狂犬と消失少年   作:火の車

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肝試し

 少し、日が落ちた頃、俺は宿舎の前に出た

 

 レクリエーションは外でするらしい

 

蘭「__あ、陽介。」

陽介「よっ、美竹。」

 

 外に出ると、もう5人がいた

 

 他の生徒もほとんど来てる

 

モカ「遅かったねー、ようくんやー。」

陽介「若干、遅れたかもな。」

ひまり「それにしても、外に集まれって、何するんだろうねー?」

巴「そうだなー。」

 

 そんな会話をしながら周りを見た

 

陽介「あれ?羽沢はいないのか?」

モカ「つぐは戻ってきてないんだよねー」

蘭「どうしたんだろ。」

陽介「まぁ、何か事情があるんだろ。」

 

 俺がそう言うと、教師の声がメガホン越しに聞こえて来た

 

教師『__これから、肝試しをします。』

 

 この声が聞こえた途端、青ざめた三人がいた

 

 俺はそっちの方に目を向けた

 

蘭「き、肝試し、わ、悪くないね。」

モカ「震えてるよー、蘭ー。」

蘭「はぁ!?震えてないしっ!」

ひまり「うわぁん!巴~!!!」

巴「だ、だ、大丈夫だぞ~。ひまり~。」

陽介「どうしたんだ?暑いのか、宇田川?」

 

 上原は分かりやすい、時点で美竹もわかりやすい、宇田川も分かると言えば分かる

 

 この3人、肝試し苦手だな

 

モカ「あー、ペアはクジらしいよー。」

蘭「え......?」

モカ「頑張れー。」

陽介「クジ、引きに行くか。」

巴「......あぁ。」

ひまり「うん......」

 

 俺たちはペア決めのくじを引きに行った

__________________

 

「__次の人どうぞー!」

陽介「はい。」

 

 俺は呼ばれると、くじを引いた

 

 引いたのは、4番だった

 

陽介「4番か。」

蘭「陽介、何番だった?」

陽介「これだ。」

 

 俺は引いたくじを美竹に見せた

 

蘭「あれ、この番号、さっき見たような......」

モカ「おー、相変わらず、ようくんとはご縁がありますなー」

陽介「なんだ、ペアは青葉なのか。」

ひまり「やややばいよ、巴!怖いの大丈夫な二人がー!!」

巴「だ、大丈夫だ!何が来てもぶっ飛ばしてやる!」

陽介「あぁ、そう言えば。」

巴、ひまり「?」

陽介「この辺で昔、肝試しをして行方不明になった女子がいたって宿舎のホールに書いてあったような。」

ひまり「きゃぁぁぁぁ!!!」

 

 俺がそう言うと上原が絶叫し、美竹と宇田川の顔が青くなり、青葉が腹を抱えて笑っていた

 

 一応、これは13年ほど前にあった事件らしく、新聞記事が貼ってあった

 

モカ「......ねー、ようくんー?」

陽介「なんだ?」

モカ「つぐが戻って来ないのってー」

陽介「まぁ、そうだろうな。」

 

 大体、分かるよな

 

 羽沢は仕掛け側だ

 

陽介「どうする?あの3人に言っとくか?」

モカ「いやー、いいでしょー。おもしろそーだしー。」

陽介「恐ろしいやつだな。」

モカ「そうかなー?」

 

 それから、俺は怖がる3人の横で青葉と話しながら順番を待ってた

 

 そして、少し経って、俺達の番が来た

 

陽介「__よし、行くか。」

モカ「そーだねー。」

巴「ふ、二人とも、何かあったらすぐに逃げるんだぞ!」

ひまり「き、気をつけてね!」

蘭「......足元に気をつけなよ。」

陽介、モカ「......」

 

 これが、子供に初めて留守番を任せる親の気分なんだろうか

 

 俺はそんな事を思いながら、肝試しのルートがある森の中に入った

__________________

 

 森の中は暗く、ギリギリ裸眼で前が見える程度だった

 

陽介「__すごい暗いな。」

モカ「そーだねー。蘭たち、転ばないといいけどー。」

陽介「怖がって走って転んだりしてな。」

 

 俺と青葉はそんな話をしながら道を進んでいった

 

 そして、しばらく進むと、変な感覚がした

 

陽介「......?」

モカ「どうしたのー?」

陽介「あそこ、誰かいないか?」

モカ「いるねー。」

陽介「あれ、羽沢だよな?」

モカ「......つぐだねー。」

 

