ユキアンのネタ倉庫   作:ユキアン

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脱線してドリフト決めてターボダッシュからクラッシュした。


遊戯王GX モテる男は辛い 2

黄色の制服に袖を通してやってきましたデュエルアカデミア。孤島という勉学に励むしかない環境にちょっと怯む。一番辛いのが相部屋だからユベルと愛し合えないのが辛い。

 

精霊界への入り口があちこちにあって助かった。しかもイエロー寮に一番近い入り口を抜けた先はラメイソンだから宿もある。これでなんとかやっていけそうだ。ついでにウィッチクラフトに色々道具を発注しておいた。消臭とか防音なんかのな。

 

一応、ブルーに上がれば個室が与えられるようだからすぐに上がれるように頑張らないとな。まあ、金曜日の夕食だけはイエローに戻ってくる予定だけどな。寮長のカレーが滅茶苦茶美味かった。

 

授業の方は、デュエルの授業以外は真面目に受けている。デュエルの授業はあくびの出るような内容だから取り合わない。宿題はちゃんとするけど、授業中は他の教科の勉強をする。

 

同室の生徒は神楽坂要で、自分の魂が分かっていない迷子のような男だった。毎日のようにデッキを組みなおし、誰かの類似品のような有様でイライラさせられる。だけど、諦めずにもがく姿は共感出来る。

 

入学初日に謎の宛先からのメールでアンティを持ちかけられたが速攻で教師にチクった。それからブルー生の万城目とその取り巻きにウザ絡みされるようになったのでユベルの機嫌が悪い。

 

生徒も半分以上が向上心の無い者ばかりで、女子とレッド生は特に酷い。ちょっと海馬コーポレーションのお問い合わせコーナーに意見をメールしとこう。スルーされるならそれまでだろう。

 

即日で返信が来るとは思わなかった。しかも社長本人から。社長曰く、プロの養成は安定しているが、プロになってからの成績が振るわないことからアカデミアは用済みであると見切っていたが、入学したばかりの生徒にすらそれが感じられるとなれば害悪とも考えられるため閉鎖も考えたが、上を目指そうとするヒヨコまで切るのは本意ではないそうだ。

 

そこで内偵調査を命じられた。調査項目はただ1つ、頂点を目指す気概のある1年生徒の選定。2年生3年生は除外し、新たな方針のもとで頂点を目指す者とそれ以外を分ける。

 

期限は3週間後の月一決闘試験前日まで。当日は内密に査察を行うそうだ。そこで好きに暴れろとの指示も出た。

 

社長命令なら仕方ないよな。我、大義名分を得たり。ぐへへ、MAXフルパワーのユベルの力を見せてやるぜ。最悪、退学になっても良いや。社長への報告の際に指導方法に関してのプレゼンをしたところ、それが採用されて、報酬としてプロへの道に必要な推薦を貰えることになったからな。

 

プロなら精霊パワーだけじゃなくてデュエルエナジーも大量に手に入れられるだろうからユベルも満足出来るはずだ。目標へのショートカットが転がり込んで来やがったぜ。

 

そんなこんなで海馬社長の指令をこなすためにユベルにも力を貸して貰いリストアップを行っていく。結果、悲惨さに目を覆う。ユベルも呆れきっていた。

 

「十代、退学しよう。この人数は酷いよ」

 

「甘く見てたよ、ユベル。これ、社長に送らないと駄目なのかよ」

 

レッド2名、イエロー17名、ブルー5名、ブルー女子3名、計27名+オレ。このリストを社長に送った時のリアクションが怖い。それでも報酬のために報告を行う。

 

返答は、2年生3年生よりはマシだな、だった。たぶん、1年生時に格付けが終了してほぼ変化が無くなって諦めたんだろうな。やっぱり競争は激しくないとな。

 

そして月一試験当日、オレの相手は万丈目だったので嫌がらせの盤面を整える。

 

 

 

 

 

遊城十代 LP3000 手札6

 

場 ナイトメア・スローン

 

ユベル ATK0

 

