緋弾のアリア~裏の明智~   作:魂魄木綿季

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第4話 『キンジ!アンタ、私のドレイになりなさい!』

神崎達とラーメンを食いに言った翌日

 

 

〜昼時 武偵校・屋上〜

 

 

 

午前中(1時限〜4時限目)の一般科目(ノルマーレ)の時間が終了し

武偵校では昼休憩の時間を挟んでからの5・6時間目に

専門科目、所謂“武偵学科”の授業が行われる。

 

 

神崎に間宮、沙耶香ならば“強襲科(アサルト)”の授業

キンジなら“探偵科(インケスタ)”で風魔ちゃんなら“諜報科(レザド)”。そして...

 

 

「ようレキ。待たせたか?」

 

 

「いえ、お気になさらず。」

俺と目の前の少女、レキならば“狙撃科(スナイプ)”の授業だ。

 

 

「そうは言っても暇だったろ?悪いな。これは謝罪料代わりだ」

俺は来る途中で購入したお茶をレキに渡してやる

 

 

「・・・?私は特に何も求めていませんが?」

 

 

「別にいいんだよ。俺なりの気持ちの問題なんだから

受け取っといてくれ。じゃないと俺が納得出来ないからな」

 

 

「・・・そういうことなのでしたら。」

それだけ言うとレキはお茶を脇に置きポケットから携帯糧食(カ〇リーメイト)を取り出す

 

 

「...相変わらずそれだけなのかよ。」

 

 

「こちらの商品のみで栄養は充分摂れますので。

それに大変軽く、食品としても長持ちするので便利です」

 

 

「そういう意味じゃないんだけどな...しゃーない、ほれ口開けろ

沙耶香が作ってくれた弁当の卵焼きをくれてやろう」

弁当箱を開けて最初に目に付いた卵焼きを摘み、レキへと向ける

 

 

「...?私には必要がありません。」

 

 

「いや、必要とかじゃなくてな?俺が食わせたいからやるんだ。

昨日のラーメンと同じ。いいから貰っとけ」

 

 

「......分かりました。いただきます」

レキが小さく口を開き、俺が卵焼きを入れる

 

 

「・・・なんか、ペットを餌付けしてる気分だな」

恐らく今の俺は苦笑いを浮かべているだろう

 

 

「・・・?」モグモグ

 

 

「いや、いい。なんでもないんだ、忘れてくれ。」

自分の言葉に少し恥ずかしくなった俺はレキから視線を逸らし、

沙耶香の作ってくれた弁当を食べる

 

 

「......」

レキは特に気にした様子も無く、

モソモソとカロリーメイトを食べていく。

今日はチーズ味か。

 

 

 

かなり前にプレーンしか食べないレキに

他の味も食えと言ったことが

あったのだがちゃんと聞きいれてくれてるようだ。

 

 

「そういえばレキ、お前食えないもの無かったよな?」

 

 

「はい。」

 

 

「今日はこんなの持ってきたんだが...っと

てれれれってれー、バラ〇スパワー。」

 

 

「......」

いやごめん。何か言って貰っていい?

渾身のギャグが何も反応ないのって結構辛いんだけど

 

 

「ま、まぁ俺の青タヌキネタは水に流すとして...」

 

 

「青タヌキ?」

やめてぇ!滑ったギャグを掘り返さないでぇ

レキ(お前)の場合は悪意なく聞いてくるから、なお辛い!!

 

 

「こないだスーパーでこれ、見つけてな

カロリーメイト以外これもお勧めしようと思ってな」

 

 

「そうですか...近々試してみます」

俺からスーパーのビニール袋ごと受け取る。

 

 

「おう。そうしとけ」

俺も弁当を食い終え、鞄へと詰め込む

今日も沙耶香の飯は美味かった。ホクホク

 

 

「......」

レキもカロリーメイトを食べ終え片付ける

 

 

「じゃあレキ、後でな。お前はもう少しいるんだろ?」

 

 

「はい。もう少し風を感じてから行きます」

 

 

「そうか。」

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

〜夕方 武偵校・男子寮〜

 

 

 

放課後の狙撃科の授業を終えたタイミングで

俺の携帯に昨日連絡先を交換した神崎からメールが届き

 

 

 

[今日の夕方、男子寮の〇〇号室に来て!]

