ガンダムSEED Destiny 白き流星の双子   作:紅乃 晴@小説アカ

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第45話 混沌・飛翔・乱戦 3

 

父が前大戦で戦死した。

 

その報を私が聞いたのは、戦争が終わった2日後のことだった。

 

玄関で出迎えた赤服の軍人が、辛そうな顔つきで母に父の最後を伝えた様子を今でも覚えている。

 

父は誉れ高い死に方をした。地球軍…ナチュラルの狂気が放った核がプラントに迫る中、父やその仲間たちは自身の命が助からないことを顧みずに、自ら核へと攻撃を仕掛け、その爆発に焼かれて死んだのだと。

 

プラントを…延いては、私たちのいる場所を守るために、父は命をかけて戦い、散ったのだ。

 

悲しさが無いかと聞かれたら、嘘になる。妹であるメイリンや、残された母と共に、軍人が帰ったあと、私たちは涙を流したのだから。けれど、それと同じほどに誇らしく、厳格な性格であった父らしいという思いもあった。

 

けれど、その誇らしさも長くは続かなかった。

 

戦死者を悼むセレモニーが開催されたとき、プラントに落ちる核を食い止めた父や仲間たちは、名誉ある兵士として英霊のように祭り上げられた。新聞にも父の活躍が大々的に報じられ…その一報は、ナチュラルとの融和へと進もうとする者たちと、根強く残るザラ派の間で大きな論争を起こした。

 

核を食い止めた父たちを英雄として見る者は多かったが、その悪夢のような核を放ったナチュラルを許せないというコーディネーターが大多数をしめたのだ。

 

連日のように押し寄せる報道関係者。父の死を語りながら反ナチュラルに傾倒するように強いる軍人や組織の人間。そして役に立たない政府関係者たち。

 

母や私たちは、そんな人々の中で日に日に疲弊していった。父のした行為は、単純にプラントを守るための行いだったというのに、彼らはそれに理由を、根拠を付けたがって、そこから先、自分たちにどう有利にするかしか考えていなくて。

 

決定的になったことがある。それは父の墓石だ。私たちにとっては英雄でもなんでもない、単なる愛する父だというのに、政府は個人の墓石よりも、戦没者たちの葬いの慰安碑に父の名を刻んだのだ。

 

完成式典でも、それを前にしても、私たちに向けられたカメラの前で泣くことも許されない。父の思いも、私たち家族の思いも、プラントや同胞たちは無視して、踏みにじったのだ。

 

母が一人、暗い部屋の中で涙を流している姿がどれほど辛かったか。

 

それを隠さなければならなかったプラントが、私にとっては牢獄と同じように思えて、自由に涙すら流せない世界で……だから、私は逃げ出した。

 

父の面影を追いたかった思いもあったが、なによりも息苦しいプラントから、あの無作為な目線から逃れたい一心だった。

 

単身、父が最後に従軍したオーブへと渡った私は、当時の父を知る人たちがいるであろうオーブ軍へと志願した。

 

そこで、私はある部隊と出会った。

 

メビウスライダー隊。

 

父と共に戦ったという、伝説の小隊。地球軍でありながら、ザフト軍とも手を組み、プラントに攻め入る地球軍を止め、暴走したザラ派の軍勢も止めた英雄。

 

彼らは、コーディネーターとの融和のために、地球各地で起こる反コーディネーター派のテロや内乱の火種を抑えるために今も空を飛び続けていると聞いた。

 

世界の平和のために、彼らは戦っている。

 

なら何故、彼らは、父を守ってくれなかったのか。何故、彼らは私たちのような奇異の目で見られずに今もノウノウと空を飛んでいるのか。

 

あの戦いで失ったものはあまりにも多いというのに、彼らは好き勝手に戦いを止めて、英雄になって、その陰で悲しんでいる人たちに対して責任も取らずに、空を飛んで英雄を続けている。

 

ふざけるな…。

 

何が英雄だ。世界は未だに戦争状態だというのに、彼らは世界を平和にしたと宣う。まだ続いている。あの日の戦争は…帰ってこなかった者たちにとっては、今もなお苦しめられている戦争は続いているというのに。

 

そして起こったアーモリーワンでの事件。

 

ユニウスセブン落下事件。

 

彼らは、どれも防ぐことも止めることもできなかった。

 

ほら。彼らは戦争を止められる英雄なんかじゃない。ただの兵士。ただの人間にすぎない。

 

だから私は、彼らを許さない。

 

父すら守れなかった相手を。

 

戦いの後の〝私たち〟のような人々を見なかったことを。

 

英雄に祭り上げられた彼らを…!!

 

だから!!

