ジャミトフに転生してしまったので、予定を変えてみる【完】   作:ノイラーテム

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プロメテウスの日

●未来への布石

 終戦後のジオンはかなりドタバタしていた。

とはいえ実質的に敗北していたことは疑いようがない。

キシリアは戦死、ギレンは内通者によるクーデターで拘束されており、指導者が居なかったことも大きな理由だった。

 

だがソレが急速に収まったのは、レビル閥が和平の交渉相手に選んでいたのがキシリアであったという事実だ。

最初は指導者に収まったガルマへ目が行っていたが、その事実が広まるや、むしろ同情の視線が彼に集まった。

軍神として祀られることになったドズルが、ガルマを可愛がっていたことも大きいだろう。

 

「ようこそジャミトフ閣下。少将に昇進されたそうですね、歓迎いたしますよ」

「閣下はおやめください、次期大公殿下(プリンツ・ガルマ)。私は頭脳集団(ブレーン)の一人にすぎません」

 ジャミトフ一行がサイド3を訪れたのは、単純に実験の視察だった。

完全循環型コロニーはテスト基がサイド3で行われ、そのデータをすべて全世界に供給する予定だったのである。

 

既存型よりも一回り大きなコロニーを見上げながら、二人は実験内容に目を向けた。

 

「キローンはお役に立ちましたか?」

「まさか教育型コンピューターをこんな所に使うとは思いもしませんでしたよ。いえ、軍需技術がやがて民需に成るのは知っておりますが」

 サイド3駐留艦隊の一隻に、訓練艦であるキローンが選ばれていた。

この艦には特筆すべき戦闘能力は存在しないのだが、船自体が超巨大な教育型コンピューターなのだ。

 

記録のバックアップや再整理など、大きさが重要な部分を内部のコンピューターで行う。

これによってミノフスキー粒子が散布されていない場合のみだが、最小限の機材で既存のマシンが教育型コンピューター搭載扱いになるのだ。

データ収集しつつ翌日には作業マシンがバージョンUPし、採集データはすべてのコロニーに配布される。

 

「特殊な能力を持つマシンなど必要ないのです、既存の機械で十分に世界は発展しますよ。……戦争さえなければ既に火星開拓は始まっていたでしょう」

「とはいえその決断も、あの戦争がなければこう上手くはいかなかったでしょうけどね」

 完全循環型コロニー自体、以前から提唱されているものだ。

それが実現しなかったのは、単純に効率・利益の問題だ。

 

そんな物を研究するくらいならば、空気と水を買えば何倍も安上がりだという現実が問題になっていた。

近いが遠い残念な理想、それが実現したのはジオンが敗北したからだ。

この技術を研究し、仮定も含めてすべてを賠償として世界に提供するのである。

 

「時にネオ・マハル完成と共にソーラレイを引き渡す予定ですが……。アレを何に?」

 旧マハルであるソーラレイは、そのままネオ・マハルのインフラ代になる。

グラナダへのインフラ代を企業に売却して、二号基・三号基を建造する気だった。

この話をした瞬間に、ジャミトフがやって来ると聞いたのでガルマとしては気が気でない。

 

「マイクロ・ウェーブ送信機にでも改造して、ソーラーシステムともども火星に送ります。地球圏にあっても災いしか起こしませんからな。それと例の件はアナハイム以外にしていただきたい」

「了解しました。ハービックなりウェリントンにでも売りますよ。……しかしマイクロ・ウェーブですか」

 この頃にはガルマもジャミトフとメラニーが同窓であることを知っていたので、単純にライバル意識かと流した。

後にエウーゴが反乱を起こした時には、先に言っておいて欲しいと苦笑いしたものだが。

 

「研究中の外宇宙探査船ユリシーズには、専用の受信セイルを持たせます。十年もすれば火星までは直ぐそこに成るでしょう」

「火星は近く成りにけり……ですか。そんな時代が来る頃にはもう少しマシな世界になっていれば良いのですが」

 もちろんそんな筈はない。

お互いに肩をすくめながら公式行事を済ませ、それぞれ次の目的地に向かった。

 

 

「カムラ君。Hの評判は良いようだな」

「戦争に使われるよりはよほど効果的でしょう。……先日はご迷惑をおかけしました」

 キローンで研究主任をしているアルフ・カムラは、かつての縁でジャミトフを頼った。

彼も研究に携わったとあるシステムが、レビル閥に持っていかれたからだ。

 