 

 

 

との連絡を貰ったので沙耶香を連れて愛車で向かうと

指定された部屋の表札には【遠山キンジ】と書かれていたので

キンジの部屋か。と思いながら俺はドアを開ける

 

 

「キンジ、邪魔するぞー」

 

 

「お邪魔します。」

 

 

 

 

 

 

「キンジ!アンタ、私のドレイになりなさい!」

 

 

バタンッ

「......帰るか。」

 

 

「......そうですね。」

安心しろキンジ。俺と沙耶香は何も見ていない。

うん見てはいないぞ。例えお前がロリコンでマゾヒストの

気質があろうとも俺はお前を見捨てたりしない。

 

 

「俺も男だッ!お前の性癖にとやかくは言わねぇ!」

と涙ながらに呟く

 

 

「ちょぉっと待てぇぇぇぇ!!!!!」

突然ドアが開き、キンジが俺の足に掴まる。

 

 

「え?何、神崎に虐められるだけじゃ飽き足らず

俺(男)にも手を出すの?それは流石に距離を取るかなぁ...」

 

 

「違う!違うんだ零也!お前は今大きな勘違いをしている!」

 

 

「いや、してねぇよ?大丈夫だ。俺はお前を理解(わかっ)てるぞ?」

 

 

「れ、零也!そうだよな!お前も俺の気持ちを分かって...」

 

 

「分かってるさ!お前が白雪ちゃんに手を出さなかったのは

お前が幼女趣味で尚且つ責めるより責められる。

要は受け側に回りたかったんだよなッ!」

 

 

「・・・」

俺の言葉にキンジは目を丸くしてから

 

 

 

「誤解だぁぁぁぁ!!!!」

キンジの2度目の絶叫が男子寮に木霊した。

 

 

 

 

〜数分後〜

 

 

 

「で?ドレイってどういう事だよ?」

キンジが疲れを隠そうともせずに聞く

 

 

「ん〜これ本当にコーヒー?

ギリシャコーヒーに似てる気もするけど何か違うような...」

 

 

「これはインスタントコーヒーですからね

豆の保存状態等によって味がよく変わるんです。」

沙耶香が俺とキンジの分のコーヒーも入れて持ってくる。

 

 

「サンキュ...ふぅ。」

もちろん俺が受け取った方はブラックだ

 

 

「悪いな糸見、任せちまって」

 

 

「いえ気にしないでください。」

 

 

「インスタント、コーヒー?」

 

 

「安物って事だよ。」

神崎が頭に疑問符を浮かべながら聞くので簡単に教える

 

 

「なるほどね。」

 

 

「すまん、話を戻してもいいか?」

 

 

「ん、あぁ。そうだな」

 

 

「それで神崎だったよな。俺を奴隷ってどういう事だ?」

 

 

「アリアでいいわよキンジ。私もそう呼ぶから」

 

 

「お、おう。それで?俺を奴隷にってのは?」

 

 

「・・・分からないの?」

 

 

「あ?どういう事だよ?」

 

 

「・・・おかしいわね。アンタなら気付いてると思ったのに」

 

 

「・・・なにを言ってんだよ?」

 

 

「いいえ、なんでもないわ。それに時間の問題だからね」

そのうち気付くでしょ。と続ける

 

 

「時間の問題だかなんだか知らんがな神崎、

俺と沙耶香を呼んだ理由を聞いてねぇぞ?」

 

 

「そういえばそっちも説明してなかったわね。

2人には私からお願いがあるのよ。」

 

 

「お願い?」

沙耶香が首を傾げながら聞き返す

 

 

「私は“修学旅行I(キャラバン・ワン)”の後にチームを

結成しようと思ってるんだけど零也と沙耶香の2人には

そのチームに入って欲しいの」

 

 

「へぇ。面白そうだな」

 

 

「そ、そう!?」

少し食い気味に神崎が聞き返す

 

 

「お、おう。少なくとも俺は面白そうだと思うけど。」

隣に座る沙耶香へと俺は視線を向ける

 

 

「...私は、零也さんが入るなら」

とだけ言って目を閉じる。なんかその仕草レキみたいだな

 

 

「先に聞いとくんだがその答えは今か?」

 

 

「いいえ。しばらく先でいいわよ。

でも少なくとも“修学旅行”までには教えて貰えると嬉しいわね」

 

 

「んっ分かった。しばらく考えておくよ。話はそれだけか?」

 

 

「今日のところは、だけどね。」

そこまで聞ければ充分だ。俺は沙耶香の容れてくれた

コーヒーを堪能してから帰るとしよう。

 

 

 

「それよりもアンタよ、キンジ!」

俺が傍観を決め込むと俺への優しい対応は何処吹く風。

神崎が勢いよくキンジに詰め寄る

 

 

「な、なんだよ!?」

 

 

「アンタ、私と“強襲科(アサルト)”でチームを組みなさい!

