ガンダムSEED Destiny 白き流星の双子   作:紅乃 晴@小説アカ

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第52話 逃避行のち大戦闘

 

 

 

 

「間もなくオーブ領海を抜けます」

 

オーブから脱したミネルバは、穏やかなオーブ沖合を進む。

 

新造艦であるこの船は、問題なく海上航行を進めており、周囲にはオーブの領海内を示すソナーの反応以外、なにも探知されることはなかった。

 

「降下作戦はどうなってるのかしらね。カーペンタリアとの連絡は?まだ取れない?」

 

「はい。呼び出しはずっと続けているんですが…」

 

オペレーターであるメイリンの回答に、タリアは「そう」と答えて息をつく。

 

情報によれば、すでに降下作戦は始まっているはずだが、宇宙方面やカーペンタリアの基地から一切の連絡がない。戦況がどうなっているか、ミネルバにとっては情報不足すぎる状況と言えた。

 

そんな中、レーダーをモニタリングしていた士官が驚愕の表情を浮かべた。

 

「なっ!?本艦前方20に多数の熱紋反応!これは…地球軍艦隊です。ステングラー級4、ダニロフ級8、他にも10隻ほどの中小艦艇を確認。本艦前方左右に展開しています!」

 

なんですって!?立ち上がったグラディスはオーブの領海外へと目を向けると、地平線の彼方からいくつもの影が近づいてきているのが見てた。空母4隻からなる、地球軍の艦隊。おそらく、こちらがオーブに匿われているということを知った上での作戦としか思えない。

 

「後方オーブ領海線にオーブ艦隊!展開中です!砲塔旋回!本艦に向けられています!」

 

「そんな!何故!?」

 

「領海内に戻ることは許さないと。つまりはそういうことよ。どうやら土産か何かにされたようね。やってくれるわね、オーブも」

 

「艦長ぉお!」

 

「ああ、もう!ああだこうだ言ってもしょうがない!コンディションレッド発令!ブリッジ遮蔽。対艦、対モビルスーツ戦闘用意。大気圏内戦闘よアーサー。解ってるわね?」

 

「は、はい!」

 

副長であるアーサーの情けない声と、それを一喝するタリアの号令のもと、ミネルバは即座に臨戦態勢へと入ってゆく。

 

それでも、遅すぎる対応とも言えた。

 

目の前には攻撃の意思を見せる地球軍の艦隊が迫ってきているのだから。

 

《コンディションレッド発令。コンディションレッド発令。パイロットは搭乗機にて待機せよ!》

 

ハンガーは一気に喧騒に包まれた。ヴィーノやヨウランたちも、懸命にザクやインパルスの発進準備を進めてゆく中、艦内にタリアの凛とした声が響く。

 

《艦長、タリア・グラディスよりミネルバ全クルーへ》

 

「最終チェック急げ!」

 

パイロットスーツに身を包んだハイネとレイがハンガーへと入ると、各々は準備された機体のコクピットへと滑り込む。

 

《現在本艦の前面には空母4隻を含む地球軍艦隊が、そして後方には自国の領海警護と思われるオーブ軍艦隊が展開中である》

 

空母4隻。その言葉を聞いただけで誰もが目眩を起こしそうになった。簡単に言えば、戦力比率はこちらの4倍。敵にも大気圏内用のMSもいるだろう。こちらが出せる機体は二機だ。

 

状況を見るに、絶望的と言えるものだった。

 

《またオーブは後方のドアを閉めている。我々には前方の地球軍艦隊突破の他に活路はない》

 

そこでタリアは息をつく。これから開始される戦闘は、未だかつてないほどに厳しいものになる。だが、それでも——。

 

《本艦は、なんとしてもこれを突破しなければならない。このミネルバクルーとしての誇りを持ち、最後まで諦めない各員の奮闘を期待する》

 

「ランチャー2、ランチャー7、全門パルジファル装填。CIWS、トリスタン、イゾルデ起動!」

 

格納されていたミネルバの武装が展開されてゆく。幸運だったのは、このミネルバが大気圏内を想定した武装を積んでいたことだった。宙域から地球へと降りてきた故、弾薬は心許ないが、抵抗できないよりは遥かにマシと言える。

 

