狂犬と消失少年   作:火の車

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祭りの夜 前編

 ”チュチュ”

 

チュチュ「......」

 

 チュチュはスタジオにある椅子に座って考え事をしていた

 

パレオ「チュチュ様ー?ジャーキー入りますかー?」

チュチュ「No。」

パレオ「えぇ!?」

 

 まさかのチュチュの返答にパレオは目を丸くした

 

パレオ「チュチュ様、どうしたんですか!?」

チュチュ「うるさいわね。考え事をしてるのよ。」

パレオ「考え事?それはなんですか?」

チュチュ「陽介の事よ。」

パレオ「ようさんですか?」

 

 パレオは首を傾げた

 

 チュチュは難しい顔をしたまま、椅子にもたれかかった

 

チュチュ「パレオは陽介がいつ寝てるか分かるかしら?」

パレオ「え?分かりませんね?」

チュチュ「そう。」

パレオ「どうして急にそんな事を?」

チュチュ「私も、分からないのよ。」

 

 チュチュの言葉にパレオはさらに分からなくなった

 

 別に同じ部屋で寝てるわけでもないのに、分からないのがそんなに問題なのかと思った

 

チュチュ「この間、作業のために夜更かしした時、陽介の部屋の前を通ったの。」

パレオ「そうなんですか?」

チュチュ「えぇ。その時、陽介は起きてたわ。朝の4時よ。」

パレオ「でも、一回だけなら、その日だけという事はないですか?」

チュチュ「誰が、その日だけって言ったのよ。」

パレオ「え?」

 

 パレオは嫌な予感がした

 

チュチュ「少なくとも一週間、陽介は寝てないわ。」

パレオ「!?」

チュチュ「理由は分からない、けど、あれはどう考えても異常よ。」

 

 チュチュは頭を抱えた

 

パレオ「でも、なぜ、そんなことを......」

チュチュ「テスト前と言ってたし、テスト勉強なら良いのだけれど。」

 

 スタジオには重い苦しい空気が流れた

 

 最後にはパレオまでも頭を抱えた

__________________

 

 ”陽介”

 

 テストも最終日の放課後、俺は美竹たちと教室で話していた

 

 本当はバイトがあったはずなんだが、店長に

 

美子『お給料払いきれなくなるから、お休みとってー!』

 

 と、泣かれたので、週3日バイトが無くなった

 

陽介(困ったな。一日でも早く、お金を返していきたいんだが。)

モカ「ねー、ようくんー。」

陽介「うん?」

 

 俺がそんな事を考えてると、青葉が話しかけて来た

 

 他の4人の目線も俺に集まってる

 

モカ「さっきの話聞いてたー?」

陽介「悪い、聞いてなかった。何の話だ?」

ひまり「お祭りだよ!お祭り!」

陽介「祭り?」

巴「あぁ!商店街の一大イベントだぜ!」

つぐみ「色んな屋台が出たり、舞台があったりするよ!」

 

 もうそんな時期か

 

 期末テストも終わったし、時期っちゃ時期だったな

 

陽介「それで、それがどうしたんだ?」

蘭「出水は来るの?」

陽介「俺?」

 

 俺は考えた

 

 どう考えても、俺は祭りに行ける状態じゃない

 

 身体的にも財政的にも

 

陽介「うーん。俺は行けないかな。」

ひまり「えー、なんでー!?」

陽介「まぁ、金がないとか理由は色々ある。」

蘭「出水、バイトしてなかったっけ?」

モカ「確か、ギャラクシー。」

陽介「してるが、ほとんどは家主に渡してるからな。」

 

 俺は金を使う事もないし、学費を返すために8割くらいはチュチュに渡してる

 

 全部渡しても良かったが、チュチュに却下された

 

巴「そっか、残念だな。」

陽介「まぁ、皆は皆で楽しむと良いよ。」

つぐみ「本当に来ないの?」

陽介「え?」

 

 突然、羽沢がそう言った

 

 その声は拗ねた子供みたいだった

 

つぐみ「私、出水君とお祭り回りたい。」

陽介「そ、そうか。」

つぐみ「来ないの......?」

陽介「ぐっ......」

つぐみ「出水君......」

 

