているデング熱のようだ。しかし怪しい液体に触れるだけで発症するなんて聞いたことない。

 

『ブイゥゥウウウウン!!!』

 

そんな中、とてつもない轟音が上空から響き渡る。あのドスギーモンスが降り立ったのだ。あの怪しい液体の名はドスギーエキス。エキスに触れたり飲んだりしてしまうと90%の確率でデング出血熱を起こさせる危険な液体なのだ!

 

『ブイブイブイゥゥウウウウン!!!』

 

慈悲を知らないドスギーモンスは鋭い針のような口吻を叩きつけてサントニーニョ教会を粉々に粉砕する。その一撃を合図に、人々はパニックに陥った。当然彩も。

 

「もうダメだわ……おしまいなんだ、何もかも!セブ島は、フィリピンは怪獣軍団のせいで滅び去ってしまうんだわ!!」

 

「それは違うぞ!」

 

体力の限界が迫り、倒れ込んで絶望する彩の背後から勇ましい声が響く。彼女は僅かな体力を使って振り向いた。そこには先程ケイン隊長の命令を聞かずに無断で本部を飛び出したあの隊員がいた。

 

「あなた……誰?」

 

「俺の名はギャラック。フィリピンを守る防衛隊、HDYの隊員だ!!」

 

そう、彼こそが5年前に光の巨人と一体化したあのギャラック メイデイ隊員だったのだ!

 

「君、まだ滅びたわけじゃないんだ!簡単に諦めちゃダメだ!!!」

 

「でも、私もう動けない……」

 

ギャラック隊員は彼女がまるで生きようとすることを諦めたかの様な発言を聞き、別の質問をした。

 

「……分かった。君、名前は?」

 

 

「私……?私はさやか。さやか くぞいち」

 

okay kaayo(大丈夫)、さやかちゃん!俺は君の生命もセブ島も救助してみせる!!」

 

「本当に……?」

 

「もちろんだ!!」

 

 

そう言って彼は彼女を抱き抱える。それから周囲の人々にも向かって名一杯大きな声で叫んだ。

 

「まだ諦めない気持ちを持つ諸君!俺の後に続いてサンペドロ要塞にまで逃げ込むんだ!!あそこならまだ安全な方だ」

 

ドスギーモンスに戦慄を覚える人々はその話に戸惑ったが、すぐに覚悟を決めてギャラックと共に要塞に向かって走り出した。

 

 

 

〜サンペドロ要塞〜

 

日本とも関係性があるほど長い歴史のあるフィリピン最古の要塞であるサンペドロ要塞の内部へと逃げて行ったギャラック達。ホッと一息するのも束の間、すぐにHDY本部から通信が入る。

 

「全く……相変わらず無鉄砲なことをしてくれましたね、ギャラック隊員!!」

 

「そーうデースヨー。万一のことがあったらどうするんデースカー?」

 

「ごめんごめん、ケイン隊長にロイドさん。でも俺ならほら、大丈夫だから。それよりピクト副隊長達の様子はどう?」

 

ケイン隊長はピクト副隊長とも連絡を繋いだ。副隊長は戦闘機を操縦しながら答えた。

 

「悪いギャラック、ケイン。戦闘機は俺を残して全部撃墜されてしまった……」

 

「いや、よく頑張ったよ。ありがとう!」

 

しかし副隊長からは笑顔は生まれない。

 

「そうじゃないんだ。ラゴガーマモンスを逃がしちまった。奴はサンペドロ要塞に向かっているぞ!」

 

「なんだって!?唯でさえドスギーモンスも接近しているというのに……」

 

そこまで言ってギャラックは通信を切った。いち早くこの状況を打開するためだ。その時、要塞の中で休んでいた彩が寝言のような弱々しい調子でギャラックに尋ねる。

 

「ギャラックゥ……。もう、大丈夫なんだよね……」

 

本当は大丈夫ではない。だがギャラックは真実を言わず自信満々に言う。

 

「ああ!俺に任せとけ!!」

 

そう言ってギャラックは人気のない場所へと独り移動する。

 

『ブイゥゥウウウウン!!!』

 

『ギェヤァアアアアアアアッッーーー!!!』

 

上空を見上げると、飛行しながら接近してくるドスギーモンスが、その真後ろからは物凄い勢いで泳ぐように街を破壊しながらやってくるラゴガーマモンスがいた。まさに前門の虎、後門の狼だ。

 

「どうやら本当にまずいようだな……」

 

ギャラックは弱音を吐いたが、その様子はとても穏やかだった。

 

「でも、だからこそ言おう!正義のハートを信じる限り俺達は必ず勝つ!!」

 

