ガンダムSEED Destiny 白き流星の双子   作:紅乃 晴@小説アカ

44 / 78
いつも誤字指摘や修正ありがとうございます。書いてると「あひぃい書くの気もちぃ!」ってなりながら書いてるのでミスは本当に申し訳ない…。感想もすべて読ませていただいてます!ユウナはもっと成長しますよ!!あと、今回でジブリールの姿の一端を魅せることができるかと…ふへへ、あの顔芸悪役を別方向でぶっ飛ばした感じなので、楽しんでいただければ!!

.



第40話 悪夢、再び

『本隊、戦闘を開始しました』

 

アルザッヘル基地から上がった艦隊。

 

大西洋連邦が所有する大型艦隊のほとんどを投入した作戦へ、ザフトの勢力は群がるように迎撃に出ていることを確認した艦長は、ニヤリと笑みを浮かべて船へ前進の号令をかけた。

 

『よーし、予定通りだな。こちらも行くぞ。この蒼き清浄なる世界に、コーディネーターの居場所などないということを、今度こそ思い知らせてやるのだ!』

 

馬鹿なコーディネーター共だと艦長は唾棄する。しかし、そうなることを睨んだ作戦だ。あれほどの規模の艦隊。まさかその全てが囮だとは思うまい。

 

プラントから見て極軌道となるエリアから、低出力を維持していたスラスターを吹かして出てゆく幾つもの地球軍の宇宙艦艇。

 

彼らに備わるのは最低限の防空装置のみであり、その本質は艦載機であるMSにある。

 

月の影から出た太陽に照らされた船。そのMS発進デッキには不穏な印をあしらわれたミサイルコンテナを背負う幾つものMSが鎮座しているのだった。

 

 

 

////

 

 

 

 

「地球軍、モビルスーツ隊20、第二エリアへ侵攻中。第三管軍はオレンジ、ベータ15へ」

 

「電撃的な作戦と展開だな。敵主力隊の狙いは、やはり軍令部か」

 

今防衛戦の旗艦となるゴンドワナ級「アヴェンジャー」に乗り込むザフト軍の指揮官たちは、展開する地球軍の様子を見て、敵の狙いが可及的速やかにザフトの軍令部を陥落させるような動きであるということを早々に見抜いていた。

 

だが、展開の仕方や攻撃にも、慎重さや静けさはなく、かなり派手な攻撃が目立つ。あまりにも大きな火の玉をあげる爆発や砲撃。電撃的な作戦だというのに、まるで目立つような立ち回りではないか。

 

その動きが、司令官たちの頭を悩ませる。

 

「敵の狙いはまだ解らん!敵艦の動き、どんな小さなものでも見逃すな!哨戒機からの報告は?」

 

各方面に展開させた偵察型のMSもすでに配備についている。考えられるあらゆる戦略を考慮した布陣だ。そこへ、極軌道方面の偵察機から連絡が飛び込んできた。

 

「極軌道哨戒機より入電。敵別働隊にマーク5型…えっ…か、核ミサイルを確認!?」

 

「なんだと!?数は!?」

 

「不明ですが、かなりの数のミサイルケースを確認したとのことです!」

 

送られてきた画像には、新型のMSの大編隊と、背中に背負われた大型のミサイルケースが鮮明に写っている。さらに拡大された先には、〝核〟であることを示す放射能兵器のマークが印字されていた。

 

抜かったか!司令官たちは苦虫を噛み潰したように顔をしかめた。今、ザフトが立ち回っている相手は旧世代の機体やMAばかりの機体だ。本筋は極軌道から来た部隊だろう。

 

敵にとっては核弾頭さえプラントに打ち込めれば戦略的には勝利となるのだ。司令官たちは間髪入れずに全軍へ報告を放った。

 

《全軍に通達!極軌道からの敵軍を迎撃せよ!奴等は核を持っている!一機たりともプラントを討たせるな!》

 

その報告を受けて、イザークは敵の一機を貫いたビームブレードを引き抜きながら驚愕の表情を浮かべる。

 

「核攻撃隊?極軌道からだと!?」

 

「じゃあ、こいつらは全て囮かよ!こりゃあ、まずいぜ!?イザーク!!」

 

群がってくる旧型のダガーやMAを蹴散らして、イザークたちは極軌道方面へと転身。足の遅い機体は引き続き囮の艦隊を食い止めるしかない。

 

「くっそおおぉぉ!」

 

スロットルを全開に上げるが、MSの機動力では極軌道から来る敵に間に合うかどうか微妙なラインだった。このまま見過ごせば、核で再びプラントが焼かれることになる。

 

PJや多くの軍人が命をかけて核を止めたというのに、まだそんなことを平然と出来るのか!!

