漆番目の上弦   作:魔剣グラム

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前話で「蟷螂の舞」を新たに作りました。゛狂信の末路 ゛というものなんですが、カマキリがヨーロッパの方では祈っている様に見えるので「祈る虫」とつけたられた所や、普通に共食いする所。後、交尾の際に交尾した雄を雌が喰らう、など色んな意味で名前をつけてみました。もちろん、童磨さん(狂った教祖)の末路という意味もあります。
童磨さんには相応しい最期だったのではないかとそう思っております。
なんか1番盛り上がって来た所であっけなく決着つけるとかそういう抜かりないのが作者は好きだったり。


蛇、恋、獣。独特すぎる呼吸集まる

さぁ猛烈に息を吸え。

その息を筋繊維1本1本に伝えろ!余す事なく。

その力を集めて爆発させろ!!!

「龍の呼吸。終ノ型・孤龍」

俺は容赦なく目の前の巨大な鬼に向かって斬りかかった。

 

 

 

「ん。遅いの」

 

 

 

その次の瞬間俺は巨鬼に投げ飛ばされていた。

…地面と平行に。

は?

鬼にぶっ飛ばされた人達なら、自分を含めて何度も見た事がある。だが、その人達は必ず弧を描いていた。

だからそう遠からず地面に着地していた。

…無事かどうかは別として。

だが。今、俺は。地面と平行に飛んでいる(・・・・・・・・・・・)。目玉が飛び出しそうなほどのスピードで、真後ろにすっ飛んでいく。

ヤバ過ぎるぞ、この状況は。地面につかない(・・・・・・・)

地面につかないと当たり前だが、体勢も立て直せない。

ヤバい!風圧で身体が動かない!受け身すらもとれない!!

そのまま真後ろの壁にブチ当たり、それすら突き破って、なお進んでいく。

…何重にも壁を突き破り、目の前が紅くグラグラしてきた所でようやく止まった。…壁で。頑丈なハズの壁がまるで薄紙で作られた様に、たやすく破壊されている。何層にも、何層にも渡って。

…バケモノめ。

「…あ。やりすぎたかの?ほんの軽〜く投げたつもりだったんじゃが…」

どこかいいわけじみた言葉が聞こえて、俺は仰天する。

ほんの軽く?今のが?

「と言うか、今のは、先に攻撃してくださいって言ってるかと思ったのじゃが…。違ったのかの…?」

 

あんなに遅く剣を振ってたんだからの(・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

その言葉を聞き、耳を疑った。

俺の呼吸の最強の技だぞ?

確かに1番(最速)ではないが、それでも俺の呼吸の中では速い部類に入る。

でもまだまだ手が消えたワケじゃない。

行くぞ。俺。甘露寺を助けるために。そのためには。

なんとかボロボロの身体を呼吸で誤魔化し、負担を軽減するぞ。

…これやると後でまとめて負担が来るから、そんなに好きじゃないんだけどな。

でも四の五の言ってる場合じゃない。やるぞ。

アイツを倒したあと、無惨を倒すために。

俺は静かに呼吸を整え、身体の回復に力を注ぐ事にした。

 

 

 

 

 

 

 

蛇柱を投げ飛ばした後。俺は恋柱にゆらりと向き直る。さてと、今のうちにコイツを倒すとしよう。蛇の方はしばらくは戦線離脱だろ。その程度の負傷は与えた。

恋柱は刀を構えたな。生きるために必要な事は諦めていない。だけどな。

…刃こぼれしてるな。俺のせいだが。

多少は刀があるぶんマシだが、それでもそれが俺を倒すのにどこまで役に立つか。さてさて、今のうちに一気に決着をつけるとしようかな。加勢が入らないうちに。

 

血鬼術。嵐爆雷(らんばくらい)

 

嵐の中で雷が無数に降り落ちる。

まるで稲妻の様に迅く。嵐の疾風(かぜ)が吹き荒れるが如く稲光が無数に走りだす。

そんな情景を脳裡に映し出す程、凄まじい速さで拳が無数に乱れ舞う。

この技は速度と数を頼みとする技。疾さと物量で押し流してやる!!!

だが(・・)

獣の呼吸 伍の牙・狂い裂き

「グハハハハ!ドンピシャじゃねぇか!烏の道案内は!」

突如、イノシシの頭をした何者かが降ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

え〜と、ついたのは伊之助くん?

私は少し混乱していた。伊之助くんはもともとここにはいなかったハズよね?

「ん〜?てめぇは…う〜ん、上弦の漆!てめぇが上弦の漆番目ってバレてるぜ!烏の野郎!!1番強え鬼の所に案内しろっていったのに真逆で1番弱えじゃねぇか!」

「…あぁ。数字だけみて判断したらそうじゃな!わしが上弦最弱じゃ!!」

…ウソ。私、上弦の肆と闘った事あるけど、この鬼、明らかに上弦の肆番目(闘った事ある上弦)よりもめちゃくちゃ強いわ。

「気をつけて!この鬼、数字はあてにならないわ!!」

距離が迫り、刀と拳の領域に入る。お互いの間合いの中に。

獣の呼吸。

血鬼術

巨躯の鬼がニヤリと笑う。そんな風に私にはみえた。

肆の牙・切細裂き

矮躯体(わいくたい)

 

一瞬で急激に小さくなった鬼はたやすく攻撃の隙間をかいくぐり、あっさり懐の内に入り込んだ。危ない!!!

 

小さな身体に見合わぬ凶悪な力の籠もった拳を、殺意とともに引き絞る。私の助けは…間にあわない!!!

