が、この主人公がどのような出来事を体験し、どのように変わり果てていくのか、よろしければ見届けてください。
たくさんのお気に入り、評価感想誤字脱字報告、毎度毎度感謝です。
全国の真菰ファンの皆!ありがとう!
それではご唱和くださいッ!
『真菰は可愛い』ッッッッ!!!
「えっと、ここで合ってますかね」
刀鍛冶の里の鍛冶師である鉄穴森鋼蔵は、自らが打った日輪刀を背にとある山の中の民家を訪れていた。
ひょっとこのお面をつけた風変わりな出で立ちは、刀鍛冶の里の風習のようなもの。道行く人達から訝しげな視線を向けられたが、もう随分と慣れたものだ。
「桑島紫電殿……。かつて『鳴柱』として名を馳せた桑島慈悟郎殿のお孫さん……。将来有望な剣士の刀を打てて私は幸せ者です」
うっとりとした表情で日輪刀が収められた木箱を撫でる。雷の呼吸使いの刀を打つのは初めてだったが、鉄穴森の中では会心の力作だった。ああ、早く色が変わる瞬間をこの目に焼き付けたいと高鳴る鼓動に身を任せ、玄関の戸を叩く。
「ごめんくださーい。刀鍛冶の里から参りました。鉄穴森鋼蔵と言う者なんですが」
すると中からドタドタと床を鳴らす音が聞こえてくる。
戸の裏に人影が映った。
ガラガラと勢いよく戸が開かれる。
中から現れたのは、無造作に跳ねたくせっ毛に紫色の瞳が特徴的な少年────桑島紫電。
「はーい、どちら様で────」
「ああ、私は鉄穴森と申します。桑島紫電殿の刀を────────」
木箱を背から体の前に回し、紐を解く。体の前に持ってきて、そっと、割れ物を扱うかのように紫電へと差し出して……
「うぎゃぁぁぁぁぁああああああひょっとこぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!?!?」
「あっ」
まさかの来客に絶叫し、吃驚した紫電は思わず鉄穴森を突き飛ばしてしまう。その拍子に鉄穴森が持っていた木箱は勢いよく空中へと投げ出され、地面へと叩きつけられた。
ガシャン!と、木箱にしては重厚な音が響く。
もしや中に何か大切な物が入っていたのでは?
そう考えた紫電は取り敢えず謝っておく。
「えーーっと……すいません?」
「この……この糞餓鬼ぃぃぃぃぃぃぃ!!ぶっ殺してやる!!!!せっかく打った刀に何しくさってくれとんじゃわれぇぇぇぇぇぇぇぇッッ!!」
「えぇぇぇぇぇぇえ!?何なのこの人怖いよぉぉぉぉぉぉぉぉ!?というかお面付けた人の割合が多いんだよ最近ッ!!え、待って待って首絞めないで死ぬぅぅぅぅぅ!!おぇっ。────あれ?三途の川の向こうで手を振ってる君はもしかして……?」
激昴する鉄穴森に首を絞められた紫電は一瞬生死の境を行き来した。
「なんじゃあ朝から煩いのぉ……って、しでぇぇぇぇぇん!?」
鬱陶しそうに顔を顰めながら出てきた慈悟郎も、目の前で繰り広げられる阿鼻叫喚の地獄絵図に両眼をこれでもかというほど見開いて叫ぶ。泡を吹きながらパクパクと口を動かす瀕死の紫電を見るや、咄嗟に地面を蹴飛ばし、可愛い孫を殺す勢いで首を絞め、前後左右に振り回す鉄穴森へと飛び蹴りを喰らわせる。
「儂の孫に何しとんじゃぁぁぁあああ!?」
「ぐぁぁぁあああ!!」
「ここは何処?目の前に綺麗なお花畑が広がってるよぉ」
朝一番から騒がしい桑島家。
朝日の温かな日差しが大地を照らし、世界を覆っていた夜の闇を後退させる。
鱗滝と真菰が狭霧山へと帰った、三日後の朝だった。
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「いやぁ、朝からお騒がせして申し訳ないです」
「ほんとだよこのひょっとこぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!危うく死にかける所だったんですけど!?!三途の川と綺麗なお花畑を見せてくれてどうもありがとうッッ!!!このご恩はぜぇったい忘れないからなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?!?いや、俺が突き飛ばしちゃったのが悪かったんですけど申し訳ございませんでした!!」
