〜放課後 マンションの屋上〜
『とまぁそんな感じかしらね?』
俺の依頼した内容の調査報告を済ませる少女の声
「...その感じだと神崎はキンジの体質には気付いてそうだな」
『十中八九気付いてるでしょうね、彼の体質、HSSだったかしら
でも風魔ちゃんから聞いた話だと“そういうもの”としてしか
気付いていない様子だって事よ。』
「“女を守る”って気持ちが高まって性的に興奮すると
通常よりも強くなる。だったか?遠山の家も面白い体質を
遺伝させ続けてるもんだな。」
『そうね。それと“武偵殺し”の方だけど過去の事件をまとめた
データをパソコンに送っておいたから確認をよろしくね?』
「ん、了解だ。すまんな、多忙そうな時期に」
『それは言わない約束でしょ?貴方は“明智”で私は“更識”
どっちの家が上かなんて昔から決まってるわ。』
「実働部隊の“明智”と裏工作の“更識”ねぇ。
俺は大して気にならねぇけどな。まぁそういう面倒な所を含んで
“明智”だから仕方ないけどよ。」
はぁ。と大きなため息を吐き、手に持った缶コーヒーを飲む
『貴方がボヤいた程度で変わる家なら良かったけどね。
まぁその辺は貴方が当主になった時に期待しておくわ』
「...あの親父が死なねぇ内は無理だな。
なんなら俺の代わりに殺るか?更識さんよ」
『冗談。昔から私に技術を教えこんだのはあの人よ?
私程度の実力じゃあ背後を取る事すら無理よ。』
「それもそうだな。」
電話口で少し笑うと、相手も笑い返す
『ところで、沙耶香ちゃんは元気?』
「おー元気にしてるよ。今日も体力が有り余ってたのか
朝の鍛錬の素振り4セットを倍はこなして時間忘れてたからな
そっちはどうなんだ?お前の妹。」
『簪ちゃんの事?そうね、まだ私の背中を追い掛けてるのが
残念なところね。あの子にしか出来ない事がある筈なんだけど』
「お前は現場での能力が高いがアイツは裏側でのバックアップ
でこそ輝く人間だからな。長所と短所に気付けばいいが......」
『そうねぇ。その点マドカちゃんはいいわよね〜。
零也くんの背中を追いながら自分の技術を活かすことを
覚えたんだもん。いい子よね、マドカちゃん。』
「あのなぁ?そういう事言うから偶に俺に『私って必要?』
ってヤンデレモードの簪から電話が来るんだぞ?」
『そ、それを言うなら私だって!マドカちゃんに
『私が兄様の役に立つにはどうすればいいでしょう?』
って最近よく聞かれるわよ!』
俺の言葉に少しムキになった声が返ってくる
「・・・」
『・・・』
『「・・・はぁ。」』
俺も電話先の少女も共に妹を持つ身。だが
その妹が自分とはほぼ反対の性格をしているため
どうにも扱いが難しいというのが本音だ
『・・・妹って、難しいわよね。』
「・・・そうだなぁ。」
その会話を最後に俺と少女の電話は切れる
Prrr...
「ん?なんだ?」
だが、電話が切れると同時にメールが届く
『それと、そろそろ一度帰ってくるようにってご当主様から
伝えるようにって言付かってるわ。』
送信元は先程の電話先の少女からでこれまたメールの内容も
予想通りの元であった。
「......『分かった。その内な』っと。送信。」
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〜翌日 放課後 武偵校屋上〜
「んで、結局神崎と組むことにしたわけか。」
俺は隣にいる青年、キンジにため息を隠すことも無く言う
今日はキンジに呼び出されて俺はここにいた。
と言っても普段からレキと飯食ってるからほぼ庭だけどな
「まぁな。そうでもないとアイツ、引かないだろう?
