「違うんです!俺は、かなでちゃんと音無君のイチャイチャが見たいだけなんです! SSS団には入りませんからぁ!」   作:二修羅和尚

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ランキングに乗ったので初投稿です。




ラフムにSAN値を持っていかれました。


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試験前日となった今日この頃。

 

俺は同室となっているNPCが必死になって机に向かっている様子を尻目に、ベッドの上でゴロゴロと横になっていた。

 

なお、俺のベッドは二段目。上からその様子が良く見えるのだが、目を向ければそれに気づいたNPCが恨みがましくこちらを向いたので大人しく顔を出すのをやめた。

 

基本的に彼が俺に対して話しかけてくることは無い。それはそれでありがたいのだが、物干し竿を持ち込んだ時にはかなりびっくりされたものだ。

 

だがしかし、誰にもこのことを言わないようにちゃんとお話しすれば理解してもらえたため、特にこれといった問題はない。

……あれ、もしかしてコミュニケーション取ってこないのはそれが原因だったり?

 

まぁいいか。

 

そんなことは音無君とかなでちゃんの前には塵芥も同然である。

 

俺に被害がないのなら気にすることもない。

 

「しっかし、テストねぇ……」

 

SSS団による、かなでちゃんを学年最下位に落とすという普通の学生にとっては鬼畜じみた作戦がいよいよ明日から決行される。

見ている側とすれば大変心苦しいものであるが、俺にはどうすることもできない為仕方ないと諦めるしかない。

 

それよりも、重要な問題は作戦そのものが俺のいるクラスで実行されるということだ。

 

 

俺とかなでちゃんはクラスメイトとも呼べる間柄だ。アサシンとして対峙したことはあっても、山野直樹としてはクラスが同じなだけの存在。当然ながら、生前の記憶がある者達にとっては、ただのNPCのようなものだ。そうなるようにふるまってきたから当たり前なのだが。

 

はっきりと言おう。

あの混沌としか言いようがないあの話を、鉄仮面で乗り切る自信はない。

 

席位置によっては、少しでも噴出した時点で戦線の誰かに勘付かれる可能性もある。やばい、以外の言葉が見つからない。

 

もちろん、仮病を使ってテストそのものを休もうとも考えたが、そもそもこの世界では誰も病まない為意味がないし、サボったらさぼったでNPCの行動ではない為どちらにせよバレる。

 

となると、テストには参加せざるを得ないのだ。

 

 

「ふむ……問題しかないんじゃが?」

 

一人だけテスト中……正確に言えばテスト終わりの回収時に、笑ってはいけないをやらなければならないという拷問。

彼らが頭を必死にこねくり回して考えた渾身のギャグはまだいい。耐えられる。だが問題は仲村によるフォローだ。

 

飛んだり、きりもみしたり、しまいには窓の外へ飛び立ったり。初日の日向高松の二人に関しては知っているから耐えられるかもだが、原作では明記されていなかった初日以降は対策のしようがない。

 

俺の頭の中だけでBGMが流れたら笑うかもしれない。

 

 

「やっかいな……どうしろというんだ」

「お、おい……べ、勉強中なんだ。せ、せめて静かにしてくれよ……」

「あ?」

「ヒッ……!」

 

声がしたのでベッドの下に目を向けてみれば、その主は小さな悲鳴を口から漏らして身を竦めた。

独り言がうるさかったのだろう。明日がテストであることを考えれば、ストレスや緊張から文句の一つでも言いたくなるのかもしれない。

 

……しかし、そんなにおっかなびっくりしなくてもいいじゃないか。

 

「なあ。何でそんなに怯えてるんだよ」

「お、お前が初日に、そ、そこの刀で脅してきたからだろ!?」

「脅したって……人聞き悪いな。ただ、邪魔しないように言っただけだろ?」

「それで首筋に刀向けられる意味がわかんねぇよ!?もう嫌だよこいつとの部屋!!」

 

凄いだろ?これでNPCなんだぜ?現世におけるゲームでも、ここまでのを実現しようとすればどれだけ技術が進まなければならないのか。

 

「まぁ、お前が変に騒がないならそれでいいさ。悪かったな、勉強の邪魔して」

「もうなんなんだよこいつ……」

 

NPCとはいえ、人の姿をして人と同じように生活する相手だ。邪魔をしてしまったことに関しては多少の罪悪感があった。

俺はそれ以降、頭の中で明日の予定について思考を巡らせながら寝転がった。

 

 

その日、俺の部屋が消灯されたのは日付が変わってからだった。

 

