緋弾のアリア~裏の明智~   作:魂魄木綿季

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第9話 『事件解決』

刀奈の運転で空港に着いた俺達だったが、

俺が杖付きという事で徒歩での移動に時間がかかり

神崎の乗る飛行機のフライトにはギリギリで間に合った。

 

 

なおキンジは移動の間に元に戻り、“普段”のキンジに戻っている。

 

 

 

「武偵だ!フライトをやめろ!」

タラップを駆け上がりながらキンジがCA(キャビンアテンダント)

武偵校の学生証を見せながら中へ入る。

 

 

「え?ど、どういうことですか!?」

金髪ショートのCAさんが困惑しつつ聞くがキンジはもう中だ。

 

 

カッカッ

「この飛行機に爆弾が仕掛けられてる可能性がある。

だからフライトを止めてくれ。」

俺も学生証を見せながら説明をする。

 

 

「......」

俺の後ろのレキは何も言わない。なお刀奈には空港での待機を命じた。

というか、フライトを止めてるわけだから実質俺達がハイジャック犯だな

 

 

 

 

〜数分後〜

 

 

 

「アリア!」

 

 

『な、ちょ、キンジ!?なんでここにいるのよ!?』

飛行機内の最奥、VIP室にキンジが飛び込み

その直後に神崎の声が廊下まで響いた。

 

 

「どうやら神崎が見つかったみたいだな。」カッカッ

 

 

「はい......」

杖つきの俺とレキが廊下で並んでVIP室へ向かう。

 

 

「俺らもいるぞ〜」カッカッ

 

 

「...こんばんわ」

 

 

「零也にレキまで!キンジ、一体どういうことよ!」

俺達は3人が現れた事に驚き、状況を理解できないと

キンジに詰め寄って神崎が騒ぐ

 

 

「あ、あぁ。それなんだが......」

 

 

 

 

ガクンッ

 

 

「のわっと」カカッ

キンジが説明をしようとしたタイミングで飛行機が動き出す

 

 

「大丈夫ですか?」

倒れかけた俺はレキに支えられる事で転ばずに済む。

だがこの体制はマズいと思う。

 

 

「だ、大丈夫だ。」

危なかった。レキは俺を両腕で抱き締める様に支えたため

レキの胸が視界一杯に広がっていたのだ。

キンジだったら使える方と変わってる頃だな。

 

 

「というかなんでフライトしてるんだ!?」

俺が止めたはずだ!とキンジが言う

 

 

「いや。止めたのは俺だけどな?」

VIP室内には椅子がイスが2つしかないのでキンジに譲り、

俺とレキは壁に背中を預けて座る。

 

 

 

 

 

「...安定したか。」

 

 

「えぇ。ここは雲の上ね。」

離陸の衝撃が無くなりキンジが口を開き、

神崎が窓の外を眺めて肯定する

 

 

『ピンポンパンポーン武偵の皆さん、

2階フロアのBARへお越しください』

 

 

「またこの機械音声かよ。」

今日でこの声は聞くのは最後だ。とキンジが呟く

 

 

「この声、ここ最近の武偵殺しの一連の事件と同じ機械音声ね」

チャリジャックから聞いていないが神崎も同意するならそうなんだろう

 

 

「...とりあえず移動するか?神崎への説明は道すがら出来るだろ」カカッ

レキに支えられつつ、俺は立ち上がる

 

 

「そうだな。そうするか」

 

 

「キチンと説明しなさいよ!」

 

 

「分かってるよ。」カッカッ

 

 

「......」

レキはいつも通りだな。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

〜数分後〜

 

 

 

結果から言えば武偵殺しの招待はキンジのクラス、

2-Aで“探偵科”所属の【峰理子(みね りこ)】だった。

 

 

武偵殺しとして活動し始めた理由は名高きアルセーヌ・ルパンの

子孫として自分を“リュパン4世として認めて欲しい”という願いから

起こしたものだったのだ

 

 

「峰理子!いや、リュパン4世!

武偵殺しの事件の重要参考人として逮捕するわ!」

 

 

「簡単に出来ると思うな!オルメス!」

 

 

神崎と理子の2人の戦いにキンジが参加して

2対1での戦いに持ち込むが何度かの交差を終えてから

 

 

ガン=カタ(主に二丁拳銃を使用する銃撃格闘戦)で

理子が扉を爆破して神崎の気を引き、その一瞬で神崎が敗北した

そして神崎が負傷した事でキンジが神崎を連れて離脱し、

残された俺とレキは足止めを任された。

 

 

 

 

「ふーん。次はレイレイとレキュが相手かぁ。

狙撃科のダブルエースと言われる2人が相手に遊んでくれるなら

暇つぶしくらいにはなりそうかな?」

理子が舌舐めずりをしながら笑う

 

 

「レキ、申し訳ないが前を頼む。今の俺じゃあCQCは出来ねぇしな。」

 

 

「...了解しました。援護はお任せします。」

ドラグノフに銃剣を取り付けてからレキが前に出る

 

 

「およ?レキュが前衛(フロント)?ってそっか。

レイレイは足を怪我してたっけ」

 

 

「他人事みたいに言うがお前のせいだからな?」

 

 

「ちょっとーそれは酷くない?レイレイが怪我したのは

あくまで自己責任でしょ?私だってあんな方法で来るとは

思いもしなかったんだしさ。」

 

 

「ま、そりゃそうだな。...ッ!」

言い切ると同時に俺はレッグホルスターからHK45を

クイックドローで抜き、発射する

 

 

ダンッダンッダンッ!