ナイトメア・ペイン

エターナル・フェイバリット

伏せ2

 

「オレのターン、ドロー、スタンバイ、メイン、エンドフェイズ、墓地の【サクリファイス・D・ロータス】の効果を発動。場に【ユベル】が存在するので特殊召喚。その後【ユベル】の維持コストとしてリリース。手札が上限なので墓地に送る。ターンエンドだ」

 

「…オレのターン、ドロー。ターンエンド。手札を墓地に送る」

 

万丈目準 LP1800 手札6

 

伏せ4

 

最初は諦めそうになっていたが持ち直し、意地でもこの盤面を突破してやるという目を見てだらだらと先延ばしにしている。周りの生徒や先生の非難の目なんて気にせず淡々と処理していく。

 

「オレのターン、ドロー、スタンバイ、メイン、エンドフェイズ、墓地の【サクリファイス・D・ロータス】の効果を発動。場に【ユベル】が存在するので特殊召喚。その後【ユベル】の維持コストとしてリリース。手札が上限なので墓地に送る。ターンエンド」

 

「オレのターン、【手札抹殺】を発動。お互いの手札を全て捨て、捨てた枚数分ドローする。くっ、ターンエンド」

 

「オレのター「そこまでです!」ドロー、スタンバイ、メイン「そこまでだと言っているでしょうが!」エンドフェイズ、前のターンと同じ処理だ。なんですか、鮫島校長。デュエルの邪魔をするほどのことですか」

 

「これの何処がデュエルだというのですか!ただの一方的な暴力ではないですか!」

 

「一方的な暴力?この盤面が?デュエルアカデミアの校長ともあろう方がこの状況をまともに判断できないとは。万丈目、お前のデッキ枚数は?」

 

「16枚だ」

 

「オレは5枚だ。このままを維持されると負けるのはオレであって一方的ではない。それにデッキ切れの前になんとかしようと考えているのが万丈目だ。戦意を喪失したわけでもない。今はお互いに盤面を固めている最中だ。外野は黙っていろ!」

 

「い、いいえ、教育者としてこのような、リスペクトに欠けるデュエルを許すわけにはいきません!遊城十代君、校長の権限を持って君を退学処分にします!即刻アカデミアより『立ち去るのは貴様の方だ、鮫島』お、オーナー!?」

 

モニターに映し出された海馬社長に全員が驚く。その隙に黒服達が会場の出入り口を封鎖して、鮫島校長を拘束する。

 

『遊城十代、まずはデュエルを終わらせろ。話はその後だ』

 

「はい。万丈目、お前のターンだ」

 

「あ、ああ、オレのターン!カードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

キーカードを引いたか。この状況をひっくり返せる方法が考えられるカードは、セットカードのブラフは1枚か2枚だな。ならこうだな。

 

「オレのターン、ドロー。スタンバイ、メイン、カードを1枚伏せてエンドフェイズ、同じ処理だ。来い、万丈目」

 

「行くぞ、オレの、ターン!2枚目の【Xーヘッド・キャノン】を召喚。セットしていた【巨大化】を発動して装備。バトルフェイズに入る。【Xーヘッド・キャノン】で【ユベル】を攻撃だ!Xキャノン!」

 

Xーヘッド・キャノンの砲塔からビームが発射されてユベルへと迫る。

 

「そのままなら【ユベル】と【ナイトメア・ペイン】の効果で7200のダメージだがどうする?」

 

「こうするだけだ!セットカードオープン!ライフを1000払って【スキルドレイン】そして【サイクロン】対象は勿論【ナイトメア・ペイン】だ!」

 

「こっちも【サイクロン】対象は【スキルドレイン】だ!」

 

「【宮廷のしきたり】これで【スキルドレイン】は破壊されない。ここから【宮廷のしきたり】と【スキルドレイン】を破壊するのは不可能」

 

「ライフを500払い【ツイスター】を発動。表側表示の魔法・罠を1枚破壊する。対象は【宮廷のしきたり】だ」

 