まぁただし組むのは“どんな事件でも最初の一件”だけどな」
俺の言葉にフェンスへ体を預けながらキンジは返す
「それは本気でやるんだろうな?」
「当たり前だろ?“俺の本気”でやるさ。」
この場合の本気はあくまでも“普通のキンジ”の本気だろう
「...なるほどね。まぁいいさお前がそう決めたんならな
俺は反対も賛成もしないさ。好きにしろよ」
「・・・え?」
「なんだその目は?俺に止めて欲しかったのか?」
「な、違う!」
「だろ?なら止めないさ。・・・あぁそれとな?」
俺はフェンスから体を離し、
出口へ向けて歩き振り向くことなくキンジへ向けて話す
「ん?なんだよ?」
「俺はな努力してる奴に水を刺すようなカスは死ねって
本気で思ってる。願わくば遠山キンジがそうじゃないことを祈る」
それだけ言ってキンジの返事も聞かずに俺は屋上を後にした。
「...俺にどうしろってんだよ。」
キンジの悔しそうな言葉を背中に受けながら
『...もしもし?明智か?』
階段を降りながら俺は車輌科所属の男子生徒武藤に連絡を取る
「おう、俺の依頼してた件どうなったかと思ってよ。」
『おう、FCのオーバーホールだよな?それならもう済んでる
今頃貴希がマンションに持ってってると思うけど?』
貴希というのは彼の妹の【武藤貴希】の事だ。
「そろそろ終わったかと思ってな。それはそうと武藤
お前明日の朝は暇か?俺から頼みがあるんだが」
『へぇ〜明智から車の他に頼みってのは珍しいな?報酬は?』
「そうだなぁ...街中の焼肉屋奢りでどうだ?」
『・・・マジか?』
「もちろん。俺は“報酬の面”では嘘つかないぞ?
それともお前への車のチューンで嘘ついた事あるか?」
『・・・いや無いな。分かった車輌科Aランクの武藤剛気様が
その頼み請け負ってやる!何をすればいいんだ?』
「サンキュな。助かるよ。俺が頼みたいのは明日の朝に
キンジと一緒に登校してやって欲しいんだ。」
『・・・?そりゃいいけどよ、アイツって確か乗るバスいきなり
遅くなかったか?下手すっと俺も遅刻するんだが。
つか、なんでいきなりキンジと登校するなんて話になるんだ?』
「遅刻の件は気にしなくていい。自分を優先してくれ。
それとキンジの方なんだが、さっき会った時に体調悪そうでな
一応心配だからよ。アイツ去年は結構欠席多いだろ?」
我ながら良くもまぁこんなにスラスラと“嘘”が出てくると思う
『なるほどな...お前がそこまでキンジ思いだとは思わなかったぜ
分かった。明日はキンジと登校してみるよ。報酬忘れんなよ?』
コイツは本当に友人思いの良い奴だな。と思う。
まぁ今回はその優しさを利用してるわけだから申し訳ないが
「おう。頼んだ」
任せておけ!という武藤の声を最後に通話が切れる
「・・・」
今沙耶香が俺の近くに居ようものなら恐らく
『悪い顔をしていますよ?』
というんだろうな。と自分で考えながら笑みを浮かべる
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〜翌朝〜
Prrrr...
『零也!緊急事態よ。キンジの乗ったバスがハイジャックされたわ』
俺は車輌科棟の車庫でコーヒーを飲みながら時間を潰していた所に
神崎からの電話が入る
「...やっぱり来たか。」
『やっぱり?一体どういう...ってそんな場合じゃないわ!』
「分かってるよ。助けに行くんだろ?」
『当たり前よ!武偵憲章1条!』
「仲間を信じ、仲間を助けよ。神崎はどこにいるんだ?」
『私は今学校の車輌科に向かっているわ』
「ならまだ出てはいないな?車は借りなくていい。
俺と沙耶香も車輌科にいるから途中で拾う。」
『・・・零也。事件が起きたのはさっきなのよ?
随分と用意がいいじゃないの』
「その話を今する時間があるのか?」
『そうね。後で聞かせてもらうわ』
神崎のその言葉を最後に通話が切れる
「準備はOKか?沙耶香。」
「はい。体調は万全です。」
「さぁて、勝負だ。武偵殺し」
俺はアクセルを踏み込み、借りた車両である
防弾仕様の軽トラを走らせた