俺の放った3発の銃声が引き金になり、レキが理子に突撃する

 

 

 

 

〜数分後〜

 

 

 

「レキ!一旦下がれ!」

 

 

「ッ!」

俺の指示を聞いてレキが俺の横に戻る。

 

 

「...はぁはぁ。怪我は?」

 

 

「至って軽傷です。零也さんは?」

 

 

「お恥ずかしながら残弾は一発だ。」

M93Rを持ってくれば良かったと今更ながら後悔した

 

 

「...そうですか。それじゃあ私が何とかして隙を作るので

そこを撃ってください。」

 

 

「イけるのか?」

レキは慣れない近接戦をしながら動けない俺を

理子が撃てないように気も引いていたのでかなり辛いはずだ

 

 

「.........問題ありません。」

 

 

「そうか。なら任せるよ。」

 

 

「はい。」

 

 

「あー作戦会議終わった?そろそろ再開しない?」

 

 

「おう。終わった所だよ。次で決めんぞ!レキ!」

 

 

「......」コクリッ

再びレキが理子へと突っ込み、レキが銃剣術で挑み

理子がガン=カタで応戦する。

 

 

「レキュって確か狙撃科だったよね!よくこんな銃剣術を

持ってるね!“強襲科”でも食っていけるんじゃないの!」

 

 

「誤解が起きないように言っておきますが私の専門はあくまで

狙撃です。この銃剣術は最後の手段に過ぎません。」

 

 

「そっか。じゃあレキュを接近戦で仕留めれば私の勝ちって事だね!」

 

 

「......ッ」

レキが一瞬だけ俺に視線を向ける。やるって事だな!

 

 

「・・・」

俺は静かに銃を構える。残弾は1発。

失敗=俺は約立たずだ。

 

 

「私との戦い中に男に熱い視線なんて向けちゃ、ダメだよレキュ!」

理子が大振りに足を回し、ドラグノフごとレキを蹴る。

 

 

「ッ!」

 

 

「甘いよ!Good-byeレキュ!」

一度目の蹴りを耐えたレキだが理子が再度蹴り、

レキの体がよろめく。

 

 

「......」

そしてよろめいたままレキは

勢いを殺し切れずに先程の爆破で開いたドアへ向かう

 

 

 

 

「・・・は?」

今の理子は無防備で絶対のチャンスなのだが

俺の視線は理子よりもレキへ向かう

 

 

「......」コクリ

レキの体がグラつき、俺に一度だけ頷いて見せる。

これがもしかしてレキの作戦か?

 

 

俺がそんなことを考えている飛行機の外へとレキの姿が消える 。

 

 

 

 

「レ、レキィィィィィィィィ!!??」

直後、俺は迷うこと無く無事な右足で床を蹴りレキを追って飛び降りる。

作戦?んなもん知ったことか!レキの命の方が大事だ!

 

 

「おーレイレイだいたーん♪」

からかうような理子の声がはるか遠くに聞こえた

 

 

 

こうして俺達2人は飛行機から降り(落ち)、戦力外になった。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

〜翌日 とあるビル・屋上〜

 

 

 

「おーすげぇすげぇ。キンジの奴、“いつもの方”なのに

神崎を抱えたまま屋上から飛び降りたぞ。」

俺は狙撃銃用のスコープで見た光景に感想をもらす

 

 

「本当にね。遠山くんって案外大胆ね〜」

俺の横で双眼鏡を構えながら刀奈が同意する。

 

 

 

結局、俺とレキが旅客機から落ちた後は

神崎と例のモードになったキンジが

理子を倒したらしいのだが、後一歩のところで逃げられてしまったらしい

流石はリュパンの子孫。逃げる事は天才らしい

 

 

「・・・」

 

 

「どうしたのよ?突然神妙な顔になって。」

 

 

「いや。今回の一件、俺って何もしてない気がしてな。」

チャリジャックは降りかかった火の粉を払っただけだし

バスジャックは神崎を送り届けて怪我しただけだ

 

 

「そう?昨日の晩は大活躍だったじゃない。」

 

 

「活躍って、何かしたか?意気揚々と乗り込んだら

レキと一緒に落ちてきただけだぞ?」

 

 

「いやいや。その後、遠山くんの操縦する旅客機の着陸に

貢献したじゃないの。」

刀奈が言っているのは俺がレキと一緒に不時着状態だった

旅客機を車輪を撃ち抜くことで速度を殺したことを言っているのだろう

 

 

「いや、あれはどっちかというとお前の活躍だろうよ。

“超能力”を使って旅客機止めるなんてさ」

 

 

