ちょっと悪いひとたち ~さらば北方深海基地よ!~ 作:シャブモルヒネ
うっすらと立ちこめる霧のなか、2人の深海棲艦が対峙している。
元『大鷹』の深海棲艦、護衛棲姫。
元『照月』の深海棲艦、防空棲姫。
真っ赤に染まる大ホッケ海に緩やかな風が吹く。
照月は私の姿を認めると、即座に姿勢を変えた。
私の決意を察知したのだろう。
だらんと垂らされた腕はあらゆる事態に対応するための迎撃姿勢。彼女はすでに理解している。私が何をしにここに現れたのかを。
それでもあえて確認しなければならないことがあった。
「――あの霧が見えますか」
視線をゆっくりと左端から右端まで動かした。
四つの島々の外側。そこには、いっそ白煙と呼ぶほどの濃い霧が立ち込めている。
「あの中に叢雲たちは居ます」
「そうですか」
「彼女たちはもう進むことも戻ることもできない。このままにしておけば死にます」
「そうなるでしょうね」
照月の声色は平坦だった。
……知っている。彼女はとっくの昔に覚悟を決めている。
幌筵泊地の仲間たちを守ることを最優先とし、それ以外を些事とする。
今の私だってそうだ。
叢雲と浜波を救うためにここにきた。そのためなら例え同じ境遇の娘だろうと容赦しない。
目を逸らさずに宣言する。
「私はこの霧を取り払う。北の魔女を復活させる」
照月も逸らさない。
応じるように胸を張る。
「させない」
敵意と呼ぶにはあまりにも鋭い視線がぶつかった。
怒りは無かった。憎しみも無い。
正義感よりも使命感よりも色濃い熱が放射され、肌がちりちりと焼けていく。
これは意志。
2つのまったく同じ願望がぶつかり合っている。
私は、叢雲と浜波を助けたい。
照月は、幌筵泊地の仲間たちを助けたい。
私はあなた。あなたは私。
互いに相手が折れないであろうことを知っている。
だからこれは約束された開戦への手続きだ。
告げる。
「どけ」
照月は即答する。
「断る」
……知ってたよ。
こうなることは知っていた。
もはや問答は無用。
火蓋は切って落とされた。
即断。すでに空中に待機させていた鷹型艦載機たちに命令を下す。
海面すれすれに展開し、同時に別働の高高度隊を更に上昇させ、私自身も波を駆けて飛びだした。
敵の艤装から突き出した針鼠のような機銃が揃って私を凝視する。
来い。全て潜り抜けてやる。
前のめりに海面を蹴りつけて弧の字を描く。
防空棲姫から4inchの殺意がばら撒かれ、波が穿たれ飛沫が散っていく。一つ一つを浴びながら鷹型艦載機の機首を微調整、波を擦りながら左右に展開する。
2つに分けた艦載機群、さらに高空のものも合わせて合計3つの群。それらを更に分割して操作する。
「……っ」
頭が処理しきれない。神経がささくれ立ってくる。
普通はこんなに分けない。艦載機はほとんど固めて運用するもので、その単位も並は1群、ベテランでも2群がせいぜいだったのだ――赤城さんがもっと増やせと言いだすまでは。
――なんでもアメリカさんは『FBA連合』とかいって艦戦・艦爆・艦攻を連携させて運用してるみたいですよ。だったら当然、うちもできますよねぇ?
そんな馬鹿な、と思ったのを覚えている。
だって意識を3つに分割するって普通に考えておかしいだろう。
そもそも艦載機は地面を走らせるラジコンとはわけが違う。3次元運用なのだ。運動エネルギーと位置エネルギーをリアルタイムで把握して、目標に攻撃を命中させるための軌道を計画し、対空射撃を回避する余地も残さなければならない。それを群の数だけ操るのがどれほどの至難の業か? 知らない赤城さんでもあるまいに。
更にいえば、そこに空母である自分自身の航行もこなさねばならない。空に意識を向けすぎて自身が被弾してしまうのは空母初心者のあるある話だ。
私は今でも忘れない。
大湊を視察で訪れたアメリカ空母娘が一航戦仕込みの訓練を見て、一言、「crazy...」と呟いたのを。聞けばアメリカ様がFBA連合とやらを仕掛けるのは攻撃のときのみで、常時別働として動かすなんて頭おかしいんじゃないかジャパニーズは……とか言ったらしい。
本当に理不尽だった。
でも赤城さん。鬼でいてくれてありがとう。
血の小便を流すほどシゴいてくれたおかげで今の私は4つの群を操れる。
そして更に、
「――ッ!?」
鷹型艦載機、翼を広げて空中で急停止。
射撃を鼻先でやり過ごし、ひらりとホバリング、そして上に斜めに後方に散開する。
通常ありえない軌道に防空棲姫が驚愕する。
こんな曲芸ができるようになったのも加賀さんのおかげだ。
――あなたたちの仕事は、想像すること。もしもに備えられなかったとき、あなたたちは仲間を殺すんです。いいですか?
