ガンダムSEED Destiny 白き流星の双子   作:紅乃 晴@小説アカ

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第63話 インド洋の大空中戦線 1

 

 

「当部隊のウィンダムを全機出せだと!?ふざけたことを言うな!」

 

インド洋前線基地の司令官に任命された彼は、起き抜けの通信で発せられた無茶な注文に対して文句を言わざるえなかった。

 

対するは軍人とは思えないマスクで目元を隠しており、その口元だけではどんな顔をしているのかを察することが難しい相手だ。

 

こちらの当然とも言える言葉に息をついて、ネオ・ロアノークは言う。

 

《不真面目なのはどちらになるのかな?相手はミネルバ、そして噂の流星だ。それでも落とせるかどうか怪しいというのに。この間のオーブ沖会戦のデータを見てないのか?》

 

「そういうことを言っているのではない!我々はここに対カーペンタリア前線基地を造るために派遣された部隊だ!その任務もままならないまま、貴官にモビルスーツなど…」

 

《その基地も何も、すべてはコーディネーターを討つためだろう?寝ぼけたこと言ってないでとっとと全機を出すんだよ。ここの防衛にはガイアを置いておいてやる。いいな?これは命令だ》

 

一方的に切られた通信。苛立ちを込めて受話器を置いた司令官は、肩を落とした。彼らは大西洋連邦所属でありながら、軍属としては自分よりも上なのだ。ファントムペインだとかいうブルーコスモスお墨付きの部隊。それもこの軍の最大出資者であるロード・ジブリールお抱えだ。

 

「くそっ…戦争屋どもめ」

 

忌々しいと言わんばかり、インド洋前線基地の司令は昨日整備し、格納したばかりの最新鋭MS部隊へ出撃命令を通達する準備に取り掛かるのだった。

 

 

////

 

 

「MSの準備は?」

 

「全機発進準備完了です」

 

「よし、ジョーンズは所定の場所を動くなよ」

 

艦長であるイアンに告げて、ネオも出撃準備に入る。日は登った。彼らが〝史実通り〟ならば、この海域を抜けてザフトのマハムール基地へと舵を切るはずだ。

 

場所はブリッジからハンガーへと降りる。

 

その先では、一人改造した連合制服姿のまま、パイロットスーツに身を包んだアウルとスティングへ羨ましげな眼差しで見つめていた。

 

「いいなぁみんな。ステラだけお留守番」

 

「しょうがねえじゃん。ガイア飛べねえし、泳げねえし」

 

そもそも、ステラに割り当てられた機体は地上走破性や、対地用に開発された機体だ。出力はあるだろうが、海洋という陸地がない立地での戦いには不向きといえる。

 

MS全機を出すという破格の対応に応じたインド用前線基地の守備能力として置かれることになったが、ガイア一機で出来ることも少ない。実質的な居残りとなる。不貞腐れるステラに、スティングが宥めるように言う。

 

「海でも見ながらいい子で待ってな」

 

頷いて答えたステラに見送られながら乗機に向かうスティングたち。彼らの視線の先では、同じくパイロットスーツを身につけている一人の少女がいた。

 

「なぁ、スティング。アイツどうすんの?」

 

「あん?知らねぇよ。アイツのことなんて」

 

サレナ・ヴァーン。生まれは自分たちと同じ「強化人間」だとネオには聞かされていたが、詳細は知らない。その能力や実力の全てが未知数だ。彼女は楽しげに鼻歌を歌いながら、放り出した足でリズムを刻んでいる。

 

「ふふふ、待っててね。ダーリン。今行くわ」

 

か細い声で呟かれた言葉は彼女にしか理解できないものだ。だが、その眼光から放たれる異様な気配だけは、スティングやアウルに僅かながら警戒心を抱かせるには充分な力を宿していた。

 

《油圧値正常、各機発進スタンバイ!各員MSは発艦願います!》

 

さて、仕事の時間だ。甲板へとリフトアップしたMSの中で、スティングは発進準備を整えてゆく。すでにOSも地上戦に対応したものに切り替えているし、操縦性も確認済み。後ろで待つアウルも同じくだ。