「通さない!ライフを半分支払い【神の宣告】を発動」

 

「こっちも【神の宣告】だ!」

 

全てのチェーンが解決して場が整理される。

 

遊城十代 LP1250 手札6枚

場 ナイトメア・スローン

ユベル ATK0

エターナル・フェイバリット

 

 

万丈目準 LP100 手札6枚

Xーヘッド・キャノン ATK3600

巨大化(Xーヘッド・キャノン)

 

 

ユベルがビームを受け止め、その勢いを万丈目に反射する。デュエルディスクから終了のブザーがなり、会場が静まり返る。

 

しばらくするとポツポツと拍手が起こる。確認すればリストの連中だった。

 

「万丈目、はっきり言って予想以上にお前は強かった。伏せられていた5枚の内、1枚はブラフだと思っていた。その予想を超えたお前はすげえよ。待った甲斐があった」

 

「……次は、負けん!」

 

涙を堪えながら、少し振るえる声ではっきりと再戦の意思を告げてくる万丈目に首肯で応える。

 

『ふぅむ、多少は見れるものがあったか。リストに加えるか、遊城十代』

 

「はい。今の万丈目なら資格はあると思います」

 

『よかろう。他にも若干名の追加もある。この話はこれまでだ。本題に入ろう。デュエルアカデミアの生徒、並びに教職員に告ぐ。貴様らには期待もしていなかったが、それ以上に失望した』

 

海馬社長の言葉にざわつく。

 

『鮫島、デュエルアカデミアの存在意義はなんだ』

 

「そ、それは、デュエルを通し、人として健やかな成長を」

 

『違うな、間違っているぞ。そもそもの始まりはプロへの門戸を広げるための養成機関として立ち上げたのが始まりだ。目指すべきは決闘王の座だ。デュエルの強さ、それこそが重要なのだ!』

 

ちなみにデュエルアカデミアのパンフレットにデカデカと書いてある。

 

『そして、競争を促すためにブルー、イエロー、レッドの階級による待遇の差を設けた。プロになった後と似た環境を用意したのだ。プロになればゴールではない。敗け続ければスポンサーは減り、賞金も得られずに困窮する。学生だからこそ最低保証はしてやるが、プロになれば自分でどうにかするしかない。それに気付けない貴様ら教師陣の無能さには反吐が出る。特に佐藤、貴様を採用したのもプロとして最初はそこそこの成果を残し、進歩しなかったせいで転落した生々しい経験を生徒に教えることが出来る貴重な存在として評価していたのだが、更新されていない教科書をなぞるだけならば機械で十分だ!』

 

「わ、私に、あれを、あんなものを語れと!?」

 

『愚かな。自分の足掻きを、思いを自ら否定する程度の小物だったか。その程度の者など掃いて捨てるほどいるわ。アカデミアの教師に相応しくない。立ち去れ!』

 

「……退職金に色を付けて貰えますか。最初で最後の講義を行います。私は、デュエルモンスターズの世界から放れます」

 

『良いだろう』

 

黒服からマイクを受け取った佐藤先生は誰とも視線を合わせないように俯きながら話し始める。

 

「何から話そう。軽く私のことを話そうか。私がプロを目指したのは、家族のためにお金が必要だったからだ。当時、いや、今もだが、最も一般人が成り上がることできる可能性がある職業がプロデュエリストだった。ああ、プロデュエリストも今では色々な意味を持っていたか。私の話のプロデュエリストとは、プロリーグに登録したデュエリストという意味だ。

 

丸藤亮君が、この道への推薦を受けていたね。よく聞いておくと良い。これは、これからの君の未来の一つだ。それもかなりの確率でそうなる。そう、分かっていて、私は放置していた。教師として、大人として失格だな。話がそれた。

 

私はお金が欲しかった。プロになれば勝っても負けてもデュエル1戦で数十万から二百万ぐらいが入ってくる。優勝すれば最低でも1000万円だ。むろん、大会の登録費や交通費や宿泊費で丸々手元に残るわけじゃない。それでも他の職業よりは稼げる。そういう世界なんだ。デュエルが出来るなら、だがね。

