狂犬と消失少年   作:火の車

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第二の消失

ますき「__出水、いるか?」

陽介「佐藤?」

 

 いつも通り、朝食をとってると佐藤が入ってきた。

 

チュチュ「どうしたの?マスキング?」

ますき「今日は出水を迎えに来たんだ。」

パレオ「ようさんをですか?」

 

 チュチュとパレオは目に見えて困惑してる。

 

 多分、この時期だし、あれかな。

 

ますき「出水、そろそろ学校行くぞ。」

チュチュ、パレオ「!」

陽介「あぁ、やっぱりか。」

 

 そろそろ登校しないと単位もまずいだろうしな。

 

陽介「用意はしてたよ。むしろ遅いと思った。」

ますき「お、そうか。じゃあ、着替えとかしてきてくれ。」

陽介「了解。」

 

 俺は制服に着替えに行った。

 

 ”チュチュ、パレオ、ますき”

 

チュチュ「......大丈夫なの?」

 

 陽介が部屋を出て行くと、チュチュが口を開いた。

 

 神妙な表情だ。

 

ますき「あぁ?何のことだ?」

チュチュ「陽介が人前に出ても大丈夫なのか聞いてるの。」

パレオ「パレオも心配です。」

ますき「私も出来る限りカバーする。あいつは友達がそこそこいる奴だったし、大丈夫かもしれない。」

チュチュ「そういう事なら......」

パレオ「大丈夫、でしょうか?」

 

 多少の不安はあるが、陽介の人生に関わるのでチュチュとパレオは強く言えない。

 

 流石に高校を卒業できないのはまずい。

 

陽介「__お待たせー。」

ますき「お、早かったな。」

陽介「男の着替えなんて、そんな時間かからないからな。」

チュチュ「陽介、気をつけなさいよ。」

陽介「おう。」

パレオ「知らない人について行ったら駄目ですよ?」

陽介「いや、俺は小学生か?」

ますき「まぁ、行こうぜ。出水。」

陽介「分かった。じゃあ、行ってくるよ、チュチュ、パレオ。」

 

 俺はそう言って、佐藤と一緒に家を出た。

__________________

 

 なんだかんだ、進級して学校に行くのは2回目だ。

 

 かなり久し振りに感じる。

 

 言っても、まだ4月なんだけどな。

 

陽介「__おぉ。」

 

 学校に着いた。

 

 すっごい懐かしい。

 

ますき「そんなに物珍しいもんでもないだろ。」

陽介「いや、久し振りで感慨深いんだよ。」

 

 そうそうこんな感じの校舎だった。

 

 新鮮な気持ちで見ると綺麗に見えるな。

 

ますき「ほら、行くぞ。」

陽介「了解。」

 

 俺と佐藤は校内に入った。

 

 校舎までの道って異様に長い。

 

陽介(なんだか、妙に見られてるような?)

ますき(んだよ、うぜぇな。)

 

 校舎に向かってる間、佐藤の目がいつもより鋭い気がした。

__________________

 

 教室に来た。

 

 まだ席替えもしてないみたいで、そのままだった。

 

陽介(やっぱり、見られてる?って、あれは。)

 

 視界の端に友達の姿が見えた。

 

陽介「よっ!久しぶり!」

男子「......おう。」

男子2「......久しぶりだな。」

陽介「久しぶり!」

男子「わりぃけど、俺らちょっと行くわ。」

男子2「またな。」

陽介「え?」

 

 二人は俺が話しかけると教室から出て行った

 

 どうしたんだろ?

 

陽介(トイレか?)

ますき「......」

__________________

 

 それから、俺は普通に学校生活を送った。

 

 でも、前までと違って誰にも話しかけられることはなかった。

 

 そして昼休みになった。

 

陽介(あれか?夏休みに久しぶりに会った友達に話しかけずらいとか、そう言う感じか?)

