終業式の日になった
終業式なんて、校長の話やらの長い話を聞くイメージしかないな
モカ「__ねー、ようくんやー。」
陽介「なんだ?」
モカ「ようくんは夏休みに予定はあるかなー?」
陽介「家事、バイト。」
モカ「おー。」
チュチュとパレオも夏休みだ
3食の用意、洗濯をしなきゃいけない
ギャラクシーでもライブの予約が入ってるし、忙しくなる
陽介「あんまり時間はないな。」
モカ「そっかー。(これは、きついなー。)」
巴「忙しそうだな、陽介。」
ひまり「私達もバイトあるんだよー?」
巴「分かってるって!」
モカ「じゃー、暇なのはあたしと蘭だけだねー。」
蘭「いや、なんで?」
聞き捨てならない、という風に美竹は話に入ってきた
モカ「じゃあ、忙しいのー?」
蘭「......時間はある。」
モカ「だよねー。」
青葉はヤレヤレといった態度でそう言った
美竹は若干悔しそうにしてた
陽介「そう言えば、羽沢は?」
ひまり「つぐは終業式だから体育館だよー。」
陽介「あ、そっか。って、あれ?」
羽沢は生徒会で終業式の手伝い、つまり......
そう思うと、嫌な予感がしてきた
その時、俺の携帯がなった
陽介「......」
巴「陽介?携帯なってるぞ?」
陽介「......あぁ。」
今俺、完全にフラグ建てた
いや待て、あの人は俺の電話番号を知らない
チュチュかパレオか六花か佐藤だ
そう思い、俺は電話に出た
陽介「もしもし。」
日菜『もしもーし!陽介君ー?』
陽介「」
俺は静かに電話を切った
すると、すぐに携帯が鳴った
陽介「......なんで、俺の電話番号知ってるんですか。」
日菜『つぐちゃんの携帯見た!』
陽介「あ、はい。」
やっぱり、この人ヤバい
普通じゃない、常軌を逸してる
陽介「何の用ですかね。」
日菜『なんだろ?陽介君があたしの事、考えてる気がして!』
陽介(いや、なんで分かったんだよ。)
日菜『あ!後、純粋に用があったんだよ!』
陽介「......なんですかね。」
日菜『今日の終業式の後、今から言う教室に来てほしいの!』
陽介「嫌です__」
日菜『じゃあ!その教室言うね!』
陽介「聞かないんですね、はい。」
氷川さんはある教室の場所を言ってきた
美術準備室らしい
日菜『じゃあ!終業式、楽しみにしててね!』
言いたいことだけ言って氷川さんは電話を切った
一気に年を取った気がする
陽介「はぁ......」
蘭「誰からだったの?」
陽介「......氷川さん。」
蘭「あっ(察し)」
モカ「大変だねー。」
陽介「大変とかそう言うレベルじゃないんだよな。」
俺は机に顔を伏せた
勘弁してほしい
陽介(逃げよう。)
俺がそんな事を思ってるうちに、体育館に移動する時間になった
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終業式はやっぱり退屈だ
校長の話は聞く価値もないし、立ってるだけだ
陽介(__今日の晩御飯は暑いし、ちょっと手の込んだそうめんとかいいな。薬味を色々用意して。)
俺は話しを全てガン無視して晩御飯のメニューを考えていた
つぐみ『次は、生徒会長のお話です。』
陽介「ん?」
考え事をしてると、そんな声が聞こえて来た
ちゃんと羽沢が生徒会してるなと思いつつ、壇上の方に目を移した
日菜『皆ー!おはよー!』
壇上に上がろうが、いつもと変わらない態度
あの人は本当にブレないな
日菜『今日は一つだけ話したいことがあるんだ!』
氷川さんはそう言って、話し始めた
日菜『最近、あたし、気になる子がいるんだー!』
陽介(へぇ、そんな人が。あの人も女子なんだな。)
俺は少し感心しながら、話を聞いてた
初対面が強烈なだけで、実は普通の女子だったのか
そんな事を考えていた
日菜『今日!その子をこの後に呼んでみたの!』
陽介「!?」
その一言でさっきまで考えてた事が全部崩れた
気になるってのは、つまり、目の事か
しかも、氷川さんの言い方的に意味が全く違うように聞こえる
周りから聞けば、まさかという反応だ
周りからは色んな声が聞こえる
陽介(いや、まだ逃げられる。まだ誰かは特定されてない、大丈夫__)
日菜「その子がもし来てくれなかったら、夏休み明けに名前晒すねー。」
陽介「」
逃げ道が塞がれた
終わった
それから、俺は話しの内容が入って来ないまま氷川さんの話が終わった
そして、終業式が終わった
蘭「......ねぇ、日菜さんのあれって。」
モカ「うんー、ようくんだろうねー。」
ひまり「だ、大丈夫なの?」
陽介「もうだめだ......終わった......もうどうすればいいんだよ......」
巴「完全にやられてるな。」
このまま、行かないとしよう
夏休みまでは良い、終わった後、俺は女子の呼び出しを無視した最低な男子になる
そうなったら俺は、学園中からイジメられる可能性がある
陽介「......行くしか、ないのか......?」
モカ「行かないと、やばいかもねー。」
巴「日菜先輩は本当にやりかねないからなー。」
陽介「そう、ですよね。」
蘭「け、敬語になってる......?」
そんな話をしながら、俺達は教室に戻った
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教室に戻ってから、課題を受け取ったり、夏休み明けに提出する書類を貰ったりして、終礼が終わった