 

カオスの脚部をカタパルトへと乗せる。オペレーターからの発艦指示に従って、スティングはスロットルを引いた。

 

「よし。スティング・オークレー、カオス発進する!」

 

「アウル・ニーダ、アビス出るよ!」

 

射出後、それぞれの形態となり空と海から進行を開始する2機を見送った後、奥のMSハンガーからその機体がリフトアップしてきた。

 

ウィンダムのフレームをベースにしたそれは、

背面の排熱装置とスラスターによる機動力に優れた機体構成となっており、武装はスナイパーライフルと肩部の〝スラッグキャノンのみ〟という極めてシンプルな物だ。

 

他の特異的なネクスト機体のような特殊兵装はおろかブレードも積んでいない。だが、そのシンプルさこそが彼女の強さの根底であった。

 

「サレナ・ヴァーン…。ヴァルキュリアC、行くわよ」

 

スラスターを吹いて飛翔するヴァルキュリアCは、同時に射出された長距離移動用のフライトユニットを足場にして飛び立ってゆく。

 

「さて。これだけの戦力、どう出る?流星。ネオ・ロアノークだ。戦闘機隊は俺に続け!コスモグラスパー、出るぞ!」

 

電撃的な作戦になる。ネオは地上用に仕様を変更した愛機であるコスモグラスパーに乗り込み、空母から出撃してゆく。その後ろに編隊を組んで随伴する戦闘機部隊を伴って。

 

特殊機体3機、ウィンダム30機、そして戦闘機部隊だ。ネオはマスクの下でほくそ笑む。

 

さて、地上で輝く流星とやらの力を拝見するとしよう。

 

 

 

 

////

 

 

 

《コンディションレッド発令。コンディションレッド発令。パイロットは搭乗機にて待機せよ》

 

「熱紋照合…ウィンダムです。数30!内一機はカオス、戦闘機部隊も展開しています!」

 

その反応を探知したときには、すでに手遅れであった。ミネルバと随伴するニーラゴンゴ、そして傭兵部隊を乗せるアークエンジェルは、すでに敵の射程圏内に入っていたのだ。

 

「またあの部隊だって言うの?一体どこから?付近に母艦は?!」

 

「確認できません!」

 

《グラディス艦長、こちらでも確認しました》

 

慌てるオペレーターに喝を入れるタリアのもとへ、アークエンジェルからも通信が入る。あくまで雇用主はザフトだ。マリューの言葉の意図を汲んだタリアは、即座に他の船にも指示を放つ。

 

「お互いに、あれこれ言ってる暇はなさそうね、ラミアス艦長。ブリッジ遮蔽。対モビルスーツ戦闘用意。ニーラゴンゴと、アークエンジェルとの回線固定!どうやらまた待ち伏せされたようだわ。毎度毎度、人気者は辛いわね。既に回避は不可能よ。本艦は戦闘に入ります!」

 

戦闘配備の通達と同時に、待機していたパイロットたちが更衣室へと飛び込み、すぐさまハンガーへと降りてゆく。

 

「よぉし、戦闘準備だ!!各機は射出シークエンス!!パイロットはブリーフィングだ!!」

 

技師長の怒号と共に、整備員やスタッフたちも忙しなく通路を行き交う。コクピットへと滑り込んだミネルバ所属の機体へ、アークエンジェルから通信が届いた。

 

《ミネルバ所属のパイロット諸君。こちらはアークエンジェルAWACSのオービットだ。これより君たちのサポートに回る。MSは各機、戦闘のみに専念してくれ。これよりブリーフィングを開始する》

 

 

 

 

 

 

 

状況を確認する。

 

本艦ならびにミネルバ、ニーラゴンゴはすでに敵部隊との戦闘圏内に位置している。

 

敵は左舷より南下して進行中。接触まで10分を切ったところにいる。ミネルバ、アークエンジェルのMS部隊を展開。

 

君たちの任務は進行してくる敵MSを撃破だ。

 

アークエンジェルからは、フラガ隊長指揮下のライトニング隊と、ベルモンド隊長指揮下のガルーダ隊が出る。コールサインはライトニングとガルーダだ。

 

情報によれば、ザフトから奪取された機体もいるようだ。それに不明MSのこともある。戦闘機部隊、MSの混成部隊だ。海中からの攻撃も予想されるため、各員連携をとって柔軟に対応することになる。

 

初の連携任務だ。危険度はあるが、君たちならこなせる。頼んだぞ!