 俺たちの目には気の陰で意気込んでる羽沢が見えていた

 

 隠れれてない、丸見えだ

 

陽介「なんだろうな、自分から罠に突っ込むのって。」

モカ「お笑い芸人にでもなった気分だねー。」

陽介「そうだな。」

 

 俺たちは若干苦笑いしながら、羽沢がいるほうに歩いて行った

 

つぐみ「(あ、誰か来た!)わーっ!!!」

陽介、モカ「」

 

 あまりにも斜め上な驚かせ方に俺と青葉は言葉を失った

 

 まさか、そう来るとは思わなかった

 

 青葉ですら唖然としてる

 

つぐみ「あれ......?」

陽介「羽沢......」

モカ「つぐ......」

つぐみ「なんで、そんなに悲しそうな顔をしてるの!?」

 

 羽沢は人を驚かせたりとかに根本的に向いてない

 

 悲しすぎるほどに怖い要素がない

 

モカ「つぐはー、そのままでいいんじゃないー?」

つぐみ「え?」

陽介「まぁ、怖がりの子には優しいし、良い調整だと思うぞ?」

つぐみ「それって怖くないって事だよね?」

陽介、モカ「......」

つぐみ「?」

モカ「わー、こわーい。」

陽介「すごいこわーい。怖すぎて、心臓が飛び出るかと思ったー。」

つぐみ「棒読み!?」

 

 青葉からアイコンタクトが来たので、乗ってみた

 

 何をしてるんだろう

 

陽介「まぁ、俺達は行くよ。」

つぐみ「うん。」

モカ「つぐも気をつけてねー。」

つぐみ「二人も気をつけてね!」

 

 俺と青葉は手を振りながら、先に進んでいった

 

 羽沢のいた場所を過ぎてから、しばらく歩くと

 

モカ「......」

 

 青葉が足を止めた

 

 俺は振り返って、青葉の方を見た

 

陽介「青葉、どうした?」

モカ「ねー、ようくんー。」

陽介「なんだ?」

 

 青葉は俺を見てる

 

 こんな顔は初めてだ、ゾッとする

 

モカ「ようくん、いっつも上手く隠してるよねー。」

陽介「......何のことだ?」

モカ「とぼけなくてもいいよー。その眼帯の下、目がないんでしょー?」

陽介「っ!!」

 

 心臓が飛び跳ねた

 

 なんで気付いた、誰にも眼帯の下は見られてないはずだ

 

陽介「......なんで、知ってる。」

モカ「バスの中で眼帯とれてたからねー」

陽介「なに!?」

 

 それだったら何で、起きた時眼帯が付いてた

 

 そして、なんで寝てたはずの青葉が見れてるんだ

 

モカ「驚きはしなかったけどねー」

陽介「え?」

モカ「何となくだけど、そんな感じかなって思ってたしー。だって、あそこまで目を隠そうとするなんて、相当だしねー。」

陽介「なるほどな。」

 

 青葉は想像力が豊かだな

 

 でも、今回は的確に当たったわけか

 

モカ「それとー、これも想像なんだけどー」

陽介「?」

モカ「ようくん、あんまり食べ物の味、感じてないんじゃないかなー?」

陽介「!!」

モカ「その反応、あたりだねー」

 

 モカは一人で拍手をしながら、続けて話し出した

 

モカ「おかしいと思ってたんだよねー。モカちゃんがお弁当の味が濃いって言ってから、急に薄くなったんだもんー。」

陽介「......偶然、にしては確かに出来過ぎだな。」

モカ「それだけじゃなくて、今日のカレーとかの感想も、不自然だったしー。」

 

 青葉はずっと気付いてたのか

 

 それにしても、良く俺の事なんか見てたな

 

モカ「まー、これが分かっても、あたしには何もないんだよねー。」

陽介「まぁ、そうだな。」

モカ「特に言いふらしたりもしないしー、心配しなくていいよー。」

 

 青葉はいつも通りの緩い表情になった

 

陽介「うん?じゃあ、とれてた眼帯を直してくれたのは青葉なのか?」

モカ「違うよー。」

陽介「え?」

モカ「モカちゃんも寝ぼけながら見てたから、その後寝ちゃったんだよねー。」

 

 それじゃあ、誰が直したんだ?