 

負けが込んだデュエリストや面白くないのに強いデュエリストに枠が回ってくることは少ない。代表的なのが除去ガジェットと呼ばれたデッキだったか。魔法・罠カードで相手のモンスターを除去し、ガジェットによる後続の確保で安定したデッキだった。プロの視線からは厄介だが強くて良いデッキだと思っていたよ。だけど、プロのデュエルはあくまでもショービジネスだから。勝負が分かり切った物に、醜悪なものに、面白くないものに観客は金を出さない。私のデッキはコントロールと呼ばれるものだった。それは嫌われたよ。それでもデッキを変えられなかった私はプライドを捨て、頭を地面にこすりつけ、靴をなめ、情に訴えて数年、プロの世界に身を置いたが、身体を壊してしまった。お金が必要だった家族も居なくなっていたのが要因の一つでもある。

 

プロの世界には幾つかの壁がある。長年生き延びられるプロとは最低でもこの3つの壁を越えなければならない。1つが『年収1億の壁』、1つが『1万人のファンの壁』、最後に『下位と中位の壁』だ。分かりやすいのが年収の壁だ。実力を、カードを更新し、周囲との付き合いに必要になるのが年間で1億だと言われている。どのリーグに所属し、スポンサーがどれだけいるかで勝率は変わってくるが、これは副業で稼いでも問題ない。有名なのがインセクター羽賀プロにダイナソー竜崎プロ、彼らはそれぞれ下位の、ああ、そこの説明もまだだったね。

 

プロのリーグや大会は裏で出場条件が決められていてね。招待選手以外はその条件を満たしている必要があってね。プロの間では下位、中位、上位に分けて呼んでいる。実力に見合わない大会やリーグに所属すると笑いものになる。むろん、勝てれば問題はない。そう、強ければ大抵のことが許されるのがプロの世界だ。未成年を性的に搾取したりしていてもね。強さ=権力で間違いじゃない。

 

羽賀選手と竜崎選手はプロとして活躍する一方で昆虫学者と恐竜学者の第一人者としても有名で、そちらの方で出版している本による印税やスポンサーからの資金提供でこの壁を越えている。それに解説やトークも面白いから、そういう仕事もレギュラーで持っている。

 

2つ目のファンの壁。先ほども言ったが、嫌われると大会に出られなくなる。その見極めによく使われるのがファンクラブの人数だ。これが1万人を下回るとなんらかの問題があると考えられて敬遠される。城之内プロはこのファンがとても多い。彼のデュエルはどうなるかわからないハラハラ感と、独特な格好良さがあるからね。子供たちに大人気で実力は中位だけど、上位の大会によく招待されている。元プロレスラーでヒールとして有名なストロング石島プロもヒールとしての人気は高いし、ファンサービスにも熱心だ。それに対戦相手からの評価も高い。彼は負ける時は派手に分かりやすく負けてくれるからね。だからこそ彼もよく招待される。人気はとても重要だよ。デッキ破壊で有名なエックスもコアなファンが多い。いつもは自信に満ち溢れているプロが絶望する顔を見せてくれるからね。

 

最後に下位と中位の間の壁、丸藤君、君は今のままではこの壁を破ることができない。その証拠にサイバー流で中位以上のプロは存在しない。下位にも少ない上に1年と持たない。シーズンが始まったばかりだが、去年の卒業生であるサイバー流の轟君以外にサイバー流は居ないよ。ほとんどが地下デュエルに消えて行った。その地下デュエルからも消えた。

 

勘違いしているかもしれないが、地下デュエルで消えるとは死を意味する。上がりはデュエルマフィアの構成員や幹部だからね。

 

壁の話に戻ろう。その壁とは、中位の中での古株と上位陣の殆どによって雇われている傭兵部隊さ。デッキは対象のメタデッキ。彼らにデュエリストの誇りは存在しない。リアリストだからね。ショービジネスだからこそ一定の質を保つ必要がある。中位や上位でやっていくのならメタデッキ位、簡単に突破してこそだからね。そのためにガチガチに固められてはいない。サイバードラゴンでも勝てる隙は存在する。

