大正の空に轟け   作:エミュー

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戦闘シーンは雑になっちゃいます……。
やっぱ真菰ちゃんが出なきゃモチベ上がんないですね!(n回目)


拾話 過集中

────鬼殺隊に入隊してから半年が経過した。

 

あれから紫電は約二十の鬼の頸を斬った。鬼殺を重ね、階級が上がる毎に難易度の高い任務が舞い込んでくるのだが、今のところは大きな怪我も無く、滞りなく鬼を狩れていると思う。

まだ十二鬼月との戦闘は経験していないが、紫電の剣技を見た者は皆口々に未来の柱だと持て囃す。

 

当の本人はそんなことなどつゆ知らず、呑気に茶屋で団子を頬張っていた。串に連なる四つの団子は、上から二つがみたらし、下二つがこし餡。一本で二度楽しめる紫電お気に入りの一品だ。

 

「んぐっ。はぐっ。んんっ、みたらしのしょっぱさとこし餡の甘さが絶妙にマッチしてる……美味!」

「黙ッテ食エナイノカオ前ハ………」

 

真っ赤な野点傘の下の椅子に座り、通りを歩く人々を眺めながら紫電は茶を啜った。

 

「……もう、半年かぁ」

「……カァ」

 

『普通の』生活を投げ捨てて早半年。死と隣り合わせの生活にはやはり慣れないもので、何故自分が未だに生きていられるのか不思議でしょうがない。

 

「君とはずっと仲良しでいたいよねぇ」

「ナラモット静カニスルコトヲ覚エルンダナ」

「辛辣ぅぅ!」

 

鬼殺隊に入ってから最も長い付き合いの鴉につつかれて、紫電は涙目だ。

 

「……今回ノ任務ハコレマデト同ジダナンテ思ウナヨ」

「……ああ。分かってる」

 

脅すかのような口調の鴉に、務めて冷静に返す紫電。

 

先日、任務に向かった鬼殺隊員十数名が帰らぬ人となった。

たった一晩で、だ。

強力な鬼────十二鬼月の可能性も有りうる危険な任務が紫電に言い渡された。

 

「でも怖いなぁぁぁぁぁぁぁ!!どうしよう十二鬼月だったらどうしよう俺絶対殺されちゃうよぉ瞬殺だよぉ!!」

「……煩サイ」

 

しくしくと涙を流しながら団子を頬張る紫電に、道行く人々は冷たい視線を投げかける。鴉は何だか居心地が悪くなって、紫電からやや距離を置いた。

 

十二鬼月。鬼舞辻無惨の直属の配下の埒外な鬼共。

理に反した妖しき術を使いこなし、殺戮の限りを尽くす巨悪たち。

その上弦の鬼ともなれば、鬼殺隊を根本から支える『柱』ですら無事では済まないと云われる程の圧倒的力の差。事実、上弦の鬼は百数年の間顔ぶれが変わっていないという。

紫電も何人かの柱と共に任務をこなしたことがあるが、彼らは半分人間を辞めているのではないかと思うほどの絶技を披露してくれた。それでも尚、上弦の頸にその刃が届くことは無いのだと。

 

「俺、今日死ぬかもなぁ……」

 

下弦の鬼ならまだ戦いようはあるかもしれないが、上弦の化け物と遭遇してしまえば今の紫電など息をするかの如くいとも容易く秒殺されてしまうだろう。

未だかつて無い程に死を身近に感じ背筋が冷える。

 

「鴉くん……爺ちゃんによろしくね……。真菰ちゃんにも………」

「弱気ニナルナ!」

「いててててッ!いってぇ!!啄むことないだろだから痛いんだってばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

もう何度こんなやり取りを繰り返したか分からない。

相も変わらず煩い紫電を置いていくかのように鴉が飛び立つ。

 

「いてて……。もう行くの?」

「ココカラ少シ距離ガアルカラナ」

 

啄まれた頬を抑えながら立ち上がり、鴉を追う。

時刻は間もなく夕方を迎えようかといった頃。

あと数刻もすれば夜がやってくる。鬼の時間だ。

 