『__2年B組、出水君。今すぐ職員室に来てください。』

陽介「俺?まぁ、行こ。」

 

 俺は席を立って、職員室に向かった。

 

 ”ますき”

 

ますき(私も一旦、休憩にするか。職員室にいる間は安心だし。)

 

 ますきもそう思って、教室を出て行った。

 

クラスメイト「......」

__________________

 

 職員室の用事を終えて俺は教室に戻っていた。

 

 休んでる間のプリントとか、ノートとか色々なものを貰った。

 

 ......まぁ、案の定、良い顔はされなかった。

 

陽介(まぁ、流石に事情を知ってたらな。)

 

 そう思ってるうちに教室に着いた。

 

陽介「......?」

 

 教室に戻ると、異様な雰囲気に包まれていた。

 

 全員の視線が集まってる。

 

陽介(まぁ、いっか。昼飯食べよ。)

 

 俺は席について鞄の中を見た。

 

陽介「あれ?」

 

 弁当箱がない。

 

 朝、弁当箱が入ってるのは確認したし、忘れたって事はないはず。

 

男子「__どうしたよ、陽介。」

陽介「何故か弁当箱がなくてな。忘れたわけはないんだが。」

男子2「へぇ、大変だな。」

 

 本当にどこ行ったんだろう。

 

女子「__そろそろさ、演技必要ないよね?」

陽介「?」

 

 話したこともない女子だ。

 

 てか、演技ってどういう事だ?

 

女子「弁当のある場所、教えてあげるよ。」

 

 女子はそう言ってある方向を指さした。

 

 ゴミ箱、だ。

 

陽介「!」

 

 俺はゴミ箱の方に駆け寄った。

 

陽介「......これは。」

 

 ゴミ箱の中には弁当箱ごと弁当がぶち込まれていた。

 

 でも、誰がこんな......

 

女子「いい加減気付きなよ。」

陽介「気付く?」

女子「あんた、なんで生きてるのって思われてるんだよ?」

陽介「え?」

 

 なんで生きてる?

 

 なんでそんなこと聞くんだろう。

 

男子「正直、あんな大事故に巻き込まれて生きてるってのもわけわかんねぇし。」

男子2「片目がない人間とか気味悪いし。」

女子2「そんな奴いたら、学校の品格疑われるし。」

女子3「死んでてくれた方がよかったよねー。」

陽介「ど、どいう事だ......?」

女子「分かんないの?」

 

 分かるか分からないかと言われれば分かる。

 

 でも、信じたくない。

 

 友達は、友達だけは裏切らない、絶対に......

 

 そう信じたかった。

 

女子「もうさ、学校辞めて死んだら?」

陽介「っ!」

女子「気持ち悪いんだよ。お前なんてこの学校に相応しくない。」

 

 女子のその声にこたえるように、他の奴らが言ってきた。

 

 「死ね。」「消えろ。」「辞めろ。」

 

 そんな声が重なって、ノイズのように聞こえてくる。

 

「__そんなのだから、親に捨てられるんだよ!」

 

 ノイズの中から、そんな声が聞こえて来た。

 

 その時、俺の心が何かに沈んでいくような気がした。

 

陽介「......っ!!!」

 

 俺は教室を出た。

__________________

 

 ”ますき”

 

ますき「はぁ、少し時間かかっちまった。出水は戻ってっかな。」

 

陽介「__」

 

ますき「出水?」

 

 向こうから出水が走ってきた。

 

ますき「おい、廊下走るとあぶねぇぞ。って、おい!出水!」

 

 私が声をかけても反応せず、通り過ぎていった。

 

 待て、あの表情。

 

 嫌な予感がする。

 

 私はそう思って、すぐに教室に戻った。

 

女子「__あはは!案の定だったね!」

男子「走って逃げやがったよ!だっせ!」

 

 教室に戻ると、そんな話声が聞こえた。

 

ますき「......おい、お前ら。」

女子「佐藤さん?どうしたの?」

ますき「お前ら、出水に何した......!」

 

 私は真ん中で話す女子に詰め寄った。

 

男子「おい!何やってんだ!」

女子2「言いがかりはやめなよ!」

ますき「じゃあ、案の定ってなんだ?そんで、ゴミ箱の中にあいつの弁当箱見えたんだが、お前ら、全員グルって事でいいんだよな。」

 

 私がそう言うと、全員が黙った。

 

 こいつら

 

女子「はぁ、うっぜ。」

ますき「!」

女子「私達があいつの弁当捨てて、そんなんだから親に捨てられるんだよって言ったら走って行った、これでいい?」

ますき「!!!」

 

 こいつ、今なんて言った?