アンタと私ならいい線まで行くはずよ!」

 

 

「...悪いが断る。」

 

 

「なんでよ?」

 

 

「俺はEランクだ。お前とは釣り合わない」

普段のキンジとは違って真面目な顔で神崎へと返す

俺も1年と少し過ごしていてコイツの真面目な顔は初めて見たな

 

 

「釣り合うかは私が決める。」

だがまぁ、神崎がそれで折れるかと言えば微妙だけどな

 

 

「自分勝手だな。とりあえず今日はもう帰れ」

呆れたようにキンジが頭をかく

 

 

「沙耶香、コーヒーおかわり。」

 

 

「れ、零也さん、流石に空気を読むべきだと思います」

俺の言葉に苦笑いを浮べつつも沙耶香はコーヒーを容れに離れる

 

 

「お断りよ。アンタが“うん”と言うまでこの問答を続けるわ」

 

 

「ッ断る!俺は“強襲科”に戻る気はない!」

 

 

「いいえ!入ってもらうわ!」

 

 

「嫌だ!」

 

 

「入って!」

 

 

「嫌だよ!」

 

 

「入ってよ!」

 

 

「嫌だって言ってるだろ!」

 

 

「入ってって言ってるでしょ!」

何だこれ。子供の口喧嘩か何か?

 

 

「アホらし。」

神崎は先程からホルスターに手を伸ばしかけるが

恐らく俺や沙耶香が居る事で抜けないのだろう

 

 

「零也さん、コーヒーです。」

 

 

「おう。サンキュ...」

さてさて、コーヒーが来たのはいいが俺は嫌な予感がしてきたぞ

 

 

「絶ッ対に戻らない!」

 

 

「私と組むのよ!」

予感の正体はとりあえず神崎が銃や剣を抜くことではない。

神崎は今やキンジに掴みかかりかねない程熱くなっている

こんな状態で武器を握る程コイツはバカじゃない。ならなんで?

 

 

「いいわよ......//」

考え事をしている間に口喧嘩には決着がついたらしく

神崎がワナワナと震え、顔を少し赤くしながら言葉を繋ぐ

 

 

「アンタが今日中に“うん”と言わないなら」

 

 

「...言わないなら?」

何故だろう。神崎が恐ろしく不穏なことを言う気がする。

それはもう、嵐が可愛らしく見えるほどの...

 

 

 

ガチャッ

「ごめんねキンちゃん、生徒会の仕事で遅くな...」

 

 

「アンタが言うまで泊まっていくから!」

 

 

 

 

 

 

ドサッコロロ...

部屋に入ってきた少女の手持ち袋から落ちた食材が転がる

あぁ、俺の嫌な予感の正体はコイツ(白雪ちゃん)か。

 

 

「キ、キン、ちゃん?その女、誰?」

キンジの部屋の玄関を当然のように開けて入ってきたのは

星伽白雪(ほとぎ しらゆき)】キンジ専用のスーパーヤンデレレディーだ。

 

 

「...沙耶香。逃げるぞ。」

 

 

「...はい。」

目線だけで俺の意図を察してくれた沙耶香は

2人同時にキンジの部屋のベランダへと走り、

 

 

「「それじゃあ(では)キンジ(さん)また明日な!(明日)」」

2人してベランダから飛び降りる。

 

 

 

ダンッダンッダンッ。ナンナノコノオンナ!

ブンッブンッブンッ。キンチャンニツクワルイムシ!

オイ、オレノヘヤデアバレルナァァァァ!

 

 

俺達の耳には昨日一日で聞きなれたガバの発射音と

白雪ちゃんの握る刀が空を切る音が聞こえたのだった。

キンジ、(生きていたら)強く生きろよ。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

〜数十分後〜

 

 

 

「ううぅぅぅぅ!!」

あの後、神崎を送っていくかと考えて

男子寮の入口で待っていた俺達だったが沙耶香が

 

 

「タイムセールの時間なので先に行きます。」

と先に行ってしまい、俺は女子寮まで送ろうと提案したところ

神崎が沙耶香の料理を食べてみたい!と言い出したので

仕方なしにバイクに2人乗りで俺の自宅(マンション)まで

向かっていたのだが......