 

 

 

 

 

 

 

 

《インパルス、セイバー、発進願います!!フォースシルエットスタンバイ。シルエットフライヤーを中央カタパルトにセットします!気密シャッター閉鎖。非常要員は待機してください。中央カタパルトオンライン。発進位置にリフトアップします。コアスプレンダー全システムオンライン。発進待機願います!》

 

「こうやって連携するのはユニウスセブン以来だが、頼りにはさせてもらうとするぞ。メビウスライダー隊」

 

ハンガーから出撃位置へと搬入されてゆくセイバーの中で、ハイネはパイロットスーツの手首をぐっと締めながらメビウスライダーの隊長であるムウへ通信を投げていた。

 

「こちらとの連携は密に頼みます。ヴェステンフルス隊長」

 

「フラガ隊長もよろしく頼む」

 

隊長同士で挨拶を交わすハイネと同じく、インパルスのコアスプレンダーの中で準備を進めるレイ。コクピットのコンソールを操作してる最中、モニター映像に、直接回線で通信が届いた。

 

「レイ」

 

語りかけてきたのは、スピアヘッドMarkIIのコクピットにいるラリーだった。

 

「ラリー・レイレナード」

 

ミネルバのオペレーターであるメイリンに融通してもらって通信を通してもらったラリーは、顔を硬らせるレイへ語りかける。

 

「クラウド…いや、クルーゼのようになれとは言わん。だが、忘れるなよ?お前はお前だ。だから、お前の信じた信念のために戦え。迷うな」

 

真っ直ぐとした声で届くラリーの言葉に、レイはわずかに心を揺らがす。裏も表もない言葉に慣れていないからか。戸惑った顔をするレイへ、ラリーは人当たりの良い笑顔を見せて言葉を続ける。

 

「困ったり、迷ったりしたら言えよ?仲間だからな」

 

「…考えておく」

 

《射出システムのエンゲージを確認。カタパルト推力正常。進路クリアー。コアスプレンダー発進、どうぞ!》

 

「レイ・ザ・バレル。コアスプレンダー、発進する!」

 

《右舷ハッチ開放。セイバー発進、どうぞ!》

 

「よーし、ハイネ・ヴェステンフルス、セイバー発進する!」

 

 

 

 

 

////

 

 

 

オーブに身を隠していたアークエンジェル。その船の型は確かに前大戦のものであったが、中身は常に更新されていた。特にブリッジの管制システムや、火器制御システムなどは、ナタル・バジルール指示のもと大幅に見直しが行われ、機関制御システムもオーブの最新モデルと同じものに載せ替えられていた。

 

そして、もっとも手が加えられた箇所がある。

 

《左舷、バリアントレール特殊外装展開。電磁チャンバー加圧。システムオールグリーン!》

 

アークエンジェル後部。レール砲であったバリアントは、新たなシステムが付け加えられていた。格納時のコンパクトさが犠牲になってはいるが、もたらされる機能を考えれば些細なことだ。

 

後部のハンガーも増設され、新たに〝戦闘機専用〟の格納ベイも作られており、バリアントに付け加えられたシステムと連動する形を取っていた。

 

《ケーニヒ機、セット。固定値正常。射出タイミングを譲渡します》

 

レール部が再設計され、より強固な機構となったバリアントに付けられたもう一つの機能。側面部に設けられた固定ユニットに、増設された戦闘機用格納ベイから出されたトールの「MVF-X02 ムラサメTYPE-Rストライクワイバーン」が固定される。

 

