”林間学校、1日目のRAS”
六花「__こんにちは。」
チュチュ「来たわね、ロック。」
六花「はい!」
六花はスタジオに来ると、周りをきょろきょろしていた
パレオ「どういたしましたか?」
六花「あの、出水さんはいないんですか?」
パレオ「ようさんは本日より林間学校に。」
六花「そ、そうですか......」
チュチュ「どうしたのかしら?」
六花「い、いえ!なんでもないですっ!」
チュチュはそう言うとパソコンに目を移した
六花(なんで、ちょっと残念って思ったんだろう......?)
六花はそんな疑問を残したまま、練習の開始を待った
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林間学校、2日目
俺は食堂で朝食を食べてる
陽介(__味しない。)
最近、更にひどくなってる気がする
本格的に触感しか感じない
つぐみ「__い、出水君!」
陽介「あ、おはよう。羽沢。」
つぐみ「うん!おはよう!」
俺が食事をしてると、朝食が乗せられたおぼんを持った羽沢が来た
つぐみ「一緒に食べていいかな?」
陽介「え?別にいいが、あの4人は?」
俺は周りを見渡した
あの4人は、美竹はじっとこっちを見てて、他の3人はニヤニヤしながらこっちを見ていた
陽介「......なんなんだ?」
つぐみ「どうしたの?」
陽介「いや、なんでもない。」
俺はもう、気にしないことにした
そして、食事を再開した
つぐみ「ここの料理って美味しいよね!」
陽介「あぁ、そうだな。」
つぐみ「なんか、こう、素朴な感じがして!」
陽介「そうだな。」
今日の羽沢はやけに話す
俺は勢いに圧倒され上手く会話ができない
つぐみ(う、上手く会話ができない......)
陽介「なぁ、羽沢。」
つぐみ「!」
俺が話しかけると、羽沢は嬉しそうに顔をあげた
つぐみ「な、何かな!」
陽介「今日の予定って何だったか覚えてるか?」
つぐみ「今日は、午前は登山で、午後からはカヤックに乗るんだって!」
陽介「山の中でカヤックって、山の意味あるのか?」
つぐみ「さ、さぁ......?」
陽介「まぁ、登山あるし、山である意味はあるのか?」
つぐみ「えっと、出水君......///」
陽介「うん?」
羽沢の顔が赤い
モジモジした態度でこう言ってきた
つぐみ「カヤックね、2人乗りかららしいんだけど、私と二人で乗ってくれないかな......?///」
陽介「二人で?」
いつもの4人はいいのかとか、男子と2人なんかでいいのかとか、思う事は多々ある
だが、断る理由もないし、承諾することにした
陽介「まぁ、いいぞ。」
つぐみ「え、いいの?」
陽介「あぁ。羽沢が誘ってくれないと一緒に乗るの奴がいなかったからな。」
つぐみ「やった!」
陽介「そんなに嬉しいもんか?」
つぐみ「うん!もちろん、うれ、しいよ......///」
羽沢は話しながらだんだんと赤くなっていった
つぐみ「ご、ごめん!私行くよ!また後でね!///」
陽介「え、は、羽沢?......。行っちまった。」
俺は羽沢の行動に疑問を持ちつつ、残りの朝食を食べて朝にすることの用意をした。
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ひまり「__みんなー、待ってー......」
巴「なんだひまりー?だらしないなー!」
俺たちは登山に来ている
距離はそこまで長くないが、傾斜も急だし、きついやつはきつい
蘭「置いて行くよ、ひまり。」
ひまり「待ってよー蘭ー」
モカ「頑張れーひーちゃんー。」
ひまり「も、モカ......!」
モカ「これを登り切れば、1キロくらい減るかもしれないよー。」
蘭「......ふっ。」
ひまり「何言ってるのー!!蘭も笑わないでよー!!!」
蘭「ご、ごめん。」
そう言いつつも、美竹は笑い続けている
俺の経験上、男子が女子の体重の話に入るのはタブーなので、聞かなかったことにした
陽介「距離的にはもうすぐ目的地だと思うんだが。」
つぐみ「そうだね?」
モカ「いやー、もう見えてるよー。」
ひまり「え!?ほんと!?」
陽介、つぐみ「!?」
青葉のその声を聞いて上原は山道を走って登って行った
ここから、頂上なんて見えないけどな
モカ「......ひーちゃんが走って行ったらねー。」
陽介「うわ、鬼だ。」
巴「まぁ、いいじゃねぇか!」
蘭「そうだね。ひまり、遅かったし。」
つぐみ「あはは......」
俺たちは苦笑いしながら、山を登って行った
結構な距離を進んだ頃、道の端で座り込んでる上原がいた
こっちに気付いたのか、顔がこっちに向いてる
モカ「頂上は見えたでしょー?」
ひまり「もー!モカー!!」
モカ「いいじゃんーいいじゃんー、もうすぐ着くよー。」
ひまり「もう歩けないよー!」
巴「ははは!大丈夫だ!」
宇田川はそう言って上原を無理やり立たせた