 

ぶつけようのない怒りがイザークの身体中に溢れる中、後方を飛んでいたニコルの機体が何かを捉えた。

 

「待ってください!グリーンマーク52、アルファ!高熱源が接近!!この機体シグナルは…」

 

その反応は恐ろしく速い。

 

まるでミサイルのような反応速度で地球圏からこちらに向かってくる。ニコルは、その反応に何かを感じとった。その反応の進路は間違いなく、極軌道から現れた地球軍へ向いているのだった。

 

 

 

 

////

 

 

 

 

『一発勝負だぞ。最大まで引きつけろ、いいか!』

 

核ミサイルが詰まったミサイルコンテナを背負うウィンダム。その隊長機に乗る軍曹が怒声のような声を上げて各隊へ指示を飛ばした。

 

その様子は、まるで狂気に囚われたようだった。何千、何億という命が乗るプラントに向かって、彼らは何の躊躇いもなくその狂った感情をぶつけようと機体を前進させているのだ。

 

『レッド22ベータにナスカ級3。ですが、一隻は見慣れぬ装備を着けています!』

 

放っておけ!そう一喝する軍曹にとって、ザフトの新兵器など目にも入らないものであった。血のバレンタインでは、たった一発しか撃てなかった核が、ここからなら数十という数を打ち込める。その全ての核弾頭がプラントに直撃しただけで、この開戦した戦争は地球側の勝利として、ナチュラルがコーディネーターを滅ぼした記念すべき日として記録されることになるのだ。

 

『そぉら行け!今度こそ蒼き清浄なる世界の為に!!』

 

ついに射程距離となった時。

 

ミサイル発射スイッチに手をかけようとしたウィンダムのパイロットは、真横から飛んできたビームの閃光に飲まれて、その生涯を閉じた。

 

『なんだ!?』

 

隊長機が気づいた時にはすでに手遅れだった。ほぼ真横から飛んでくるビームの光が彼のコクピットカメラをいっぱいに照らしたのだから。

 

「まったく!こんな場面に出会すとは!!」

 

初手に先行していたウィンダムのコクピットを打ち抜いたのは、白い光を引き連れて飛来するMA、メビウスだった。

 

望遠カメラからでもわかるシルエットは、すでに旧型機に分類されるMAだと判断させるには充分であったが、その姿を見て極軌道から上がってきたウィンダムのパイロットたちは戦慄する。

 

ひとつだった光は二つへと分かれて、さらに速度を上げて接近してくる。

 

標準的なメビウスの外観からかけ離れた武装やカスタマイズをされた姿。

 

片や一般機、もうひとつは黄色と黒で塗装されたカラーリングが施されているそれは、地球軍の…主に大西洋側のパイロットには深く刻み込まれた畏怖を示すものであった。

 

『メビウスライダー隊…あの傭兵集団か!?』

 

『そんな化け物がいるなんて、聞いてないぞ!?』

 

ミサイルを積んだウィンダムの護衛に付いていた迎撃機が、リークとトールが操るメビウスを落とそうと前に出てくるが、その驚異的な機動力は旧型機からはかけ離れたものだった。

 

敵のビームを難なく避けたリークのメビウス・ストライカーは、カウンターで打ち込んだビームランチャーで的確にウィンダムのコクピットを粉砕する。

 

『な、なんだあの動きは…!!相手は旧型機じゃないのか!?』

 

それに気を取られた敵機。光に目を向けたのが致命的だった。MSの爆発の光を目眩しにしたトールのメビウスが、翼端に備わるビームサーベルを展開して、茫然としていたウィンダムの胴体を真っ二つへと切り裂く。

 

「あれだけの戦争をして、まだこんな卑劣なことをするのか!!お前たちは!!」

 

上がってきた迎撃機をすり抜けた二機のメビウスは、無防備なミサイルコンテナを運ぶウィンダムの排除を開始した。

 

相手は核ミサイルを積んだ機体だ。

 

機体を爆散させるのは危険だと判断した二人は、機動性を奪うか、真横からビームをコクピットに当てて沈黙させるかの、どちらかの手段を持って敵の戦力を削ぎ落としてゆく。

 