戦い方に正解は無い、常に最善を模索しろ――
加賀さんのくれたその薫陶が、私に深海棲艦特有の生物型兵器の特性を活用する未知の荒野を開拓させた。
超低空と超高空、おおまか2つに別れた艦載機群に防空棲姫が迷いを見せる。
どちらも機銃を当てにくい。
その僅かな時間の分だけ超低空隊と私自身が詰める。
もちろん攻撃はできない。ただ接近する。その選択に敵は焦る。攻撃手段を持たない空母本体が距離をつめてくる理由が分からないのだろう。
だが――ああ、意識を切り替えたな。
空母本体を落としてしまえば話は終わるというシンプルな結論に辿り着いた。
――まずい。
超低空隊を左右から急加速、ミサイルのように突撃させる。
が、私の焦りが機首の角度にあらわれた。僅かに上昇してしまう。
そこに間髪いれず、
ぽぽぽぽぽ。
無造作に機銃が放たれた。
海面に爆炎が咲き乱れる。
「ぐ……」
ほんの一瞬、彼女の頭部より位置を上げてしまっただけで低空隊の全てが撃墜された。
ぞっとした。今のは対空性能だけで成し遂げられる技じゃない。
――これが秋月型。
敵に回して初めて思い知る。こいつらもまた狂っている。
だが、艦載機を半分生け贄にしたぶん距離を詰められた。
あと僅か。視線を上へ、高空隊の攻撃を示唆するフェイントに、しかし防空棲姫は引っかからなかった。機銃が、4inch連装両用砲+CICがこちらが向けられた。スローモーションのようだった。照準されるのを視認。だがもう一歩、足りない。どうする、もう少しなのに――
ばたたた――
マフラーのたなびく音が私を叱咤する。
「一航戦魂を……舐めんなぁあ!」
半身になって左腕で頭をカバーして、横殴りの豪雨がごとく機銃の一斉掃射に突っ込んだ。4inchの殺意が十を超え、百を抜け、千を突き破る。凄まじい量の銃弾を瞬時に浴びせられ、体中に亀裂が走る音を聞く。ただ一瞬だけ耐えられればよかった。時間にして2秒か3秒の地獄を潜りぬけ、全身を投げだして防空棲姫に激突した。
「ぐぅっ!?」
右腕を相手の腰に巻きつける、左腕は、砕け折れている、そのぶん噛みつく勢いでびたりと身体を密着させた。
「辿り、ついた、ぞ」
「なにを……」
既にぼろぼろ。武装もなければ腕も片方無い。
ここから逆転する手は存在しない――そう思っているのだろう。
確かに、私は勝てない。元々勝つ見込みはゼロ%だった。そんなことは知っていた。
だから私は勝利を狙っていなかった。
「あたし、は、引き分け、で、いいんだよ……」
指令を飛ばす。
超高空に。
待機させていた、私の艦載機たちに。
温存していた大量の爆弾を一斉に投下した。
「――なッ!?」
目標は、私と彼女。もろとも消し飛ばす相打ち狙い。
ここから番人さえどけてしまえば魔女は復活できるから。
「あな、たは……!」
防空棲姫がもがき、暴れる。
真上を見上げて、腰の艤装を駆動させ、砲口を差し向けようとする。
だが、させない。
片腕と全体重を駆使して邪魔をする。角度をずらし迎撃させない。足をからめて回避も潰す。そのためにここまで苦労して接近した。
「悪いね、照ちゃん。一緒に、沈んでくれ」
防空棲姫にびたりと張りつきながら上を見た。