 

 親に捨てられるだと?

 

女子「放してくれない?」

ますき「......クズどもが。」

女子「は?」

ますき「人の心の傷抉って何が楽しいんだよ!お前ら、全員人間じゃねぇ!」

男子「じゃあ、あいつは人間なのか?」

ますき「あ?どういう事だ?」

男子2「片目無くなった奴なんかより、俺らの方が真っ当な人間だと思うけどなー?」

女子「正直、私ならあんなになったら生きてらんないよ。」

女子3「だから、私達は助けてあげたんだよ?あんな生き恥晒したような奴を。」

 

 生き恥?

 

 こいつらは何言ってる?

 

ますき「......恥って、何のことだ?」

女子「片目無くなって、まともに社会復帰も出来なさそうなあれの存在そのものだけど?」

男子「何か間違ってる?」

ますき「......」

 

 存在、そのもの?

 

 あれは私のせいだ、なんであいつが悪く言われなきゃいけない?

 

ますき「......何が恥を晒すだ。」

女子「なに?」

ますき「何もせず、のうのうと生きて、甘い蜜を吸い続けて。他人をいじめることを楽しむような奴らの方が恥をさらして生きてると思うがな。それが真っ当なのか?知らなかった。」

女子2「はぁ?」

 

 私は馬鹿にするような声でそう言った。

 

 こいつらは何もわかってないんだ。

 

 あいつの苦しみも何もかも。

 

 親に捨てられたのだって、あいつは一切悪くない。

 

 親がクズだったんだ。

 

ますき「この、恥さらしどもが。」

男子「だから恥はあいつ__」

ますき「私がお前らみたいな事したら、太陽の下大腕振って歩けねぇよ!!!随分立派な精神だな!!!社会の恥さらしども!!!」

 

 私はそう吐き捨てて教室を出た。

 

ますき(早く、出水を追いかけねぇと!)

 

 私は走って学校を出て行った

__________________

 

 ”陽介”

 

 息が苦しい。

 

 地上にいるのに、水の中にいるような感覚。

 

陽介「はぁ......はぁ......」

 

 景色が揺れてる、気持ち悪い。

 

 上手く、息が出来ない

 

陽介(こ、ここはどこだ?__!)

 

 体が、動かなくなった

 

 俺は道の真ん中で倒れ込んだ

 

 全身がマヒして、立ち上がることもできない

 

陽介「うっ......ぐっ......」

 

 苦しい。

 

 なんだ、これ

 

 風の音、木が風邪で揺れる音、全てがノイズに聞こえる

 

 空気もうまく吸えないし、据えても吸い過ぎる

 

陽介(駄目、だ......)

 

 死ぬかも、そう思った

 

 普通はこんなことで死ぬわけない、でも、死ぬかもしれないと思うんだ

 

陽介「まだ、駄目、だ......」

 

 俺は心臓を抑えた。

 

 止まるな、動け、そう訴えるように力を込めた

 

陽介(佐藤と、約束してる、破っちゃダメだ......)

 

 でも、俺の意識は遠のいて行く

 

 俺の意思ってやつは関係ないらしい

 

陽介(誰、か......)

 

 声が出せない

 

 もがくことしかできない

 

陽介(く、くそ__)

?「__陽介!?」

 

 俺の名前を呼んでる

 

 誰だろう

 

??「ちょ!顔真っ青じゃん!」

?「起きて!陽介!」

陽介「だ、れ......」

?「意識があるわ!」

??「取り合えず、場所を移さないと!」

?「え、えぇ。」

 

 俺は誰かに動かされてるような感覚と一緒に意識を失った




記念イラストのセリフにとても感動しました。

皆さんは見ましたか?

全員のセリフがそれぞれ心に刺さってくる感じで、本当によかったです

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