「違うんです!俺は、かなでちゃんと音無君のイチャイチャが見たいだけなんです! SSS団には入りませんからぁ!」 作:岳鳥翁
ですので、戻ったついでに更新。短いけどね!
では、これにてごめん!(失踪)
「……とりあえず、お茶でもどうぞ」
「わ、悪いな……」
「いただくわ」
震える手で用意したお茶を零さないようにそっと二人の推しの前に差し出した。
こうして目の前にした今でも、できることであるならば夢であってほしいと願っている。
……いや、決して二人の来訪が嫌なわけではないのだ。
ただ、なんというかあれだ。推しに認知されたうえ、リアルに凸られたオタクの心境と言うのだろうか?
要は、現実味がなさ過ぎてなんかもう……うん、すごい(語彙力)
苦笑を浮かべながらお茶のお礼を述べる音無君に対して、特に緊張する様子も見せないかなでちゃん。
そんな二人の様子に、この二人らしいな、などと心のどこかで思いながら俺は机を挟んだ二人の向かい側……ではなく、そこから少し離れたベッドに腰かけた。
……何も言うな。あの二人の目の前とか、俺の目が尊死するに決まっているだろう。
つい先ほど決めた脳内メモリは、どうやら玄関の時点で容量をオーバーしてしまったようだ。
「その、こうやって顔を合わせるのは初めてだったな……音無だ。音無結弦。よろしく、山野」
「立華かなで」
知ってます。
何処の誰よりも、君たち二人の事を知りたいと思っているのだから。
「
「その紹介は無理がないか?」
「軽い冗句だ。気にしないでくれ」
もはやこうして顔がバレてしまっている時点でNPCを装うのは難しいだろう。
変にしらばっくれるよりも、こうしてゲロってしまた方がいくらかはやりやすい。
「今の今まで、お前たちにバレないように装ってきたんだがな……」
「その、何かすまん……お前の事は直井から聞いたんだ」
「まぁ、そう考えるのが普通だろうな。あいつとは一度、この場所で揉めている」
危惧はしていたから、予想通りと言えばその通りだ。
音無君大好きなあの直井であれば、自分の知っていることはたいてい答えることだろう。
名前と部屋の番号くらい、何でもないように伝えそうだしなあいつ。
「揉めた……?」
「あまり気にすることもない。もう終わったことだからな」
ついこの間の事であるはずなのだが、色々とその後が濃かったのでもうずいぶん前のような気さえしてくる。
「それより、わざわざ二人で、それも俺のところを訪ねてきたんだ。何か話でもあったんだろう?」
何となく、話の内容は予想できるが、聞く姿勢だけでも見せておく。
俺がこの先の展開を知っているなんてこと、この二人は全く知らないのだから。
「ああ……話すのはいいんだが……」
「どうした? 別に何も気にすることなく、話してくれていいんだぞ?」
「いや、ならせめてこっちを向かないか?」
…………
「俺を殺す気か?」
「どうして!?」
「このお茶、うまいわ」
◇
「なるほど、話の内容は理解した」
仕方なく。
仕方なくベッドから降りて二人の前に座ったのは良いものの、そこまでが限界だった俺は目をつむることで何とか尊死を封じ込めることができた。
そして、肝心の話であるが、なんて事はない。
予想通り、戦線メンバーがこの世界から卒業できるように協力してほしいというもの。
何となくわかってはいたが、音無君は生前の記憶をちゃんと取り戻したようであった。
彼の人生を、俺の勝手な回想で語るのは違うだろう。あれは彼の、彼だけの人生だ。
俺が語る時点でそこには俺の主観が混在することになる。
なら、何も言うことはあるまい。
彼は彼の人生を、意味のあるもの、報われたものだと感じているのだ。
なら、それでいい。
うっすらと目を開けて、音無君の隣に座るかなでちゃんを見やる。
黙々と湯呑に口をつけてお茶を飲むかなでちゃん。
彼女は、もう今の時点でわかっているのだろうか。
おそらく、わかっているのだろう。
わかっていて言わないのだろう。
何せ、それを言ってしまえば、彼女はこの世界から卒業してしまうのだから。
再び目を閉じて腕を組む。
「戦線の奴らが卒業できるように、そのサポートを戦線とは関係のない俺に依頼したい。そういうことで良いのか?」
「ああ。頼む」
迷いのない、熱のこもった声が耳を打つ。
「だが、敢えて聞かせてもらおうか」
その時だけ、俺は無理やりにでも音無君の目を見て問う。
「君以外の奴らは、そんなことは余計なお世話だと、理解した気になるなと言う奴も出てくるかもしれないぞ? 場合によっては君が仲間たちから恨まれることになるかもしれない。それでも、君は彼らをこの世界から卒業させるのか?」
「そうだ。俺達に、力を貸してほしい」
再び、今度は俺の目をまっすぐに見つめながら。そして頭を下げるのだ。
……ああ、そうだよ、音無君。
それでこそ、君だ。音無結弦だ。
俺が関わった程度じゃ、君の根幹は変わらないのだろう。
そもそも生前から、音無結弦はそういう人間だったのだ。
視線を隣に移せば、もうお茶を飲み終えていたのか、かなでちゃんも頭を下げていた。
ああ、もう……この二人は本当に……
「了解した」
「っ! 本当か!」
ガバッ、という効果音でもつきそうな勢いで顔を上げた音無君。それに遅れて、ゆっくりとかなでちゃんも顔を上げた。
「どこまで力になれるかはわからないが、できる限りの協力はしよう」
「ありがとう山野! 助かるよ」
嬉しそうにしている音無君を見ていると、なんか俺の方も少し嬉しくなってくる。
このまま衝動に任せて、かなでちゃんと抱き合ってもいいんだぞ? ん?
むしろしてくれ
「私から、聞きたいことがあるのだけれど、少しいいかしら?」
俺の想像の中で音無君とかなでちゃんが抱き合っていると、不意に今までほとんどしゃべることのなかったかなでちゃんが俺に問うてきた。
「なんだ?」
「あなたが、ナナシノゴンベイ?」
………今ここで、それがくるのか……
「……隠してもしかたない、か。ああ。俺がそのナナシノゴンベイだ」
「そう、ならいいわ」
いいんかいっ
「な、なぁ……そのナナシノゴンベイってのは何だ?」
「気になるなら、後で彼女に聞いてくれ。さて、あまり長居しても仕方ないだろう。君もそろそろ戦線のところに戻ったほうが良いだろうしな」
とりえず、これで今後の活動方針が決まった。
予想外の事態ではあったが、俺の目的からそう離れたものではない。あの二人と共に行動できるのであれば、合法的に俺の知らないてぇてぇが見られるかもしれないのだから。
作戦が決まったらまた教えてくれ、と二人に告げ、今日のところは戻ってもらうことにした。
二人が並んで帰っていくその姿だけで、もう何というか熱くなるものがある。
さて
とりあえず、今か今かと表に出てこようとしている筋肉痛よ。
俺がベッドに戻るまでは待っていてほしぃぃいいいぃぃいいい!?!?
失踪します!ちゃんとね!