「トール!電磁レール射出の訓練はやってるけど、加速負荷もあるんだから射出後は機体を安定させること!!わかってるわよね!?」

 

「了解!ガルーダ3、トール・ケーニヒ、ストライクワイバーン、行きます!!」

 

ハリーの言葉に元気よく答えながら、トールはエンジンのスロットルレバーを全開に上げた。火が入っていたストライクワイバーンのエンジンノズルから、青白い光が瞬くと電磁レールが解放され戦闘機が空へと矢のように放たれる。

 

即亜音速に達する速度を身につけながら、トールは機体を反転させて操縦桿を絞る。真横を向いていた機体は即座に反応し、その翼を持って大空へと羽ばたいてゆく。

 

《続いてベルモンド機、レイレナード機、射出レールへ!》

 

「真横になって出るなんて慣れないけど、たしかにこれは楽だね。ラリー」

 

「展開力が違うんだよ、展開力が!ライトニング1、ラリー・レイレナード、スピアヘッドMarkII、出るぞぉ!!」

 

「ガルーダリーダー、リーク・ベルモンド、スカイグラスパーⅡ、行きます!!」

 

続いて格納ベイから出されたラリーの「スピアヘッドMarkII」と、リーク用にチューンされた「スカイグラスパーII」が空へと射出される。

 

仕様からナニカサレテいるスピアヘッドMarkIIと違い、リークの乗るスカイグラスパーIIは、純粋な後継機と言えた。翼面を対空専用に特化させ、前大戦のスーパースカイグラスパーを参考にしたファストパックが装備された機体は、ラリーの操るスピアヘッドと共に旋回し、先に飛び出したトールの後を追う。

 

「発艦指示が出てるのわかってるでしょ!!早くどけんだよ!!せっかく戦闘機組は電磁チャンバーで射出してるんだから!!」

 

「キラたちの機体が先だ、ばかやろう!!」

 

「キラ、無茶な動きは仕方ないけどリミッター外す意味をちゃんと考えなさいよ!?」

 

マードックに負けない大声を出す整備副長となったフレイの言葉に、自分用に調整されたエクスカリバーの中でキラは何度も頷く。リミッターはかなり掛けているが、調整前の無難な性能とは違い、扱いがかなりピーキーなものになっているが、キラには問題なかった。

 

「わかってるよ、フレイ!アスランも準備はいい?」

 

「いつでもだ、キラ!」

 

「カガリ姉さんは出る機体無いんだし、立場を考えてよ!!」

 

2号機に乗るアスランの頷きを聞き流し、3号機をあてがわれたシンは、ハンガーから物言いたげな目で見てきていたカガリに向かって釘を刺すように言葉を放った。

 

「わ、わかってるさ!!まったく!!生意気な弟分め!!」

 

図星なのか、ムキになって言い返すカガリ。放っておくと、予備の機体に乗って出てきかねないからな。ため息をつくアスランに、キラは少し笑うと通信が繋がっているブリッジへ語りかける。

 

「マリューさん、カガリを頼みます!ライトニング2、キラ・ヤマト、エクスカリバー、行きます!!」

 

「ライトニング3、シン・アスカ、エクスカリバー、行きます!!」

 

「ガルーダ2、アスラン・ザラ、エクスカリバー、発進する!!」

 

「おーおー、元気がいいなぁお前ら!」

 

《進路クリアー、ストライク、発進どうぞ!》

 

「よっしゃあ!ライトニングリーダー、ムウ・ラ・フラガ、エイドストライク、出るぞ!!」

 

最後に、隊長機でいるムウのエイドストライクが射出される。フライトユニットを装備するムウの機体は、少し滑空してからアークエンジェルの甲板上へと降り立つ。

 

迎撃部隊はリークを隊長としたガルーダ隊と、ラリーやキラ、トールを主軸にした攻撃部隊。ミネルバの指揮系統はハイネに託され、ムウは残った船の防衛となる。

 

海洋の上、ついに大西洋連邦とザフトの戦いの火蓋は切られようとしていた。

 

 

 

 

 

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