ガンダムSEED Destiny 白き流星の双子   作:紅乃 晴@小説アカ

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第6話 一時の帰還

 

 

 

「ナスカ級撃沈!左舷後方よりゲイツ、新たに3!」

 

「アンチビーム爆雷発射と同時に加速20%、10秒。1番から4番、スレッジハマー装填!大佐が出ている!そっちは任せればいい!」

 

ガーティ・ルーのブリッジは、急襲と迎撃に上がってきたザフト軍の対応に追われていた。すでに二隻のナスカ級は撃退したものの、敵の基地を目の前にして単騎で戦っているようなものだ。

 

分の悪い戦いに変わりはない。

 

《艦長、彼等は?》

 

ガーティ・ルーへ通信が入る。

 

先ほど〝メビウス〟で出撃した大佐の声だ。彼は手早く機体を反転させると、撃つことしか能がないゲイツを次々とビーム砲で穿っていく。

 

その動きは鮮やかであり、ザフト艦の対空攻撃もひらりひらりと躱しては、ブリッジや機関部に的確にダメージを与えていく。

 

「まだですーー失敗ですかね?港を潰したといってもあれは軍事工廠です。長引けばこっちが保ちません」

 

艦長の言葉に、メビウスを駆るパイロット、『ネオ・ロアノーク』は少し言葉を選んでから、艦長に問いかけなおした。

 

《解ってる。だが失敗は許されない。これが不発に終われば、我々はまた〝待つ〟ことになるぞ?それでいいのか?艦長》

 

すでに自分たちは、あの屈辱的な惨敗から2年も待ったのだ。苦渋を舐め、憎きコーディネーターから世界を解放するため、この日を待った。ここで、彼らを回収出来なかったら、あの日々が全て水泡に帰すことになる。

 

ネオの言葉に、艦長も分かっているようにうなずく。

 

「ーーまた穴蔵にこもって好機を待つのは、いささか我慢致しかねますな」

 

《だろう?大丈夫さ。俺の勘がそう言ってる。艦長、船を頼むぞ》

 

それだけ伝えると、ネオのメビウスは機体を翻して再び飛翔する。自分の勘が告げているのだ。ここに留まれば、自分が二年間ーー待ち続けた相手に出会えると。

 

 

////

 

 

アーモリーワンの受けた被害は甚大だった。

 

「駄目です!司令部応答ありません!」

 

「工廠内ガス発生。エスパスからロナウル地区までレベル4の退避勧告発令!」

 

カオス、アビス、ガイアによってもたらされた被害は深刻であり、ビームの流れ弾に当たった市街地では死傷者も出ており、破壊された通信インフラも使い物にならず、コロニー内では空気漏れと、除去装置の破損により、有毒性のガスが発生していた。

 

「艦長…これまずいですよね?もしこのまま逃げられでもしたら…」

 

弱腰の口調で呟くミネルバの副長、アーサー・トラインの言葉に、艦長であるタリア・グラディスは疲れたように額を指で支えながらモニターへ視線を走らせた。

 

「そんなことされてたまるもんですか。それにしても、どこの部隊かしらね。こんな大胆な作戦…」

 

「それはわからん。だが、奴らは止めねばならんだろう」

 

タリアの呟きに言葉を返したのは、ブリッジの扉から現れた人物だった。

 

特徴的な長髪と、最高評議会長のみが許される制服に身を包んだ男性、ギルバート・デュランダルが護衛を連れてブリッジに入ってくる。

 

「議長!?」

 

驚いているブリッジのクルーや、タリアを見つめながら、デュランダルは毅然とした声を上げた。

 

「状況は、どうなっている?」

 

司令部との通信が途切れ、外縁部のパトロール隊とも音信が途切れた今、現状を把握し、それに対応できる能力を待つのは、このミネルバだけだ。

 

その時を待って、ミネルバの実戦投入がはじまろうとしていたーー。

 

 

////

 

 

「隊長!ダメですって!」

 

「うるさいんだよ!部下が一人で行っちまったんだ!俺が追わなくて誰が追うんだ!!」

 

そのミネルバのモビルスーツハンガーでは、ボロボロになったオレンジ色のザクの前で、作業員であるヴィーノと、パイロットであるハイネが取っ組み合いをしていた。

 

ハイネは、このミネルバのモビルスーツ隊の隊長として明日から任に就く予定ではあったが、インパルスのパイロットであるレイが、先行して出て行った為、彼も出撃するつもりでいたのだがーー。

 

「しかし、隊長の機体だって…」

 

肝心のハイネ専用のザクは瓦礫に押し出されてボロボロの有り様であった。なんとかミネルバに搬入したものの、まだ点検すらできていない状態と来ている。

 

「中身が無事なら飛ばせるさ!さっさと発進準備をするんだよ!!」

 

「だから無茶ですって!!」

 

そう言ってはザクに乗り込もうとするハイネと、作業員であるヴィーノが攻防を行っていたのだ。そんな彼らの傍では、議長が乗ってきた輸送機と共に、一機のモビルスーツと一台の軍用車がハンガーへと入ってきていた。

 

「あれは…見たことがない機体だ。どこのだ?」

 

取っ組み合いをしていたハイネが、見たことがない機体を目にしてヴィーノに問いかける。すると、隣で物資の運搬をしていたヨウランが、ハイネの質問に答えた。

 

「オーブらしいですよ。ほら」

 