もしかしたらこれが最期のお団子だったかもしれない。

もうちょっと味わって食べれば良かったかな、なんて思いながら苦笑する。

今日の鴉は飛行速度がほんの少しだけ遅い気がした。

 

「鴉くん………!もしかして……俺と少しでも長く一緒にいたいから……!?」

「…………」

 

絡むと面倒臭いことは経験上知っているので、鴉は無視することにした。「ひどいよぉぉぉぉぉぉ」と喚く紫電の叫び声が夕空へと溶け込んでいく────。

 

 

 

 

###

 

 

 

 

「……酷い」

 

夜。月明かりの銀光が照らし出したのは、まさに地獄絵図と言うに相応しい悲惨な光景であった。

鬼殺隊員の屍が、広大な樹海の木々に己の日輪刀で縫い付けられて磔にされている。滴った血は赤黒く固まり、地面に転がる内臓も腐敗を始めていた。

 

さしもの紫電もあまりにもグロテスクな光景に言葉を失った。

鼻腔を突き抜ける鉄錆と肉が腐ったかのような異臭。どうにか吐気を抑えて血の海と化した樹海を進む。

 

その道すがら、紫電の見た死体は十六にも及ぶ。その全ての身体に剣を突き刺したかのような痕が無数に点在していた。鴉からの報告通りの人数だ。これほどの数の隊員をたった一晩で葬ったとなると、やはりここ居座る鬼は十二鬼月と見て間違いないだろう。

 

ふと、前方からゆっくりと近づいてくる気配を感じ、紫電は刀の柄を固く握りしめた。

 

(鬼か──!?いや、でも殺気は感じない………)

 

薄闇の中から現れたのは、満身創痍の鬼殺隊員の男だった。

先程見た死体と同じく、身体中のあちらこちらに細い風穴が空いており、とめどなく血が溢れ出ている。

 

「ぁ………あぁ……だ、れか……」

「だ、大丈夫ですかっ!?酷い怪我だ……!いま、手当するんで取り敢えず……」

 

懐から気休め程度の治療薬と包帯を取り出し、男に駆け寄ろうとして。

 

「は、し……ら」

「え?」

「……柱を………呼んで………く、れ…………」

 

それだけ言うと、事切れたかのようにその場に崩れ落ちる。その背中には、恐らく彼のものであろう日輪刀が深々と突き刺さっていた。

弾かれたように駆け寄り、男の脈を確認するも────。

 

「………ッ」

 

死んだ。今まさに目の前で、同士が。

悔しさや無力感に打ちひしがれている場合など、ありはしない。

 

新たに近づいてくる気配に、今度こそ紫電は総身を震わせた。

首筋に氷刃を押し当てられたかのような感覚。死神の鎌に己の頸が乗せられているかのような錯覚。背筋を伝う冷や汗は氷のように冷たい。死だ。死が、今目の前に迫っている。

 

「おやおやまあまあ……」

 

細身で長身の、男だった。

舶来のスーツに身を包み、漆黒の外套を羽織った、どこか近代風な出で立ちの男。切れ長の瞳は酷く冷淡。鋭利なナイフを彷彿とさせる雰囲気。

直感が告げている。コイツは今までの鬼とは違う。危険だ、と。

 

「また新しい剣士さん。自ら死地に飛び込んでくるお馬鹿さんは君だね?」

 

物腰柔らかに喋っているくせに、その声音の裏に見え隠れするのは紛いようもなく殺意。

 

「うん……?怯えているのかな?………いいや、違うな。君は──────」

 

────雷の呼吸 壱ノ型『霹靂一閃』

 

先手必勝。掻き消えるように紫電が動く。

雷の呼吸、その最速の技。神速の踏み込みから放つ居合が、目の前の鬼の頸目掛けて真一文字に伸びて────途端、紫電は攻撃を中断し、大地を蹴飛ばして強引に直進の軌道を真横にを変えた。直後、紫電の前方に突き刺さる紅色の剣。あのまま直進していれば紫電の体は真っ二つになっていたであろう。

地面を転がり、起き上がると同時に刀を構えながら後ろに跳躍。鬼との間合いを確保する。

 

(何も無い虚空から剣が現れた────!?あれが奴の血鬼術か!)

