漆番目の上弦   作:魔剣グラム

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最近、バイト先で好きな人の話になった。
話を振られて真っ先に出てきたのが「緋弾のアリア」のリサ・アヴェ・デュ・アンク。次が「りゅうおうのおしごと」の空銀子。少し遅れて「ソードアートオンライン」のシノン。
…私は少しヤバい人なのかもしれない。


蟲と弐番目の鬼の邂逅

少し時間が巻き戻る。

蛇と恋の柱が闘いを初めた時。

 

俺は極楽教の信者達を救済(・・)していた。まるで日本の城みたいな所で。

ここは無限城。この世にはない場所だ。幽世(かくりよ)の方が近いかもしれない。そんな所で。

俺は。救済(・・)していた。極楽教の信者達を。

永遠(とわ)を夢見る極楽教の信者達。 

永久(とこしえ)を望む極楽教の信者達。

その人達を救って(食べて)あげる事で俺と一緒に永久を生きているんだ。それを人間(救済される側)からはよく非難を浴びたな。

でも鬼にも俺の救済(・・)が理解できないヤツがいたな…。

「え〜と、永遠に変わらないなんてつまらんって言ってたよね?大楽くんは。自分が変化してこそ1番楽しい(飽きない)んだって」

信者達を救済(・・)しながら思う。

 

理解できない、と。

 

無惨様もおっしゃっていたが不変である事や永遠である事は素晴らしい事だ。そんな事も理解できずに同期である事を理由にすぐ側にいるとはね。

無惨様のお気持ちも理解できないな。

…まぁ、もともとあの鬼は変わり種。特に気にする必要もないか。

そう思いながらも救済に戻る。

 

バリボリ。バリボリ。無心で救済し続ける。

 

バリボリ。バリボリ。無我に救済し続ける。

 

ちょうど新しい救済者に救済し始めた(噛みついた)所で、

 

ガチャ…

 

扉がわずかに開いた。

鬼殺隊が来たのかな?

俺の視界に入ったのは身長が5尺ほど(約1m半)しかない女の子。蝶を模した髪飾りを着けている。

 

…救済されに来たのかな…?

若い女の子は好きだよ。美味しいからね。

「鳴女ちゃんには後で感謝しないとなあ」

俺は誰ともなく呟いた。

 

 

 

「やあやぁ初めまして。俺の名前は童磨。

いい夜だねぇ」

その言葉が私の鼓膜を揺らす。

鬼が翼の様に扇を一瞬でバッと開いた。

 

「…助けて…助けて!!」

「こらこら、まだ喋ってるでしょ?」

手を伸ばして助けを求める人間の願いを叶えてあげる。当然だ。鬼から護る。鬼を殺す。そのために私はそのためにここに来たのだから。

「速いねぇ!柱なのかな?」

 

女の子を助けてあげながら、私は姉さんの言っていた事を思い出していた。

その鬼の特徴は、頭から血をかぶった様。

その鬼の使う武器の特徴は、鋭い対となった扇。

その鬼の特徴は、にこにこ屈託なく喋る。

 

間違いない。この鬼だ。

 

この鬼が私の姉さんを殺した悪鬼だ!!

憎しみで。憎悪で。心が塗り潰される。

いつも姉さんが好きだと言ってくれてから、姉さんが死んだ後、弔いのつもりで貼り付けていた。貼り付ける様、努力していた笑顔が一瞬できえて無の表情となる。

「俺は万世極楽教の教祖なんだ。信者の皆と幸せになるのが俺のつとめ。その娘もそこに置いといて。後でちゃんと食べるよ」

そんな事はお構いなしに目の前の大悪が、好き放題喋り始める。

「はぁ?あなた頭大丈夫ですか?」

この娘は助けを求めていた。その声すらも聞かずに、皆と幸せになるですって?

「本当に吐き気がする」

「何か辛い事があったんだね。話してごらん。聞いてあげるよ」

いつの間にか無表情ではない。自分の内面そのまま。憤怒の表情に(かお)が歪められていた。

「辛いも何もあるものか。私の姉さんを殺したのはお前だな!この羽織に見覚えはないか!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前の小さな女の子の言う事を聞いて、記憶をまさぐる。

「…あぁ!花の呼吸を使う女の子だね!朝日が昇って食べ損ねた女の子だよ!よく覚えてる。ちゃんと食べてあげたかっ…」

 

蟲の呼吸・蜂針(ほうしん)の舞。゛真靡(まなび)き゛

 

 

まるで蜂が針を刺す。そういう幻をみるかの様に鋭い一撃だった。

慌てて、手で受けとめようとした。それなのに止めきれずに眼まで。後頭部まで貫通した。人間なら間違いなく致命傷だ。

 

…だけど鬼には意味ないよねぇ。

 

血鬼術・蓮葉氷。

 

距離をとった柱に向かい、俺は口を開く。

「突き技なら人は殺せるかもだけど、鬼は殺せないよ。やっぱ頚を斬らないと」

けど目の前の柱にとってはどうでもいいようで。

「突きはダメでも毒ならどうです?」

ギリキリィ…バチンと刀を鞘に収めた。

「う!うぐあぁァ!」

その瞬間、まるで本物の蜂に刺されたかの様に、毒が身体を蝕む。しかも毒の効力はたぶん蜂以上だ。全身が痛む。まるで身体全体が内側からヤスリでガリガリ削られているようだ。

全身が痙攣を引き起こし、思わず膝をついた。コレはたぶん下弦の伍の手下を殺した時よりも強力な毒だ。

 

でも。

 

「あれれ。毒、分解できちゃったみたい。せっかく使ってくれたのにゴメンねぇ!」

そう。これが鬼の恐ろしさだ。特に上弦の鬼の。

あっという間に毒の耐性がついてしまう。文字通り鬼の様な速さで。

それに鬼にとっては長期戦は圧倒的に有利だ。体力も瞬発力も怪我の回復速度も。何もかも上だからね。

「…まぁいいです。これぐらいは想定内ですから」

だが目の前の柱はそこまで落胆したわけではないようだった。

じゃあ俺も気づいた事を1つ言ってみよう。

「その刀、鞘にしまう音が特殊だね!そこで毒の調合を変えてるのかな?」

さぁ違う毒を使ってごらん。1つの毒を俺は覚えたよ。その系統の毒は効きにくくなる。

「次の調合なら効くと思う?やってみてよ!毒を喰らうのって楽しいね!」

たぶんさっきよりも効かなくなってるからね。

 

 

 

 

 




この間まで十二きづきを十二きげつと読んでいた作者です。なんかそっちの方が語呂が良くないですか?
呼吸変容のタグつけときますね。この作品では蜂牙の舞を蜂針の舞にしました。なんか技的にも蜂的にも牙というよりも針って感じの技だったので…。

あとなんか武器の説明しないと気が済まないので下に書いておきます。しのぶさんの使う武器については説明不可能です(似た武器を見た事がない)。鬼の使う武器についてですね。こんな事、知っている方が大半だとは思うんですけど、もし知らない方がいたらご参考までに。

この鬼の使う武器はたぶん中国が原産の鉄扇ですね。てっせんと読みます。扇の弧を描いている部分に刃がついた武器になります。個人的にはどうやって扇を畳んでいるのか謎ですね。中国も日本で作られた鉄扇も全て開いた状態で作られております。というのも畳むと、刃の位置がズレて斬りかかった時に折れる可能性が増すからです。蛇腹の様に波打たせる事もできるとは思いますが、そこまでする意味もないし…。結局血鬼術だと納得する事にしました。

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