そう指さす先では、軍用車から降りてくるオーブの議員や護衛の姿が見えた。

 

 

////

 

 

「全く、無茶をしますよね。相変わらず」

 

軍用車の運転席から降りたトールが、呆れた様子でカガリを見つめる。煤まみれになった議員の正装を手で払いながら、カガリは不満げにトールに言葉を返した。

 

「うるさいなぁ、巻き込まれたって何度も言ってるだろ?」

 

「ヘリオポリスの時といい…カガリちゃんは一度、日本の神社で御払いでも受けた方がいいんじゃない?」

 

「私だって好き好んでなぁ!!」

 

リークの意地悪そうな言葉に、カガリも負けじと言い返そうと声を荒げた時、議長の指示でカガリたちと共にミネルバに避難し、屈んだ姿勢を取るメビウス・ストライカーからシンがスルリと降りてくる。

 

「シン!無事だったか!」

 

新型の一機にしつこく絡まれていたのは見えていた。心配していたアスランやキラが、ヘルメットを脱いだシンの元へ駆け寄る。すると、彼は何ともない顔をして全員へ敬礼を打った。

 

「メビウスライダー隊、ライトニング4、シン・アスカ。帰投しました!」

 

「さすがだな、シン。よくやってくれた」

 

アスランやキラが微笑みながらシンの肩に手を置くと、彼は照れたように頬を指でかいた。

 

「キラさんやアスラーーごほん、アレックスさんの送ってくれた事前データがあったからですよ。俺一人じゃ、ああはできませんでした」

 

「そう言ってちゃんとやることやれる奴になってくれて、お姉ちゃんは嬉しいぞぉ!このやろ!」

 

アスランたちの合間を通り抜けてきたカガリも嬉しそうにシンと肩を組んで、乱暴にその頭を撫でた。

 

「ああもう、まだ公務中だからやめてくれって、カガリ姉さん!!」

 

そう言いながらも満更でもない様子でカガリからの激励のなでなでを受け入れるシン。

 

カガリとシンは、彼が民間PMCに入隊してからの仲であり、キラやアスラン共々、公私ともに付き合いを続けてきた。アスカ一家とのバーベキューや温泉慰安旅行などでも共に過ごしており、カガリからしたら弟らしい年下のようだった。

 

「私の弟もこう言う風な可愛げがあればよかったんだけどなぁ?」

 

弟っぽい仕草をするシンを見てから、カガリは恨めしそうにキラを見つめる。そんなキラはカガリに対して困った笑みーーーーを浮かべずに、対抗するような目でカガリと対峙した。

 

「まだ言ってる。僕が兄さんだからね?」

 

「何度言わせるつもりだ!私が姉だ!あ・ね!!」

 

先の大戦後、延々と終わらない兄妹喧嘩と言えるか…。カガリが姉風を吹かすと、キラが決まって自分の方が兄だと言い張るのだ。最初は皆がハラハラした様子で見守っていたが…。

 

「また始まったよ」

 

「あーなると長いからなぁ、あいつら」

 

今ではアスランもトールも呆れた様子であり、他のメンバーもいつものことかと気にしなくなっていた。

 

「あーー!!」

 

そんな穏やかな再会の中で、いつのまにかメビウス・ストライカーのコクピットに潜り込んでいたフレイが、悲鳴のような声を上げる。

 

何事かとザフトの作業員たちも反応する中、シンの表情がどんどん青ざめていっていた。スルリとフレイがコクピットから降りてくると、師から受け継いだ般若の形相でシンの元へと歩み寄ってくる。

 

前にいたカガリたちはもちろん、ザフトの作業員たちも無言の圧力にサッと道を開ける。

 

「こらぁ!シン!あんたまた無茶したわね!?」

 

「げぇ!!フレイさん!!俺は今回はーー」

 

そう言い返そうとするシンの眼前に、フレイは抽出した端末のデータをグイッと近づける。その端末の向こうでは、フレイがにこやかに笑みを浮かべていた。

 

「この数値データを見ても、同じことが言えるのかなぁ?」

 

目は笑っていなかった。

 

「あ…あはは…はは」

 

「正座」

 

「ーーーっス」

 

乾いた笑みを浮かべるシンに無情の判決が言い渡されて、シンは抵抗せずにそっと硬いモビルスーツハンガーに膝を落とした。

 

民間PMCの規則第一。

モビルスーツは丁寧に扱うこと。

 

いくら戦場で功績を残そうとも、愛機が動かなければ何もできない。故にフレイや、ハリーはキツく怒るーーらしい。ちなみにシンの正座回数は、もう数えることを辞めたレベルのようだ。

 

「どこに行ってもフレイはフレイだな」

 

「うん」

 

その様子を眺めるキラとアスランに、パイロットスーツ姿のハイネが歩み寄ってきた。

 

「あのさぁ、あんた達」

 

その目には明らかな疑いの眼差しがある。語りかけてきたハイネに警戒の色を返しながら、アスランが彼の対応に出た。

 

「そちらさん、確かオーブの人間だよね?なんだってオーブの奴らがここに?」

 

その質問はごもっともである。議長の指示とはいえ、ミネルバ側にこちらの情報が伝わってるとは考えづらい。そうアスランこと、アレックスに戻った彼が返事をしようとした時ーー。

 

ミネルバ艦内に警報が鳴り響くのだった。

 

 

 

 

 


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