ジャミトフに転生してしまったので、予定を変えてみる【完】   作:ノイラーテム

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第二部
エンデュミオーン戦役


●偽装工作

 研究所のあるコロニーで、出迎え用のポートが爆発。

吹き飛んでいくジャミトフのエアカーを見た時、訪れた高官は驚きを隠せなかった。

 

何しろ用意した爆薬は、自分が此処にいる場合には使わない予定だと聞いている。

驚くよりも先に、我が身に感じる爆風と盛り上がる足元、そして視界いっぱいの閃光が広がった。

 

「中将閣下! お逃げください!」

「馬鹿な。こんな馬鹿なことがあるか!」

 突き飛ばして逃がそうとするSPの声がするが、間に合うはずもない。

車の中に居るジャミトフはともかく、自分は無理だろう。

 

『人を一人消すのにモビルスーツなどという大仰な物は必要ありません』

 そう大言壮語を吐いたアナハイムの言葉を思い出す。

走馬燈のように言葉や相手のニヤリとした顔が駆け抜けるが、確信したのはただ一つだ。

自分ごとジャミトフを消そうとしたのだな……と。

 

『護民派のジャミトフ・ハイマン少将がテロに巻き込まれる。元ジオン軍人による襲撃か!?』

 ニュースの一面にその記事が載った。

 

テロリストが壊滅した影響か、爆発のタイミングが僅かに早かったとされる。

ジャミトフが生きていたのはそれだけのことだ。あと数分後であれば、訪れていた軍高官諸共に爆死。仮にその半分でも重傷でしばらくは病院暮らしだったろうと言われている。

 

「父上! 心配しておりました!!」

「閣下! 我々は心より安堵しております」

 リチャード・ハイマンとジャマイカン・ダニンカンが病院を訪れた。

二人の大声がとがめられないのは、地位もさることながら……ジャミトフが無事だからだ。

 

「お前たちが巻き込まれた訳でもあるまいに。どうせ先生の邪魔をするくらいならば、軍の動向でも知らせて欲しいものだ」

「軍医殿、失礼しました! とは言いましても私の方はレイヤー少佐やウッダーたちからの見舞いくらいです」

 リチャードは軍医に詫びを入れ、その発言を待った。

裏表のない彼は、実に芸がなく現状だけを述べる。作戦本部やコリニーの元を訪れてないらしく、特に報告はないようだ。

 

「閣下は衝撃以外は特に問題ありません。自己肯定願望と自意識過剰の面が見られますが」

「自覚症状はありますよ。誇大妄想と言われなくなっただけマシと思っておきましょうか」

 あまりにも失礼な話だが、軍医は太鼓判を押した。

まあ、それも仕方あるまい。この爆破騒ぎは計算しての自作自演なのだ。爆発物とその起爆信号に関しては、事前に調査済みであったのだ。

 

全てはジャミトフが当面動けない、しばらくは公務で政府に協力をするのが難しいと思わせるためのブラフである。

 

「バスクめが大佐に昇進して前線部隊を掌握するそうです。コリニー閣下からティターンズを奪おうとする第一歩かと」

「ふん。あやつめ、その昇進が責任を取らされることを前提にした、前渡しの報酬だと気付いておらんと見える」

 ジャマイカンは戦後の人事込みで中佐になっていた。

軍大学の短期課程を履修も終えており、同じ中佐でもバスクとは最終的に上り詰める地位が異なる。

 

しかしそれはそれとして、権力闘争の結果、功績無しに先を越されるのは気に食わないのだろう。

 

「ということは、やはり起きますか。準備も整っておらんでしょうに」

「間違いないな。……というよりも、全ては誘導の結果に過ぎん」

 ジオン残党に限界が訪れつつあった。

次期公王に指名されたガルマと首相のマハラジャ・カーンの手腕により、本国の明るいニュースが飛び込む度に、兵士たちは続々と国軍に復帰している。

 

「間もなく全てが終わる。その前に行動せざるを得ないが、悲しいかなデラーズには理想も忠義もあるからな」

 火星開発計画が追い打ちを掛けた。

多額の賠償金や懲罰めいた関税も、完全循環型コロニーの受注で帳消しに成り始めた。

ソーラーシステムとマイクロ・ウェーブ発振装置による太陽炉によって、火星進出は現実の物となりつつある。返却されたソロモンとア・バオア・クーがその航路を両脇から守る予定とあれば、もはやアクシズとて短期コースでは帰還できまい。

 

「理想を叶え、その為の行動を示すには期限が存在する。ましてギレン生存説が流れる今となっては……」

 要するに今動かなければジオン残党が存在する価値はない。

黒幕であるアナハイムが連中を使い切るためにも、今をおいて他はないのだが……。行動には理由が居る。その為の弾圧者であり、バスク率いる粛清部隊であろう。

 