「メビウス!?しかし、あの機体は…!!」

 

「ラリー…?いや、リークか!」

 

極軌道へと到達したシエラアンタレス隊は、現れたリークたちの援護に曇っていた表情を明るくさせた。この距離ではとても間に合わなかった。混乱した核弾頭装備のウィンダム部隊を的確に討ち取ってゆく。

 

ふと、イザークのザクの後ろへ黄色と黒のメビウスが飛び去ってゆくと、後方から現れたウィンダムへと攻撃を仕掛けた。

 

「イザーク!ぼさっとするな!第二波がくる!!」

 

「トール!流石だな!!」

 

だが、間に合ったとはいえ敵は広範囲に広がってゆく。シエラアンタレス隊や間に合ったザフトのMS部隊をすり抜けたウィンダムの数機が、核弾頭の発射態勢に入った。

 

「させるものか!!」

 

トールがビームランチャーでコクピットを吹き飛ばしたものの、怨念じみたものが核弾頭をミサイルコンテナから射出させてゆく。数発の核はMSの間を潜り抜けてプラントへと奔った。

 

「くっそぉおお!!間に合わん!!」

 

「諦めるな!!」

 

「出力を上げろ!!プラントが焼かれたらまた戦争が始まるぞ!!」

 

火がついた核弾頭はあまりにも早い。メビウスの出力を上げても、射程に捉えれても余波でこちらまで巻き込まれかねない。

 

(プラントを核で撃たせるわけには…!!)

 

出力を上げて核へと近づくリークは、心中を図ってでもと核に向けた引き金へと指をかけた。その時、通信機からザフト軍の声が響いた。

 

《流星隊、シエラアンタレス隊は直ちに退避!!繰り返す!現宙域を直ちに退避せよ!!》

 

何を言ってる?核はプラントの目と鼻の先にあるというのに!!その通信を無視して速度を上げようとしたリークの前に、遠くから撤退を示す信号弾が打ち上がった。

 

「離脱するぞ!!」

 

信号弾を打ち上げてでも退避させることを優先するということは、何か策があるのか?

 

リークは飛びゆく核に歯を食いしばりながら、操縦桿を離脱する方へと傾けて、イザークやトール達とともに戦線を離れた。

 

「ニュートロンスタンピーダー。全システム、ステータス正常。量子フレデル、ターミナル1から5まで左舷座標オンライン。作動時間7秒。グリッドは標的を追尾中」

 

その核の行く先には、一隻のナスカ級が鎮座していた。そのナスカ級は改装されており、6対、計12枚のブレード状の電磁波放射装置「量子フレネル」が帯電を始めている。

 

「チャンスは一度だ!観測士!よく狙えよ!」

 

このシステムは1度の使用で焼き切れてしまい、搭載した艦も機能停止に陥るため、複数回連続使用は不可能だ。

 

また、照射範囲も限定される。艦長を含めたザフトの士官は固唾を飲んで、迫ってくる核弾頭や、生き残った核装備のウィンダム隊を見据えた。

 

「スタンピーダー、照射!!」

 

放たれた光は、瞬く間のうちに飛来した核弾頭や、核を運ぶウィンダムの部隊を飲み込む。

 

光に飲まれたパイロットたちは無傷であったが、放たれた光は人を殺傷することが目的ではない。

 

ニュートロンスタンピーダーの本質は、中性子の運動を暴走させて強制的に核分裂を起こすことにある。

 

この能力は、有効半径内に存在する核弾頭をその場で起爆させる事が出来、さらにはフリーダムをはじめとする核エンジン搭載MSの原子炉を暴走させることも可能となる。

 

『なっ!?第一攻撃隊、消滅!』

 

『なにッ!?』

 

『あのナスカ級から何かが!』

 

必然的に、核そのものや、核を装備したウィンダムは暴走した核分裂による爆散で、核の飛散とともにその運命を共にすることとなった。

 

地球連合軍の核攻撃部隊「クルセイダーズ」が所持する核ミサイルは、全て誘爆を起こし破壊された。

 

ウィンダムやその母艦なども、発射せずにいたものや、所属艦が格納していたものも一斉に誘爆したため、全滅する道を辿ったのだ。

 

「あの光は…ジェネシスの…」

 

目の前を過ぎ去った光を見つめながら、リークは小さな声で呟く。あの稲妻や赤い閃光が入り乱れた光は、前大戦でみたジェネシスの光と酷似していたからだ。

 

「なんだ…一体何が…」

 