この鉄穴森という男、第一印象が最悪だったが、喋ってみると落ち着いた大人の男性であった。声音は優しく、語りかけるかのような口調。人はきっかけさえあればあそこまで豹変してしまうらしい。
居間へと座り込んだ三人。お茶を飲み、一段落したところで鉄穴森が切り出す。
「今日は紫電殿の日輪刀を持ってきたんです」
「ほう、紫電よ。ようやくだな」
「私的にもかなり……いや、過去最高傑作と言っても過言ではないほどの会心の出来です」
「期待が高まるのう」
「雷の呼吸の剣士の刀を打つのは初めてだったんですが、速力特化の技を使うと聞いたので、刀身はやや短めに。あらゆる無駄を省き、刀本来の強度を保ちながら、極限まで軽量化させた極上の一振りです」
言うや、鉄穴森は木箱の蓋を開け、中から日輪刀を取り出す。
恐らく雷を意識したのだろう、雷雲のような漆黒の鞘。粗は無く、刀を抜き放つ際には非常に握りやすい。
続いて刀。鯉口を切り、ゆっくりと抜き放つ。鉄穴森が言う通り、驚くほど軽い。
鉛色に鈍く光る刀身。
「さあ、色が変わりますよ」
日輪刀──またの名を『色変わりの刀』。その刀を扱う者の呼吸にその色は左右されると聞いたが、紫電はいまいちぴんと来なかった。
刀を握っただけで色が変わるのだろうか、と。
しかしその疑念は一瞬にして晴れることとなる。
紫電が日輪刀を掲げると、徐々に刀身に色が入り込む。
その様はまるで、紫電の心の内が刀身に乗り移っているかのようにも見えた。
「うわぁぁ……」
「これはこれは……」
「ふむ……『紫』か。そしてこの模様……」
日輪刀の色は十人十色。例え同じ呼吸使いであっても、その色は微妙に違い、全く同じ色に変化する日輪刀は無いとさえ言われる。
紫電の場合は『紫』。ただでさえ珍しい色であり、それに加え『刀身に罅が入ったかのような、雷色の無数の稲妻模様』が浮かび上がる。
「慈悟郎殿……。紫電殿は雷の呼吸使いなのですよね?」
「ああ。儂と同じでな」
「で、あれば……黄色やそれに近い色に変わる筈ですが……」
「紫電よ。その日輪刀で技を放ってみろ。鉄穴森に見せてやれ」
縁側の向こうを顎で示す。
促されるまま庭へと出た紫電は、抜き放った紫色の刀を構える。
────シィィィィィィィ。
黒雲の中で雷が弾けるかのような呼吸音。
極限まで高められた集中力。あまりの迫力に気圧される鉄穴森は、大気が、大地が、震える錯覚をその身に覚えた。
「ここから先は瞬き厳禁じゃ。しかと目に焼き付けるんじゃぞ。未来の『鳴柱』の剣技をな」
「はぁ…………剣術に明るくない私でも、一切の隙が無い構えだって分かります。絵になりますねぇ」
「雷の呼吸 弐ノ型『稲魂』」
そして放たれる神速の五連斬撃が虚空を斬り裂き、直後に轟く雷鳴の音。その斬撃の軌跡は紫。なるほど、彼の刀の色が紫たる所以はそこにあったのか。
「……紫の雷が見えました。何をしたんですか?彼……」
「まあ、よほどの眼を持ってないと視認することすら難しい剣速だ。今の刹那の合間に五回斬り込んだ」
「五回!?」
鉄穴森が驚くのも無理は無い。かく言う慈悟郎も目で追うのでやっと。紫電の技は最終選別が終わってからも尚進化を続けている。
「鉄穴森さんっ!この日輪刀、すっごく軽くて振りやすい!俺の為にこんな素晴らしい刀を打ってくれて、本当にありがとうございます!」
縁側に腰掛ける鉄穴森に駆け寄り、笑顔で告げる紫電。
ああ、何て鍛冶師冥利に尽きる子なんだろう、と喜びが湧き上がってくる。
「いえいえ。それが我ら鍛冶師の仕事ですから。どうかその刀で多くの人の命を救ってやってください。私の打った刀で紫電殿が沢山の人の命を救う────これほど嬉しいことはありません」