それだけなら権力に逆らうことなどしなかったかもしれないが、少年少女で実験していると聞いていてもたってもいられなかったのである。

 

「気にするな。あの件では私も出遅れた。せめて犠牲者が無駄にならぬよう、公判では力を入れさせてもらおう」

「そうですね。私も Hermesの開発に全力を向けます」

 転生者とはいえ全ての記憶が残ってはいない。

また派生作品すべてを知らないことから、最初は何のことか判らなかった。

だが人体実験をしていると聞いて、レビル閥にトドメを刺すために尽力したのである。

 

(それに、ニュータイプ論争になるからな。専用チームのゴッドハンドも立ち上げたし、精々利用させてもらおう)

 レビル閥の政治家を叩く折に、初代大統領マーセナスの『私評』も使うことになっている。

初代大統領はニュータイプに好意的で、本当に居るなら政治的参加を呼び掛けても良いと思っていた……という論述を各地に用意したのだ。

 

公判までにそれらの一部が『発掘』されることになっており、本当にニュータイプがミュータントなら、大統領がこんな意見を友人と交わすはずがないという論を立てる予定だった。

実際、フラガナン研究所が本格活動をしていなかったこともあり、ニュータイプの戦術利用は沈静化することになるだろう。

 

「頼んだぞ。それはそれとして……例の物は?」

「こちらに。一個艦隊は優に賄える人物リストです」

 カムラが大統合型管理頭脳ともいえるHermesから取り出したのは、存在しない人物のデータだった。

演算させているので活動記録としては存在し、後に人物票を確認する際に、顔写真などを紛れ込ませれば整合性が採れることになってる。

 

コロニー再編計画は経済的な側面が大きく、完全循環型の建造に関われば優先的に市民権をもらえることになっていた。

デブリ掃除と並んで連邦管理の事業として大きな意味があるが、難民に人気が高いのはこちらである。

 

「しかし、この規模で必要なのですか? 情報部にしては規模が大きいと思うのですが」

「……例の件でこちらに付く可能性のある部隊があるとは思うが、場合によっては公表できん人物が居るやもしれんからな。他にも逃げたジオンの連中にも使える」

 人体実験をしている部隊があるとして、全員が知っているわけではないだろう。

しかし公表されれば処罰は免れない、その為に使うのだと、一応は答えておいた。

 

もちろん他にも利用するつもりではある。

例えばマハルといえば、その住人で構成されたシーマ艦隊などは、現在でも行方が分からない。

ジオンに忠誠を尽くすつもりとは思えないが、海賊をせざるを得ないのか、あるいはアナハイムに雇われたのかもしれない。

その時に切り札と成るとしたら、ソーラーシステムではなく、この登録データであろう。

 

●秩序維持機構ティターンズ

 来るべき近未来。

ミノフスキー粒子という夢の存在が、探知システムとエネルギー革命をもたらした。

エネルギーを封じ込めるその特性は、戦いは有視界戦闘を主と定めさせる。

同時にこれまでにない莫大な出力炉心を登場させ、戦闘マシーンや各種インフラに大いなる変化をもたらしたのである。

 

コロニー落下という大惨事を引き起こした大戦は、ロボット兵器であるモビルスーツの登場だ。

しかし戦争が終わってからは、完全循環型コロニーに外宇宙探査船用の炉心と、人類の発展に貢献した。

 

『世界は、優良種たる我らジオン公国国民の手に管理運営されて、はじめて永久に生き延びることが出来る』

『ジーク・ジオン!』

 世界征服を企むギレン・ザビの野望。

行く先はデストピアか、はたまた一握りのエリートが世界を握る独裁社会か。

彼らは同胞である他サイドの宇宙市民、あるいは味方であるはずのジオン軍ですら犠牲にして、野望を成し遂げようとしたのである。

 

これに対して立ち向かう地球連邦軍。

レビル将軍以下、将兵のおびただしい犠牲を払いながら、その災厄を封じることに成功する。

ギレンの野望に騙されていたジオン軍とも和解し、世界維持を成し遂げたのだ。

 

世界にようやく静謐が訪れた。

この地球の明日のために、否、すべてのサイドをも含めたこの世界のために。

二度とあの悪しき戦争を起こしてはならない。

 

よって、ここに我々、世界秩序維持機構、ティターンズは起つ!

