「違うんです!俺は、かなでちゃんと音無君のイチャイチャが見たいだけなんです! SSS団には入りませんからぁ!」   作:岳鳥翁

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昨日に続いてなので実質初投稿


DAY GAME 下

余談ではあるが、これでも生きていた頃には野球をやっていたことがある。

 

まぁ、高校入学とともに辞めてしまったので毛が生えた程度かもしれないが、動き自体はそれなりに、といったところだろう。使用される球も軟式のようなので問題はない。

 

体の節々をゆっくり伸ばしている間に、日向が審判役の学生NPCにゲリラ参加の有無を伝えていた。

今日何度目だよ、と呆れるNPCに対して、日向は俺たちも生徒なんだともっともらしいことを述べて交渉。NPCからすれば、不良が楽しい学校行事に乱入してきた、みたいな感じなのだろう。改めて考えると、迷惑この上ないな。

 

しかし、正規の手続きで参加してしまうと消えるファクターとなりかねないため、ゲリラ参加するしかないのだろう。

 

あと、日向のすぐそばでシャドーボクシングをしているユイはやはりアホなのではなかろうか。

違った、アホだった。

 

あまり関わりのない人に対して心の中でもアホアホ言うのは失礼なのかもしれないが、罪悪感が湧かないのはこれ如何に。

 

結局、NPCが折れる形で俺たちの参加が認められた。

 

「おーし、んじゃ打順と守備位置決めていくぞ」

 

このメンバーの中で唯一であろう高校野球経験者日向が、ポンポンとオーダーを決めていく。

そして、決まったのが以下の通り。

 

 

1番 投手 音無君

 

2番 二塁手 日向

 

3番 遊撃手 椎名

 

4番 捕手 野田

 

5番 一塁手 ユイ

 

6番 中堅手 マスク

 

7番、8番、9番はユイのファンであるNPCが入る。まぁ三塁は椎名が対応してくれるはずなのでいいだろう。箒待ってるけど。

問題は右翼左翼の守備とファーストだな。

 

ユイがファーストだと、内野ゴロもポロリ(そういうのじゃない)してセーフになりそうな気がするんだが。

音無君の負担がハンパないと思うのは俺だけですか?日向、おめぇ野球経験者なんだよなぁ?

 

まぁ、ここでそうして文句を言っても仕方ないだろう。事実、原作では俺がセンターの6番に入った以外は同じ構成で決勝までいったのだ。信じるしかないだろう。

 

それに、椎名から提示された条件は「チームとして試合に出ること」だ。勝敗までは気にすることはない。なんなら、わざと早々に負けてしまってもいいとさえ思っている。まぁ、それをやったらやったで違う方面から面倒なのが来そうなのでやらないが。

 

カキンッ、という小気味のいい音と共に、先頭打者である音無君の打球が相手投手の横を抜け、あわやセンター前!というところに野田登場。ハルバードとバットによる打ち合いがスタートし、結局音無君はアウトに。

 

 

『なぁ、あいつら何してるんだ?』

「……俺にもわかんねぇ」

「アホですね☆」

 

隣で項垂れている日向と可愛子ぶっていうユイの二人。

椎名は相変わらず話すことはなく、竹箒を手に立てているだけだった。

 

だが、音無君がアウトでもあとツーアウト取られなければチェンジにはならない。

というわけで、日向、椎名が塁に出たあと、野田がブッパしてホームラン。椎名もそうだけど、なんでそんな打ち方で球打てるわけ?

続くユイは予想通り三振を決め、これで二死。ランナーなしの状態で俺というわけだ。

左打席に立ち、相手の投手を見据える。相手からすれば、怪しいマスクマンが凝視してくるわけだからたまったものではないだろう。

 

 

 

「さて、お手並み拝見といこうじゃないか」

 

打席に立つマスク姿の男を見やった野田は、腕を組んだまま偉そうにそう言った。

そもそも仲間でない奴が入っているのだ。そいつのせいでゆりっぺの作戦が失敗することにでもなれば、彼からすれば許さないことなのだろう。

 

「そうだな……ところで椎名っち。あいつ、どれだけできるんだ?」

 

打席の入り方やバットの構え方から見て、恐らくは野球経験者であろうと当たりをつけた日向は、そのマスクの男を連れてきた本人にその実力を確認する。経験者であっても、勝利に貢献できるほどの強者とは限らないからだ。