 す、すごい罪悪感が押し寄せてくる

 

 涙声になってきてるし

 

陽介「や、やっぱり行こうかな?」

つぐみ「!」

陽介「せ、折角だし、楽しい事をするのもいいかなーなんて?」

つぐみ「やった!じゃあ、一緒に行こうね!」

陽介「あ、あぁ。」

 

 羽沢、恐ろしい子だな

 

 あれを断れるのは相当の猛者だぞ

 

モカ「じゃー、ようくんも参加ってことでー。」

蘭「大丈夫なの、出水?」

陽介「まぁ、いいだろ。てか、あれを断るのは無理だ。」

蘭「......そうだね。」

 

 美竹は苦笑いでそう言った

 

ひまり「じゃあ!決まりだね!」

巴「盛り上がろうぜー!」

つぐみ「うん!」

 

 こうして、俺が祭りに行くことが決まった

__________________

 

 家に帰ってきた

 

 今夜は祭りに行くし、夕飯とかも作って行かないといけない

 

 そんな事を考えながら、扉を開けた

 

陽介「__ただいまー。」

パレオ「おかえりなさーい!」

チュチュ「おかえり、陽介。」

 

 扉を開けると、チュチュとパレオがいた

 

チュチュ「今日はテスト終わりだったかしら?」

陽介「あぁ、そうだ。」

 

 俺はカバンを置きながらそう答えた

 

パレオ「そう言えば、今夜この近くでお祭りがあるらしいですよー!」

 

 俺がソファに座ると、パレオはそんな事を言い出した

 

 チュチュは意外にもそれに反応した

 

チュチュ「へぇ、そんなのがあるのね。」

パレオ「はい!」

チュチュ「......そうだわ。」

陽介「?」

 

 チュチュは何かを思いついたように手を叩いた

 

チュチュ「陽介、今日はバイトは休みだったわよね?」

陽介「あぁ、そうだけど。」

チュチュ「じゃあ、予定はないわけね。」

陽介「あ、あぁ。」

チュチュ「なら、これを受け取りなさい。」

 

 チュチュはそう言ってお金を出した

 

陽介「......いや、俺は元から祭りに行くことにはなってたんだ。」

チュチュ「そうなの?ちょうどよかったわね。」

陽介「多いよ。」

チュチュ「?」

 

 チュチュは不思議そうな顔をしてる

 

 なぜ、俺がこういうのかと言うと、チュチュは2万円を出してきたのだ

 

チュチュ「これは、あなたのじゃない?」

陽介「いや、それは学費を返すためだよ。基本的にあんまりお金を使わないし。」

パレオ「まぁまぁ、いいじゃないですかー!たまには!」

チュチュ「そうよ。お祭りは楽しむものよ。」

 

 そう言ってチュチュはお金を俺に押し付けて来た

 

 俺はそれを受け取った

 

チュチュ「楽しんできなさい。あなたの周りの人間は皆、それを望んでるわ。

陽介「......そんなもんかね。」

 

 俺はそう言いながら、キッチンの方に行った

 

陽介「まぁ、夕飯は作っておくから、好きな時に温めて食べてくれ。」

チュチュ「OK」

パレオ「ありがとうございますー!」

 

 それから俺は夕飯を作ったり、洗濯をしたりして、祭りまでの時間を過ごした

__________________

 

 時間が経って、俺は祭りの会場に来ていた

 

 周りにはたくさんの人がいる

 

つぐみ「__出水君!」

陽介「あ、羽沢。」

 

 待ち合わせ場所に行くと、もう5人がいた

 

 それにしても

 

陽介「美竹と上原は浴衣なんだな。」

ひまり「だって!折角のお祭りだよ!」

蘭「モカが、そう言うものだって。」

モカ「あれー?そうだっけー?」

陽介(あぁ、騙したんだな。)

 

 騙す青葉もだが、信じる美竹も美竹だな

 

 俺はそう思った

 

巴「まぁ、行こうぜ!」

ひまり「そうだねー!」

蘭「モカ、後で話ね。」

 

 俺たちは人込みの方に向かって行った

__________________

 