ひょっとこの面の所為で表情こそ見えないものの、きっとその顔は満面の笑みだろうと容易に想像出来た。
「紫電。鬼殺とは孤独な戦いだ。戦う時は何時だって一人だ。だが忘れるな。その場に居なくとも、お前を支えてくれる人は沢山居る。戦場では一人でも、お前は独りでは無い。その刀で悪鬼を滅せ」
「慈悟郎殿の言う通りです。刀はどれだけ大事に扱ってもいずれは折れます。その時はまた、私があなたの為に刀を打ちます。こんなことでしか支える事は出来ませんが、どうか一秒でも長く生き、一人でも多くの人の命を救ってください」
「爺ちゃん……鉄穴森さん……!」
感動に震える心が胸の内に温かな感情を流し込む。
そして誓う。この刀で、技で、悪鬼を滅してみせると。
────あいつを、この手で討ち果たすと。
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断片的な夢を見た。
『……今すぐに……立ち去るなら……見逃してやる………』
『あなただけでも逃げて!!』
『姉さん……!でも……!』
『繋いで。私たちの命を──────』
気づけば駆け出していた。
逃げ出していた。
逃げすがら聞こえた、姉の声。
『助けて──────』
その声が脳裏にこびりついて離れてくれない。
助けられなかった。自分が弱かったから。
恐怖に屈し、最愛の姉を見殺しにしてしまった。
自分は弱い。だから、姉を助けることが出来なかった。
その時の後悔が柵となって襲いかかる。深い闇となって覆い被さってくる。だから、こんな後ろ向きな人間になってしまったのかな、なんて。
ああ、酷い夢だ。
雑短編おまけ(雑)『狭霧山三番勝負未来捏造if〜それは狡いよ鱗滝さん〜』
一番手 炭治郎の場合
「紫電さん!狭霧山三番勝負なんてついさっき聞きました!そんな習わしは絶対に無かった思いますが、恩師であり敬愛する鱗滝さんのお願いとあらば、正々堂々、男として戦います!」
「炭治郎、余計な事を言うんじゃない」
「炭治郎……鱗滝一門男衆の中で唯一の良心だよぉ」
『嘘が付けない真っ直ぐな長男』
二番手 義勇
「真菰は(以前、紫電に結婚を申し込まれたと幸せそうな顔で俺に教えてくれた。あの顔はどこかで見覚えがあると思ったが……そうか、蔦子姉さんだ。やはり、女性にとって愛する者からの求婚ほど嬉しいものは無いのだろう。むふふ、紫電め。ようやく男としての甲斐性を見せたか。お前ならきっと真菰を幸せにできる。俺を倒し、先生に打ち勝ち、真菰と結婚してみせろ。本来ならば大手を振って結婚に賛成したいところだが、敬愛する先生のお願いだからな。そもそも、この程度の試練を乗り越えれぬようでは幸せなど掴める筈は無い。故に、八百長試合をするつもりは無い。正々堂々、男として。柱として。真菰の兄弟子として。全力でお前を負かしにかかるぞ、紫電。こう見えて俺は負けず嫌いだからな。勝負事となれば、本気で勝ちにいく。先生の跡を継いだ『水柱』として、負けようものなら先生の顔に泥を塗ってしまう。この勝負)俺が頂く」
「まさかのライバルぅぅぅぅ!?」
『相変わらず言葉が足りない義勇』
大将 鱗滝さん
「勝負の前に一つ聞かせろ、紫電。お前はこの先、真菰を悲しませないと誓うか」
「当然です!」
「そうか……。ここからは独り言だから聞いても聞かなくても構わない。……お前が儂から一本取るということは、儂は少なからず怪我を負うという事だ。そんな儂を見て、真菰はどう思うだろうな。父が血を流す……。心優しい真菰の事だ。心を痛め、悲しむに違いない。さて、紫電。お前は先程真菰を悲しませないと誓ったな。儂に勝つということはそういうことだ。己の誓いを果たせぬ男に真菰はやれん」
「汚ねえぞこの天狗ジジイ!!え、なんであんた真剣持ってんの!?普通木刀でしょ!?俺の事殺しに来てるよねぇ!?真菰ちゃんを嫁に出すつもり皆無だろッ!?」
『一番手汚い手を使う過保護な鱗滝』
※あくまで捏造です。
次回は初任務に出発です(予定)