「バスクに弾圧を行わせ、それに対抗する形でデラーズが立ち上がる。この図式ならばコロニー独立派も協力しよう。双方に出資しているアナハイムの思惑はそんなところだ」

「そういえば閣下を襲った連中の中に、輸出仕様のジムがあったと聞き及びます」

 そんなに短絡を起こす事はないだろうが、アナハイムが名前を使う以上は同じ事だ。

独立派を名乗って行動し、潜り込ませているサクラに自分たちも協力しようと呼びかけさせる。リーダー達にスポンサーとしての意向も裏で伝えれば確実だろう。

 

「反連邦組織ですか……。しかし、どのような行動を採るか全く予想ができませんね」

「そうでもないぞ? デラーズには理想と忠義があると言っただろう。それを現状の戦力で実行する際の目標には限りがある。例えば……輸送中のコロニーとかな」

「こ、コロニー落としでありますか!?」

 パイロットでしかないリチャードと作戦士官のジャマイカンでは推測レベルに差がある。

だがそれでも、コロニー落としという言葉は想定外だった。

 

「しかし、今のジオン残党に可能でしょうか? それにコロニー輸送は念のため、月の裏側を使っているはずです」

 一年戦争で最大の被害を出した攻撃手段だが……。

それは地球に与えたという意味でも、作戦を遂行した部隊にとっても同様だ。あの作戦で多くの被害をジオン側も出している。戦力が続々と減っている今のジオン残党には難しいだろう。

 

とはいえジャミトフには原作知識というものがあった。

それにギレン生存説やその野望。そして宇宙市民の独立や、メラニーの思惑を考えれば見えて来る物がある。

 

「コロニー落としは所詮手段だ。フェイクに利用すれば良いだろう。そうだな、マスドライバーを占拠して穀倉地帯を狙う。順番は逆でも構わん」

「どちらにせよ狙いは食糧事情……確かに大量の水耕栽培プラントを有する宇宙の発言権が強化されます」

 物資を高速で打ち出すマスドライバーは、そのまま質量兵器足り得た。

コロニー落としと両天秤に掛け、連邦の抵抗が薄い方を本命にすれば良い。

 

一見目的二つのどちらが主軸でも良く、見通しが絞り切れないように見える。

だが、ジャミトフは原作知識からこのことを予測し、予めデラーズの思考を誘導してあった。

 

「その場合はコロニーが月の裏側を通る為、本命はマスドライバーでしょうか?」

「いや。本命はあくまでコロニー奪取だ。ただし……軌道はこう、だがな」

 ジャミトフは予め打ち込んであった画像を見せる。

最初は口にした通り、コロニーとマスドライバーの奪取が前後して行われる画像。次にコロニー同士が接触、軌道を変える瞬間の画像だ。

 

コロニーの移送は、燃料削減のために二つ分のコロニーを回転させてその影響を利用している。

二つが接触することでその軌道を変えて、片方は月へ、もう片方はあらぬ方向に移動していく。さらに月へ落下するコロニーは再び軌道を変えた。

 

「緊急避難措置として推進剤に着火して噴射させるだろう。月から地球に向かうそれ自体がフェイクに成り得るが、反対側を見てみろ」

「放置された方が……太陽航路へ!?」

 衝突によって軌道を変えたコロニーの残りは、火星方向に向かっている。

そこにはソーラーシステムやソーラレイがあるはずで、本来であれば、自滅も良いところだ。

 

だがこの二つは火星進出のための切り札であり、既に兵器としての用途は考えられていない。

 

「仮に連邦政府が兵器として温存している場合はソレを暴くことができる。兵器でなければ破壊することで、月面首都構想を狙うアナハイムに利することができる。失敗しても火星方面へのコロニー輸送が後回しにすることを撤回できる」

「なんという……。まさに一石三鳥の策……」

「……」

 素直に感心するリチャードだが、ジャミトフとジャマイカンには口にできぬ事があった。

ギレンを凍結しているエンデュミーオンの事だ。その位置は月面とソーラレイの中が最有力候補である。即ち、一石四鳥の策なのだ。

 

「では父上、いえ閣下。我々はいかがいたしましょう?」

「命令もないのに軍人が動くわけにはいかん。だが座して待つのも問題だな。ガルマ殿下に袋の一つ目と二つ目を開けるように伝えてくれ」

「もう……大文字のCを使われるのですか?」

 以前からこのような事態に備えて、ガルマには方針を伝えてあった。

あくまで建策であり彼が従う義理はないはずだが、袋に入れておいた情報は従わざるを得ない物である。

 

