ガラル地方での冒険、最初にもらえるほのおタイプのうさぎポケモン。
あのポケモンがイナズマイレブンにおでまししたようです。あと、ペンギンなポケモンも来たとか来てないとか。
書きたいところだけ書いた短編です。

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異次元からの来訪者

 それはある日のこと。草むらから突然飛び出してきた影が豪炎寺に飛びついた。

 

「うわっ!?」

 

「ヒバ! ヒーバ!」

 

 思わず振り払う。それは怪我をすることなく、くるりと一回転して着地した。

 そうしてはっきり見えたその生き物の姿は、豪炎寺が今まで見たことがないものだった。

 

 長い耳。白と赤で彩られた身体。くるりとした目。ヘンテコな鳴き声をだしながら二足で走る。

 ウサギのようにも見えるがウサギではない。第一、ウサギは二足歩行しないしこんな変な配色でもない、ついでにヒバなんて鳴かない。

 

「ヒバー!」

 

 何が楽しいのか豪炎寺の周囲をぐるぐる回り、ある一点に狙いを定めてピョンピョンと跳ねる。恐らくこのウサギが狙っているのは――豪炎寺の背負っているカバンだろう。

 

「っ」

 

 カバンを奪うのか入り込むのかは分からないが、このままではずっとコイツに付きまとわれると確信した豪炎寺、全速力で走る。

 フットボールフロンティアへ出場出来るだけの力がある俺に追いつけるはずが無いだろう、とどこかで慢心していたのかもしれない。もうサッカーは捨てたというのに。

 

 何事もなく家の前に辿り着く。ふう、と一息ついて鍵を取り出そうとして――。

 

「――ヒバッ――ヒバヒバーッ!」

 

 炎を巻き上げながら追いかけてくる謎の生物。炎が巻き上がるごとにだんだんと速度が上がっているような……気のせいだと思いたい。

 

「ヒバ! ヒバニー!」

 

 白い髪色か、炎繋がりなのか。すっかり懐いてしまったこの怪生物を父親になんと説明するべきか、頭を悩ませる中学生がいたとかいなかったとか。

 

 

***

 

 

「……それが気になるのか?」

 

 ヒバニー――妙な鳴き声だったがどうやらそれが名前だったらしい――が部屋の隅、目に入らないように置かれていたサッカーボールを引っ張り出したようだ。

 

「それは蹴って遊ぶものだ」

 

 どうやら人間の言葉をちゃんと理解しているらしいヒバニーはそれを聞くと、ボールを床に置き、軽く力を入れて蹴飛ばす。てん、てん、てんとサッカーボールは弾む。

 蹴る。弾む。蹴る。弾む……。

 

「ヒバ!」

 

 サッカーボールを小さな両手で抱き抱え、目をこれ以上ないぐらいキラキラ輝かせ俺を見つめる。

 

「ヒーバ……」

 

 ねだっている、のだろうか。

 

「欲しいのか?」

 

「ヒバッ、ヒバヒバ!」

 

 そう問いかけると、ヒバニーは首が取れそうな勢いで何度も頷く。

 

「もうサッカーはしないって決めたんだ。俺が持つよりもお前の遊び道具になってる方がいいだろう」

 

「――ヒバッ!?」

 

 サッカーをしない、という言葉に反応したのか、ヒバニーは目を丸くし耳がピンと上を向く。どうして、と問いているのだろう。

 

「俺はサッカーをしてはいけないんだ。俺がサッカーをしていたから、優香は……」

 

 忘れるはずのない、あの日のこと。応援に来ようとした優香は事故に巻き込まれて、意識不明の重症に――。

 無意識のうちに手に力が入る。俺がサッカーをしていないければ、優香は助かっていた。優香は今も苦しんでいるのに、俺だけがのうのうと生きているのは許されない。

 

「ヒバ……」

 

 ピンと立っていた耳がしゅん、と下を向く。……動物は人間の感情が分かる、と聞いたことがある。何となくだが察したのだろうか。

 

「……大丈夫だ。お前が気にすることじゃない」

 

 しゃがみ、ヒバニーの頭を撫でる。肝心のヒバニーは抱えているサッカーボールに目を落とし、何か考え込んで――豪炎寺の視界にあまり入らないように、はしゃぎすぎないように気をつけながら遊びだした。

 

 ――それから数日後、豪炎寺が再びサッカーをする切っ掛けになる帝国学園との練習試合があるとは、誰も予想できなかった。

 

 

***

 

 

「キャプテン〜! オ、オバケっス〜〜!」

 