「レイには発進後あまり艦から離れるなと言って。ハイネ機は甲板から上空のモビルスーツを狙撃を。イゾルデとトリスタンは左舷の巡洋艦に火力を集中。左を突破する!」

 

《カタパルト推力正常。針路クリアー。コアスプレンダー発進どうぞ!》

 

「結局はこうなるか。レイ・ザ・バレル、コアスプレンダー、発進する!」

 

武装展開したミネルバの専用ハンガーから、レイが駆るインパルスのコアスプレンダーが飛び立った。続くように左舷のMSようハッチが開くと、オレンジ色のザクが発進デッキへと搬入された。

 

《ハイネ機、発進スタンバイ。全システムオンライン。発進シークエンスを開始します。発進スタンバイ。ウィザードはガナーを装備します》

 

「平和の国から出て、すぐに戦闘かよ!ハイネ・ヴェステンフルス、ザク、出るぞ!」

 

「イゾルデ、ランチャーワン、1番から4番、パルジファル、てぇ!!」

 

ハンガーから出たハイネのザク。それに合わせるように、ミネルバは射程距離へと入った敵艦へ攻撃を開始した。相手もすでにMSと戦闘機を発進させている。

 

ここからが激戦区だ。

 

後方にいるオーブ艦隊を一瞥してから、タリアは前を向いて戦いに挑んでゆくのだった。

 

 

 

 

////

 

 

 

「で、どうする?ラミアス艦長」

 

海底に息を潜めるアークエンジェルの中。ブリッジへと召集されたラリーは、映し出されたモニターを見つめながらマリューに問いかけた。

 

「まさか、出た先でミネルバと出会すことになるとはね。彼らは地球軍とオーブ軍に挟まれる形になっているわ」

 

映し出されているレーダー上では、見事に地球軍とオーブの艦隊にサンドイッチされているミネルバの図が浮き上がっていた。アスランに付き添われながらブリッジに来たカガリも、その映像を見て顔を硬らせた。

 

おそらく、出航したミネルバは大西洋連邦への供物とされたのだろう。オーブが地球側と同盟を結んだという確固たる決意と証明のために。

 

「アークエンジェルとドミニオンは、海底航行可能です。迂回し、地球軍との戦闘を避けて太平洋側へと出ることは可能ですが」

 

「彼らを見捨てるのですか?戦力差では、彼らに勝ち目はないぞ?」

 

「かと言って、彼らに加勢する理由がありません。加勢したとて、ミネルバも手を返して礼を言ってくれるとは思えません」

 

ナタルの具申に、ムウは当然だなと腕を組む。こちらはユウナや協力してくれたオーブ軍、氏族の娘や息子たちの情報があったからこそ、無血でオーブ沖を離脱できるチケットを持っている。

 

そのチケットを破り捨ててまでミネルバを救う理由もメリットもない以上、自分たちが取れる道は「見て見ぬふりをして去る」という道となる。

 

「だよなぁ…どうする?ラリー」

 

そんな目覚めの悪い選択肢にムウは頭をかいて、隣でレーダーを見つめる戦友へと問いかけた。こういったときのラリーの頭のキレの良さを、ムウはよく知っていたからだ。

 

「バーフォード艦長、デュランダル議長から契約終了の連絡は?」

 

《プラントからの通信は、地球降下作戦の一切を持って遮断されている。リークやトールが戻ってからの事後報告となるが、二人やヒメラギの帰還連絡もない》

 

ギルバート・デュランダルの護衛。リークとトールがプラントへと向かった任務は、未だに完了報告もない。それに、ユニウスセブンの件の報酬も、まだプラントからは支払われていない。

 

多少の納期遅延なら寛容なバーフォードが、少し延滞料を上乗せするくらいで済むが、今回はそれを有効に利用させてもらうとしよう。

 

「なら、議長からのオーダーは継続中ということでよろしいですね?」

 

「どういうこと?」

 

「どちらにしろ、アークエンジェルかドミニオンのどちらかはハルバートン閣下救出のために宇宙に上がらなければならない。宇宙に上がるにはマスドライバーが必要になる訳だが、オーブに戻ってカグヤから出るわけにもいかんでしょう?リークたちのヒメラギの帰還場所も確保しなければならない。となれば」

 

「ザフトと契約を結んで、オフィシャルにマスドライバーの基地がある施設を利用する、と?」

 