粒ほどの大きさだったものが落下とともに大きく迫る。馬鹿馬鹿しいほどの量が落ちてくる。例え戦艦棲姫でも3度は殺せる、いや4度は粉砕できる質量の爆弾が、身動きできない2人の姫級めがけて降り注ぐ。
ひゅるるる……
「う、くう……! 秋月、姉……!」
爆弾が、起爆した。
@
北の魔女は思いだす。
かつて、鮮烈な輝きを見た。
それは突如として発生し、海の上でピカピカと、あるいはギラギラと、それまで観賞していた命の流れ――食物連鎖とは比較にならない煌めきを放っていた。
世界大戦で燃えあがる魂の煌めき。
当時、軍艦に乗って生死をかけて争った何百人もの軍人たち。
彼らは、国是のために、愛する者のために、生きたいと願う者がいて、死んでも責務を果たしたいと誓う者もいて、喜怒哀楽、愛や憎しみにとらわれて、互いにぶつかり支え合い、そして消えていった。
甘く、切なく、重厚な人生の物語。
人間という知性を持つ生き物が、本能以上の生き甲斐を育んで、人生の総決算としてぶつけ合う。その魂の輝きは、それまで眺めてきた微生物や魚類・哺乳類たちの食物連鎖とは一線を画していた。
しかし、ほどなく戦争は終わった。
海では魂の煌めきを見られなくなっていた。
何十年も待ち続けてからようやく気付いた。どうやらあの輝きはもう見れないらしい。
――また見たいなぁ。
そう思った。
だから深海棲艦を造った。
戦争を願った。
そして今日。あの鮮烈な魂の煌めきをまた見ることができた。
……。
………………。
あれ……?
ここは?
私のなかだ。
あん? あんた誰?
北の魔女。ノーリ。深海X。
なんとでも呼ぶがいい。
じゃ、ノーリで。
お前は?
トゥリー? 大鷹?
どちらで呼べばいい?
……。
トゥリーでいいよ。
で、あたしは今、海の底で修理中ってわけ?
そうだ。
お前はよくやった。
覚えてるか?
あそこまでやるとはドヴェも想定していなかった。
へえ、どんなんだった? 覚えてないや。
お前は木っ端微塵に砕けた。
頭部も大きく損傷した。
記憶はばらけてしまっている。
ってことは、カミカゼ戦法は炸裂したの?
ああ。
命中はした。
だが撃破には至らなかった。
ああ~……。
なるほどね。
倒せなかった、か。
あたしは負けたんだ?
そうだ。
……。
………………。
なんで?
すんごい量の爆弾を投下したはずなんだけど。
防空棲姫が硬かった。
それだけだ。
……ええ~。
まじで? そんなのずるくない?
防空棲姫は生き延びた。
事実だ。
……そっか。
あいつを負かしてやれなかったか……。
悪いことしたな。
解放してやりたかったのに。
お前はじきに復活する。
アドナーとドヴェも復活している。だが防空棲姫と再戦するつもりはないようだ。
お前はどうする?
いやぁ、私も、もういいかな……。
もう戦う意味ないし。
……ねえ。私が轟沈してから何日経った?
三日。
ああ、そう……。
それだけ経っちゃったか……。
もう手遅れ、かな……。
あいつら、どうなった?
叢雲と浜ちゃん。
やっぱり深海棲艦になっちゃった?
深海棲艦にはなってない。
艦娘のままだ。
艦娘……?
お前は勘違いしている。
あの二人は死んでいない。
え?