 

まさか回避されるとは思っていなかったであろう鬼は、一瞬驚愕の表情を浮かべたが、直後に破顔する。

 

「はははは!見事な体捌き!そして危険察知能力!私の血鬼術を初見で躱したのは貴方が初めてですよ!いやぁ、めでたい」

 

鬼がパチンと指を鳴らすと、その背後に紅色の剣が五本現れる。その切っ先は紫電へと向けられている。

 

「それが、お前の血鬼術……。その剣で、沢山殺したのか!」

「ええ。実は私、鬼になったのはほんの一月ほど前なんですよ。でもこの血鬼術をあの御方にご覧になって頂いて、沢山人を殺したら────」

 

その眼球を回転させ、そこに刻まれた文字を見せつける。

────下弦の弍。

 

十二鬼月、下弦の弍。

 

「入れ替わりの血闘で先輩に勝っちゃって。所謂スピード出世です。あははは」

 

くい、と人差し指を紫電へと向けると、それが号令となり、虚空に浮かぶ紅剣が紫電へと殺到する。

 

「雷の呼吸 弍ノ型『稲魂』!」

 

高速で飛来する剣を、紫電の正確無比な五閃が叩き落とす。甲高い金属音の後、紅剣が霧散し姿を消す。一定以上の衝撃を与えれば破壊が可能ならしい。

 

「お見事、です。ふふ、やはりそうですか」

「……何が」

 

お見通し、と言わんばかりの表情を向ける鬼に、紫電は訝しげな視線を投げて寄越す。

 

「いやぁ、何。貴方も『こっち側』の御方なんだなぁと思いまして」

「……『こっち側』、だと?どういう意味?」

 

いまいち要領を得ない紫電に、鬼は優しく笑いかける。けれどもその笑みに温度は乗っておらず、酷く淡白に見えた。

 

「ふふふ、か弱い子羊のフリをしていても私の眼は誤魔化せませんよ。貴方の瞳の奧で煮え滾る復讐への渇望。五臓六腑を焼き切るほどの強い怒りが貴方の中で渦巻いている」

「……はァ?」

 

したり顔で紫電を見下す鬼に、紫電は心底嫌悪感を抱いた。何を知ったふうに口を聞いてるんだ、コイツは。呆れてものも言えない。

 

「人を殺すことを厭わないタイプの人間……。欲望を満たす為の犠牲を厭わないタイプの人間……。私には貴方がそう見える。私達『鬼』と同じ何かを感じますねぇ」

「適当言うなよ。お前に何言われても、全然響いて来ないから!」

「構いませんよ。ですが断言します。貴方はきっと『こっち側』の人間だ」

「巫山戯ろよ────!!」

 

再び紫電が鬼へと肉薄する。電光石火を体現したかのような目にも留まらぬ疾走。虚空に現れた剣を斬り捌きながら進む。

飛来する剣をひらりと躱しながら跳躍。鬼を一足一刀の間合いに捉える。

 

雷の呼吸 参ノ型『聚蚊成雷』

 

高速回転から放つ雷撃の波状斬撃が容赦なく鬼へと襲いかかる。紫色の斬撃が螺旋を描きながら迫り来るのを、鬼はことも無さげに見遣り、右手をかざす。すると虚空から数十という紅剣が現れ、紫電の放った技と衝突──相殺。

 

「私の名は赤刃(せきば)。どうぞお見知り置きを」

「知らない!お前みたいなやつは俺知らないからぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

咆哮する紫電を冷徹に見下ろし、赤刃は口角をゆったりと持ち上げた。さあ、どう抗って見せてくれる?