そして、俺は今、廊下を歩いてる
陽介「......」
足取りが重い
どうせまた、眼帯狙われるんだろうな
陽介「......仕方ないか。」
もう狙われるのも面倒だし、向こうが用意した舞台に行くならどうせ頷くまで部屋から出られないだろう
仮に逃げ切れたとして、良くない噂を広められる危険もある
だったら、後は天秤にかけるだけだ
陽介「__そうは思ってもな。」
これを他人に見せるのは、普通じゃない
常軌を逸した行動だ
陽介「......入るか。」
俺は目の前にある、美術準備室の扉を開けた
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日菜「__あ!来たね!」
部屋の中に入ると、机の上に座ってる氷川さんがいた
顔には笑みを浮かべてて、カーテンから差し込む光と相まって幻想的にも見える
陽介「......机の上に座ると、罰があたりますよ。」
そう思っても、こんな感想しか出ない俺はかなり冷めてるんだろうな
俺は軽くため息をつきながら、氷川さんの方に歩いた
日菜「来てくれて嬉しいよ!陽介君!」
陽介「あんな脅しかけておいて、よく言いますね。」
自分でも人にこんな刺々しい態度を取れるなんて知らなかった
まぁ、単純にこの人が苦手なんだろうな
陽介「大体、呼んだ理由は分かりますけど、あんな事すると面倒なことになりますよ。」
日菜「面倒な事?なに?」
陽介「さっきも男子が騒いでたでしょう。外見はいいので。」
日菜「うーん?ありがと!」
陽介「すいません。クラスの奴が言ってただけで俺は全く思ってないです。」
俺はそう言いながら机に鞄を置いた
陽介「どうせ、今日も俺の眼帯を狙うんでしょう?」
日菜「うん!」
この人は屈託のない笑顔でそう答えた
このくらいは予想できた
だから、俺が慌てることはない
陽介「そうですか......」
心臓の動きがすごい
今から俺は告白でもするのかね
いや、ある意味それよりも勇気がいるな
陽介「二つ。」
日菜「ん?」
陽介「一つ、絶対に他言しない。二つ、騒がない。」
俺がそれだけ言うと、氷川さんは嬉しそうな表情を浮かべた
日菜「え!見せてくれるの!?」
陽介「はい。」
俺は静かにそう答えた
陽介「氷川さんは、これを何だと思っていますか?」
日菜「んー、何もない中二病か充血してたりかな?」
陽介「......だったら、よかったですね。」
日菜「?」
俺はそう言いながら、眼帯を外した
左目の方に空気を感じる
日菜「__え......?」
陽介「......」
俺が眼帯を取ると、氷川さんの表情が変わった
そりゃそうだ
不自然なしわに沢山の縫った後、こんなもの普通に生きてれば見ないんだから
陽介「どうですか?こんなものを見た気分は。」
日菜「え、え?ま、待って、待ってよ」
陽介「これが氷川さんがずっと狙ってたものですよ。」
俺は氷川さんに一歩近づいた
陽介「可哀そうに。こんなものをずっと追いかけてたんですよ?どうですか?」
日菜「......」
頭がふらふらして今にも倒れそうだ
これ以上はダメだ
陽介「......これ以上、俺に関わらない方がいい。」
俺はそれだけ言い残して、部屋を出て行った
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”日菜”
頭が、真っ白になった
足から力が抜けて、その場で座り込んじゃった
日菜(あ、あれって......)
あたしは見た、いや、見ちゃった
あの目を
何個もある縫い目、まるで、そこだけ何年も年を取ったみたいにシワがたくさんあった
それで、そこにあるはずの形がなくて、平じゃなくて、へこんでたように見えた
日菜(あたしは、何をしたの......?中二病、充血?全然違うじゃん)
最低、あたし、最低だ
あんなに笑って、見せてってせがんで、無理やり眼帯剥ぎ取ろうとして
あんな、遊び感覚で......
日菜「ごめんなさい......ごめんなさい......」
勝手にそんな言葉が出て
目からは涙が流れてくる
つぐみ「__誰かいるんですかー?って、日菜先輩!?」
日菜「つぐちゃん......」
つぐみ「ど、どうしたんですか!?」
つぐちゃんは心配そうにあたしの前にしゃがんでる
日菜「あたし、あたし最低、なの......」
つぐみ「出水君ですよね。」
日菜「え、なんで......?」
つぐちゃんはあたしのしたことを分かってるみたい
それで、つぐちゃんは......
パシン!!!
つぐみ「最低です。日菜先輩。」
日菜「......」
右頬が痛い
つぐちゃんに初めて叩かれた
つぐみ「私達、言いましたよね。人には触れちゃいけない事があるって。」
日菜「......うん。」
怒ってる
当り前だよ、つぐちゃんは陽介君を庇ってたんだから
日菜「ごめん、なさい......」
つぐみ「私に謝られても困ります。」
つぐちゃんは引き離すようにそう言ってきた
つぐみ「謝るのは、出水君にです。」
日菜「......うん。」
つぐみ「日菜先輩が出水君に謝るまで、私は日菜先輩と口をききませんからね。」
そう言って、つぐちゃんは部屋を出て行った
最後の方には、もう、あたしの事なんて心配してなかった
日菜「あたし......」
それから、しばらく、あたしはその場から動けなかった......