 

 

 

 

 

 

翌朝

 

見た目だけは周りのNPC達と同じように教科書を開き、勉強している風を装っていると、教室の後ろの扉がガラガラと開いた。

入ってきたのは、俺も知らないSSS団の制服であるブレザーを身に纏った大柄な男子生徒。

 

その男子生徒が椅子と机を重ねたセットを教室の中へと運び入れると、その後ろからSSS団のリーダーこと仲村が入ってきた。

その後には、男子生徒と同じように机と椅子を運び入れてくる音無君、日向、高松、大山、竹山が続く。

 

違う制服姿の集団が椅子と机を運んでくるという、テスト前の光景にしては異様な気がしないでもないが、教室にいるNPC達は特に気にした様子もないため、俺もそこは気にしなかった。

 

しかし、原作の時から気になっていたが、足りない席はああやって持ってきていたのか……

 

頑張ってください、と言い残して大柄な男子生徒が教室を出ていってから十数分後。このクラスの担任である教師が箱と共に教壇に立った。

どうやら、席決めを行うようだ。

 

 

さぁ、最初の難関だ。

 

ここで俺がやってはいけないことは、作戦実行で重用となるかなでちゃんの前の席を引かないことだ。ここを引いた瞬間、原作もクソもあったものではない。

なので、今回はかなでちゃん含め、戦線のメンバーが引き終わるまではくじを引かないことにした。原作通りに進んでくれるのなら、ここで下手に俺が先にひいて彼らの番号を引いてしまうことは避けておきたい。

 

 

生徒が半分くらいくじを引いたところでかなでちゃんが動くと、それに続いて戦線も動いた。

 

廊下側前から二番目の37番。原作通りだ。

 

思わず誰にも気づかれないように拳を握った。あとは、戦線が引いてくれれば万々歳である。

 

あの前の席を狙いなさい、という仲村が指示を出しているその後ろに並んだ。

 

 

 

 

 

「何で誰も引けてないのよぉぉぉ!!!」

 

 

仲村の怒声が教室中に響き渡ったが、周りのメンバーたちがくじだから仕方ないとなだめていた。

 

 

まずいまずいまずいまずいまずい!!!!

 

 

そして俺の心の中も荒れていた。

 

 

手にしたくじに書かれていた番号は36。かなでちゃんの前の席だ。

 

「……くぅっ」

 

叫びたい衝動に駆られたが、それを意地でも食い止めた自分を後でほめてやりたいところだが、褒める前にまずはぶん殴らなければならないだろう。

 

あと、原作どおり36を引かなかった竹山も暗殺してやる。

 

 

しかし、これは本格的にまずいことになった。

本来なら、この番号は竹山が引き当て、作戦の要となる答案の入れ替えを行うはずなのだ。しかし、俺がこの番号を持っている以上、それは叶わない。戦犯である。

 

 

どうする!? どうすればこの窮地を何とかできる!?

 

 

焦るなよ……まだ全員引き終わっていないんだ。考える時間はある…!

 

 

すると、戦線メンバーの方にも動きがあった。

なんと教室にいるNPC達に声をかけ、席番号の確認を行っていたのだ。目当ての番号があれば、交換する気なのだろうか。

何にせよ、ナイス判断だ。

 

俺は彼らの行動に乗って、こっそりと竹山の側へと移動する。

 

「すいません。あなたの席の番号を聞いても良いでしょうか?」

 

先程の男子生徒とのやり取りを終えた竹山が、すぐ近くにいた俺に対して声をかけてきた。

焦らず、一般生徒であるNPCを装いながら、俺は「なんで?」とだけ返す。

 

 

「実は、席を変わっていただけないかと思っていまして」

 

ここで即答していいよということは簡単だ。

しかし、二つ返事でオッケイを出してしまうと、NPCらしい行動ではないと疑われる要因になりかねない。

了承するつもり満々であるが、慎重にせねばならん。

 

「えっと、席を変わる必要はあるのか?」

「目当ての席にならないと、僕ごと爆発させられかねないですからね……」

 

チラリと彼が見やったのは、教室の窓側一番前でふんぞり返っている戦線リーダー仲村。人の椅子の下に推進エンジンなんぞを積んでくるような奴だ。本当にやりかねない。

高松の悪魔のような人、という言葉もあながち間違ってはいないだろう。

 

やはり、戦線には入らないほうが良いのではないか?