 

 

 

 

###

 

 

 

 

 

「あははは!逃げてるだけではどうにもなりませんよ!?」

「くっそ────!」

 

樹海を疾走する紫電。それを追従するかのように紅剣が宙を舞う。

下弦の弍、赤刃との戦いは劣勢を強いられていた。

無限に現れる紅色の剣。刀の間合いの外から飛来するそれらを躱しながら距離を詰めることはほぼ不可能だ。斬っても斬ってもキリがない。

逃げに徹している結果、こちらの体力だけが削られていく。樹海の木々が壁の役割を果たしてくれているものの、やはり全てを去なしきることは出来ず、徐々に傷が増え疲労が蓄積される。

 

紫電を追うようにして木の枝から枝へと跳躍しながら剣を生み、その全てを余すことなく紫電へと放出する赤刃。

降り注ぐ紅色の雨。木に、大地に、無数の風穴が穿たれ、けれど紫電を仕留めるには至らない。

 

(もどかしい……。もっと剣の数は増やせますが、地形が彼に味方していますね)

 

乱立する木々と激しく起伏する大地が剣の軌道を邪魔している。鬱蒼と生い茂る樹木の中を一陣の風の如き疾走で駆け抜け、迫り来る無数の剣の嵐を無傷とはいかずとも致命傷を避けながら防ぎ続けている紫電の実力は見事としか言い様がない。

 

これまで一方的な虐殺しか体験した事のない赤刃にとって、この状況は非常に充実したものとなっていた。

 

「楽しい……ッ!一方的に嬲るのもなかなかのものですが、こうして死力を尽くさねば勝利を掴めぬ緊迫した戦いも乙なものです!」

「っざけんなよお前ぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!何が緊迫した戦いだよ!?一方的に俺が嬲られてるじゃん────!」

 

幾度となく繰り返される剣戟。未だに突破口を見い出せない紫電は歯噛みする。

 

(せめて一瞬でも隙が出来れば────!)

 

息付く間もなく飛来する数多の剣が、紫電の雷の呼吸封じ込める。技を繰り出す暇もない。

 

赤刃の血鬼術は己の血を空気中に散布し、それを剣に変換するというもの。どれだけ血を流そうとも枯渇することはないので、その命が果てるまで無限に剣を生み出すことが可能だ。実に単純だが、刀の間合いに入り込めなければ勝機の無い剣士にとって、間合いを制されるのは致命的。勝ち筋はほぼ無い。

 

「────ッ!」

 

左肩を突き抜ける激痛。捌き損なった剣が紫電の左肩を撫で肉を抉る。すぐさま呼吸により患部の痛みを軽減させるが、それが一瞬の隙となり、続けざまに飛来する剣の嵐が紫電を少しずつ刻みつけ、血飛沫を巻き上げる。

 

「疲れが見えてきたようですねぇ!さあさあ、はやく立て直さないと串刺しですよ!」

 

右脚を穿く一閃。今度こそ赤刃の剣が紫電を捉えた。肉を穿たれる鈍い感覚。続けて左脇腹に剣が突き刺さる。

 

「がッ────、はっ……ッ」

 

身を内側から焦がすかのような灼熱が徐々に全身に広がる。熱い筈なのに、体は急激に冷めていく。血の塊を口から吐き出し、赤刃を睥睨する。

今の間に紫電にとどめを刺さなかったのは彼の慢心だろう。

 

「あははは!勝負ありですね!いやぁ、鬼になってから一番楽しかったですよ。ありがとうございます」

 

とめどなく血が溢れ出る。たたらを踏みながら、それでも倒れないのは紫電の男としての意地か。

 

「しかしまあ、疾いんですね貴方は。雷の呼吸使いは皆そうなんですか?」

「うる……さ………い…………」

「つれないですねぇ。最期のお喋りですよ?もうちょっと楽しみましょうよ。……ああ、もうそんな元気もありませんか」

 

紫電との距離を保ったまま、赤刃が剣を生み出す。虚空に漂う一振の紅剣。

 

「楽しませてくれたお礼です。一息に殺して差し上げます」

 

そうして迫り来る紅色の剣を、紫電はやけに冷静に眺めていた。

────その呼吸が、一層深まったのには気づかずに。

 