「少なくとも、地球側が撃ったのか…核を!!」

 

撃退したとはいえ、プラントの目と鼻の先で再び核が火を上げたのだ。その事実を前に、リークたちも、イザークたちも、プラントを守れたことを両手を上げて喜ぶことはできなかった。

 

《核ミサイルは全て撃破。各攻撃隊は完全に消滅しました。任務完了、RTB》

 

とにかく今は帰還するしかない。

 

操縦桿を絞りながら、残骸と化した地球軍の核部隊をリークが見つめていると、囮役で展開していた地球軍も撤退を開始したようだ。

 

「スタンピーダーは量子フレデルを蒸発させブレーカーが作動。現在システムは機能を停止しています」

 

《まったく堪らん。スタンピーダーが間に合ってくれて良かった》

 

何とか間に合った「ニュートロンスタンピーダー」の活躍に、最高評議会の面々は胸を撫で下ろした様子だった。

 

「だが、虎の子の一発だ。次はこうは…」

 

ザフト側もようやく1隻に装備できたものだ。

 

もし仮に、奇襲部隊が2段階以上に分けて攻撃を行っていれば核は防げなかった。ギリギリの状況ではあるが、地球軍が撤退した今は、とにかく次のことに備える必要がある。

 

それに、この威力を見た地球連合軍は、うかつに核兵器を使用する事ができないだろう。

 

《これで終わってくれるといいんですがね…とりあえずは》

 

通信で繋がっているデュランダルの言葉に誰もが簡単な相槌しか打てなかった。その場にいる誰もがわかっていたのだ。

 

核を持ち出した段階で、自分たちと地球は再び全面的な戦争へと突入することになるのだと。

 

 

 

////

 

 

 

《ベルモンド機、ケーニヒ機、着艦します》

 

ヒメラギへと帰還したリークたちは、エアロックが作動した貨物室の中でヘルメットを脱いだ。汗でじわりと滲んだ髪をかけ上げてから、頭を振るう。

 

デュランダル議長の依頼のもと、護衛任務でヒメラギから発進したと同時に、ザフトの偵察機が核搭載のMSを発見したというのだから、迎撃するほか無かった。

 

これはまた請求書が更新されるな、とリークはマードックたちが整備し始めたメビウスを見上げながらそんなことを思う。

 

傭兵稼業というのは、数字が明確に現れるものだ。例えば消費した燃料、弾薬。メンテナンス費用に、駆動系が消耗した場合の交換費、さらには人件費や貨物代、移動費諸々。さらに、メビウスライダー隊というネームバリューもあるため、オーブで雇われた際に請求書を出したら、カガリの顔が青ざめたものだ。

 

身内割りもするがとラリーが提案するも、アズラエル理事が「身内に甘くするビジネスマンは三流以下です」と説教をしていたのを思い出す。

 

「ええ、大丈夫。ちゃんと解ってますわ。時間はあとどれくらい?」

 

「なら、もう一回確認できますわね」

 

格納庫から居住区へ移動していると、通路の先でラクスとミーアが何かを持ちながら話し合っているのが見えた。

 

「ハロハロ、Are you O.K.?」

 

「テヤンデイ!テヤンデイ!」

 

近くで着地すると、二人のハロが足元で飛び跳ねた。

 

「ラクスさん、ミーアさんも」

 

「あら、お二人もレッスンの見学?」

 

「まだ戦闘宙域で危険ですよ」

 

地球軍が撤退したからと言って、安全が確保されたわけではない。オーブから上がったヒメラギが安定軌道に乗っているとは言え、ここで気を抜くのはあまりにも早計だ。

 

リークがそう言うと、ラクスの隣にいたミーアがさも当然のように首を傾げる。

 

「ベルモンドさんが撃退してくれたんじゃないのかしら?」

 

「戦闘はそんな簡単なものではありません。それよりも…」

 

「ええ、調べなければならないことは多く、知るべきこともありましょう。しかし、今は状況を理解する事が優先です」

 

核が再び使われた。

 

原因や敵の目的を知る以前に、その事実がある以上、プラントの人々の胸に浮かぶのは過去の惨劇である血のバレンタインだ。

 

「多くの人がナーバスになってるんですもの。そのために私やラクスさまがいるんですよ?」

 

ミーアとラクスは、公共の放送ラインで歌声をプラント全域に届けようと提案したのだ。プラント全体が核による恐怖に揺れる中、少しでも市民や過去を思い出して心を痛める者たちへの安らぎは必要となる。