 

 

「そうか……それは大変だね……」

 

なんとか絞り出した返答に、彼は「ええ」とだけ答えた。

 

「そ、そういうことなら変わってもいいよ。お目当の席かはわからないけど、役に立てれば何よりだ」

「ええ、どうもありが……!? ありがとうございますっ」

 

番号を見た瞬間、かなでちゃんの方を見たかと思えば、彼は改めてお礼を言った後急ぎ足で仲村の下へと戻っていった。

「よくやったわ!竹山君!」という仲村の元気な声が教室に響いていた。

 

なお、クライストという名前では呼ばれていない模様。

 

 

「さて、俺の席はどこになったのか……」

 

渡された紙を見てみれば、そこに書かれていたのは32という数字。

張り出されていた座席表を確認して荷物もまとめて移動する。

 

日向や高松のいる窓側から離れたこの席であれば、彼らが I can flyしたところで問題はないはずだ。

 

「おいそこ!早く席に着かんか!」

 

 

ないはずだ。

 

 

……ないはずだ。

 

 

……ない、ないは……

 

 

 

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ナカムラ  8   15   22  29  タケヤマ

2   9   16   23   30 かなでちゃん

3   10   17   24   31   38

4  タカマツ  18 音無君 ●← 39

5   12   19   26  オオヤマ  40

6   13  ヒナタ   27  34   41

7   14   21   28  35   42

 

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あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?!?!?!?!?!

 

 

 

 

今度は問題しかねぇよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!

 

 

 

音無君の右隣りとか、それマァ!?

 

ふっざけんなよそんなの俺耐えられないにきまってるやないかそれに俺の視界にはかなでちゃんもいるんやぞこの二人を試験中意識できる範囲に捉え続けなあかんとかそれ何て無理ゲーしかもこのせきにおったままやったら音無君がかなでちゃんを「問題ない大丈夫だ万事OKだ」ってシーンをもろに見なきゃいけないだろうが見たいのでここにいますごめんなさい!!

 

「まさか……俺は今日死ぬのか…? 萌え殺される…??」

 

隣りの音無君に気づかれぬようにそっと目線を向けていれば、彼は前から配られていたテスト用紙を後ろへと配っていた。

 

 

 

 

 

あ、この距離死ぬわ俺

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「耐えた…!! 俺は耐えたぞぉ!! 我が生涯に一片の悔いな……かったら成仏しちゃうからやめておこう」

 

テスト期間を乗り切った俺は、寮の自室に戻って早々にベッドへ飛び乗ると、そのまま拳を天高く突き上げた。

 

天井にぶつけて少し痛い。

 

「耐えた!俺!偉い!よく耐えた俺!! 特に初日の音無君とかなでちゃん!! 一瞬俺の体消えかけてなかった!? あれでああだと、最後とか爆発四散しそうなんじゃが!? じゃが!?」

 

 

ヒィィィィハァァァァァァァ!!! と一人で騒いでいると、同居人であるNPCも部屋へと戻ってきた。

狂喜乱舞する俺を見てめちゃくちゃ引いていた。何でや。当たり前か。

 

 

律儀に最終日のテストの答え合わせを行っている同居人を見て、多少の落ち着きというものを思い出した俺は、いそいそと自分のベッドの上で胡坐をかいた。

 

しかし、原作にない部分まで生で見れたことは一ファンとしてとても有意義な時間でもあった。顔がにやけないように注意していなければ、今頃俺の顔はチンパンジーのようにくしゃくしゃになったまま元に戻らなかっただろう。

 

思い出すだけで頬が緩むのを慌てて正し、思考を巡らせる。

 

 

さて、ここからだ。

 

 

「ここから物語は大きく動き出す」

 

戦線が実行した、かなでちゃんを最下位に落とすという作戦。答案回収中の入れ替えは毎回見ていたため、作戦そのものはうまくいっているだろう。

仲村自身、かなでちゃんが本当に神の使いではなくて人間なのかという疑問を解消する目的もあったのかもしれないが。

 

 

そして、かなでちゃんが生徒会長をやめることによって、副会長である直井が生徒会長代理となって動き出す。

まさしく、このテストは物語の中盤におけるターニングポイントと言えるだろう。

 

 

「もうすぐだ……もうすぐ、彼らのイチャイチャが……グヘヘヘヘヘヘヘ……やべっ、想像したら涎が……」

 

 

言わずもがなだが、同居人には蔑むような目で見られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、生徒会長であるかなでちゃんが生徒会長をやめ、代わりに副会長である直井が代理となることが全校集会で発表された。




リアル事情により失踪します。探さないでください。





本当ですよ?

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