陽介「__ん、ここは......?」
俺は感覚的に目を開けた、でも何も見えない。
何か巻き付けられてる感覚がある、目隠し的なものがあるんだろう。
陽介「あのー、誰かいませんかー?」
?「......起きたか。」
陽介「その声......佐藤?」
ますき「あぁ、そうだ......」
陽介「てか、俺ってどういう状態なんだ?目隠しあって周り見えないし、全身すっごい痛いんだけど?」
ますき「ここは○○病院。お前は今、包帯で全身ぐるぐる巻きだ。」
陽介「なるほどー、そういう事かー。って、じゃあ、なんで目隠しされてるんだ?」
ますき「っ......それは......」
陽介「どうした?」
俺が目隠しの理由を尋ねると、佐藤が喋らなくなった。
俺がそれを疑問に思ってると、最初から居たのか分からないが、医者が話しかけてきた。
医者「起きたかな、出水陽介君。」
陽介「えっと、あなたは?」
医者「私は君の手術を担当した医者だよ。」
陽介「そうなんですか?ありがとうございました。」
医者「いや。お礼を言われる事はしていないよ。むしろ、今回、私が君に謝らないといけない。」
陽介「え?」
医者「......とりあえず、君の目を覆ってる包帯を外すよ。ただ。」
陽介「?」
医者「これを外すと、君はショックを受けるかもしれない。そして、もし、恨むなら、無力な私を恨んでくれ。」
陽介「え?どういう__」
俺が困惑してると、目を覆ってた包帯が外された。
陽介「え?」
俺は自分の目を疑った。
正常に見えてる、変わらずに見えてるんだ、ただ......『半分』なんだ。
半分は今まで通り、でも、半分は真っ暗、何も見えない。
陽介「え?こ、これは、どういう事なんですか?」
医者「君の左目眼球はあの事故で、砕けてしまったんだ......」
陽介「事故......っ!!!」
ますき、医者「出水(出水君)!」
陽介「だ、大丈夫。」
事故の事を思い出すと、ひどい頭痛に襲われた。
まるで、脳自体が思い出すことを拒否してるみたいに。
でも、なんとかあの時の事を少し思い出せた。
陽介「そうか、あの時......」
ますき「ごめん......」
陽介「佐藤?」
ますき「私を守るために、お前はそんな事になって、でも、私は無事で......」
医者「いや、彼女を責めないでくれ。君の目はもっと医学が進歩していれば救えたかもしれない。」
佐藤も医者も申し訳なさそうに下を向いてる。
佐藤はどこか泣きそうな顔をしてる。
陽介「__いーや、別にいいよ。」
ますき、医者「え?」
陽介「どうせ砕けてたんでしょ?医療が進歩しても無理ですよ。それにさ。」
ますき「?」
陽介「人の命をたったこれだけで助けられたんだ、御の字でしょ!」
正直、片目がなくなったのはショックだし、悲しいとも思ったけど、佐藤は無事だし、勝手に突っ込んだのは俺だ。他の誰かが責任を感じるなんておかしいんだよ。
陽介「それで、退院はいつくらいにできそうなんですか?母さんと父さんに心配かけちまう。」
医者「あ、あぁ、退院自体は一週間後にはできると思う。でも、しばらくは安静にね?」
陽介「はい。」
医者はそう言うと、病室から出ていった。
それで、部屋には俺と佐藤の二人だ。
ますき「......」
陽介「佐藤?」
ますき「......どうした?」
陽介「いや、なんか難しそうな顔をしてたから、どうしたのかなって。」
ますき「それは......」
佐藤はさっき同様、泣きそうな顔をしてる。
陽介「佐藤?なんでそんな顔してるんだー?」
ますき「だって、私があそこにいなきゃ、お前は......」
陽介「うーん、そんな事気にしなくてもいいけどなー。勝手に突っ込んだのは俺だし。」
ますき「でも......」
陽介「いいっていいって。意外と義理堅いなー、見た目の割に。」
ますき「あ?」
陽介「見た目はヤンキーなのに俺の事をそこまで思ってくれるなんて......」
ますき「誰がヤンキーだ!」
陽介「もしかして、俺に惚れたか?嬉しいなぁ。」
ますき「は、はぁ!?誰が!?」
陽介「俺、彼女いないから大歓迎だぞ?」
ますき「だ、誰が!」
こういう時は強引に忘れさせるの限るよなー。
ますき「ほんっと、そんなこと言えるなら元気みたいだな。」
陽介「そうそう、元気元気、チョー元気!」
ますき「そうかよ。ったく。」
佐藤の表情が明るくなった。
やっぱり、女子はこうでなくちゃなー。
ますき「だが、私は責任はとる!」
陽介「えぇ?」
ますき「お前はそんなんだが、私の命の恩人だ。だから責任は果たす!」
陽介「え?責任とは?」
ますき「私が可能な限りお前の助けになる。異論は認めねぇ。」
陽介「あ、はい。」
ますき「これ。」
陽介「?」
ますき「私の電話番号だ。困ったことがあったらかけてこい。」
陽介「あ、はい。」
ますき「今日は帰る。じゃあな。」
陽介「おーう。」
そう言って佐藤は病室を出ていった。
その後の病室はさっきからは考えられないくらい静かで、すごく退屈だった。
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退院日になった。
あれから佐藤は毎日欠かすことなく見舞いに来てくれた。本当に責任感が強いんだろう。
それとは対照的に俺の両親と友達はどっちとも一度も見舞いに来なかった。
ますき「__おい、出水。」
陽介「よー、佐藤。」
ますき「とりあえず、退院おめでとう。」
陽介「ありがとう。まぁ、ギブスはまだ取れないんだけどなー。」
ますき「なら、荷物貸せ。持ってやるよ。」
陽介「いいって。このくらい持てる。」
ますき「意地張るなって。」
陽介「ちょ!」
俺は手に持ってた荷物をますきにひったくられた。
女子に荷物を持たせるなんて体裁が悪いな。
俺はそう思いつつ自分の家に向かって歩きだした。
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病院は俺の家から少しの所に合った病院で、家に着くまでそれほど長い時間はかからなかった。
少し歩くと、家に着いた。着いた、はずだった。
ますき「__なぁ、ここはほんとにお前の家なのか?」
陽介「間違えるわけ、ないだろ?」
ますき「じゃ、じゃあ、なんで!」
陽介「分かんねぇ。分かんねぇよ。」
何度も確認した、周りも確認して、ここが自分の家であったことは間違いない。
でも、俺は目の前の光景を信じられない、いや、信じたくない。
だが、現実というものはどこまでも無情に俺に突きつけられる。
陽介「......」
ますき「い、出水......?」
佐藤も信じられない、そんな表情だ。俺だってそうだ。
だって、俺の家だった場所には......『販売予定地』という札だけしかなかったんだから。
陽介「ま、待てよ。母さんと父さんは......」
俺は二人に電話をかけた。でも......
『おかけになった電話番号は現在使われておりません。』
携帯は無感情にそう言うだけだ。
俺は段々と残酷な現実というものが見えてきた。
陽介「ははは......そういう事、するのかよ......」
俺はこの時分かった。俺は親に捨てられたんだ。
片目と親。これが俺が最初に消失したものだったんだ。
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