@
目が醒める。
瞼をゆっくりと開いた。
赤銅色の地面に頬をつけていた。指先をぴくりと動かしてみる。擦ってみて、それが軍艦の横腹であると理解した。
顔を上げる。
ゴミの山が無秩序に広がっていた。
見覚えのある私の庭。3番島、その浜辺。
そうか、私は復活できたのか。
ちゃぷちゃぷと寄せては返す赤い海水に半身が浸かっていた。
腕をつき、立ち上がろうとする。
上手く力が入らない。
長期療養生活の後ってこんな感じかと思う。なかなか膝を立てられず、諦めてごろりと転がった。
「……ふう」
仰向けになって空を見る。
まっすぐ見上げる北方深海基地の空は、薄水色に染まり、ちぎれかかった綿菓子のような雲が浮かんでいた。なんだか普通の空だ。艦娘時代を思いだした。大湊警備府の窓からよく見上げていた空だ。普通の世界の、普通の空。
ここの空はちょっと前まで違っていた気がする。ペイントで塗りたくったような単純な青一色で、息の詰まりそうな閉塞感があった。作りものの世界。それはそれで嫌いではなかった。余計なことを考えなくてよかったから。
でも今はこの当たり前の空のほうがいいと思う。
ぼんやりと寝そべっていると、顔に影がかかった。
人の気配。私に声をかけてきた。
「遅いのよ」
目が合った。
何度も突き合わした顔だからよく知っている。
そいつは誰にでもいい顔をする八方美人で、こっちの気持ちも考えずに毎日構ってきた鬱陶しい駆逐艦で、いつも自信満々の人気者――
腕を伸ばして、顔に触れてみる。
柔らかい。温かい。生きている熱がある。
肌は一般的な薄い肌色で、ケアもできずに潮風に晒され続けたせいでちょっと荒れている。髪は青みがかっている。眼も赤くない。角もない。
人間の色だ。
深海棲艦になっていない。
ぱたり、と力が腕から抜けた。
「叢雲ぉ」
「うん?」
「なんで生きてんの?」
ごつん、と頭を叩かれた。
「いたぁ」
肩を掴まれ、引っ張りあげられる。
「いででで!」と抗議しても緩めてくれやしなかった。「しゃきっとなさい!」と肩を組まれて強引に歩かされる。横倒しの軍艦の上をゆっくりと上がっていく。コツンコツンと足音が連なって、夢でも見てるんじゃないかと思い始めた矢先、叢雲は教えてくれた。
「アドナーさんが助けてくれたの」
「え、先輩が?」
「そ。戦艦棲姫のひと。……霧が濃くなってどうしようもなくなって、浜波と2人ではぐれないようにするだけで精一杯ってときに、突然現れたの。高笑いしながらね」
「ええ……?」
「あのひと、霧のなかでも方角が分かるみたいね。磁石も電波も効かない大ホッケ海なのに、どうしてかしら?」
「うそぉ。あたしも知らないんだけど。ほんとに?」
「うん。私も聞いたんだけどまともに答えてくれなくて――」
――This is frontier spirit! しっかりついてきなさい! 返事は!?
「――って感じ」
「なにそれ……。それでここまで連れ戻してきてくれたの?」
「そう」
「へえ~。よくわかんないけど、今度聞いてみよ。あ、お礼も言っとかなきゃ」
「……」
叢雲は黙りこみ、意味深にこちらを見つめた。
「あん? なに?」
「別に。ただ……私さ、今まであんたがそんなに熱い女だって知らなかったなって」
「熱い? ……あっ! んん、いやその、」
「まさか私たちを助けるために防空駆逐艦に戦いを挑むなんてねえ」
「べっ、べつにそういうんじゃねーし」
「命を助けられたのはこれで二度目ね……。ありがと」
「や、やめろって……。今回のは失敗してるし、マジ顔は禁止っ」
「なぁに照れてんの? 肌が白いからすぐ分かるわ、真っ赤になっちゃって面白ーい」
「やめろっつってんの!」
ゴミの山を通り抜け、住処である偽教室に辿り着く。
がらりと引き戸を開けると、中の少女と目が合った。
夕雲型の十三番艦、浜波が口をまんまると開けていた。
「た、たた、大鷹さん……!」