 

「…そうですね…なら、みんなに歌声を」

 

「お任せください」

 

「とびっきりのナンバーを送ってあげます!」

 

力強く答えた二人に、リークとトールは敬礼を打って、再び移動を始める。ラクスたちはラクスたちの戦いがあるように、リークたちにはリークたちの戦いがある。

 

まずは、地球軍の動向。そしてザフトがどう動くのか。悲劇的にも最前線となってしまったこの場で、できうる限りの情報を集めることがリークたちの次の戦いでもあった。

 

 

 

////

 

 

 

「全滅?」

 

《ええ、核攻撃隊は一機残らず跡形もなく全滅したんですよ。一瞬のうちに。地球軍は一旦全軍、月基地へ撤退しました》

 

大統領からの報告を受けたジブリールは、驚愕と戸惑いから表情を変える…訳でもなく、ただその報告を聞きながらワインを口に運んだ。

 

甘味な味わいを楽しんだのち、ジブリールは頬杖を着いて思考を巡らせる。

 

「ふふふ…やはり予測していたか。デュランダルめ」

 

あの抜け目のない政治家だ。核を使うと言う予測は範囲内なのだろう。まったく、口では和平などと甘い言葉を呟きながら、隙のないものだ。

 

《再び核攻撃を行いますか?》

 

「いえ、撤退させてください。そういう類のものがある以上、状況分析をせざる得ません。それに消耗することも無視はできない。それに、これはあくまで「デモンストレーション」です」

 

《デモンストレーション?》

 

「〝核を撃った〟という事実さえ残ればいい。これで双方、引っ込みは付かなくなった。もはやユーラシアも大西洋も関係ない」

 

核を使い、プラントへの脅威を示した以上、もはや大西洋だの、ユーラシアだの言っている場合ではない。もはやそんな内情などどうでも良い領域に突入したのだ。

 

ユーラシアとブルーコスモスの上層部は、すでにジブリールの手中だ。こうなってしまった以上、後付の説明など、どうにでもできる。

 

「プラントと地球、この勢力図さえ作ってしまえばいいのですよ。これで、仕事はやりやすくなるというものです」

 

あとは予定通りに残存兵力をまとめて下さいと話をまとめて、ジブリールは通信を切ると、改めて自身の体を椅子へと預けた。

 

「舞台は整えられ、役者は揃った。システムは動き始める。もう誰にも止めることはできない。回り始めた歯車を、あとは幾分か早めるだけで良い。ふふふ…アーッハッハッハッ!!!」

 

そうだ。そうだとも。

 

すでに核は撃たれた。その時点で、もはや誰にも止めることはできない。

 

核が阻止された?核を輸送していた部隊が全滅した?敵が謎の装備を持ち出した?そんなもの、ジブリールにとっては些細な誤差に過ぎない。それどころか、ユーラシアが勝とうが、大西洋が勝とうが、プラントが勝とうが、彼にとっては〝どうでもよいのだ〟。

 

「ハルバートンはコーディネーターとの融和を。アズラエルはブルーコスモスの意識改革を。それぞれが新しく動き出したと言うのに、彼らは決定的に見落としたものがある。私がそれを実現しようというのだ!」

 

二人が進めたことは、組織というもの、そしてシステムという鎖に絡められて、亀裂を生み、その亀裂は修復しようがない軋轢へと変化した。指で弾けば吹き飛んでしまいそうな脆さを持って、何が新しい時代だろうか。

 

「そもそも、主義主張などどうでもいいのだよ!!変革するというならシステムは、より生物的にならなければならない!規範なんてものは不必要だ!そのために、邪魔なものは死ねばいい!!邪魔をするものは、みんな死ねばいい!」

 

ジブリールが望むものは、利益でも富でも名声でもない。未だかつてない世界を動かすための〝システムアップデート〟だ。そのためには、まず既存のシステムを壊さなければならない。

 

大西洋だの、ユーラシアだのと地球を二分、三分する構造そのものを破壊し、新たなる経済主体を構築。そこから、世界を動かすシステムを作り替えてゆく。

 

これは前日譚。序章にもならない。

 

彼は指揮者が艶やかに指揮を振るうように手をかざして、上機嫌に笑みを浮かべて声を上げた。

 

「愛してるんだ君たちを!!あははははははははは!!!!!」

 

ここから始める。

 

誰もができなかった

 

全てを!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。