未経験者の女子生徒NPCを三人も抱え込んでいる時点で説得力は皆無だが。

 

「知らん」

「まじかよ。じゃあなんで連れてきたんだ……」

「まぁ人数は足りてなかったんだから、結果オーライだろ」

 

連れてきた本人でさえわからないと答える椎名に、日向は顔に手を当てた。しかし!音無の言った通り、マスクの男がいなければ八人で参加することになっていたことも事実。あのマスクの男に文句は言えないだろう。

 

「それに戦力になる、といったのは間違いではない。あの男は、少なくとも私よりは強いからな」

 

その言葉で、ユイ以外の戦線メンバー三人が驚愕と共にその視線を打席に立つマスクの男に向けた。

NPCの男子生徒用である紺色の学ランを身につけたマスクの男。

 

その男が戦線の中でも屈指の戦闘力を持つ椎名より強いという。

 

野田は少し足が震えていた。

 

 

「なぁ、椎名っち。あのマスクの男ってもしかして……」

「詮索はするなというのが条件だ。まぁとにかく、戦力としては十分だろう」

 

椎名の視線の先。

打席のマスクがバットを振れば鋭い打球が右中間(センターとライトの間)を破っていく。

ホームランにこそならなかったが、外野のフェンスを直撃した打球は跳ね返り、そしてライトのグラブの中へと収まった。

これ幸いと、急いで内野の中継に投げようとしたライトの生徒であったが、ライトを含め、マスクの男を見ていた誰もがその目を見開いた。

 

ランニングホームラン

 

スタンドへインするホームランと違って、打球が転がっている間にベースを一周するホームランのことである。

悠々と一周するホームランと違い、一周するだけの早さがいるため容易ではない。

容易ではないのだが、このマスクの男はやってみせた。

 

「そら、十分だろう?」

 

唖然とする日向をよそに、椎名はそう言ってフッと笑った。

 

 

 

 

フハハハハ!アサシンの敏捷を持ってすれば、この程度のことなど朝飯前!気分はまるでスピードスター!

 

 

いや、まぁうん。正直ちょっとやりすぎたかなぁとはおもう。けどしゃーないやん。

戦闘方面ならともかく、スポーツで力発揮したことなんかなかったんだ。ちょっと試しに、程度で使ったらこれだよ。

 

 

自重しよう(戒め)

 

 

相手のキャッチャーが化け物を見ているんじゃないかと思えるような目で俺を見ていたが気にせずホームベースを踏む。

 

『一点とったぞ』

「軽いなっ!?」

 

ベンチに戻ると、誰も何も言わなかったため、とりあえず事実をあげてみたんだが返ってきたのは日向のツッコミのみ。

 

『韋駄天と呼んでくれ』

「にしても速すぎるぞお前……まぁいい、このままコールドでカタをつけるぜ!!」

 

しかし、気をつけるつもりだったが思いのほかはしゃいでいたのだろうか。

 

しかし、考えてみればメリットもある。

取引そのものは椎名との個別のものであったが、今回の件を知った仲村が敵意のない、それでいて椎名を殺せる相手とわざわざ敵対するとは考えられない。あのリーダーは、そこまで愚かではないだろう。うまくいけば、俺を無視して今後の作戦を実行してくれるはずだ。

干渉があったとしても、それは勧誘程度に抑えられるだろうし、そうなったとしても今のこれは顔も声も見せていない状態だ。NPCに紛れてしまえば、見つかることもないだろうし問題はない。

 

「なぁ、ちょっといいか」

 

そこまで考えていると、ふと、俺の隣から声がかかった。

この声、まさかまさか……

 

『はいなんでしょうか!!』

「なんか、テンション高いな……えっと、何であんたは今回チームに入ってくれたんだ? あんたは、普通に学園生活を送っていたんだろ?」

 

……ふむ、つまり普通の生徒としてこの学園で生活する俺は、戦線と一緒にいる音無君にとっては珍しい存在なのだろう。

まぁ原作において、生きていた記憶のある人間でNPCと共に学園生活を送っているのはかなでちゃんと直井しかいない。この時点では、そのことを知らない音無君にとっては、俺は理解ができないのだろう。

 

何故、仲村たちのように抗わないのか、と。

 

 

