「違うんです!俺は、かなでちゃんと音無君のイチャイチャが見たいだけなんです! SSS団には入りませんからぁ!」   作:岳鳥翁

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初の三部構成、やっと終わった

今回は失踪期間が短かったが……次もこうだと思わないでくれよ!?

今回が特別なだけだ!


Family Affair 下

 さて諸君。ここで選ばなければならない選択肢を用意した。

 

 

 選べ(ジョージ風)

 

 

 1.原作通り、音無君とかなでちゃんの二人のデートを見届ける

 2.直井たちが食堂に立ち入るのを妨害し、音無君となかでちゃんの時間を伸ばしてあげる

 

 

 何その究極の二択

 

 

 前者を選べば、原作通り。しかし、後者を選べば、俺が二人を見れない変わりに彼ら彼女らのイチャイチャできる時間が増えるという。

 

 もう一度言う。

 

 何その二択。

 

 しかし、迷っていたところで時間は待ってくれないのだ。こうしているうちにも、野田を引きづり、日向と共に教室から逃亡した音無君がかなでちゃんを見つけて麻婆豆腐を食べに行くまでのタイムリミットが刻々と近づいているのだ。

 

「ノォォォォォォォォォォ!! いったい、どうすればいいんだぁあぁぁぁ!!」

 

 学校の屋上、誰もいないことを確認して喚き叫ぶ。

 音無君とかなでちゃんのため、ここは二人のためにも俺が骨を折って素晴らしい時間を提供してあげたい……!!

 しかし! しかしだ! そんな俺の心の中に、「フフ……へただなあ、山野くん。へたっぴさ……!欲望の解放のさせ方がへた…」などと言ってくる変なおっさんがいるのだ……!!

 

 二人を見たい。だが、二人の時間をもっと増やしてあげたい。

 

 

 こんな時に、妄想幻像(ザバーニーヤ)が使えればどれほどよかっただろうか。分体に妨害を任せて、俺自らは二人の観察……いや、誰が妨害に回るかでもめそうだな。

 

 

 時間がない中でうんうんと唸る俺。しかし、そんな時に俺の耳がこの屋上へ向かって階段を上ってくる音を捉えた。

 誰だこんな時に、と見つからないように貯水タンクの影に隠れて気配遮断を使用する。

 

 

 すると現れたのは、今回の事件の首謀者である直井その人だった。その傍らにはNPCらしき一般生徒を連れ立っている。

 一瞬、何をしに来たのかと思ったが、その疑問は直井が一般生徒のNPCに蹴りを入れたことですぐに解消された。

 

「……あー、そういや、そんなことしてるんだっけな」

 

 影で暴力を働く生徒会長代理。

 

 真面目に学園生活を送れば消滅してしまうこの世界において、表では真面目な生徒を演じている直井はああやってその存在を保ち続けてきたのだ。

 

 そのやり方は、まさにSSS団とは真逆と言ってもいいだろう。

 

 まぁしかし、そのやり口がここまで戦線の誰一人にもバレずにNPCを演じ続けてきたことに関しては称賛を送ろうではないか。

 もっとも、それもたった今、バレてしまうんだがね。

 

 視線を眼下、屋上へ繋がる唯一の扉へとむけてみれば、ほんの少しだけ開かれていた。

 見ていたであろう彼女、仲村が去った事を確認した俺はそれに続き、気配遮断を維持したまま同じく扉を通って屋上から去ったのだった。

 

 

 

 いや、だから選択肢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 仮に、俺が一般生徒などを誘導して、学園内のあちこちで校則違反をさせたとしても、直井はかなでちゃんを優先して動くことだろう。

 

 何せ、かなでちゃんがいたからこそ彼はこの数十年間NPCに擬態してきたのだ。そのかなでちゃんが生徒会長を解任され、更には校則違反。直井にとってはまさに逃すことのできない絶好の機会である。

 

 そう考えると、原作でも彼がかなでちゃんと音無君の行動に対していち早く対応できたのは監視でも置いていたことが考えられる。まぁ、彼にとっての一番の障害がかなでちゃんなのだ。

 

 直井だって必死だ。それくらいはするだろう。

 

 しかし、常に監視とか、考えてみればものすごいストーカー行為である。何て奴だ(ブーメラン)

 

 で、だ。

 もし仮にその監視役とやらが存在するのであれば、その監視による直井への報告を遅らせる、もしくは阻止するだけでも二人のデートの時間は長引くはずだ。

 

 うまくいけば、俺はすぐ目の前であーんとか見れちゃうかもしれない。

 

 何それ尊くて死にそうなんじゃが?