ギャラック隊員がそう叫んだ途端、彼がいつからか所持していたライターが眩く煌めき出す。

 

 

〜光の魔法空間〜

 

次の瞬間、彼はいつのまにか不思議な明るい空間へ移動していた。そこには、あの時の光の巨人が!巨人はギャラックに語りかける。

 

『ギャラック。よく今まで頑張ってくれた。フィリピンを、尊い生命を守ってくれてありがとう』

 

「光の巨人……お前、もう大丈夫なのか!?」

 

『ああ。今の君の諦めない気持ちと私のエネルギーは共鳴して、たった今、全ての力を取り戻した。今ならこのセブ島、いいやそれだけじゃない。この世界まるごと救うことができる!!』

 

「おお!やったぜ!!」

 

『ただし、この星ではどうやらたったの1分間しか私は戦うことが出来ないようだ。だからギャラック、今再び君の体を貸してほしい。そうすれば時間を2分も延長させることが出来るだろう』

 

「たったの3分で勝負を決めろってことか……。もちろん良いぜ!怪獣軍団を倒してフィリピンを救ってやろうぜ!!」

 

『ありがとう。そして、これからは私のことはこう呼ぶと良い――。

 

 

 

宇宙の生命を守護し始めた戦士、ウルトラマンガトスと!』

 

 

〜サンペドロ要塞〜

 

その声がギャラックの耳に響き渡り終わったと同時に、彼は不思議な空間から元いたサンペドロ要塞へと戻っていた。彼はさっき輝いたライターを取り出して見つめる。ギャラックはこれがあのウルトラマンガトスが彼に託した聖なる変身アイテム・Gライターだと察した。ならばやるべきことはもう一つしかない!

 

「行くぞ、ガトス!……ハァッッーー!!」

 

そう言ってギャラックはGライターをカチッと点火する。すると神秘の炎がGライターから溢れてきて、彼の体中を包んでいった。彼はウルトラマンガトスへと変化していく。

 

 

 

『シェイヤアアアッッーー!!!』

 

 

 

 

 

ウルトラマンの姿へと変わったギャラック。天空から颯爽とウルトラマンガトスが降臨する。突然姿を現した巨人の存在に、周囲の人々は呆気に取られる。

 

「なに、あれは……」

 

「銀色の巨人!?」

 

「一体何なんだ!」

 

無論、それは怪獣たちであっても例外ではない。怪獣達も驚いてあたふたする。

 

『ブイゥゥ!?』

 

『ギェヤァ……』

 

 

〜HDY本部〜

 

「新たに身長45メートル、体重4万2000トンの銀色の巨人が現れました!」

 

ウルトラマンガトスがサンペドロ要塞に現れたことは既にHDY本部にも映像を通して伝わっていた。ロイド長官を始めとした関係者達も呆然として驚いていた。

 

「何デースカ……。まさにスーパーヒーローじゃないデースカー!!」

 

ケイン隊長も息を呑んだが、すぐに目を輝かせて言った。

 

「そう、あれこそが5年前に僕達の前に現れた光の巨人。ウルトラマンガトスです!」

 

「ウルトラマン、ガトス……」

 

 

〜サンペドロ要塞〜

 

ガトスのテレパシー能力のお陰で、あっという間にフィリピン中の人々にガトスの名が伝わっていった。怪獣達の元へやってきた戦闘機、ピクト副隊長もガトスを目視して思わずコックピットの中で叫ぶ。

 

「あれがガトス!ギャラックが変身したのか!!すげぇーぜ、ギャラック!!!」

 

要塞内部に避難していた人々や彩もガトスに驚くが、自分達を救助しにきた正義の味方だと知り、興奮のあまりガトスに声援を送る。

 

「すごい、すごいぞ!頑張ってくれ、ウルトラマンー!!」

 

「……お願い。私達を、セブ島を救助して!」

 

ガトスは人々を見つめながらコクリと頷き、すぐに戦闘ポーズを取って怪獣達に威嚇する。怪獣達も本能で感じた。このウルトラマンは自身の敵であると。怪獣達もガトスに向かって咆哮をあげる。

 

『ブイゥゥウウウウン!!!』

 

『ギェヤァアアアアアアアッッーーー!!!』

 

『ギャラクシーレスキューフォース、ウルトラマンガトス。出動!!』

 

ガトスは自身に掛け声をかけると同時に走り出して怪獣軍団に接近する。

 

『シェイヤァッ!!』

 

ガトスはフィリピンの武術、エスクリマのような動きを繰り出して次々と怪獣軍団に攻撃を与える。怪獣達は怯む。

 

『ブイゥウ!!!』

 

『ギェヤァ!!!』

 