(あれ、何でだろう。痛みが消えた)

 

焼き付くような激痛が迸っていたのが嘘のようだ。それどころか、やけに身体が軽く感じる。血の流しすぎで体重が軽くなったのかな、なんて呑気な事を考えれるほど、紫電には余裕のようなものがあった。むしろ身体中を蝕んでいた痛みが心地よい。

 

そして何より、流れゆく景色がやけにゆっくりと映った。迫り来る紅剣はまるでスローモーションのように遅い。

 

────過集中。

 

現代の言葉で言う『ゾーン』のようなもの。

 

極限の集中力が限界を突破し、時が止まったかのような錯覚を覚える。感覚が研ぎ澄まされ、今なら何だって出来るような気がする。

飛来する紅剣が己の体に達するよりもはやく、紫電は日輪刀を振るった。

 

「まだ、動けて────」

 

気づけば紫電は駆け出していた。残像すら置き去りにする疾風迅雷の躍動。一瞬だけ紫電の姿を見失った赤刃が慌てて剣を生成するも────

 

雷の呼吸 伍ノ型『熱界雷』

 

斬り上げた紫色の斬撃は、理に反して大地から天へと昇る雷鳴のよう。ここに来て初めて反撃に転じた紫電に驚く赤刃は、為す術なく雷撃の餌食となり、上半身と下半身が二分にされる。

 

「あぁぁぁぁぁ────ッ!?」

 

慣れない痛みに絶叫する赤刃に高速で肉薄する紫電。飛来する剣の嵐をことも無く斬り伏せていく。

 

「馬鹿な────!?さっきまでは対応できていなかったのに────!!」

 

超集中状態の紫電の眼には、赤刃の剣の嵐など止まっているようにしか見えなかった。さも当然のように虚空を飛び交う剣を叩き落とす。まるで、予め道筋が決まっているかのような、一切の迷いなき斬撃。

 

「と、止まれ──!止まれぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

狂ったように咆哮し、ありったけの紅剣を紫電へ放つ。

 

(……遅い)

 

────雷の呼吸 陸ノ型『電轟雷轟』

 

紫電が刀を振るった、刹那。紫電を中心に巻き起こる稲妻の嵐。夜の闇に覆われた樹海を照らす雷鳴の極光が世界を明滅させる。紫電の乱舞。雷神の咆哮。容赦なく放たれた雷の呼吸最強の技が、一瞬にして紅剣ごと赤刃を蹂躙した。

 

「ば、かな……ッ!?」

 

頸を落とされた赤刃は、悪夢でも見ているかのような表情で紫電を双眸に映す。どこまでも酷薄な表情の、目がいったのは口元。

 

「ああ、やはり貴方は『こっち側』だ……」

 

上がった口角を見て。

それが赤刃の生前見た最期の光景となった。

 

 

 

 

 

 

###

 

 

 

 

「彼は蝶屋敷に。はい。重症です」

 

蝶の髪飾りをつけた女性が、件の樹海へと足を踏み入れたのはほんの少し前だった。

恐らく十二鬼月と交戦中であろう剣士の鎹鴉が偶然にも女性を見つけ、応援を要請したのだ。

急いで来てみれば、耳を劈く落雷のような轟音。その音の方向へと向かうと。

 

「凄いわね。柱でもない隊士が十二鬼月──下弦とはいえ、単独で撃破するなんて」

「『花柱』様、亡くなった隊士は我々が対応しますので、どうぞお戻りください」

「わかりました。任せます」

 

黒子のような衣装の『隠』の隊士に促され、花柱様と呼ばれた女性は帰路に着く。

今しがた隠に運ばれた少年の後を追うように駆け出した。

 

 

 

 

 

 




次回から皆さんお待ちかね(?)胡蝶姉妹の登場です。
原作では絡むことになかった真菰ちゃんと胡蝶姉妹がどのように関わっていくのか、そして胡蝶姉妹にとってのXデーがどのような結末を迎えるのか、期待せずお待ちください()

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