狂犬と消失少年   作:火の車

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新しい場所

 夢を見た

 

 そこは暖かい家庭で、母さんも父さんもいて

 

 カーテンからは優しい光が差し込んでて、テーブルには温かいご飯がある

 

 笑顔で俺と父さんを呼ぶ母さん、それに眠い目をこすって答える

 

 3人で囲む食卓には笑顔があった

 

 父さんがいつも通り美味しいって褒めて、母さんが何回も聞いたと笑いながら答える

 

 そのやり取りを見て、俺も笑みがこぼれる

 

(__あれ?)

 

 そんな光景が段々、暗くなっていく

 

 いつしか、食卓には俺一人しかいなくて、笑顔もなく淡々と食べ続けてる

 

(3人で食卓囲んだの、いつが最後だっけ?)

 

 あの光景がまるで、遠い昔のようなことに感じる

 

 暗い世界に俺はたった一人残されて、いつか、温かいご飯も消えて

 

 俺には、何も残ってくれなかった......

__________________

 

陽介「__う、ん......?」

 

 俺はどこか知らない場所で目を覚ました

 

 少なくとも、病院とかじゃない

 

陽介(ここは、どこだ?)

友希那「起きた?」

陽介「あなたは......」

友希那「久しぶりね、陽介。」

陽介「湊友希那さん......?」

 

 横を見ると、湊友希那さんが座っていた

 

 あの声はこの人だったのか

 

陽介「あの、ここは......?」

 

 何とか声が出る

 

 さっきに比べれば、まだ調子も戻ってる

 

友希那「ライブハウスよ。ここが一番近かったから。」

 

 そうか、わざわざ運んでくれたのか

 

 重かっただろうに

 

友希那「それにしても、なんであんなところで倒れてたの?」

陽介「それは......うっ!」

 

 起き上がろうとすると、ひどい頭痛がした

 

友希那「急に起き上がったらダメよ。」

 

 彼女はそう言いながら、俺の頭を押さえた

 

友希那「大丈夫?」

陽介「あ、ありがとうございます。」

 

 少しずつ、頭痛が治まってきた

 

 彼女は俺の頭を撫で続けてる

 

友希那「顔色は良くなったわね。」

 

 彼女は頷きながらそう言った

 

リサ「__友希那ー、飲み物買ってきたけどどれがいい?」

友希那「リサ。」

陽介「っ!」

 

 あれは、ベースの今井リサさん、だったはず

 

 俺は体が勝手に動いて後ずさってしまった

 

陽介「......っ。」

 

 変な汗が流れてくる、湊友希那さんは大丈夫だったのに、なんでだ

 

友希那「リサは大丈夫よ。」

陽介「は、はい。」

リサ「あはは、ほんとに苦手なんだね。」

 

 今井リサさんは苦笑いだ

 

 湊友希那さんは相変わらず優しい目を俺に向けてる

 

リサ「ま、まぁ、これ飲みなよ!」

 

 そう言って、飲み物をくれた

 

陽介「あ、ありがとうございます。」

 

 俺は飲み物を受け取った

 

 一口飲むと、かなり落ち着いてきた

 

陽介「......ふぅ。」

友希那「それで、あんなところで倒れてたの?」

リサ「しかも、あんな時間に。」

陽介「それは......」

 

 俺はこの二人に話すべきなんだろうか

 

 あんな話を聞かされても、気分を悪くするだけだ

 

友希那「......学校に行ってたのよね。」

陽介「......はい。」

リサ「もしかして、そこでも人が怖かったとか?」

陽介「いえ。」

友希那「じゃあ、どうしたの?」

陽介「......話すことではないです。」

友希那「そう......」

 

 彼女は俺の方を見てる

 

 ずっと、優しい目のままだ

 

友希那「でも、何か悲しい事があったのよね。」

陽介「!」

 

 彼女はそう言って、俺の頭を撫でた

 

友希那「話してみなさい。相談なら乗るわ。」

陽介「......」

 

 なんで、この人はこんなに安心するんだろう

 

 分からない

 

 この人なら大丈夫かもって思う

 

陽介「......学校に俺の居場所はなかったです。」

友希那「どういうこと?」

陽介「皆、俺が死んでればよかった、片目がなくて気味が悪いって、そんなのだから親に捨てらるって、そう言ってました。」

友希那「っ!」

リサ「な、何それ......?」

陽介「でも、そんなものなんだと思います。RASの皆が特別だったんです。」

 

 普通の人間は俺なんて拒否反応が起きる

 

 俺の親だって、普通の人間だったんだから

 