そのナタルの問いにラリーが頷くと、マリューとナタルは互いに顔を見合わせる。

 

「荒唐無稽な話だな」

 

「ああ、だが、いつも通りのやり方さ」

 

ニヤリと笑みを浮かべて答えたラリーに、ナタルは呆れたような息をついてから再びマリューへと視線を送る。どうやら選択肢は決まったようだ。マリューのアイコンタクトを受け取ると、彼女はすぐに副艦長席へと降りていった。

 

「わかりました。作戦はアークエンジェルで行う!総員第一戦闘配備!アークエンジェルならびにドミニオンは、ザフト軍所属、ミネルバの援護に向かいます!」

 

《総員、第一戦闘配備!繰り返す!総員、第一戦闘配備!》

 

まずは先行してアークエンジェルが浮上。ドミニオンは海底へ待機することになる。マリューの指示のもと、操舵手であるノイマンの手で、停止していたアークエンジェルの船体は緩やかに海底から離れてゆく。

 

「仰角20、アークエンジェル浮上!地球軍の左翼側へ出ます!浮上後、直ちに離水!バリアント、イーゲルシュテルン起動!排水後に各部ミサイル装填!」

 

「通信回線を開け!パイロットは各機体で待機だ!」

 

上へ上へと上がってゆくアークエンジェル。ラリーたちはブリッジから出ると、キラやムウと共にハンガーへと向かうのだった。

 

 

 

 

////

 

 

 

 

「4時の方向よりミサイル接近!多数!」

 

「回避!面舵20、迎撃!」

 

「3時方向よりモビルスーツ接近。数3!」

 

激戦。轟音。衝撃。

 

地球軍との本格的な戦闘が始まったミネルバの中は、まさに暴風だった。ミサイル艦から放たれた巡航ミサイルが、ミネルバのすぐそばで爆発する。

 

「うわぁああ!!」

 

「あの数…冗談じゃないぞ!?」

 

「余計な口きいてる暇はないわ!!迎撃!弾幕薄いわよ!モビルスーツはハイネ機に任せる!」

 

ミサイルを抱えた地球軍のMS、ウィンダムが近づく先、ミネルバの上を飛んで位置を変えたハイネのガナーザクウォーリアが赤と白の閃光を放って、先頭の一機から順に叩き落としてゆく。

 

『なるほど。確かになかなかやる艦だな。ザムザザーはどうした。あまりに獲物が弱ってからでは効果的なデモは取れんぞ』

 

『はっ。準備でき次第発進させます』

 

その様子を見ていた艦隊司令官は、そう問いかけると隣にいる側近が淡々と答える。あの最新鋭のザフト艦。オーブからの報告は嘘ではなかったが、予想以上のポテンシャルを秘めていると思われる。護衛に着く二機のMSも優秀だ。

 

艦砲やミサイルを放っても、決定的な致命打を与えるにはまだまだ時間がかかりそうだ。まぁ、それはあくまで〝艦艇〟と〝MS〟のみの戦いであればだが。

 

『身贔屓かもしれんがね、私はこれからの主力は新型のモビルアーマーだと思っている。かの悪名高き流星たちのように。ザフトの真似をして作った蚊トンボのようなモビルスーツよりもな』

 

地球軍でありながら、地球軍にもザフト軍にも牙を向いた流星部隊。素性はどうであれ、艦隊司令官も、その彼の背後にいる組織のトップも、流星の戦い方や、MAの本質的能力を高く評価している。MSという汎用機の延長線上にある兵器よりも、より専用性に特化したMAこそが、戦況を一変させる力を秘めているのだ。

 

《リフトアップ。B80要員は誘導確認後バンカーに退避。針路クリアー。ザムザザー、発進よろし》

 

その艦長の横。空母の特殊ハッチから白煙とスラスターを吹かして飛び立つ、巨大な影は艦艇の合間を縫いながらミネルバへと進路を向けた。

 

「アンノウン接近。これは…光学映像出ます!」

 

それを探知したミネルバ。オペレーターが表示した映像を見て、副長であるアーサーは驚愕した顔つきを浮かべる。

 

「なんだあれは!?」

 

「モビルアーマー…それもあんなにデカい…!」

 

MSとは比較にならないほどの大きさだ。近くにある護衛艦や、ミサイル艦といい勝負ができるほどの巨体が、海面の上を飛びながらこちらに向かってきているのだ。

 