血鬼術。撃爆剛(げきばくごう)

イノシシ頭の少年が大きく吹き飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

…軽いな。手応えが軽かった。たぶん後ろに飛ばれたんだろうな。

俺の撃爆剛は爆発的に力を高めて、凶悪なまでの剛力でぶん殴るだけの極々シンプルな技だ。血鬼術・矮躯体で力を流用(・・・・)したけれども、あそこまで派手に吹き飛ぶ技じゃあない。

 

「強えじゃねぇか!」

 

瓦礫の中からひょっこり顔を出して、嬉しそうに言う。

…ほらな。やっぱり生きてた。生き汚い野郎だ。

俺は心中で嘆息する。今ので決まってくれたら、とても楽だったんだけどな。

 

「え〜と、嘴平伊之助だったかの?お主の名前は?」

「なんで俺の名前知ってんだよ!キッショ!!」

 

ひどいな。俺はバレない様に心の中で笑う。素直な子だな。情報通りの(・・・・・)

 

「わしはな。将来有望な子達の情報を集めているんじゃよ。柱や準柱の実力を持つ子供達の情報は皆(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)持っとる(・・・・)

 

俺の集めている情報通りならば。

「お主の母親は鬼に殺されたらしいの?」

「…なんだと?」

おや。知らんのか。

「あぁ。わしではないが、上弦の弐の童磨に殺されたらしい」

まったく。度し難い。実に愚か極まりないな。

「お前の母親は童磨が人を喰っているのを見て実に怒ったんじゃな。怒ってそこから逃げ出したのはいいんじゃが、土地勘がなく迷ってしまい、お前を崖から落とした直後、童磨に喰われたのじゃよ」

 

そこで記憶が一気に甦って来たらしい。柄を持つ手には力が籠もり、ギザギザの刃には殺意が映っている。

 

「…その童磨って鬼はどこだ」

 

おお。巨大過ぎる程に凶悪な殺意だな。実にいい。

 

「さっき烏が言うておったぞ。死んだとな。胡蝶しのぶと栗花落カナヲが討ったと。アイツらは確か童磨に姉を殺されておったからの。仇討ちは成功したようじゃ」

「…そうなのか。良かった」

「まったく。わしはお前の母親に会った時に、あの宗教はやめとけと言ったのにな。万世極楽教は禄な宗教じゃないとな。女は皆、最終的には(教祖)のエサじゃとな。わしの助言あって気づけたのはいいが、最終的に死んでれば意味なんてないの?」

「…助言したのか?」

「あぁ。あの女、最初は甲高い声で「教祖様はそんな事は絶対にしない!」と喚いておったがの。1つ疑念を持てば疑念は膨らみ続け、最終的には真実に気づく。1つ学べたの、あの女。…あぁ意味なんてないと言ってすまなかった。意味はあったの」

お主と言う鬼狩りを作った。十分過ぎる意味があったの。

 

それを聴き、目の前のイノシシ頭は泣いていた。号泣だ。

 

…スキだらけだ。話の後不意打ち。俺の十八番(おはこ)だったりする。この一撃は絶対に躱せない!!!

 

血鬼術・撃爆剛

 

だがその一撃をあっさり躱すイノシシ頭。

「…俺の母親は最期まで幸せそうだったか?」

「知らんよ。…でもお主は、間違いなく母親に最期まで、「愛されていた」とは思うがの」

立派な母親だとわしは思うぞ。…童磨は違う事を言うかもしれんがの。

「…そうか。ありがとうと言わせてもらうぜ!思い出させてくれた事!」

てめぇを斬った後、無惨の頸を斬る!!!悲しみの鎖を断ち切るためにな!!!

 

そういうイノシシ頭。

「…ほう?わしの頸、斬れるもんなら斬ってみるが良い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

血鬼術・巨躯体

そういう小さな身体をした鬼。なんだ?何すんだ?

その姿はもともと小さく、俺の腰ぐれぇだったのに気づいたら、俺の背丈の倍以上に。更にデカくなり、最終的には見上げる首が痛えくらいにデカくなりやがった!!デカくなりすぎだろ!!この変な城もその分大きくなり、その鬼の迫力を存分に伝えて来やがる。

「我が名は大衆道楽(ダイダラボッチ)。その名の通り大衆の道楽じみた偉業をなす異形の鬼。村をおよそ30、山ごと呑み込んだ我が威光を存分に浴びるがいい」

口調すらも変わった。威厳ある、人間には出せないほどの低い声に。

…怖え。これは恐怖だ。

ここまで力の差がある鬼とは、今までかつて闘った事がねえ…!

だがコイツを倒すほか無惨と闘う方法がない以上闘うしかねえ。勝つしかねえ!!!

「ウソ!!」

そんな声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

私は思わず叫んでいた。だってだって。

「村を呑み込んだのは6箇所のハズでしょ!?30なんてウソよ!!!」

「いや。嘘ではない。」

唸るほどの低い声が聞こえた。

「わしは確かに30を越えるほどの村を呑み込んだ。あまり有名でないのは単純に目撃者が出なかったからだ(・・・・・・・・・・・・)。より正確に言うと、目撃者ごと呑み込んだと言う方が正しい(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)。」

目撃者を逃してしまったのが6箇所と言う方が正しいかの。

その言葉を聞き、私の目は怒りで紅く染まった。

「貴方を斬る!!何がなんでも!!」

その鬼は愉快そうにクツクツ笑った。

「やれるもんならやってみるがよい」

私と伊之助君は鬼に向かって走り出した。

巨大過ぎる鬼に向かって。絶望的な闘いの始まりだった。

 

 

 

 

 




伊之助君にはこっちに来てもらいました。頑張って!伊之助君!!
どういう感じでこの闘いは終わらせようかな…?
まだ未定なので色々変な事やらせるつもりですが…。
続きはまた頑張りますね!

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