「う、うっす。恥ずかしながら、復活しました~」
「わ、私、私ぃ……!」
「浜ちゃん、いったん落ち着こう。深呼吸して。ほらっ、ひっひっふー、ひっひっふー」
「良かった……大鷹さんがなおってぇ、本当に、っすん、良かった、ですぅ……」
「やめてよぉぉ!」
結局。
話は振り出しに戻った。
艦娘の2人は脱出できていないし、そのあてもない。
深海棲艦たちもそのままだ。
けれど、このゴミの積み重なる3番島には明るい声が響いていた。
艦娘と深海棲艦が分け隔てなく暮らしている。
それだけで充分なのかもしれない。
@
大ホッケ海。
北海道の、更に北。
そこに浮かぶ北方深海基地、4つの島々に囲まれた小さな海。
たかが直径三百メートルもない狭い範囲であり、北の魔女の身体が眠る最重要地点。
直径5メートルほどの氷の大地。
そこに防空棲姫が篭もっていた。
「今日のご飯はぁ、なんとっ、コンビニ弁当で~す!」
くそでかリボンを揺らしながら駆逐古鬼が甲高い声で微笑んだ。
にこにこ顔でリュックから取り出したのは、確かにコンビニ弁当だった。ただし色は真っ黒い。箱だけではなく、中身の米も、おかずも、箸さえもブラック色に染まっていた。
そんな黒々とした物体を少女はぐぃぃ~と流氷に座ったままの防空棲姫に押しつけた。
「……なんですか、これ」
「うちの畑でとれたのよ! 知ってるでしょ、もう何度も持ってきてるしね! で、どうなのよ最近の調子は~? 元気してるっ?」
「別に……」
「こないだトゥリーちゃんやっつけたって聞いたけど。あんたも大変よねぇ」
「……」
「あのね、このお弁当って、きっと私の記憶から作られたのよ。うちの畑からとれる食べ物ってみんなそう。知らなかったでしょ? これって轟沈したひとの記憶から再現されてるの。だからおでんとかピロシキとかハンバーガーが土の中からぽんぽん出てくるわけ」
「……」
「ちなみに箱もお箸も食べられます。そのへんほんと雑なのよねぇ~。北の魔女さんにはしっかりしてほしいわ。だって味がないんだもん。そこを再現しなきゃしょうがないでしょってハナシ。あんたもそう思うでしょ?」
「味なんてなくても生きていけます」
「暗いわねぇ」
はぁ~、とわざとらしく溜め息をつく。
渡すもんは渡した、と言わんばかりの勢いで立ち上がり、よいしょとリュックを背負った。
駆逐古鬼。
かつて朝風候補だった少女。
軍縮条約のせいで艦娘になれず、職にありつけぬまま社会の隅に追いやられて死んでしまった民間人。彼女は、この亡霊漂う北方深海基地において最も報われぬ一生を通り過ぎてきたのかもしれない。
しかし彼女はいつでも明るく笑う。防空棲姫を気にかける。
「さて、問題です。この世で最も不幸なことはなんでしょう?」
防空棲姫は、思わず少女を目で追ってしまう。
互いに過去を知っていた。
この島々において最も不幸なのはあなたの前世――防空棲姫はそう思っていた。
しかし、当人は違うと言う。
かつての自分は不幸のうちにも入らない。もっと不幸になりそうな奴がいると囁いた。
「この世で最も不幸なことはね――誰にも看取られずに孤独に死ぬことよ」
踵を返す。海面に足をつけ、リュックを背負い直した。
「好きになさい。けれど泡のように消えるのはよしておいた方がいいわ」
艤装をふかし、駆逐古鬼が遠ざかっていく。
ここは大ホッケ海。
四つの島に囲まれた赤い海。ヒトの姿は影一つもない。住むのは人外の化け物――深海棲艦だけという死の領域で、その中心点である氷の大地には深海棲艦すら寄りつかない。
防空棲姫がたった一人で守っているだけ。
「……」
黒い弁当に箸をつけてみる。
なんの味もしなかった。
終わりです。
やっと、って感じです。
途中で「なんか上手くいえないけどこのままじゃいかん!」と話を中断させて習作に手をつけてたわけですが、その成果あったのか今では何がいけなかったのかがよく分かります。
とにかく読みにくいし分かりにくい!