 

だが、サイバー流の勝手な使用制限、キメラテックの封印が足を引っ張り、壁を超えられない。何度も言うがショービジネスなんだ。演者に特定の思想をビジネスの場に持ち込まれたくないんだよ。

 

私はサイバー流の語るリスペクトが嫌いだ。相手をリスペクトするにはそれ相応の余裕が必要なんだよ。私にはそんな余裕はなかった。生きるのに、家族を支えるのにも身を削るような状況で、リスペクトが足りないと負けた言い訳を押し付けてくるサイバー流が嫌いだ。結局、そのサイバー流は1年と経たずに地下に落ちて、すぐに海に浮かんでいたよ。

 

生徒諸君、君たちの思い描く未来は光に満ちているのだろう。その通りだ、光はある。だけど、それを浴びられるかどうかは別だ。光があれば闇もある。それを忘れないで欲しい。目を反らさないで欲しい。私のような大人になりたくないのなら。

 

時代は変わってきている。ショービジネス以外にもデュエルモンスターズは浸透してきている。会社の営業で仕事の条件をデュエルの勝敗で決めたり、舞台でデュエルを行ったり、10年もしない内にデュエル犯罪を取り締まる特別捜査官制度も作られると風の噂で耳にした。

 

デュエルが好きだからだけでいられる期間はもう終わっているんだよ。大人になった自分を想像して、それに必要な物を揃え始めなければならない。そして、デュエルモンスターズに関わる職に就きたいのなら、強くなければならない。

 

カードパワーが足りない?コンボで補いなさい。

メタデッキに勝てない?必要の無いプライドは捨てなさい。必要なプライドなら拾い直せば良い。

勝ったら何をされるか分からない?周囲を巻き込んで事を大きくしなさい。周囲の評価を気にして手は出されません。

才能がない?ならば諦めなさい。自分に自信を持てないのならデュエルなんてするものではありません。自分が傷つくだけです。

 

心技体という武術の心得がある。精神と技術と肉体の3つが揃ってこそ真価を発揮できると。デュエルモンスターズでも似たようなものがある。知識・思い・信頼だ。

 

知識はそのまま。どんなカードか、それを知っているかどうかで勝敗が分かれることがある。勉強する以外にも経験から覚えることも出来る。カテゴリーから推察することも出来る。敵を知り己を知れば百戦危うからずだ。

 

思い、勝ちたいという欲望と言っても良い。その場での思いの強さは時として運命をも引き寄せる。逆転の一手を叩き出すのは思いが強い者だ。

 

信頼、自分が信じて選んだカードによって組み上げたデッキを信頼することでカードもそれに応えてくれる。海馬社長がバトルシティで神をも生け贄にブルーアイズを召喚したように。あの時の表情を見れば分かる。自分でも訳が分からずにブルーアイズを召喚していたよ。だが、あれが勝利へと導いた。海馬社長は神に選ばれただけで、神を選びはしなかった。信頼を預けはしなかった。その結果だと思っているよ。私にも似たような経験がある。強いデュエリストにはカードの精霊が憑いているなんて言われるが、そういうのがあってもおかしくはないと思っているよ。

 

この3つを、遊城十代君は兼揃えている。万丈目準君は、少し知識が足りなかった。序盤は思いも足りなかった。中盤からは徐々に増していった。周囲から見苦しいと非難の目や声に曝されながらも必死に耐えて、最後には今日の試験で一番の攻防を見せてくれた。無論、遊城十代君が30ターンも待ってくれたからこそ成立したのだけは減点だが、待っても良いと思わせることが出来た時点で加点だね。

 

何より、サイバー流の言うリスペクトとはああいう行為だと思うのですがね。そこのところはどう思います、マスター鮫島。お互いの全力をぶつけ合い、外野からの邪魔を押し退け、終わった後に称え合う。それこそがリスペクトだと私は思うのですがね。