 

 

 やらねば

 

 

 

 教室内で自主的に勉強を進めているかなでちゃんを観察しながら、決意を固めていると、その様子を見かけたのか音無君がかなでちゃんの方へと歩みを進め、ついには話しかけていた。

 

 え、二人が話しているだけで絵になるんじゃが? カメラありません?

 

 ……え? ないの? なんでだよクソ野郎!! せっかくの光景が額縁に飾れねぇじゃないか!!

 

 写真部先に行ってカメラパクってくればよかった! あるか知らんけど! あるでしょ!?

 

 

「……っと、いかんいかん」

 

 ここで取り乱しては、計画がおじゃんになる可能性もある。

 そう思いなおして、視線を音無君とかなでちゃんの周囲へと巡らせる。

 

 すると、二人の様子を遠巻きながらも注意深く見ている生徒を発見。他にもいるかを探してみたが、それらしき生徒は今見つけた彼だけのようだった。

 

 

 戦線の遊佐が通信手として活動していることは知っている。そして、そういった機械がこの世界に存在していることも知っている。あれ、作ったのか元々あったのかはわからないけどね。

 

 ただ、あの生徒会の一員と思われる生徒が通信機などを使っていないのを見るに、報告そのものは生徒会室へ直接行って行われるのだろう。

 

「つまるところ、それを防ぎさえすれば問題はない、と考えたわけだが……いやはや、ここまで俺の予想が当たると怖くなるな」

 

「ンー!! ン!!」

 

 

 生徒会室へと直行しそうになっていた彼を呼び止めた俺は、無駄に高い能力を惜しみなく発揮して彼を縛り上げると、校舎裏の人気のない場所へと転がしておいたのだった。

 

「すまない。いきなり簀巻きにして本当にすまないと思っている」

 

 だが、これもすべては俺の……もとい、音無君とかなでちゃんの為!! あの二人のためであれば、どんなことも正当化できる自信がある!!

 

「というわけで、誰かに見つけてもらえるよう祈っておくよ。もちろん、事が済んでまだそのままなら、俺が助けに来るので安心してくれ。では!」

「ンー!! ンンー!!!」

 

 安心できるか!? みたいなことを叫ばれた気がしないでもないが、それを無視して先を行く。

 

 途中生徒会室を窓の外から見てみたが、直井は何かの書類に目を通しているだけで問題はなさそうだ。

 

 

 

 

 

 

 ああああああああ!!!! 尊い!! 尊いよぉおおおおお!!!

 

 

 

 視線の先で起きている光景に、俺は思わず目を閉じそうになるが、今この時だけは、例え焼かれようとも目を閉じるような愚かなことはしないだろう。

 

 音無君と!! かなでちゃんが!! 麻婆豆腐食べてる!!

 

 文字にすればそれだけ。しかし、目の前にすれば話は別。

 

 

 今俺は、間違いなく、人生の絶頂にいる!!!

 

 

 え、これより上があるとかマジですか? マジです。なら死んでしまいます。

 

 

 二人から少しばかり離れた席で顔面を両手で押さえながら転げまわりたくなる衝動を必死で抑え込む。

 

 

 ほら見てよ!! たった今かなでちゃんが麻婆豆腐の前にして「ナイススメルだわ……」と普段はあまり変化のない表情がご機嫌だとわかるくらいに緩んでいるかなでちゃんに対して、苦笑いを浮かべている音無君というこの構図!

 

 正直な話、一ファンとしてあの麻婆豆腐に挑戦してみたことはあったが、そもそもの話辛いのが大がつくほど苦手な俺には無理な話だったが、それでも食わねばと食べ切ったことがある。

 あの時は、この世界で初めての死を覚悟したものだ。

 

 「うまいわ」と黙々と食べ勧めるかなでちゃん。そんなかなでちゃんは音無君の指摘によってはじめて自分が麻婆豆腐が好きなことを自覚し、レンゲですくった豆腐をしげしげと見ていた。

 

 そんな二人を少し遠めで観察する。

 

 おお、神よ。俺はこの世界に来れて良かったと思っています……!! 感謝を!