「そう?大したことはしてないのよ?」

こんな事を言うがこの少女は昨晩、俺とレキの行為でも

止められなかった旅客機を異能の力で海水の壁を作り、

あと一歩で海に落下。という予想を塗り変えたのだ。

 

 

「あれだけの芸当をして、“大したことじゃない”か。

謙遜も生きすぎると嫌味だなぁ。

そもそもアレをやる前にも落ちてきた俺とレキを助けてくれたろ?」

 

 

「あの時は驚いたわね〜空から零也くん似の奇声が聞こえると

思ったらレキちゃんを熱く抱き締めた零也くんが降ってくるんだもの。

アレ、一部の業界ではこう言うんでしょ?『親方空から女の子!』」

 

 

「...お前さては簪の部屋のDVD勝手に見たな?」

 

 

「え?い、いやーまっさかー」

俺の指摘に慌てて視線を逸らして吹けていない口笛を吹く

 

 

「......お前が俺をからかった仕返しに簪にチクってやるからな」

 

 

「わー!わー!私が謝るから許してぇ!」

 

 

「俺が知った事じゃねぇよ!というか離れろ!歩きづらい!」カッカッ

 

 

「いいじゃないのこれくらい。零也くんだっておっぱい好きでしょ?

私のおっぱいの感触どう?気持ちいいでしょ?」

 

 

「...というか、俺達2人は神崎の事なんかよりも

どうやったら沙耶香に許してもらえるかを考えるべきだよな。」

面倒な流れになる気がした俺は即座に話題を変える

 

 

「...そうね〜がんばってね、零也くん♪」

 

 

「いや、“私は関係ない”みたいな顔をしてるけど

最終的に病院から俺を連れ出したのお前だからな?共犯だろ」

 

 

俺の言葉に刀奈は雷に打たれたような顔をし

「...私の簪ちゃん用奥義の1つ、フライングジャンピング土下座

を使う心積りはしておくべきかしらね。」

と神妙な顔で呟くのだった。

 

 

「「・・・」」

 

 

「「・・・はぁ。」」

刀奈を右腕にくっつけながら

俺達はとぼとぼとビルの屋上を後にしたのだった。

 

 

ちなみに沙耶香には2人で必死に謝った結果許してもらった

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

〜夕方 とある焼肉屋〜

 

 

 

「んじゃま、神崎とキンジのパートナー再結成と

武偵殺し事件解決を祝して、乾杯。」

 

 

「かんぱーい!」

俺が音頭をとり、武藤が続く

 

 

「「か、かんぱーい。」」

 

 

「......かんぱい。」

 

 

「かんぱい。です」

 

 

「かんぱーい!」

それにキンジと神崎、レキと沙耶香が続き

最後に刀奈が続く

 

 

「「「誰!?」」」

まぁ、そうなるよな。

 

 

「あら?そういえば遠山くん達は初対面だったわね。

私は【更識楯無】。零也くんの親戚よ。

...ぷはーっ!お姉さん!コーラおかわりー!」

 

 

「な、なぁ零也。」

 

 

「ん?どうしたキンジ。」

 

 

「レキや沙耶香、武藤は分かるけど

なんでお前の親戚がいるんだ?」

キンジと同意見らしく神崎と武藤も俺の方を見る

 

 

「なんでってお前、かた、楯無も事件の関係者だからだよ。」

 

 

「...あ、もしかして最後の水の壁?」

勘がいいと自称する神崎だが本当にいいらしく

見事に言い当ててみせる。

 

 

「そういうことだよ。」

 

 

「なるほどね。そういう事なら楯無さん、

昨日は助かりました。本当にありがとうございます。」

 

 

「いいのいいの!そんなに堅苦しくしないでよアリアちゃん!

今日は打ち上げなのよ?楽しんだもん勝ちよ!」

酒も飲んでいないのに文脈が滅茶苦茶な口調で刀奈が返す

 

 

「まぁ、そういう事だ。楯無は男にも慣れてるし

ノリはいい方だから武藤も普通に話せよ?もちろんキンジも。」

 

 

「あ、あぁ。」

 

 

「時に楯無さん!ご趣味の方はなんですか!?」

キンジの微妙な反応も予想通りだが武藤が速攻で口説きに行ったのも

予想通りすぎて笑いたくなるな。

 

 

『お客様、こちらご注文頂いたドリンクになります。』

店員がコーラを片手にやってくる。そういえば刀奈が頼んでたっけ

 

 

「お、おい零也。」

「ね、ねぇ零也。」

 

 

「ん?」

 

 

「あれ、大丈夫か?(大丈夫なの?)」

神崎とキンジが少し顔を青くしながら指差す方を見ると

刀奈が肉から野菜から手当り次第に注文をしている光景がある

 

 

「・・・悪い、カード使えるか聞いてくるわ」カッカッ

財布の中身にも余裕はあるが用心はしておこうと思い席を立つ

 

 

「「い、いってらっしゃい。」」

後ろから同情したような2人の声が聞こえる。涙は流さないぜ!

 

 

 

 

俺は席を離れてから、“レジとは反対方向”へ向かった。


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