それでもここまで読んでくださった皆様には感謝の念しかありません。ありがとうございます。
さて、このお話は『ちょっと悪いひとたち~』の全体でいうところの第三章の位置付けです。
他の章は構成からして読んでてまったく楽しくならない話になると予想されるのでここに概要を書いてしまいます。そんな文章化されてもいない妄想なんて読みたくないって人は読み飛ばしてください。では。
↓↓↓『ちょっと悪いひとたち』の別の章について↓↓↓
●第一章 アドナー(コロラド)の話。
90%ぐらいが過去話、更にコロラドとフレッチャー以外は全員オリキャラ。もう二次創作でもなんでもないのでは……?っていうパターンその1。
・西方海域に無敵の深海棲艦が8人いた。無敵すぎて誰も手をつけられなかったが、ある日なぜか仲間割れをして1人が死にかけの状態でとある島に漂着した。それを人工衛星で察知したアメリカはそいつを回収・研究するために100人連合艦隊を送りこむ。
・でも西方は他の深海棲艦もウルトラ強い。死にかけ君を回収したところを空母メインの群隊と潜水艦メインの群隊に囲まれてアメリカ艦隊は全滅。
・その間際、コロラドの意思と死にかけ君の未練が一致。フレッチャーだけは守らねばならない、合体! ででーん、1つの体に2つの意思、アルティメットコロラドの誕生だぁ~。
・無事脱出。フレッチャーはリンガ泊地に預けて放浪。→大ホッケ海へ。
・北の魔女とバトル。決着がつかず休戦。以後だらだらと住み着いている。本気になればウルトラ強いけどその事実を誰も知らない。
●第二章 クロンシュタットの話。
99%ぐらいが過去話、タシュケント以外は全員オリキャラ。もう二次創作でもなんでも(略)っていうパターンその2。
・ピースメイカーの古株の1人クロンシュタット。最も自主性に乏しく命令に忠実だったためある港村の防衛を任される。そこは人間の村で友好アピールのため常駐する。
・その村の戦災孤児の少女がある日『タシュケント』の適性を見いだされる。でも当人は人間に愛想がつきていて「深海棲艦になりたい」と言う。
・そこからは映画等でよくある『冷酷マシーンが純真な少女に絆されていく』感じに話が進む。
・ピースメイカーが北極海の制覇に王手をかける。はー敵弱すぎなんだけどまじで! もっとちゃんと戦える相手いねーかなー、あっいたわぁ、双子の自分。よっしゃ自軍真っ二つにわけて戦おっと。人間派(左さん)と深海派(右さん)で互いにばれないように勧誘開始。
・北極海制覇。左さん、人間判定試験(『悪いひとたち』の番外編で書いたやつ)を始める。死亡率10割。どうやったら生かすのか当人も決めてない。ロシア人がいっぱい死ぬ。
・クロンシュタットの常駐する港村にもお呼びがかかる。試験するぞ試験するぞ試験するぞ!→「いやです」「えっ」
・あのロボット深海棲艦クロンシュタットが初めて逆らった、これは凄い人間がいるのでは? 右さん「こっちにつけば人間殺さなくていいよ?」クロン「味方します」→戦争開始。
・なんとかタシュケント候補の少女を逃がす。その場面が撮影されていて、これを根拠に深海シンパが「ピースメイカーは良い深海棲艦!」と主張。ロシア荒れる。
・戦争は途中でロシア艦娘が介入してきてぐだぐだ状態で停戦。左さんと右さんはまたいつかちゃんとした戦争できたらいいねと約束を交わしてさよなら。
●第四章 チェティーリ(神風)と朝風になれなかった少女の話。
80%ぐらいが過去話。
・お祈りされた2人と、陸軍をクビになった男の3人で浮浪者生活。そこにある日神風にだけ再内定通知がくる。行ってみたら佐伯湾泊地で、提督は黒井(『悪いひとたち』参照)。ブラック鎮守府全盛期。
・初出撃で魚雷くらって足がなくなる。クビ。
・ちょっと気安く書けないえぐい事態が重なる。
・深海棲艦が町に襲撃してくる。佐伯湾は防衛スルーで殲滅優先。3人とも死ぬ。
・ゆるさん!
・場所は変わって大ホッケ海。対防空棲姫を繰り返す。「もうやめてくんない?」「嫌です」
・陸軍クビ男が奮起していい感じに落ち着く。
●第五章 北の魔女の話。
・精神的に成熟した魔女がいろいろあって体を取り戻して完全復活。ネガティブ感情は何もしなくても勝手に見れるから私はポジティブ感情を喚起するために愚かな人間どもを幸せにしてやるぜぇー! おらっ深海パンチ! 照月負ける。
・大ホッケサークル解除。幌筵泊地と和解。
・照月は幌筵泊地の仲間たちと再会。クロンシュタットは派遣されていたタシュケントと再会。大鷹は一航戦や五航戦と再会。
・自称熊野と会ってガダルカナル島の深海棲艦を知る。行くと決める。
・南下中、富士山に上りたいと言いだして横鎮とバトルになってぼこぼこにされる。北の魔女の頭が再びパーになる。
・ガ島に合流。
以上です。いや~長いっすね。お付き合いいただきありがとうございました。