「あんなのに取り付かれたら終わりだわ。アーサー、タンホイザー起動。あれと共に左前方の艦隊を薙ぎ払う!」

 

「ええー!?」

 

「沈みたいの!?」

 

「ぃ、いえッ!タンホイザー起動!射線軸コントロール移行!照準、敵モビルアーマー!」

 

ミネルバ艦首中央に格納される陽電子砲「タンホイザー」。その最強の武装で、突破口を開こうとしたタリアの指揮のもと、発砲時はハッチが開いて砲身が前方にせり出した。

 

『敵艦、陽電子砲発射態勢確認!』

 

『よぉし、陽電子リフレクター展開準備。敵艦に向けリフレクション姿勢」』

 

そのミネルバの動きをとらえた敵MAは、その亀のような機体を起こして、機体各所に設けられたリフレクター機器を作動させる。

 

「タンホイザー、てぇ!」

 

凄まじい閃光がミネルバの先端部から発せられたと同時、ザムザザーのリフレクター機能が臨界値を迎えて迎え撃つ。

 

同時に、爆音、衝撃。

 

凄まじい熱量が受け止めるザムザザーへと襲い掛かったが、そのエネルギーを前にしてもびくともせずに、ザムザザーは姿勢を維持した。

 

そして、タンホイザーの閃光が消え去った中で、そのMAは無傷で存在していた。

 

「なぁ…っ!?タンホイザーを…そんな…跳ね返した?」

 

「くっ!取り舵20、機関最大、トリスタン照準、左舷敵戦艦!」

 

即座に相手の驚異的な性能を目にした動揺から意識を切り替えたタリアが指揮を取る。正面にあれがいる以上、ミサイル艦という1番手薄な方向へと舵を切って離脱するしかない。

 

「でも艦長!どうするんです?!あれ!!」

 

アーサーの悲鳴のような声に、タリアは顔をしかめる。たしかに、あの正体不明なMAの対応を決めなければ、この苦しい戦局を打破することは難しいだろう。しかし、タンホイザーすら跳ね返す性能を持つ機体だ。

 

敵のMSの迎撃に手を取られるレイやハイネだけで対応するのは…!!

 

《では、我々に任せてもらおうか》

 

その時、オペレーターが操る回線からそんな声が聞こえた。この音声…どこかで。タリアがそれを思い出そうと思考を巡らせる間もなく、相手は動き始めていた。

 

「ミネルバへのレーザー通信です!これは…!海底より高熱源体、浮上してきます!」

 

その瞬間、ミネルバと地球軍の艦隊の前に白波を上げて浮かび上がったのは、ミネルバと同じほどの大きさを誇る戦艦だった。

 

「浮上完了、直ちに離水!ナタル!」

 

「排水開始と同時にイーゲルシュテルン、バリアント起動!ゴットフリート、1番2番、目標、右舷敵戦艦!後部ミサイル発射管、ヘルダート装填!1番から5番、コリントス装填!他はウォンバット装填!アンチビーム爆雷展開!」

 

浮上したと同時に指揮をとるマリューと、それに阿吽の呼吸で合わせるようにナタルが火器武装類への展開指示を矢継ぎ早に放った。

 

「あの戦艦は…」

 

《こちら民間軍事企業トランスヴォランサーズ所属のアークエンジェルです。グラディス艦長、苦戦しているようですね?活きの良い戦力は揃っていますよ》

 

さきほどと同じくレーザー通信で発せられる音声は、やわらかな女性の声でありながら、どこか芯の通った印象をタリアへ与える。タリアは、こちらからの通信回線をとオペレーターに伝えて、映像通信へと切り替えると艦長席に備わる端末を持ち上げて応答した。

 

「当方はザフト軍所属のミネルバである。そちらはなぜ加勢するのか、真意を聞きたい」

 

《艦長のマリュー・ラミアスです。こちらは、デュランダル議長との護衛任務の契約はまだ満了しておりません。それに、こっちにも色々と訳ありでしてね。詳しいことは、ここを切り抜けてからって事で、どうでしょうか?》

 

淡々と答えるのは、タリアと同じ歳ほどの女性艦長だった。穏やかそうな顔つきをしているくせに、その瞳からは測りきれない何かを感じる。

 