 さあ今から練習だ! と張り切る円堂を遮り、涙目で訴えかけるのは栗松と壁山。

 

「何言ってるんだ二人とも? 尾刈斗中との試合はもう終わっただろ?」

 

「そうだけど、そうじゃないでヤンス〜っ!」

 

 頭にはてなを浮かべながら二人の案内についていく円堂。その視線の先にはガサガサと音を立てて動くカバンがあった。

 

「ひー! まだ動いてるっス!」

 

 壁山が怯えるのも無理はない。成る程確かにカバンが独りでにがさごそと動いている。

 だんだんとその動きが大きくなる。じいい、と音を立ててチャックが開き――。

 

「――ヒバ!」

 

 顔を出したのは可愛らしいウサギに似た生き物。

 

「ギャーッ! で、出てきたでヤンス〜!」

 

「落ち着け! あれはオバケじゃないぞ……多分」

 

 騒ぎを聞きつけ、野次馬しにきたマックスが壁山の肩越しに覗き込む。

 

「へー? あれがオバケ? 出来のいいヌイグルミとか……じゃなさそうだね、ウン」

 

「ヒバー! ヒバッ」

 

 とーう、とカバンから飛び出し辺りをキョロキョロ見回す。何かを探しているようだ。

 

「ヒバ! ヒーバヒバーッ!」

 

「ヒバニー!?」

 

 ヒバニーの鳴き声が聞こえたのか、慌てた様子で豪炎寺が駆け寄る。

 

「どうしてここに……っまさかカバンの中にずっといたのか!?」

 

「ヒバ! ヒーバ!」

 

 エヘン、と胸を張るヒバニー。

 

「知ってるのか豪炎寺?」

 

「知ってると言うか……飼っていると言うべきか」

 

「ヒーバ……ヒバ!」

 

 円堂の抱えているサッカーボールに目線が固定されるヒバニー。豪炎寺が再びサッカーをする、と聞いた時と同じ……いや、それ以上の目の輝きだ。

 

「そうか――お前もサッカーしたいのか!」

 

「ヒッバー! ヒバヒバー!!」

 

 ふんすと気合を入れその場で駆け足。やる気満々、といった様子だ。

 

「サッカーが絡めばどんな事でもすぐに受け入れるのは流石円堂、と言うべきか……」

 

 やれやれ、といった表情をする炎のエースストライカー。ヒバニーは円堂と一緒にグラウンドへ全力で駆け出す。

 

 

 足から火の粉を巻き上げながら、炎のウサギは今日もサッカーを楽しむのだった。

 

 

 

 

 

 ――一方、帝国学園では。

 

「な、なあ、おい、佐久間……」

 

「見たことないペンギンだ……!」

 

「話聞いてないなコリャ」

 

 帝国学園の誇る必殺技である皇帝ペンギン2号では、いつも鬼道が指笛を吹いてペンギンを呼び出している。が、違う人間が指笛を吹いたらどうなるのか確かめようと佐久間が試した結果がこれだ。

 いつもの皇帝ペンギンとは見た目も大きさも違うペンギン。新たな必殺技を習得できるかもしれない……ということよりも佐久間にとってはペンギンの方が気になるらしい。年相応の好奇心からか、眼帯で隠された目もキラキラ輝いているように見える。

 

「ポー、コオリッポ?」

 

 ペンギンの体に立方体でできた氷の頭を乗っけた生き物、としか言いようがないもの。それが帝国学園サッカー部の目の前にいた。

 頭が重いのか、時折ふらつきながらえっちらおっちらと歩く。

 

「コオリッポ……それが名前なのか?」

 

「ポ!」

 

 ぴし、と敬礼する。

 

「いやなんで言葉分かるんだよ!」

 

「? なんで分からないんだ?」

 

「ポー?」

 

 意思疎通をどうしているのかは謎だが、それは超次元という一言で議論を終えた。

 

「で、何ができるんだ? こいつ」

 

「ポ! ポッポ、ポー!」

 

 ぽこぽこ、ぽこぽこ。

 

「どうしたんだ? お腹叩いて……」

 

「ポ、ポーッ!!」

 

「――なっ!?」

 

 コオリッポが両翼をバンザイすると、つららのような氷の針が複数生成され――真っ直ぐに飛び、グラウンドに突き刺さる。

 

「…………危険なことするなら、先に言おうな」

 

「…………ポー」

 

 帝国学園サッカー部に、ぽこぽことはらだいこをして氷を操る謎のペンギンが加わったとか加わらなかったとか。



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