 

それとも高ステータスでの殴り合いしか認めないとでも?【リミッター解除】や【パワー・ボンド】で簡単に高ステータスを用意出来るサイバー流らしい傲慢さですね。【スピリット・バリア】1枚で散る鴨扱いでしたけど。そして卑怯だ反則だ等とほざいて顰蹙を買っていることに気付きもせずに。素晴らしい教えですね、サイバー流!家族のために楽にお金を稼げて大好きでしたよ!ありがとうございます、マスター鮫島。何人もの鴨を定期的に卸して戴いて、大変感謝しています。

 

……身体を壊して引退した私は、生きているだけだ。だから、ただ役割をこなした。用意された教科書とマニュアルと予定表をなぞるだけ。そう、海馬社長の言う機械そのものだった。腐っていくのすら分からなくなっていた。それが分かるようになったのは先程のデュエルのおかげだ。

 

だから、私はデュエルモンスターズから離れる。辛いこと、悲しいことが多かった。だけど、楽しいこと、嬉しいことも多かった。これ以上、思い出を穢したくない。

 

こういう人間になってしまう可能性があるのが、プロの世界なんだ。生半可な実力や思いで立ち入るべきではない、そういう世界なんだ。今のアカデミアでの授業や体制ではこうなることさえ出来ない。人知れず消えることになる。

 

これがプロだった私が話せることだ。これ以上の詳しい話は、後日アカデミアにレポートとして寄贈する。私は、疲れたよ」

 

佐藤先生はそれだけを告げるとマイクを黒服に返して出ていく。海馬社長もそれを許してドアを封鎖していた黒服に開けさせて会場から佐藤先生を出す。

 

『鮫島、佐藤の言う通り、現在サイバー流のプロは下位リーグに一人だけしか存在しない。それどころかこのデュエルアカデミア本校の卒業生の多くの足取りが追えない状況だ。追えなかった者が最後に目撃されたのは違法地下デュエルまでだ。貴様のくだらない思想が卒業生を死へと追いやっている。逆に分校の卒業生は数は少ないが全員生存が確認されており、実力不足から退いた者もいるがごく僅かだ。解任には十分な結果だ。サイバー流道場に戻って門下生の相手をしていろ、連れ出せ!』

 

佐藤先生とは異なり、言い訳すら許さずに連れ出される校長を見て、これからどうなるのかと全員が不安に刈られる。

 

『さて、今後のアカデミアの話だ。閉校も考えたが元々の制度が甘い作りだったのが原因とも考えられる以上、それを是正することで変わるなら存続で良いと考える。佐藤の話の通り、プロは新たなスタートに過ぎない。永久に続く戦いのロードを歩み続けるのが真のデュエリストだ!

 

よって、更なる競争を促すことにした。既存の3階級を更に9段階、ブルー1からブルー9、イエロー1からイエロー9、レッド1からレッド9、そして全く異なるカリキュラムの実験台となるブランクの28グループに再編成を行う。女子も今まではブルーのみだったが、成績に合わせて再編成を行う。腕章を追加して所属を分かりやすくする。

 

そして、底辺であるレッド9に連続3ヶ月、または年間で6ヶ月所属していた者を退学とする。保護者には昨日までに連絡を入れ、了承を得ている。

 

また、教師陣には担当教官として生徒を割り当てる。割り当てられた生徒の進退がそのまま査定に響くと思え!

 

無論、妨害工作や不正を防止するために監視員を配備する。カリキュラムには関わらず、デュエルの立ち会いは行う。それ以外は教師であろうと指示は受け付けない。指揮系統は完全に別だ。

 

ブルー1からレッド9の振り分け、担当教官の発表は休み明けに行う。特別カリキュラムになるブランクのみ、発表する。名前を呼ばれた者はステージに上がれ。遊城十代、万丈目準、三沢大地』

 

次々名前が読み上げられ、1年生32人がステージに上がる。

 