すぐに体勢を整え直したラゴガーマモンスは物凄い勢いで噛みつこうとガトスに襲いかかる。

 

『''ウィービングエクスパンド''!!』

 

ガトスがそう技名を叫び、彼は頭や上体を上下左右に高速移動させる。その場を一切離れずにラゴガーマモンスの攻撃を全て回避する。

 

『シェイヤアァッ!!』

 

『ギェヤァア!?』

 

ガトスはこの技を応用してラゴガーマモンスを翻弄させて転倒させることに成功する。続いてドスギーモンスが針のような口吻からドスギーエキスをガトスに向かって放った。

 

『ブイゥゥウウウウン!!』

 

ガトスはその攻撃にいち早く気付き、新たな技を繰り出そうと掛け声をあげる。

 

『''ストッピングリフレクター''!!』

 

ドスギーエキスを拳で掴んで、エネルギー衝撃と共に倍で跳ね返した。見事に命中して、ドスギーモンスは倒れ落ちる。

 

『ブイブイブイウン!?』

 

『シェア……』

 

ドスギーエキスを跳ね返したとは言え、液体に触れてしまった影響でガトスの手は痺れてしまう。その一瞬の隙を狙って立ち上がったラゴガーマモンスが背後から噛み付いた。

 

『ギェヤァアアアアアアアッッーーー!!!』

 

『シェイアハァッーー!!』

 

ラゴガーマモンスの強力な歯牙に噛み付かれ、ガトスは呻き声をあげて苦しむ。更にドスギーモンスも立ち、飛び上がって上空から二枚の羽をはためかせる。突風が巻き起こり、ガトスは身動きが取れないまま強風に晒される。その様子を見ていた彩は叫んだ。

 

「まずいわ、ガトスが負けちゃう!」

 

彼女の言う通り、ガトスは絶対絶命の危機に陥っていた。しかしドスギーモンスにミサイルが当たり、怯みながら墜落する。戦闘機に乗っていたピクトが発射したのだ。

 

「ガトスは俺が助ける!これでも食らえ!!」

 

続いてピクトはラゴガーマモンスの歯牙を狙ってミサイルを発射した。ミサイルは口元に命被弾し、ラゴガーマモンスは悲鳴をあげる。うっかりラゴガーマモンスはガトスを離してしまい、チャンスを逃さず脱出したガトスは怪獣達と距離を取りながら体勢を整え直す。

 

〈ワンワンワンワン……!!〉

 

ガトスの胸に付いてあるランプ、カラータイマーが青色から赤色へと変わり、点滅しながら音が鳴る。ガトスの活動限界時間が後わずかなのだ。ガトスは危険を承知で彼のとっておきの技を繰り出した。

 

『シェイヤアアア……''オサガトスボンバー''!!』

 

するとガトスの全身から紅蓮のオーラが解き放たれ、攻撃力、防御力、スピード力、全てのスペックが大幅に向上した。自分が持ち出せる全ての力、100パーセントの力を発揮して、怪獣達に隙を与えずに吹き飛ばす。まさにガトスは百万馬力のパワーを手にしたのだ!

 

『ギェヤァアアアアアアアッッーーー!!!』

 

ラゴガーマモンスが立ち上がって殴りかかってくる。ガトスは避けずに真っ向から勝負する。

 

『シェイヤッ!シェイヤッ!シェイヤアッッ!!』

 

ガトスはジャブやフック、ストレート、アッパーカットといったボクシング技を次々に繰り出す。的確にラゴガーマモンスの急所を付き、ラゴガーマモンスは押されていく。そこを狙い、ガトスは強力な一撃を繰り出した!

 

『''コークスクリューインファイト''!!』

 

『ギェヤァアアアアア!!』

 

ねじれた動きで強烈なパンチを炸裂させて、ラゴガーマモンスの動きを止める。ぐったりして、完全に伸びてしまったラゴガーマモンスを見て、ガトスは距離を少し取る。そしてそのまま腕をL字型に組む。しかし、彼の癖なのか、左手は右肘の下ではなく後ろの方に当てている変わったL字型だ。すると両腕から光の粒子が立ち込めてくる。

 

『……''アーニシウムブラスター''!!!』

 

『グゥゥギェヒャァア!!!』

 

ウルトラマンガトスの必殺光線・アーニシウムブラスターが照射されて、クリーンヒットしたラゴガーマモンスは悲鳴を上げながら大爆発を起こす。ラゴガーマモンスは遂に絶命したのだった。

 

『ブイゥゥウウウウン!!』

 

「ぐわぁああああ!!」

 

時を同じくして、ドスギーモンスの攻撃によって墜落しかけているピクト副隊長。それに気付いたガトスは素早く駆け寄って戦闘機をキャッチしてピクトを救出する。

 