陽介「俺はもう、あの場所には行けません。だから、学校はやめます。」

リサ「えぇ!?それじゃあ、どうするの!?」

陽介「分かりません。考えます。」

リサ「か、考えるって......」

 

 考えると言っても、選択肢は少ない

 

 どこかで働くか、どうするか

 

チュチュ「__陽介!」

パレオ「ようさん!」

ますき「出水!」

六花「出水さん!」

レイ「出水君!」

陽介「え?皆?なんで?」

 

 ライブハウスの中にRASの皆が入ってきた

 

 探してくれてたのか

 

チュチュ「マスキングから連絡が入ったの。」

六花「学校から飛び出して行っちゃったって......」

パレオ「事情も聴いています。なんてひどい奴らなんでしょう!」

レイ「大丈夫?」

ますき「悪い。私が目を離したばっかりに。」

陽介「いや、大丈夫だよ。」

 

 気づけば、心は少し軽くなってた

 

 落ち着いてる、大丈夫

 

チュチュ「陽介、もうあの場所に行くのはやめておきなさい。」

陽介「チュチュ?」

チュチュ「あなたはあんな場所に行くべきではないわ。あそこはゴミだめよ。」

ますき「あいつらは全員、教師に突き出す。」

陽介「まぁ、元々そのつもりだったよ。」

 

 じゃあ、これからどうしよう

 

 前提として、働くことは確定だな

 

 もう一度、別の学校に行くのは現実的じゃないし

 

六花「でも、学校をやめたら、どうするんですか?」

陽介「働くよ。どこかで。」

チュチュ「あら?あなたは転校するのよ?」

陽介「え?」

友希那「転校?」

チュチュ「えぇ。」

陽介「いやいや、学費とか色々かかるし。俺にはそんな金ないぞ。」

チュチュ「No Problemよ。私が肩代わりするわ。」

陽介「いやいやいや。流石にまずいだろ。ただでさえ居候なのに。」

 

 流石にそこまで邪魔になれない

 

 俺は働かないといけない

 

チュチュ「そう言うと思ったわ。」

パレオ「だから、チュチュ様はこんなリストを用意していたんです!」

陽介「リスト?」

 

 パレオは俺に紙を渡してきた

 

 それには通う学校とバイト先の事が書いてる

 

チュチュ「選びなさい。どこでもいいわ。」

パレオ「チュチュ様は将来的に学費分を返していただければいいと言っています!」

チュチュ「そうよ。」

友希那「どこが候補なの?」

 

 湊友希那さんも紙を覗き込んだ

 

陽介「花咲川、羽丘、か。」

チュチュ「羽丘には学年が下だけどロックがいるわ。ある程度は安心だと思うけれど。」

六花「お二人もいますよ。」

陽介「二人?」

友希那「私達よ。」

リサ「一個上だけどねー。」

ますき「じゃあ、羽丘でいいじゃねぇか。」

レイ「学食もいいらしいし、いいんじゃない?」

 

 どっちに行ってもさほど変わらないな

 

 じゃあ、羽丘にしようか

 

陽介「......じゃあ、羽丘にするよ。」

チュチュ「オッケー。」

陽介「バイト先はギャラクシーにするよ。ライブハウスだよな?」

チュチュ「あら、そう。」

陽介「ちょうどいい距離だしな。」

六花「あ、私もいますよ!」

陽介「六花も?」

 

 六花って意外と多忙なのか?

 

 大変そうだな

 

陽介「出来るだけシフト入って、すぐに返すよ。」

チュチュ「失敗しない事ね。」

パレオ「チュチュ様は焦らなくてもいいと言っています!」

チュチュ「パレオ!」

 

友希那「よろしく、と言っておくわ。陽介。」

リサ「よろしくね!」

陽介「よろしくお願いします。湊友希那さん、今井リサさん。」

友希那「長いわ。」

陽介「え?」

友希那「呼び方が長いわ。」

 

 長い、か

 

 じゃあ、どうするか

 

陽介「じゃあ、湊さんと呼びます。」

友希那「......まぁ、いいわ。」

リサ(あれ?なんか残念そう?)

 

 俺はチュチュの方に顔を向けた

 

陽介「ありがとうな、チュチュ。」

チュチュ「別にいいわよ。どのみち返すんだからお相子よ。」

陽介「そっか。」

 

 そんなこんなで、俺は転校することになった

 

 果たして、俺はどうなるんだろうか

 

友希那「......」

リサ「友希那?」

友希那「何でもないわ。」

リサ「?」

友希那(何なのかしら。私の彼への対応は。)

 

 




 三周年について語りたいですねー。

色々な情報も出てきますし、モニカについても色々ありますし
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