もっとも、俺の予想であって正しいとは言えないが。

 

 

『目的がある』

「目的?」

『ああ。そのためにあの女と取引をしたんだ。チームに入ったのも、それが条件だったからな』

 

できれば色々と話したい。しかし、そうしてしまうとこの先で致命的なズレを生じさせる要因になりかねない。なので、泣く泣く会話を切り上げる。

 

それに、俺の目的が「君とかなでちゃんのイチャイチャを見たい」とか本人前にして言えるわけがない。

 

結局、この回の攻撃は俺の後のNPCの女子生徒が一回もバットを振らずアウト。交代となった。

 

 

 

 

「お、やっと天使のお出ましだぜ」

 

そういった日向の視線の先には、野球部のレギュラーであろう奴らを引き連れた生徒会チームがいた。

 

副会長の直井が何やら色々と言って挑発にも聞こえることを述べているが、俺は今それどころではないのだ。

 

音無君とぉ!かなでちゃんがぁ!戦う内外で一緒にいるよぉ!!

 

『ハァァァ!!』

「おい、いきなりどうした?」

『何でもない』

 

危なかったぜ……マスクがなければ即死(尊死)だった……

 

にやけそうになる頬を引き締める。落ち着け、俺。ここは我慢だ。ここを乗ら切れば、戦線を気にすることなくいくらでも二人のイチャつきを傍観できる…!!

 

 

生徒会チームが去ってからはまた大会で快進撃を続ける俺たち。他の戦線のチームもそれは同じなようで、張り出されているトーナメント表を見る限り順調なようだった。

 

しかし、生徒会チームが蹂躙を開始。戦線チームはコールド負けという結果を突きつけられ、とうとう残ったのは日向が率いる俺たちのチームのみとなった。

 

 

……で、先頭バッターは俺ですかい

 

 

「頼むぞーマスク!ランニング決めてやれぇ!」

「凡退などすれば、俺が殺してやるからな!!」

 

男二人の声援に辟易としながらも、バットを構えた。

とりあえず、ここは勝つ必要もなし。やるべきはギリギリの接戦で最終回を迎えること。

まぁ、松下が入るはずが俺がいるため、全く同じとはならないかもだが、できるだけの努力で原作に近づけよう。

 

野球部のエースによる一投がくる。まずはストレートがアウトコースギリギリに決まった。

 

「打たねーと俺の得物の錆にしてやる!!」

 

うるさいなーのだー

 

打たないこともないが、とりあえず様子見で粘るくらいはしてやるとしよう。

相手エースが振りかぶり、第ニ球を投げる。球種は同じくストレート。手が出ないと思われているのだろうか。

まぉ、追い込まれるまでは振らなくていいだろう。

 

「頼んだぞ!マスク!」

 

 

わかりました音無君!!

 

 

 

白球は、スタンドインした。

 

尚、それ以降敬遠で守備以外の活躍はなかった。

 

 

 

 

 

さて、後日談だ。

 

 

最終回、上手いこと原作と同じように進んだ展開は、これまた原作と同じように終結した。

 

ユイによる日向への隙ありドロップキック→日向によるユイへのコブラツイスト

 

まぁそれによって、日向の消滅を防げたと考えるならあの負けは意味のあるものだったのだろう。俺は知らんけど。

俺としては、流れが大方原作のようにいったことに安堵するばかりだ。

 

 

そして最も大きな収穫は、椎名との取引が成立したことである。これによって、俺に敵意がないことの証明を行えたわけだ。今後、戦線の活動を傍観する中で椎名による攻撃を警戒する必要がなくなったと言ってもいい。

 

勝ったな

 

憂が晴れると、こんなにも気分がいいものなのか。刀の手入れの方法などわからないが、それでも布で拭くくらいはできるだろう。

 

立てかけてあった物干し竿を手に取り、その刀身を優しく柔らかい布で拭っていく。

 

さて、続いてはテストのイベントになるだろう。しかし、そこで俺がやるのは戦線の邪魔をしないこと。

この作戦によってかなでちゃんが生徒会長を辞任することで話が進展するのだ。可哀想にも思えるが、俺は心を鬼にして耐えようじゃないか。

 

 




感想で俺の失踪を止められるものか!(感想ありがとうございます)

ガバガバですがよろしく。


というわけで、失踪してきます。探さないでください。
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