ジャミトフに転生してしまったので、予定を変えてみる【完】   作:ノイラーテム

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戦いの序章

●反地球連邦組織の発足

 連邦軍高官および政府相談役(ブレーン)を狙ったテロ事件。

その顛末は、カウンターテロ部隊の発足に繋がった。

 

その為に秩序維持機構であるティターンズの前線部隊を、大佐に昇進したバスク・オムが掌握。

連邦政府転覆を図るテロリストを摘発し、ジオン軍残党を掃討する権限を手に入れた。

だが、その活動は何時しか地上に住まう人々や歯向かう者を、テロ予備軍として辺境のコロニーへと押し込めていく。

 

『今回の事態を引き起こしたのは、一部の軟弱なる政治指導者たちが、必要以上に不満分子たちへ歩み寄ったからである』

「ふん。馬脚を現すとこはこの事だな。私を襲った理由を私自身に押し付けるか」

 バスクの演説は繰り返して放送されていた。

強権の象徴はどうみても圧制者に他ならないが、スポンサーにとってはバスクなどスケープゴートでしかないのだろう。

 

それにしても皮肉が効いているのは、バスクから『今回の責任をとって謹慎して居ろ』という意味合いの文章が送られてきたことだった。

 

当然ながらバスクにその権限はない。

とはいえ軍から命令が来ていないのも確かで、動いた場合、治安責任者の忠告を無視した形になってしまう。

ジャミトフとしては表向き動かない方が良いので、願ったりかなったりではあるのだが。

 

『我々ティターンズは母なる地球を守る為……』

『諸君。暫しの間、ご清聴願いたい』

 既に街頭演説めいたバスクの決意表明を上書きして、見慣れぬ軍服姿の男が現れた。

誰あろう、テロリストの首魁として指定されるエギーユ・デラーズである。

 

『先の襲撃事件において、我々の前身組織が関わっていた事、その不明を認めよう。だが、その計画は初歩から別の組織によって利用されていた』

 デラーズの演説は背景に居並ぶ将官とモビルスーツが映っていた。

その一部が不明瞭な戦闘風景に書き換えられ、ドムの出撃が映し出される。

 

問題なのは、その姿とは別にジムとしか思えないシルエットが映し出され始めたのだ。

それも輸出仕様のジムだけでなく、明らかに高性能の最新型である。

 

『あの襲撃事件が何を目論んで行われたかは、諸君の想像通りであろう。我々は確かに、『宇宙移民』を不必要に促進しようとする狡猾な猿を排除しようとした。だがそれは、『宇宙棄民』を目論む欲深い豚共に利用されたのだ』

 狡猾な猿が誰で、欲深い豚が誰なのかは一目瞭然だろう。

 

面白いことに裏のネットワーク界隈では、ジャミトフが『よりエレガントに森の賢者(ゴリラ)とでも呼んで欲しい』とユーモアで切り返したと伝えられている。

バスクが自分を猪に例えればバランスが取れたのだろうが、怒り狂うだけだと失笑を買ったという。

 

『テロを目論んだ我々の言葉など信じまいが、この光景を見ていただければ分かってもらえよう。これが彼らの正体だ!』

 次に切り替わった画像は、ショッキングな光景だった。

せっかく緑化したダカール郊外を整地し、要塞の如き基地を造成している姿。

 

そしてアフリカ近郊に住む人々を、テロリストへの協力者として次々に拘束する姿だ。

あるいはインドに棲む人々に向けたゴム弾であり、津波での壊滅から逞しく蘇りつつあったボート・ピープルへの放水である。

 

『宇宙棄民を行い、地球を乗っ取ろうとする欲深い者ども。秩序維持機構だったティターンズを変質化させ人々を排斥する、バスク・オムなる悪逆非道の人物と、その背後で操る欲深き者どもを排除せぬことには、宇宙市民の真の独立はありえまい』

 次いで映し出されたのは、遠いアクシズに逃げたジオン軍残党。

あるいはテロリストとして指定された、有名な独立運動の活動家たちだ。中にはジオンと敵対してる者までいる。

 

彼らはデラーズと同じような制服を着込み、数名の活動家たちに至っては手を取り合う姿まで映し出されていた。

 

『……かつて敵対していた我々は、対立を乗り越えた。その目的は地球圏の平穏と、宇宙市民の真の独立を目指す為。ここに反ティターンズであり、現行の地球連邦に対する対抗組織。エゥーゴの設立を宣言する!』