 

 少なくとも、後一人に目を見られてる、まずいな

 

モカ「まー、さっさと終わらせよー」

陽介「......そうだな。」

 

 俺と青葉は森を抜けていった

__________________

 

 時間が経って、最後にいペアが戻ってきた

 

 生徒はもう、帰る気満々だ

 

 だが、教師の様子がおかしい

 

陽介「どうしたんだ?」

モカ「どうしたんだろうねー?」

女子「ねぇ、二人とも......?」

陽介、モカ「?」

女子「は、羽沢さん、見てないかな?」

 

 話しかけてきた女子はそう言ってきた

 

 俺は肝試し中に見たと答えた

 

女子「じ、実は、羽沢さんの懐中電灯、電池を入れ替え忘れてたの......」

陽介、モカ「え?」

 

 女子はオズオズと電池を出した

 

陽介「まて、携帯は持ってないのか?」

女子「仕掛け人側、なったらダメだって先生が預かってて......」

陽介「......やばいじゃないか。」

モカ「ヤバいね。」

 

 その時、俺はあの新聞記事を思い出した

 

陽介「青葉、俺は羽沢を探しに行く。」

モカ「あたしも。」

陽介「いや、青葉はもしもの時のためにここにいてくれ。」

 

 俺はそう言って森の中に入って行った

__________________

 

 ”つぐみ”

 

つぐみ「__ど、どうしよ。」

 

 つぐみは森の中で何処か分からないまま、立ちすくんでいた

 

 肝試しの時よりも暗さを増した森の中では自分の手足を確認するのもやっとだ

 

つぐみ「あ、懐中電灯。」

 

 つぐみは懐中電灯のスイッチをつけた

 

 だが、それから光が出る事はなかった

 

つぐみ「えぇ!?な、なんで!?」

 

 何回もスイッチを押した

 

 だが、ついに懐中電灯が動く事はなかった

 

つぐみ「ど、どうしよ......」

 

 その時、つぐみは強い恐怖を感じた

 

 揺れる木々の音は人の声に聞こえてきて、頬に触れる風はどこか生ぬるい

 

 どこからか、地面に落ちてる草を踏みしめるような音も聞こえてくる

 

 今の心情と合わさって、恐怖心が強く煽られる

 

 ガサガサ!!!

 

つぐみ「ひっ!!!」

 

 ただの草の音ですら、今のつぐみには強い恐怖になる

 

 目には涙が溜まり、手と足は震えている

 

つぐみ(だ、誰か、誰か......)

 

 誰かに来てほしい、そう思っても、もう肝試しは終了しており、生徒は来ない

 

 教師が探してくれているかもしれないが、ここがどこか分からない

 

 つぐみはその場で座り込んだ

__________________

 

 ”陽介”

 

 俺は森の中に入って、羽沢を探してる

 

 肝試しの順路にはいなかった、つまり外れた場所にいるって事だ

 

陽介(羽沢のいた場所から考えて、多分、入口の方から出ようとするはず。)

 

 最後のペアが入った頃はかなり暗くなっていた

 

 それで、電池のない懐中電灯しか持ってなかった羽沢は方向感覚がなくなって迷子になってる、という感じだろう

 

陽介(そうだとしたら、かなり探すのが難しい。どう探すか。)

 

 俺は考えた、どうすれば見つけられるか

 

陽介「......そうだ。」

 

 俺は一本の木を思いっきり殴った

 

 そして、左拳から血が出て、それは木にべったりついた

 

陽介「よし、これを目印に探すか。」

 

 俺は捜索を始めた

 

 少しずつ、捜索範囲を広げて行った

 

陽介(どこだ、どこにいる。)

 

 これ以上は流石にきつい

 

 そう思ってると、ある方向に少し開けた場所が見えた

 

 俺はその方向に歩いた

 

陽介「__いた。」

つぐみ「え......?出水君......?」

 

 そこには、涙目で体育座りをしてる羽沢がいた

 

 相当怖かったのか、見るからに震えてる

 

陽介「大丈夫か?」

つぐみ「な、なんで......?」

陽介「仕掛け側の女子に羽沢が戻って来ないって言われてな。探しに来た。」

 

 俺がそう言うと、羽沢は緊張の糸が切れたのか、泣き始めた

 

陽介「はは、すごい泣き顔だな。」

つぐみ「だって、もう、ダメだと思ったんだもん......っ」

陽介「大丈夫だったんだから、良いじゃないか。」

 

 俺は右手を羽沢に差し出した

 

陽介「ほら、帰ろうぜ。それで、飯食って風呂入って、夜は幼馴染たちと楽しいおしゃべりだ。」

つぐみ「う、うん......!」

 