『制服を用意するほどではないためこちらも腕章を用意した。以降はブランクから抜けるまでは着用を義務付ける。ブランク組は既存のランクとは完全に別となる。暫定的に順位を付けてあるが変動する。努力を怠ればすぐに蹴落とされると考えろ。

 

オレの目から、現時点で上を目指そうとしているのはお前達だけだった。その価値を、ブランクに刻み込んで見せろ!以上だ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「佐藤さん」

 

「……遊城十代君か。なにか用かい?」

 

「ええ、療養にぴったりの場所を紹介しようと思いましてね。佐藤さんもですが、【スカブ・スカーナイト】いえ、【クライング・スカーナイト】にとっても良い場所ですよ」

 

「……何を言っているのですか?」

 

「共に戦い抜いた相棒と共に心と身体を癒して欲しい。プロで色々な情報を集め続けていた以上、知っているでしょう。そして体験もした、【クライング・スカーナイト】が【スカブ・スカーナイト】へと変化した、普通ならありえない現象を。カードの精霊は実在する。そして、彼らが住む精霊界も。今から佐藤さん達を案内するのは【古の森】争いを許さない神秘の森。療養にぴったりの場所です。療養が済めば、近くに【エンデュミオン】や【おジャマ・カントリー】や【マドルチェ・シャトー】なんかの友好的な文明圏もあります。旅をするには良い場所です。人間としての死に場所を探すくらいなら精霊の相棒として生きて欲しい。【スカーナイト】もそれを望んでいる」

 

「君にもいるのだね。【ユベル】私の記憶が正しければ、確か両性だったはずだが、君の側にいるのは」

 

「女性。オレはユベルを愛しているんですよ。いずれ、人間を超えて永遠に愛し合うために」

 

「やはり私は古い人間だ。最近の若者をちょっと理解できないよ。早くないかい?」

 

「10年近いのでトップクラスに早いと思いますよ」

 

「はぁ、やはり理解できないよ。この件、海馬社長は?」

 

「精霊のことは御理解されています。ブルーアイズを崇める一族の元に案内しましたので。そこで試練を乗り越え、ブルーアイズ達に認められて新たな力、シンクロ召喚を手にしました。来年から実装される予定です。療養の件は、オレのお節介です。佐藤さんのお話の代金と思って貰えれば。とても為になるお話でした。はっきり言えば、オレは将来的に精霊界に移り住むつもりです。プロへは軽い気持ちで行くつもりでした。人間界での活動も数年、それも半分以上は精霊界の方に行っているつもりでしたから。でも、今日の話を聞いて考えを変えました。本気でやろうと思いました。ヒール役ですけど、圧倒的な力で捩じ伏せようと」

 

「最近はお行儀の良い者ばかりで目立てますが、その分、実力が必要です。受けの体勢もあまり好まれません」

 

「ああ、大丈夫です。オレのもうひとつのデッキはかなり攻撃的でビジュアルもヒールにピッタリですから」

 

「それならば大丈夫でしょうが、センスと適正が物を言う世界ですよ。私は駄目でした」

 

「過去の映像を見たことありますけど、渋々やってる感が見てとれました。普通にビートダウンの方が向いてますよね?それなのに【エクトプラズマー】なんて使うから」

 

「…私、何故か他のモンスターと相性が悪いのかコントロールを奪ったモンスターの攻撃で勝てた試しがないんですよ。【キャノン・ソルジャー】なんかのモンスターをリリースしてのバーンでしか勝ったことがないんです。その【キャノン・ソルジャー】を用意するのも大変なんです」

 

「普通のプロより苦労していませんか、佐藤さん」

 

ユベルも隣でドン引きしている。スカーナイトは視線を反らしている。こいつ、幼い頃のぼっちの反動でコントロール奪取の力を磨いた奴だから変なことになってやがるな。そこら辺のコントロールを身に付けてこいよと思いながら佐藤さんを精霊界に招く。

 

 

 

 




なんでこんなことに...
いや、リスペクトってこういうことだろうってのが僕の中にあるのを出力すると、サイバー流に喧嘩を売ることになるんですよね。
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