 電波ジャックはそこで打ち切られる。

裏のネットワークでは様々な噂が飛び交い、大規模な反乱が起きるだの、それを口実にバスクがまた無茶をやるのだろうと言い合った。

 

バスクを悪役に立て、その排除を目的と言い張ることでデラーズの印象作戦は成功したと言って良い。

 

「これでもまだ謹慎して居ろと言い張るかな? ここはお手並み拝見と行こう」

 ジャミトフはニヤリと笑いながらテロにあった『当日』に出した命令書を眺めた。

そこにはヤザン達に出した、テロ組織への追撃命令が書かれていたのである。

 

●タイム・スケジュール

 それから暫くの間は、意外なほど平穏な日々が続いた。

あえていうならば、ダカール郊外の緑に関しては、最初から緑化実験だったと声明が出たことだ。

計画に従って実験を終了し、元からの予定として基地を増設しただけに過ぎないと『事実』を述べた。

 

面白いのはその数日後に『実験は成功したので様子を見るために継続し、基地は他の場所に建設する提案が出ていた』と……関係省庁からの声が漏れた。

瞬く間にその『事実』も計画書の漏洩と共に世界中を駆け巡り、吠えるバスクの風刺画が出回ったという。

 

「余計な気を回さなければ恥をかかなかった物をな」

「閣下の業績に対抗したのでしょう。ですが官僚は身内優先と判っているでしょうに」

 連邦首都に攻め入るような連中は居なかったのだ。

だからバスクが権力を握った時点では、ダカールの要塞化などする必要はなかった。

 

それを押し切ったことで、財務官僚たちの要らぬ反発を生んだと思われる。

他愛ない風刺ではあるが、今後に彼らの協力が得られる可能性の高くなったジャミトフと、逆にそっぽを向かれるバスクの対比が浮き彫りになったといえるだろう。

 

「閣下。デラーズが動き始めました。月面の制圧を行っております」

「予定通りか。つまらんな」

 エゥーゴは戦力を分散しているかに見せかけ、月の諸都市攻略を始めた。

最終目的の一つにソーラーレイがあり、それが火星との中間に移設されている以上は、同時に狙えるタイミングというのはどうしても限られてしまう。よって、この時期に行われるのは目に見えていた。

 

とはいえ期待外れだったのは、『味方』の動きまで予想通りな事。

ある場所は占拠し、ある場所は攻略後に放置。あるいは素通りさえして、一気に勢力圏を広げに掛かった……ように見える。

 

これに対して連邦軍。いや、バスクの掌握したティターンズ前衛部隊は動かなかった。

当初こそ兵力分散の愚を突こうとしたが、敵のいない都市に空振りしたり……逆に戦力分散をしてしまい集中した戦力で迎え討たれたからだろう。これ以上の損耗を避け、集中投入する機会を探っていたと思われる。

 

「ですがバスクの顔は見ものでしたぞ、食い入るように分析表を見ておりましたから」

「あれか。バスクめ自分の裁量だけでやりきる自信がなかったと見える」

 ジャミトフは予め、反政府組織が成立した場合の戦力予想を立てていた。

一年戦争を終わらせずにジオンと戦い続けた場合と、あの場で打ち切った今の流れでは、戦力がまるで異なる。その側面から終戦が正しかったと補強していたのである。

 

戦争を続けた場合、勝てはするだろうが見通しは明るくない。

力で押さえつける為、ジオン残党は少なくない数が脱出すると想定できる。また連邦は経済的に破綻して給料を払うこともままならず、連邦軍の兵士たちが反乱組織に加わった可能性がある。

 

だが和平を結んだ事で、ジオン軍は多くが国軍に留まり、連邦も過大な財政出動は必要なくなった。戦前からジャミトフが通常兵器中心でコリニー閥を運営した他、戦後の軍の緊縮財政を行ったこともあり、原作のような給料遅配やエゥーゴへの連邦兵士加担はなくなったのである。

 

そういった動きをオブラートに包み、原作知識を抜いたものが戦力分析表だ。

デラーズ・フリートとアクシズ先遣艦隊のみが地球圏に、アクシズ本隊は様子見をせざるを得ない為、コロニー独立派を加えた程度に留まるであろうという予測である。

多く見積もったとしても百隻を越えず、補給艦のような補助艦艇が大多数だと推測していた。

 