 羽沢は涙を袖で拭ってから立ち上がった

 

 そして、俺は来た道をそのまま戻って行った

__________________

 

ひまり「__あ!つぐー!」

つぐみ「ひ、ひまりちゃ__」

ひまり「心配したよー!!」

 

 森を抜けて、元の場所に戻って来ると、そこには美竹、青葉、宇田川、上原がいた

 

 上原は羽沢に抱き着き、涙を流している

 

陽介「......よかった。」

 

 俺は少し息を吐いた

 

蘭「出水。」

陽介「ん?」

蘭「ありがとう。つぐみを見つけてくれて。」

 

 美竹はそう礼を言ってきた

 

陽介「あー、別に礼とかいいよ。俺が勝手にやったことだし。」

巴「それにしても、どうやって見つけたんだ?」

陽介「勘だ。」

モカ「じゃー、その手は何なのかなー?」

陽介「!」

 

 青葉は俺の手を掴んで、持ちあげた

 

 それは、拳からとめどなく赤黒い血がしたたり落ちてる

 

蘭「それどうしたの!?」

陽介「......擦りむいた。」

モカ「嘘だー。」

陽介「......木を殴った。」

巴「なんでだ!?」

 

 美竹と宇田川の2人は慌てた様子だ

 

 それに対し青葉は何かを考えてるような表情だ

 

陽介「まぁ、こんなの__」

つぐみ「い、出水君!?」

陽介「なんだ?」

 

 上原から解放された羽沢がこっちに駆け寄ってきた

 

 2人よりも慌ててる

 

つぐみ「て、手が!」

陽介「あ、うん。そうだな。」

 

 もう何を言われるか大体わかってるから、そう答えるしかなかった

 

 羽沢はまた涙目になってる

 

つぐみ「す、すぐに手当てしないと!」

陽介「い、いや、こんなの洗えば大丈夫__」

つぐみ「ダメだよ!」

陽介「あ、はい。」

つぐみ「じゃあ、行くよ!」

 

 俺は羽沢に引っ張られて行った

 

 その時、上原がやけにニヤニヤしてる気がした

__________________

 

 宿舎に戻って来ると、俺は水で傷口を洗ってから、羽沢に手当てを受けていた

 

つぐみ「__それで、なんで、こんなことになったの?」

陽介「暗い森の中で人を探すなら分かりやすい目印が必要だった。だから、木を殴って目印を作った。」

 

 俺がそう言うと羽沢はプンプンと効果音が付きそうな雰囲気で、怒っていた

 

 そんな羽沢を見ると、自然に笑ってしまう

 

つぐみ「なんで笑ってるの!」

陽介「いや、なんか可愛らしくてな。」

つぐみ「!///」

 

 俺がそう言うと、羽沢の顔が見る見るうちに赤くなった

 

陽介(感覚的には小型犬みたいな、そんな感じだな。)

 

 俺は一人で納得しながらうなずいた

 

つぐみ「......出水君。」

陽介「どうした?」

つぐみ「見つけてくれて、ありがとうね。」

 

 羽沢は落ち着いた様子を見せてからそう言ってきた

 

つぐみ「本当に、怖かったの。誰にも見つけられなかったらって、思っちゃって......」

陽介「大丈夫だったよ。俺が勝手に探しに行っただけで、俺がいなくても幼馴染の誰かが見つけてたよ。」

 

 俺はそう言いながら立ち上がった

 

陽介「手当、ありがとうな。早く治る気がする。」

つぐみ「うん!」

陽介「それにしても、さっきはかなり剣幕だったな?」

つぐみ「え?」

 

 いつもの羽沢からは考えられないくらい行動が強引だったし、声音も怒ってた

 

 どうしたんだろうか?

 

つぐみ「えっと、それは......///」

陽介「?」

つぐみ「し、心配だったから......///」

陽介「うん?そうか?」

 

 羽沢は消え入りそうな声でそう言った

 

 まぁ、羽沢らしい理由だな、納得した

 

 性格から考えても、これを自分のせいと思ってもおかしくないし

 

陽介「ま、ありがとな。」

つぐみ「うん......///」

 

 俺はそう言って、出口の方を見た

 

陽介「じゃあ、飯食いに行こうぜ。風呂にも入りたいし。」

つぐみ「うん!出水君!」

 

 それから、俺達は他の4人と一緒に夕飯を食べた

 

 これで、林間学校1日目が終わった

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