これはこれで鬼だな
つぐみ「ひまりちゃん!もう少しだよ!」
蘭「あと50メートルくらい。」
とりあえず、じわじわ上原を追い込んでる事は分かった
それをいい受け取り方をして張り切れる上原はまぁ、いい意味で馬鹿なんだろうな
ひまり「どうしたの、いずみん?」
陽介「なんでもないぞ。」
俺はそう言って、上原から目をそらした
そして、5人について、頂上に行った
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ひまり「__ついたー!」
頂上に着くと、上原が何かから解放されたように叫んだ
つぐみ「私、先生に報告してくるね!」
巴「おう!」
モカ「あたしは、トイレー。」
そう言って二人はどこかに歩いて行った
陽介「よっと。」
俺は近くにあったベンチに座った
後15分は休憩時間だし、座ったもん勝ちだろう
蘭「隣、いい?」
陽介「いいぞ、今のうちに座っとけ。」
蘭「うん。」
美竹は俺の隣に座った
陽介「それにしても、景色が綺麗だなー。」
蘭「うん、そうだね。」
美竹はそう言いながら、ノートを出した
そのノートにはある文章が書いてある
陽介「それはなんだ?」
蘭「歌詞。」
陽介「歌詞?」
入れは不思議に思って、しばらく美竹がノートに何かを書き込んでるのを見てた
時々、唸ったり、首を傾げたり、試行錯誤をしてる様子があった
蘭「......見てて楽しい?」
陽介「楽しいぞ。今の自分の心を率直に書いてて。」
蘭「そう。」
美竹はそう答えると、またノートに目を移した
俺はそれを静かにじっと見てた
”つぐみ”
つぐみ「__い、出水君と蘭ちゃん。」
少し離れた場所から、教師への報告を終えたつぐみが、陽介と蘭の二人を覗き込んでいた
はたから見れば、同じベンチで座り、顔を近づけてるようにしか見えない
そんな雰囲気からか、まだ空いてるにもかかわらず、あのベンチには誰も座ろうとしない
つぐみ(な、仲いいのかな?)
モカ「つぐー?」
つぐみ「も、モカちゃん!?」
モカ「何してるのー?」
モカは二人を覗き込んでたつぐみにそう聞いた
モカの表情はニヤニヤしている
つぐみ「え、えっと......」
モカ「ようくんと蘭、仲良さそうだねー。」
つぐみ「!!」
モカのその言葉につぐみの肩が跳ねた
自分の心を読まれたんではないかと、つぐみは一瞬驚いた
モカ「つぐはそんなに、ようくんが好きかなー?」
つぐみ「え、えぇ!?///」
モカ「まー、見れば分かるよねー。」
つぐみ「うぅ......///」
つぐみは顔を赤くしてうなだれている
そんな、つぐみを見てモカは真面目なトーンで話し始めた
モカ「ねー、つぐー。」
つぐみ「ど、どうしたの?」
モカ「ようくんの目はどうだったかなー?」
つぐみ「っ!?」
モカ「眼帯、直してあげたの、つぐなんでしょー?」
つぐみ「......うん。」
つぐみは小さな声でそう答えた
そんなつぐみにモカはこう言った
モカ「あんなことになった理由は分からないけどー、見ちゃったなら一応、言っておいた方がいいんじゃないー?」
つぐみ「う、うん。」
モカ(それで、事情とか話すならー、つぐにとってはある意味美味しい展開なんだよねー)
モカは小さく笑った
つぐみ「モカちゃん?」
モカ「なんでもないよー。じゃあ、頑張ってねー。」
つぐみ「う、うん!」
そうして、時間は過ぎていった
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あれから、昼食をとり、俺達は水辺に移動した
結構大きな湖があって、確かにカヤックもしたくなるな
つぐみ「__出水くーん!」
陽介「あ、羽沢。」
手を置きく振りながら羽沢が近づいて来た
すごく嬉しそうな表情をしてる
つぐみ「ペアが出来た人から行くんだって!行こ!」
陽介「あぁ、分かった。」
俺は小走りで出発地点に行く羽沢の後ろをついて行った
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その後、俺達はボートに乗った
結構難しいもので、前に進むのには技術がいる
陽介「__上手くなってきたな。」
つぐみ「うん!」
難しいと言っても多少のコツを掴めば、上手く動ける
そして、俺達はかなりの距離を進んだ
陽介「結構、遠くに来たな。戻らないと。」
つぐみ「ね、ねぇ、出水君?」
陽介「ん?」
俺が周りを確認していると、羽沢が話しかけて来た
様子がおかしいな
陽介「どうした?」
つぐみ「えっとね、出水君に言わなくちゃいけない事があって......」
陽介「俺に?」
俺には心当たりがなかった
言わないといけない事なんて、あるのか?
つぐみ「バスの中でのことなんだけど。」
陽介「っ!」
羽沢がそう言うと、俺の心臓が大きく動いた
バスの中、まさか......