 祭りにはは色々な屋台がある

 

 食べ物、ゲーム、クジ、あげればきりがない

 

陽介「__色々あるな。」

つぐみ「そうだね!」

ひまり「あ!りんご飴だー!巴ー!」

巴「はいはい。買いに行こうなー。じゃあ、行ってくるよ!」

 

 二人はりんご飴を買いに行った

 

 それと同時に、青葉も反応した

 

モカ「この匂いは......!」

蘭「モカ?」

モカ「やまぶきベーカリー」

蘭「ちょ、モカ!」

 

 青葉は獲物を見つけた獣のような目をして、どこかに走って行った

 

 美竹はそれに慌ててついて行った

 

陽介「......めちゃくちゃだな。」

つぐみ「あ、あはは。」

 

 この状況には羽沢も苦笑いだ

 

陽介「まぁ、なっちまった物は仕方ないし、二人で見て回るか。」

つぐみ「うん!」

 

 俺と羽沢は屋台を見て回った

 

 少し歩くと、少し何かで遊ぼうと言う事になり、遊べる屋台を探した

 

 その時、ある屋台が俺の目に入った

 

陽介「__あれ、いいんじゃないか?」

 

 俺は金魚すくいの屋台を指さしながらそう言った

 

つぐみ「金魚すくい?」

陽介「あぁ。」

つぐみ「いいね!やってみよ!」

陽介「!」

 

 そう言って羽沢は俺の手を掴んだ

 

 そして、金魚すくいの屋台に行った

 

つぐみ「二人分お願いします!」

 

 羽沢がそう言うと、おじさんはポイと桶をくれた

 

 俺はお金を払って、金魚が入ってる水槽の前でしゃがんだ

 

つぐみ「頑張るぞ!」

陽介「焦ると、すぐに破れるぞ?」

つぐみ「大丈夫!こういうのは意外と得意__」

 

 そう言う羽沢は水の中にポイをつけ、金魚をすくった

 

 だが、紙はすぐに破れてしまった

 

つぐみ「__な、なんで!?」

陽介「大きいのを狙い過ぎだよ。これは紙だからな。」

 

 俺はそう言いながら、小さい金魚をすくって桶に入れた

 

陽介「こんな感じだよ。」

つぐみ「すごい!上手なんだね!」

陽介「いや、普通だと思うけど。」

 

 俺はそう言いながら2匹目をすくった

 

陽介「__!」

 

 ポチャン、と水音をたて、跳ねたそれは俺の手に持ってる桶に飛び込んできた

 

 それは、見たことのない形の金魚だった

 

陽介「なんだ、これ?」

つぐみ「変な形だね?でも、これって、出目金じゃない?」

陽介「え?」

 

 俺はそれをよく見た

 

 確かにそれは出目金だった

 

 でも、それを象徴するもの、片方の目がないんだ

 

陽介「左目がない?」

つぐみ「そうだね?どうしたのかな?」

 

 理由は何でもいい

 

 でも、俺はこう思った

 

陽介「......可哀そうに。」

つぐみ「え?」

陽介「いや、なんでもないよ。ポイも破れた、違うところに行こう。」

つぐみ「う、うん。」

 

 俺はそう言って、金魚すくいの屋台から移動した

 

 それから少し、歩いた

 

つぐみ(__さっきの言葉、あれって......)

陽介(人が多くなってきたな。)

 

 時間が進むにつれて、人が増えて来た

 

陽介「羽沢、逸れないように......って、羽沢?」

 

 羽沢のいた方に目をやると、そこには羽沢がいなかった

 

 俺は周りを見た

 

 その時、こっちに向いてる手を見つけた

 

陽介「これか?」

 

 俺はその手を引っ張った

 

 流石に怪我をさせるわけにいかないから、力加減をしたが

 

陽介「悪い、注意不足だった__」

友希那「あ、あれ?陽介?」

陽介「え?湊さん?」

 

 俺が手を引いたのは湊さんだった

 

 この時、俺は激しく困惑した

 

 まだ祭りの夜は続く




3周年に則ったことを語るメタ回でもしようと思います

別のシリーズの番外編として投稿します
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