上弦の枠を壊す…?
降るような星空である。そんな夜に。
俺は喰っていた。人を。
一日の目標人数は既に大きく超えていたが、腹ペコだったのである。
「…ヒッ!」
食料みっけ!
「29人目ェ!!」
その時。
ベベン
どこからともなく琵琶の音が聞こえて来た。
気がつくと口の回りは血だらけで(コレは普通だ)
慌てて頭を下げてひれ伏す。いわゆる土下座の体勢だ。
そんな体勢であの食料、喰いたかったな…なんで思っていたら。
琵琶の音が響き、
鬼舞辻無惨がいつの間にか目の前にいた。
「私を目の前にして食い物の心配か?」
不機嫌そうに告げた。
「すまんね。あと少しだったモンでな」
無惨はビキビキと額に青筋を立てたが、堪えたらしい。
さすがは無惨様だ!!!
「何がさすがなんだ?」
…忍耐力?
それも読み取ったらしく、更に青筋を立てたが、
「まぁ、いい」
真剣な表情になって続ける。
「お前を上弦の漆の鬼に任命する」
その情報は完全に寝耳に水だった。仕事が増える!
イヤだ!!無惨のおつきになるのはもっとイヤだ!!
パワハラされるもん!!!
俺はこの千年で知ってる!!!
俺は慌てて自己の保身についての言葉を探しはじめる。
「イヤ、俺、もともと十二鬼月じゃねぇじゃん!下弦からじゃねぇの?そもそも陸番目までしかいねぇハズだし」
「下弦を解体した結果、戦力不足でな。急遽、上弦の漆番目を作る事にしたのだ」
そこで一拍おき。
「最近、下弦が全員死んでな。どうやら私の見込み違いだったようだ」
イヤ。下弦の2/3殺したのお前じゃん?めっちゃ圧迫して。
「そうだが?何か問題でも?もしかして思い入れがある奴とかいたのか?」
「問題って…」
…特にねぇな。上弦も下弦も会った事ねぇし。興味もねぇ。興味があるのは己の保身だけだ。
「それで?受けるのか?受けないのか?」
わかったよ。その件は。
「謹んで拝命させて頂きます」
コレで満足なんだろ?こう言うしかない。コレ以外は死ぬ。
全く上弦の漆番目とはね。
この俺が。笑えるぜ。
脚を崩し、無惨と並んでダベり始める。さっきまでは上司と部下だったが、今は旧友だ。
…さっきまでも若干旧友だった気がしなくもない。
「私とほとんど同期の鬼だからな。期待しているぞ」
…そういやそうだな。ここで会ったが千年目の付き合いだ。
「それは少し違う。だが千年前と今とではだいぶ変わったな…」
着る服も、乗る車も、政府のあり方さえ全て変わった。
だが無惨はそれが許せないらしい。
「…私が最も好む不変とはほど遠い」
「俺は好きだぜ。「変化」ってやつはな」
俺が笑いながら言うと、無惨はそれがさも憎らしい様に言葉を紡ぐ。
「千年前となんら変わらんなお前は。そういう所は」
そうだな。そういう意味では不変なのかもな。
「変化が好きな自分が不変である」
言葉遊びみてぇだな。
「変化とはたいてい劣化にすぎないと何度も言ってるだろう」
劣化ではない変化もある。
むしろ改良とよべる変化もある。
そんな事は意地でも認めないんだろうな。
「イヤ。認めるとも。…青い彼岸花だ」
なるほど。自分が完璧になるための変化は改良なのか。
究極な
「うるさい!!」
ブンと振り回される触手。
あっぶなあ…!
もし避けなければ頭パァンだったぞ…!
お前の頭と違って脳みそ入って…!?
またブォンと振るわれる触手。なんかラクダに近いなきまねをしている印象がある。若干かわいい声してる気がする可能性が微レ存。
「…まったく。こんだけの事を話すのにずいぶん時間がかかってしまった。…任せたぞ。私の同期」
あぁもちろんだとも。
「任せとけ」
鬼殺隊の殲滅と青い彼岸花の取得だな。
………………ムリだな。
今度は締め出された。琵琶の音と共に。そして急に襲ってくる現実。
1人喰いそびれた…!!!あのクソ無惨!!!
俺は無惨に今度人1人貰う事を誓ったのだった。
鬼って言ってもな…っと思っております。この話は原作で言うと列車編の後で妓夫太郎が倒される前の話になります。
私の前作を読んだという人
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はい
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いいえ