「不安なのでしょうよ、勝てて当然。それなのに、楽勝のつもりで制圧戦に乗ってしまい、待ち受けられて分艦隊をまるまる一つ失ったことが、先行きを曇らせましたからなあ」

 せっかくなので、ここで連邦軍の艦隊編成を説明しておこう。

一個艦隊は四つから六つの分艦隊で構成され、作戦指揮官の元、作戦参謀・艦隊参謀・MS参謀などが付随する。

 

一セットの分艦隊は巡洋艦が五隻前後で、戦艦の有無次第で変化する。

艦隊によって主戦力の比重や規模の大小はあるが、コリニーの第二主力艦隊は戦艦と空母を多数有する打撃編成なので、純粋な戦艦と巡洋艦だけで三十隻近くが所属していた。コロンブスも補給艦仕様ではなく、空母仕様の比重が高いのが特徴だ。

 

「自分の派閥を立ち上げ、欲張って何もかもやろうとするからだ。相手を理解して、地道にやっていればとっくに戦いは終わっている」

 これは本来、主力艦だけで旧デラーズ・フリート全てに匹敵する。

地味に都市を一つずつ解放し、正論を駆使して都市の防御は連邦軍の本隊に丸投げしておけば絶対に勝てただろう。

 

なまじ自派閥を立ち上げてしまったことが、頭を下げて戦力を借り難くさせてしまったといえる。

専横できる戦力を欲したりスポンサーであるアナハイムに踊らされての事とはいえ、色々と迂闊だったという他はない。

 

所詮、バスクが動かせる戦力と言うのは大きくない。

ティターンズを組み入れたことでコリニーから強引に艦隊を取り上げたとしても、グリーン・ワイアット大将ら他の将官から戦力を奪えるはずがないのだ。

 

「しかし予想通りならマスドライバーは陥る。ならばバスクも動かざるを得んな」

「はい。今度こそバスクも躍起になって攻略に掛かるでしょう。穀倉地帯であろうと軍の拠点であろうと、打撃をこうむれば責任問題になります」

 派閥の領袖やスポンサーからの要請は、今のバスクにとって絶対命令だ。

上層部の指示よりもそちらの方が優先されるくらいで、さすがにマスドライバーを優先しろと言われれば、歯噛みしながら従わざるを得ないだろう。

 

となれば今度こそ、マスドライバー施設を確保するために全軍を投入するはずである。

 

「バスクの事だ、後がないと知れば未完成のハーキュリーを持ち出すだろう。Fを本命捜索に動かせ、地球を守る為に充てておく必要はない」

「承知しました。大気圏突入仕様のテストは中断と指示しておきます」

 この流れを想定していたので、予め対策は立てていた。

空振りになるのを承知で、アッシマーの大気圏突入実験用『ゼーゴック』を地球降下を目指せる位置に待機させておいたのだ。

 

指示は以前から一通り決まっており、その一つを中断させるだけだ。

まずは大気圏突入実験用の仕様で質量弾の迎撃。次は長距離仕様や早期警戒仕様の実験で、仮想敵として『とあるジオン残党』を捜索する予定であった。そのついでにコロニーを見つけたとしても……新型機のテストから何ら逸脱はしていないと言える。

 

原作知識といえばそれまでだが、ホルバインとアッシマーだけで済むのだ。

保険としてはこれ以上なく安上がりだろう。




 という訳でティターンズとエウーゴの構図が成立しました。

マスドライバー基地を巡る攻防でどちらにも相当な被害が出ています。
次回はコロニー輸送に関する話。まあ襲撃する方も見つからないようにしておりますが。

●今週のメカ

アッシマー大気圏突入実験用『ゼーゴック』
 地球に降下しながら、降下部隊などを迎撃するための実験機。
上下逆さまに向いて、円盤状の装甲を下にしつつ、場合によっては補助足を変形させて一機搭載。
原作のゼーゴックと違い、降下するHLVやバリュートが仮想敵なので鴨撃ちである。

『アッシマー長距離移動実験用『イカロス・ウイング』
 木星エンジンを連邦側の技術で作成した天王星エンジンを外部搭載。
非常時にはこれを切り離したり、ミサイル代わりに使用する。

この装備は二系統の開発に分岐。
アッシマーのエンジンを改良するものと、モビルスーツに使用する汎用になる。
前者は海王星エンジンとなり、後者はシュツルム・ブースターになる。
他にもどこかで実験を行っているため、いずれお目見えする予定。
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