それに、彼女がいう通り、トランスヴォランサーズには議長ならびにミネルバに乗艦していたVIPたちの護衛を依頼しているのはタリアも存じていた。何せ、議長が自分たちを同席させた上で契約書にサインをしたのだから。

 

そしてこちらもカーペンタリアへの通信が繋がらない以上、彼らに対して支払われるべき報酬も滞っているに違いない。

 

「艦長…!」

 

アーサーは怪訝な顔をしてモニターを見つめ、タリアの決断を待っていた。

 

たしかに流星は、ザフトにとっては忘れがたい悪夢をもたらした兵士たちだ。

 

だが、逆に言えば味方に引き入れてしまえば戦局を覆すほどのパワーバランスを引き寄せることも可能ということになる。

 

「今は、少しでも戦力が欲しいわ。選択肢はない。我々は貴方たちの援護を感謝します」

 

彼女は決断した。背に腹は変えられない。最悪の場合、ここを切り抜けた後にカーペンタリアからデュランダルへ直接話をもってゆけば、彼もまた契約条件の変更ということで追加報酬を認めてくれるはず…。

 

それに、ザフトの新鋭艦であるこのミネルバや、レイの駆るインパルスなどを失うわけにもいかなかった。

 

《ありがとう。グラディス艦長》

 

タリアの決断に感謝を述べたマリューは、通信を切ってからすぐに指示を出した。

 

「ハッチ開放、各機発進体制へ移行!メビウスライダー隊は敵戦力を排除せよ!」

 

すでにハリーやフレイたちの準備もあって、ラリーたちが乗る機体の発進準備は整っている。先に発艦ベイへと運び込まれてきたのは、シンとキラの機体だった。

 

《エクスカリバー、発艦準備!作業員は退避してください。進路クリアー、エクスカリバー、発進どうぞ!》

 

「シン・アスカ、エクスカリバー、行きます!」

 

「キラ・ヤマト、エクスカリバー、行きます!」

 

ミリアリアの声に従って、シンとキラはヘルメットのバイザーを下げてから操縦桿を引き絞った。電磁レールによって射出されるエクスカリバーは、その機体を滑空させてから翼を広げ、大空へと舞ってゆく。

 

《フラガ機、発進どうぞ!》

 

「やれやれ、すぐに出撃することになるとはねぇ!ムウ・ラ・フラガ、エイドストライク、発進するぞ!」

 

キラに続いて出たのはムウだ。彼が乗り込む機体もオーブから持ってきたものであり、アークエンジェルやドミニオンと同じく、前大戦時から修理されたMS、「ストライク」だ。

 

と言っても、核の炎に焼かれたストライクを完全に修復することは叶わず、生き残ったコア部分を基にアストレイや他の余剰パーツを使って〝現地改修〟されたといっても差し支えのない機体と言える。

 

頭部と四肢はM1アストレイ、背部には前大戦で破損し、部品として保管されていたイージスの動力部をそっくり付けたものとなっている。

 

エンジンやスラスター、駆動系統、機体の出力を補うバッテリー系も最新フォーマットとして更新されているため、能力的には現行のMSと差はほとんどない。

 

ストライカーパック機構がコスト面で廃止されたゆえ、脚部にハードポイントが備わっており、今は空戦用の「ウイングパック」が備わっている。

 

とはいえ、フリーダムなどのように長時間の空中機動ができないため、ムウは発艦したあと、待機していたキラのエクスカリバーの上へと降り立った。

 

「すまねぇな、キラ」

 

「大丈夫ですよ、ムウさん。行きます!」

 

可変機構が複雑だった従来のムラサメよりも機構が簡素化されたエクスカリバー。

 

ハリーが「MSを乗せて運用する」ということを前提として開発されたものでもあり、エクスカリバーは単独での戦闘能力と、高い空戦能力と同時に、飛行能力を持たない機体の〝ドダイ〟としても運用することが可能となっているのだ。

 

《レイレナード機、発進どうぞ!》

 

「ラリー・レイレナード、スピアヘッド、出るぞ!」

 

最後に飛び立ったラリーのスピアヘッドMarkII。

 

対艦船との戦闘に備えたファストパックへと換装したスピアヘッドを駆って、ラリーは先行するキラたちと合流して苦戦を強いられるミネルバへと急行するのだった。

 

 

 

 

 

 


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