一つ目は言うまでもなく、ギレン生存説。

二つ目はミッシング・ナンバーのうち、大文字のC……シャア・アズナブルの正体だ。

 

「いずれ判明することだ。メラニー辺りに利用されるよりは、ここから使ってしまった方がよかろう。ジオン公国が動かぬ良い理由に成る」

「完全循環型コロニーの一次生産が落ち着き、冷え始めた経済の活性化にも成りますか」

 シャアの正体がキャスバル・レム・ダイクンであると判明する。

それはジオンに大きな混乱をもたらすだろう。確かにそれはジオンがデラーズの動きに同調できなくなる理由足り得る。

 

そしてソレは同時に、ダイクンの後継者を待ち望んでいたサイド3や、その援助を申し出ていた一部のコロニーには福音である。

基本的に善人であるガルマにとって、迷惑を掛けていたシャアに恩義を返し、実家が追い詰めたダイクン家に奉仕し、そしてサイド3が恩恵を得るチャンスである。内心がどうであれ、指示通りに実行するだろう。

 

「その通りだ。しかし……どこで、どう介入したものかな」

「悩ましいですな」

 実のところ、デラーズの企図したこの流れはジャミトフたちにとっても悪くないのだ。

勿論そうなる様に思考誘導したのであり、デラーズはメラニーやジャミトフの思惑を利用する形で、自ら踊る人形として舞台に飛び出したのである。

 

だからこそ余計な手出しが難しい。

月を調べることは、『箱』調査もかねてジャミトフ自身がしたかったことだ。

同時に火星にコロニーを送り、オアシスとして利用することも、連邦政府の反対がなければ彼自身がやりたかった事である。

 

意図的にこの状況を誘導したとはいえ、自らの策であるからこそ、ジャミトフは迂闊に動けないでいた。

 

そして一同が予想した通り、ティターンズを奪ったバスクの活動方針の強引な変更。

対抗する形で成立した、反地球連邦政府組織エウーゴの活動が始まった。




 という訳で第二部の開始です。
今回は予め、おおよその流れを説明する感じでしょうか?
まあ星の屑作戦を焼き直しただけなので、説明会に成るのは仕方のない事なのですが。

●ジャミトフ爆殺未遂事件
 視察に訪れた高官を迎えに行ったジャミトフさんが狙われました。
なんて卑怯な作戦なんだ(棒読み)。
まあ事前に調査して、エアカーの跳ねる軌道を演算コンピューターで清書してるので、ワザとです。
これによってジャミトフは、出頭命令やら出撃命令をある程度は無視できます。

●太陽路
 ソーラーシステムや、ソーラレイを改造したマイクロウェーブ施設からエネルギー供給。
海賊からその航路を守る為に、ソロモンとア・バオア・クーを移動させます。
成功すれば火星がグっと近くなり、かつ地球圏を脅かす戦力を遠くへ島流し可能。


●ネオ・星の屑作戦
 目的がギレンの救出になり、大義は宇宙市民の発言力拡大のままです。
冷凍睡眠に必要な大電力を消費させてギレンを起こし、その生存をもって交渉に当たらせること。
そして完全循環型コロニーを火星に送ることで、社会の中心を動かし、地球の比重を軽く。
ギレンの捜索と、アナハイムの思惑を同時に兼ね、ジャミトフが邪魔しない唯一の作戦です。

第一段階:月への進駐とマスドライバー施設の占拠
 水天の涙作戦みたいな感じですが、目的はティターンズの基地がある北米・オーストラリア。
もちろん成功して穀倉地帯を狙えても良いですが、ギレン探索の第一歩。
これをフェイクに連邦の目を引きつけます。

第二段階:コロニー奪取
 原作通りに月から地球を狙いますが、これもフェイクです。

第三段階:コロニーを火星へ向けて
 衝突したもう片方のコロニーは火星方面にある、コロニーレーザーへ向かっています。
途中で止まって航路に設置しても良し、月と同じく推進剤に火を点けて、火星に向かっても良しです。

第四段階:火星政府の準備と対木星同盟
 ギレンを起こし、アクシズを前線拠点に火星政権を立てる準備。
もちろん連邦政府が認めて少なからぬ人手を出してくるならば、交渉しても構いません。
その場合は木星公社を仮想敵として、連邦に屯田制でも申し出るでしょう。

●献策の袋
 三国志に出てくるアレです。
『ギレン生きているよ。ジオン残党を誘導するためだよ』
『シャアはキャスバルだよ。混乱利用しなよ』
 という感じで、絹の袋に入っています。

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