陽介「......見たのか。」
つぐみ「うん......」
俺がそう聞くと、羽沢は小さな声で答えた
納得がいった、俺の眼帯を直したのは羽沢で、広まらなかったのも羽沢と青葉にしか見られてなかったからか
つぐみ「それで、その......ごめんね......」
陽介「いや、謝らなくてもいいよ。」
俺は手を振りながらそう言った
陽介「あれを見ても騒がないでくれたおかげで周りに広がらなかったし、見てて気持ちい物じゃないのにわざわざ眼帯も直してくれて。」
つぐみ「そ、そんな!」
俺がそう言うと、羽沢は強く否定した
そして、こう聞いてきた
つぐみ「なんで、そんな事になったの......?」
陽介「......」
つぐみ「あ、ご、ごめん!」
陽介「......いや、別に目の理由だけなら話してもいいよ。」
つぐみ「!」
羽沢なら言いふらすこともないだろうし
話しても大丈夫だろう
陽介「これは、ある事故でなったんだ。」
つぐみ「事故......?」
陽介「あぁ。前の学校で工事をしてて、その鉄骨と木材がある女子に倒れてきてな、それに俺が勝手に突っ込んだんだ。」
俺がそう言うと、羽沢は驚いた顔をしてた
陽介「その時に、まぁ、色々あってこうなってたんだ。」
つぐみ「そうなんだ......」
陽介「まぁ結果として、その女子は助かったし、これだけですんで御の字だったよ。」
つぐみ「それは違うよ。」
陽介「?」
羽沢の声のトーンが下がった気がした
つぐみ「命は大切だよ、だって、たった一つしかないから。」
陽介「あぁ。だから、御の字だ。」
つぐみ「でも、出水君の目だって、二度と戻らないんだよ?」
羽沢はそう言った
目からは涙が零れている
つぐみ「人を助けた出水君の行動は凄いと思う......」
陽介「......」
つぐみ「でも、出水君が傷ついて、御の字なんて言っちゃだめ......」
声が震えてる
大粒の涙が、船の床に落ちてる
つぐみ「だって、それじゃ、出水君が、傷ついていい人みたいになっちゃうもん......!」
陽介「......!」
つぐみ「そんなの、誰も望んでない!お父さんとお母さんだって!」
陽介「っ!!!」
その言葉の後、急激にめまいがした
体温も暑いのか寒いのか分からない
嫌な汗がとめどなく流れてる
呼吸が、上手くできない
つぐみ「い、出水君!?」
陽介「俺に、親は、いないんだ......」
つぐみ「......え?」
陽介「俺には、傷つくことを悲しむ親なんて、いないんだ......!」
何を言ってるか分からない
耳が上手く機能してない、世界が回ってる
でも、口が動いてる事は分かる
陽介「俺は、捨てられた......事故の後に、いつの間にか......」
俺の中で、何かが崩れていく
つぐみ「出水君!」
陽介「__!」
何かに包み込まれる感覚
羽沢、か
つぐみ「ごめんね、私、何も知らなくて......」
陽介「......」
つぐみ「辛い事を思い出せちゃって、ごめんね......」
崩壊が、止まった
優しい、香りがする
まるで、さっきまでとは違う世界に来たみたいだ
陽介「あ、ありがとう......」
つぐみ「う、うん。」
俺がそう言うと、羽沢は離れた
心臓の拍動も治まって、汗も止まっていた
つぐみ「だ、大丈夫......?」
陽介「あぁ、大丈夫だ。」
なんだったんだ、あの感覚は
まるで、心が砂になって崩れていくような感覚
前よりも、強くなってる
陽介「......戻ろうか。」
つぐみ「う、うん。」
そうして、俺達は陸の方に戻って行った
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その後、活動は終わり、俺達は宿舎に戻ってきた
陽介「__じゃあ、俺は部屋に戻るよ。」
蘭「うん。お疲れ。」
俺はそう言って、自分の部屋に戻って行った
”つぐみ”
つぐみ「......」
モカ「つぐー?どうしたのー?」
つぐみ「ううん。何でもないよ。」
モカ「そうー?」
つぐみ「うん。」
つぐみがそう答えると、モカは思い出したように口を開いた
モカ「ようくんとは話せたー?」
つぐみ「っ!......う、うん。」
モカ「?」
あまりにも不自然なつぐみの反応にモカは首を傾げた
つぐみ「ほ、ほら!早く行こ!モカちゃん!」
モカ「う、うんー。」
つぐみ(まさか、出水君にあんな事が......)
つぐみは船上でのことを思い出していた
親がいない、陽介はそう言ったのだ
つぐみ(出水君......)
つぐみは心臓が締め付けられるような感覚に襲われた
事故に遭って、親に捨てられて、あまりにも可哀そうだと、そう思ったのだ
つぐみ(......私がなんとかしたい。)
つぐみは拳を握りしめた
つぐみ(何ができるか分からないけど、少しでも、心を埋めてあげたい!)
モカ「つぐー?」
つぐみ「モカちゃん!私がんばるね!」
モカ「うんー?なにをー?」
つぐみ(頑張るよ、私!......好きな人のために......!///)
こうして、林間学校の2日目が終わった