 

 危うく成仏されないように気を引き締めて尊みを感じながら、まるで小動物の様に麻婆豆腐を平らげていくかなでちゃんを観察する。

 

 

 ところで、音無君はあの麻婆豆腐をちゃんと完食できるのだろうか。

 

 しかし、俺の心配は余所に音無君も少しずつではあったが麻婆豆腐に手を出し始めた。確かに辛いが、後味などは良いとのこと。俺には分からなかったが。

 

 一口食べては唸っている音無君ではあったが、そんな彼の様子を見るかなでちゃんの表情は綻んでいるようにも見えた。自分の好物を食べてもらえることが嬉しいのだろう。

 ある程度食べ勧めた音無君に自ら「どう?」と聞くかなでちゃんにも悶絶ものであるが、その問いに「ああ、確かに辛いが、結構いけるもんだな」という回答に非常にご満悦な様子のかなでちゃんには俺という異端を滅するだけの効果がありそうだった。

 

 失礼、若干逝きかけた。消滅的な意味で。

 

 

 こんな光景が見れたのも、俺自らが動いて原作に手を加えたことが原因なのだろう。

 甚だしい原作乖離は流石に勘弁ではあるが、この程度でしかも特しかないものであれば積極的に関わることも吝かではない。むしろどんとこい。

 

 

 

 そして、そんな二人の食堂デート~麻婆豆腐もあるよ~が終盤に差し当たったときだった。

 

 

 

「こんな時間に何をしている」

 

 

 ナニですが何か?

 

 

 直井とその他大勢の生徒会メンバーの登場によって、至福の時間が唐突に終わりを告げられた。

 まぁ、原作だともっと早く来てたことを考えれば、よくもったほうだろう。

 

 

 

 

 

 本当ならば、ここで直井の強行を止めたいところではある。しかし、あの牢獄でのイベントがあったからこそ、音無君がかなでちゃんを取り巻く現状に対して思う所ができたのだ。

 

 故に、ここから俺は何もしない。何もできない。

 

 

 だからこそ祈ろう。

 

 あの原作の様に、無事に牢獄から出てきてくれと。そして直井を止めてやってくれと。

 

 全部知っている。だが、あえて何もしない俺がそんなことを言う資格はないのかもしれない。だって、俺は音無君とかなでちゃんが大事だと言いながらも、その音無君が大事に思っている戦線メンバーの被害を無視しているのだから。

 

 

 だが敢えて言おう。

 

 俺はAngel Beats! という物語が大好きだ。

 そして何より、音無君(主人公)かなでちゃん(ヒロイン)が大好きだ。

 

 

 二人が連行されていくその姿を見ながら、俺は一人食堂を去ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、ここからは後日譚とでもいおうか。

 

 

 無事に牢獄から脱出した音無君とかなでちゃんは直井をとめて事件を終わらせた。その際に、直井が異常なほど音無君を尊敬するようになったことは言うまでもないことだろう。まぁつまりは、原作通りなのだ。

 

 さてさて、そうなると続いてはモンスターストリームからの、かなでちゃんの分身事件か?

 音無君がかなでちゃんを誘って、戦線メンバーとともに魚釣りへ。その後、釣り上げた主を全校生徒にふるまう際に名前呼びするようになるシーン。非常にみものである。

 

 

 あと、これは後で知った事であるが、直井の奴俺の事を戦線に言っていないようだった。

 何のつもりかは知らないが、それならそれでこちらも動くことにした。具体的には、寮生活することにした。

 

 ただし、ルームメイト。貴様は許さん。

 

 

 ということで、念願の一人部屋獲得である。

 人目や他人を気にしなくても済むというのはこれほどまでに素晴らしいものだったのか、と感動を覚えそうになる。

 

 今回全く出番のなかった物干し竿を手入れを終えた俺は、そのままごろんとベッドに横になった。

 

 

 とりあえず、川釣りは様子を見に行くことにするか。

 

 




という訳で!


失踪してくる!!
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