 

 

 

////

 

 

 

『アンタも、私の敵になるのかぁ!!』

 

振り上げられたビームサーベルを咄嗟に躱したシンは、ヒヤリと汗を流した。その一撃は鋭く、早く、シンが体感してきた中でもトップレベルの気迫を備えていた。

 

続け様に撃たれるビームライフルの閃光を避けて、シンは戦闘機形態へと変形し、空へと舞う。

 

『逃げるな!!』

 

すかさずルナマリアも、飛び去ったシンを追うようにムラサメを飛翔させた。彼女の怒りにも似た声を聞いて、シンは思いを馳せた。

 

彼女がオーブに来たのは、父の面影を追いたかったから。それはルナマリアと共にオーブ軍で訓練を受けていたときに聞いた話だ。

 

そのあと、自分はトランスヴォランサーズの一員だと分かってからは疎遠となってしまったが、彼女の怒りを駆り立てる動機が、シンには考え付かなかった。

 

ルナマリアの父である、パトリック・J・ホークは前大戦で核からプラントを守るために命を散らした英雄だ。そして、ラリーやリークらと共にオーブから戦い続けていた戦友でもあるとも聞く。

 

ルナマリアがラリーや、トランスヴォランサーズである自分たちを恨む道理など、あるはずがないのに…!!

 

《やめろって!冷静になれよ!ルナマリア!!》

 

『私は自分でも驚くほど、冷静よっ!!』

 

広域無線にも応じる様子のないルナマリアから放たれるバルカン砲を、ストールマ二ューバーで避けたシンは、そのまま彼女の背後に回るように旋回する。負けじとルナマリアも機体を翻すが、速度をマニューバーで落としたシンの機体の方が、旋回が鋭かった。

 

(捻り込み…!?)

 

数回の機動戦で、すかさずルナマリアの背後をとったシンが描いたのは、巧みなマニューバーと速度制御から生まれるハイGターンを駆使した機動「捻り込み」だった。

 

しかし、その機動をすれば普通のムラサメでは機体強度が耐え切れないはずなのに。そう青ざめるルナマリアのエンジンに向けて、シンはターゲットアイコンを合わせた。

 

《オービットよりライトニング隊へ!不味いことになった!北東部より、大型の爆撃機が来ているぞ!…!?なんだコイツは…沖合からも新たな反応!こいつは…早い!!》

 

ニックからの通信を受けて、シンは即座にルナマリアを追うのをやめて北東部へと進歩を向ける。その先には、肉眼でも確認できる距離で爆撃機が迫ってきているのが見えた。

 

「オーブ軍の爆撃機…オーブは本気で、俺たちを討とうって言うのかよ!」

 

「シン!爆撃機は任せる!厄介な相手が来た!」

 

驚きを隠せないシンに、ラリーは矢継ぎ早に指示を送ってから弟子に背中を任せた。

 

沖合から来る反応を見て、ラリーはすぐにスピアヘッドを旋回させる。反応が近づいてくる速度が尋常ではないのだ。そしてこの速度を、ラリーはユニウスセブンで、〝一度経験している〟。

 

「ほう、これは…なかなかに興味深い相手だな」

 

そう言ってクルーゼも、向かってくる相手の気配を感じ取ったようにラリーに続いて迎撃姿勢を取った。相手の反応は二機。もう肉眼で水しぶきが上がっているのが見える。

 

『なんだ、あの機体は…我々の作戦には聞かされていないぞ…!?』

 

ルナマリアを心配するように飛ぶ馬場も、現れた正体不明の二機を見て驚いている様子だった。それは当然だ。なにせ相手は…オーブ軍ですらないのだから。

 

その二機とすれ違ったのは、まさに一瞬だった。この世界にあるはずのない…いや、ラリーたちが大戦時に一度だけ使った装備、『VOB』を背負った影が、ラリーの目に映る。

 

その姿は、ハッキリと見えた。

 

真鍮色と、緑のアイカラーが印象的な流線形状の重量機。

 

ああ、それは間違いない。

 

 

 

『行くぞ、ロイ』

 

『ああ、この国では初仕事だ。丁寧にさせてもらうぜ?ウィン・D』

 

 

 

その出現に、ラリーは思わず舌打ちをした。まったく、相手は相当な嫌がらせを好む者らしい。どうやら、相手はなんとしてもここで俺たちを滅ぼしたいらしい。

 

その意思がありありと伝わってくる相手をラリーと迎え撃つクルーゼは、見据える。

 

SEEDの世界にあるはずのない機体。

 

立ち塞がったのは——。

 

『レイテルパラッシュ』に『マイブリス』だ。

 

 

 

 

 

今後のシナリオ展開について

  • カラードの一部合流ルート
  • カラードvsメビウスライダー
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