 

 

「なんなのあの女!沙耶香と同じで弾丸切り出すし

私を“泥棒猫”扱いするだなんて!」

後ろで騒ぐ神崎に大して俺は場違いにも

“神崎ってネコっぽいかも”などと考えていた。

 

 

「ちょっと聞いてるの零也!」

 

 

「あーはいはい聞いてる聞いてる」

なんだコイツ、お互いヘルメットしてるのに耳がキーンとしたぞ

 

 

「それは聞いてない時の反応でしょうが!」

再びハウリングが起きるほどの声で騒ぐ神崎だが

流石にバイクでの移動中に暴れたりはしないみたいだ。

 

 

「つってもなぁ...お前やキンジどっちの味方をする訳でもないが

どう見たってキンジには何か事情があるぞ?それも結構深めの」

 

 

「...そんなの分かってるわよ。

アイツ、あの時だけ目がマジだったもの」

 

 

「それが分かってるならなんであんな事するかねぇ...」

 

 

「ッうるさい!とにかく私はキンジをなんとしてでも

パートナーにしたいのよ!」

 

 

「人生のパートナーってか?」

 

 

「そそそ、それは違うわよ!////」

神崎の顔は見ていないのだがとりあえず赤いんだろうな。

にしてもコイツ、昨日も思ったがイジると面白いな

 

 

 

 

「......ところでさ、聞いてもいい?」

しばらく走った辺りで神崎が突然切り出す

 

 

「なんだ?」

 

 

「アンタと沙耶香ってさ、付き合い長いの?」

 

 

「ん?」

 

 

「いや、沙耶香と零也って目を見るだけで

ほとんど意思疎通出来てたでしょ?だからてっきり。」

 

 

「残念ながら神崎の考えるほど付き合いが長いわけじゃないな」

 

 

「そうなの?」

 

 

「あぁ。時間自体は去年を含んでまだ4年しか経ってない」

 

 

「よ、4年?そんなに短くてもあんなに仲良くなれるの?」

 

 

「仲良くなるのにどれだけ時間が必要か俺には分からんが...

今は言えないからなぁ。まぁその内話すよ」

 

 

「...そう。それじゃあ期待しておく。」

言外に今は言わない。と伝えたんだが神崎は分かったようだ

その察しの良さをキンジの部屋で発動して欲しかったが...

 

 

「質問ついでに俺も聞いていいか?1つ聞かれたし1つ聞く」

 

 

「いいわよ。何が知りたいの?」

 

 

「...こんな事を聞くのはなんたが、お前はやっぱ貴族の娘か?」

ちょうど信号が赤になり、バイクを停車させる

 

 

「ッ、なんでそう思ったの?」

一瞬、俺の体に回された腕の力が強まる。

 

 

「さっきキンジの部屋で俺がインスタントコーヒーを“安物”

って言った時に随分とあっさり納得したろ?それに昨日の倉庫で

16発以上、その後に埠頭で俺が14と沙耶香に16発撃ったろ?

合計で30発。高価な45口径弾をあれだけ撃てるってのは

てっきりお前もそういう立場なのかと思ってな」

 

 

「...よく見てたわね。隠しても仕方ないから答えるけど

確かに私はイギリスの貴族の生まれよ。財源は自分で達成した

依頼(クエスト)”の報酬からも出てるけどね」

 

 

「へぇ。流石“強襲科”だな。っと、あと10分くらいで着くぞ」

信号が変わり、再び俺はバイクを走らせる。

 

 

武偵校における|依頼の報酬は危険度が高いほど上昇し、

俺も一時期“探偵科(インケスタ)”への依頼を受けた事があるが

“強襲科”の“依頼”は“探偵科”に比べて報酬の単位が一桁違うのも

よくある話で、当然学科毎の単位も割合が良い

 

 

「ところで零也、もう1つ聞いてもいい?」

 

 

「断る。武偵なら自分で調べて推理するんだな。

俺は質問を1つって言ったはずだぞ?俺がこれ以上お前に

聞きたいことは無い。それはアンフェアだろ?」

 

 

「じゃあ良いわ。これは私の独り言よ。」

 

 

「・・・」

 

 

「零也はさっき私に“お前も”って言ったわね。私の推理、

と言っても勘だけど零也の家は日本の名家なんじゃない?」

 

 

「・・・」

ご明察。とつい、言いそうになるがこれは“独り言”なので返さない

 

 

「......答えないのね。まぁいいわ“独り言”だからね」

 

 

「・・・」

神崎の言葉に俺はつい考えてしまう。

俺は確かに“明智”だ。だが神崎が言うほど良い家ではない

 

 

 

―もしも、明智が普通の家だったなら―

 

 

 

―俺の立場は変わったのかな。―

 

 

 

 

その後、5分程でマンションへと到着し

神崎の分も用意された沙耶香の晩御飯を3人で食べてから

武偵校の女子寮へ送り返したのだった。

 

 

ちなみに言っておくと沙耶香の料理は神崎の口にもあったらしく

終始幸せそうに食べていた。

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