 

『ジーン・コリニーの演説より抜粋』

 

 

「さて。我々は続々と加入者が増え続けるティターンズの一部門として成り立った」

「組織が増えれば無能な働き者や、裏切り者が一定数出るだろう。だが、私はそれを許容する」

「なぜならば明日を夢見る若者無しには、世界の発展は存在しないからだ」

「無能な働き者を許そう、裏切り者とて裏切るその時までは共に手を取り合おう」

「自らが望む、心の大いなる炎」

 

「それなしには世界は動かない」

「人がいずれ死ぬのであれば、夢見るままに死にに行こう。自らが描く大いなる炎を実現するために」

「エラン・ヴィタール。それこそが我らの哲学の図書館において、たった一つの共有財産である」

「進め、プロメテウスの子らよ。全ては、我々の大いなる炎のために!」

 

『ジャミトフ・ハイマンの訓示より抜粋』

 

 

 そして宇宙世紀0083.。

離れていく支持者、続々と国軍に復帰する兵士たちを前に、デラーズ・フリートは起ち上らざるを得なかった。

しかし一説には、一つの噂が誠しやかに囁かれたからだとも言う。

 

ギレン・ザビは死んではいない。

『エンデュミオーン』と呼ばれた施設(はこ)の中で、永劫の凍結刑に処されたのだと……メラニー・ヒュー・カーバインが語った。

 




 という訳で第一部完です。
一年戦争は終わり、その後を見据えながら予定を消化。

先にティターンズが発足し、デラーズ・フリートが後から宣戦。
星の屑作戦は形を変えて、エンデュミオーンと呼ばれる施設を巡る戦いが起きるでしょう。

●ア・バオア・クーでの顛末
 キシリアがレビル閥と取引しており、ギレンを拘束。
だがギレン閥を抑えきれず、デラーズに漏れて脱出時に砲撃を食らった。
護衛を務めていたマ・クベは、モビルフォートレス・ゾックで出撃するも戦死。
(早いうちに潜水艦隊が崩壊したので、初代コミック版の、宇宙用ゾックに乗っていた)

ギレンはカプセルに入れて引き渡されたので、その後は行方不明。
エンデュミオーンに幽閉され、地球連邦政府が答えに詰まると、その頭脳を利用するために凍結されているのだという。

●ティターンズ
 連邦内で人体実験を繰り返していた組織があり、ジオンの反乱分子ともども、対処すべく発足している。
よってジオン軍の中にも協力者がおり、超党派の秩序維持機構になった。

プロメテウスはその中の技術開発機構で、未来志向の技術開発を行っている。

●完全循環型コロニーと、サイド3への懲罰
 十基の初期計画のうち、サイド3のネオ・マハルを実験として利用。
その実験データは全てのコロニーの共有財産とされる。
また残りの九基は各サイド、および火星開発に用いられるとか。
(うち二基はエンデュミオーン戦役で奪われ、片方が消失している)

ソーラレイは連邦に引き渡され、テロの目標にされると面倒なので、改造されながら火星に送られることになった。
その後を追跡する艦隊があったとか、なかったとか。

●今週のメカ
『Hermes』
 統合型管理頭脳。
巨大な教育型コンピューターがペガサス級改キローンで実験され始めた。
本体が戦艦側に、子機がモビルワーカーやモビルスーツにとサイズが効率化した。
この成果でコロニー建設は、実に効率的になったという。

しかしこのコンピューターは、ミノフスキー粒子の中では使えないことになっている。だが、ウラヌス・システムとリンクすれば、情報収集機材によってその面はクリア可能。
本当の意味でミノフスキー粒子下で使えないのは、マキシマム化である。
最大化したヘルメスは、子機を処理用のサブシステムとして、統合型演算コンピューターになるのである。

ハーキュリーズ級二番艦ユリシーズ
 三胴艦で両舷に集光セイルとAMBACを兼ねた資源収集アーム艦が付属。
三本マストが美しい宇宙用帆船になるとのもっぱらの噂。
マイクロウェーブを受けて、少ない燃料で火星・木星へと移動可能。

ハーキュリーズ級四番艦キローン
 ペガサス改級で実験したヘルメスはあくまで仮設。
これを一から設計し直し、効率化したのがこの船である。
没収したペイルライダー・ホワイトライダー・レッドライダー、新造したブラックライダーの四機が主力。エンデュミオーン戦役では旗艦を務めたとか。

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