「助かったぜ、ありがとうウルトラマンガトス!」

 

ガトスはコクッと頷きながら地面に戦闘機をゆっくりと降ろす。

 

『ブイゥゥウウウウン!!』

 

ドスギーモンスはガトスに威嚇をする。ガトスも戦闘ポーズを取って対峙する。

 

『シェイヤアアア!!』

 

ガトスはそう叫びながら両腕から二本の警棒のような武器をどこからともなく出現させる。これはガトスの専用武器、''ガトスオリシ''だ!ガトスオリシを構えながらガトスはドスギーモンスの元へと走り出した。ドスギーモンスも同様にガトスに向かって突撃してくる。

 

『シェア!シェイヤッッ!!』

 

『ブィウウウ!!!』

 

ガトスの洗練された無駄のない動きでドスギーモンスを斬撃していく。そして遂にドスギーモンスの二枚の羽が切断することに成功した。これこそがガトスオリシを利用した相手の武装解除を目的とする技、''ガトスディスアーム''だ!そのままガトスは一気に畳み掛ける。

 

『シェイヤアアアッッーー!!』

 

まずはガトスオリシを利用した関節技、''バリオグスポマリ''を決める。ドスギーモンスの関節は複雑骨折してまともに身動きをとることが出来なくなる。

 

『シェイヤアアア………シェイヤッッ!!』

 

続いてガトスオリシを利用した投げ技、''ガトスエスクリド''が決まって、ドスギーモンスは崩れ落ちた。

 

『ブブブ……ブイゥゥウウウン』

 

ドスギーモンスは立ち上がることも叶わず、漸く絶命して屍となったのであった。

 

「やった……ウルトラマンガトスが勝ったぞ!!」

 

「ありがとうウルトラマンガトス!私達は君達に救われた!!」

 

怪獣達が倒され、ガトスが勝利したことを知った人々は喜び、ガトスに絶賛の嵐が巻き起こった。戦闘機から脱出して外に出たピクト副隊長も絶賛する。

 

「流石俺達のウルトラマンガトス!最高だぜ!!」

 

彩もほっとして安堵し、ガトスに最高の笑顔を見せた。

 

「……ありがとう、ウルトラマン」

 

〜HDY本部〜

 

離れた場所からガトスの勝利を見届けたケイン隊長やロイド長官達も歓声の声をあげる。

 

「ウォーウ!やりまーしたネー!ガトスさんありがとうございマース!!」

 

「ウルトラマンガトス、君のおかげでセブ島は最大の危機を乗り越えられた。ありがとう」

 

〜サンペドロ要塞〜

 

『シェイヤアッ!』

 

ガトスは人々に向けて勝利のガッツポーをして、ドスギーモンスの死体を担いで宇宙の彼方へと運んでいったのであった。




〜HDY本部〜

戦いが終わり、ガトスはギャラックの姿に戻って本部へ帰還していた。既にピクトや他の隊員達も戻っており、ケインやロイド達に褒められていた最中だった。

「皆さん、よく頑張りマシタ。ウルトラマンガトスのおかげでフィリピンは救われてめでたしめでたしデスネ!!」

ギャラックは自身の頭から流れてきたガトスのテレパシーを代弁して言う。

「いいえ、ここからです。ガトス曰く、フィリピンから怪獣達の脅威はまだ去ってはいません。私達HDYがおれ……いや、ウルトラマンガトスと共に立ち向かっていく必要があります!」

ケインは驚く。

「そっか、全てはまだ始まりに過ぎないと言うことなんですね……」

「でも、俺達とウルトラマンガトスが力を合わせれば怖いもの無しだぜ!」

ピクトの前向きな考えに、隊員達やロイドも共感して、うんうんと頷く。そこに司令室の中に入ってきた女性が言う。

「あの!私も……私もウルトラマンガトスと共にフィリピンを守りたいです!!だから、私をHDYに入隊させてくれませんか?」

「君は、確かさやかちゃん……」

ギャラックは驚いた。なんと彼女はあの時助けた彩だったではないか!だかすぐに笑顔になって応える。

「いいぜ!俺達と共にこのフィリピンを守り抜こう!!」

その声にロイドやケイン、ピクトも頷く。彩は目を輝かせて言った。

「……うん!これからよろしくお願いします!!」





こうして、セブ島に現れた怪獣軍団の脅威は立ち去った。しかし、ウルトラマンガトスの戦いはまだ始まったばかりだ。フィリピンの平和を守るために、フィリピン人達の笑顔を壊させないため、ウルトラマンガトスと対怪獣防衛組織・HDYは今日も戦うのであった……!


-おしまい-

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