狂犬と消失少年   作:火の車

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謝罪

 ”日菜”

 

 昨日から、頭の整理が出来てない

 

 ずっと、止まったまま

 

 何も分からないまま、時間が過ぎて行ってる

 

日菜「__つ、つぐちゃん......」

つぐみ「......」

日菜「あっ......」

 

 つぐちゃんは本当にあたしと口をきいてくれない

 

 ずっと、無視してる

 

 いつも、怒ることがないツグちゃんだけど、今回は本当に怒ってる

 

日菜「......」

 

 謝らないといけない、でも陽介君にどんな顔で会えばいいんだろ......

 

 あたしは廊下に出た

__________________

 

日菜(ずっとこのまま、なんて、絶対ダメ......。)

 

 ふざけて謝るのには慣れてる、でも、今回は全然違う

 

 どうしたらいいんだろう......

 

千聖『__それで、なんで私にかけてくるのかしら?』

日菜「お願い。」

 

 あたしは千聖ちゃんに電話をかけた

 

 謝る、と言えば千聖ちゃんだと思ったから

 

千聖『ただ事じゃないみたいね。』

日菜「うん......」

 

 千聖ちゃんもあたしの雰囲気を感じ取って、声のトーンが変わった

 

千聖『そうね、私の所に謝りに来たスタッフやプロデューサーは菓子折りを持って謝りに来てたわね。』

日菜「なるほどね、ありがと。」

千聖『(これは果たして参考になるのかしら?)』

 

 あたしは電話を切った

 

日菜(謝りに行かないと。)

 

 あたしはそう思って、学校を出た

__________________

 

 ”陽介”

 

陽介「__あー、疲れた。」

 

 今日から夏休みなだけあって、俺は結構な時間バイトに入ってた

 

 様々なバンドからライブの申し込みがあって、それの整理やら準備やらで手いっぱいだ

 

陽介(昼に帰ってきた時に晩御飯の下ごしらえはしてたし、ある程度すぐに仕上げられるな。)

 

 珍しいデスクワークに凝り固まった肩を軽く回しながら、俺は部屋に入って行った

 

陽介「ただいまー。チュチュ、パレオー。」

日菜「__お、おかえり......」

陽介「はい?」

 

 俺は目を疑った

 

 居るはずない、あんなの見てここに来るはずない

 

 俺は確かに、もう関わらない方がいいって言った

 

陽介「......なんで、いるんですか。」

日菜「え、えっと......」

チュチュ「彼女はあなたに話があるみたいよ?」

陽介「話?」

 

 話か

 

 この目の理由、いや、それ以外か

 

 パターンはいくつかあるけど、警戒は必要だな

 

陽介「......俺に話があるなら、部屋にどうぞ。」

日菜「あ、うん......」

 

 どのパターンにしても、チュチュとパレオに聞かれるのは面倒を招く可能性がある

 

 幸い、あの部屋は音が漏れずらい、話にはもってこいだ

__________________

 

陽介「__それで、話とは?」

 

 部屋に来ると、俺はすぐに話を切り出した

 

 一応、客に無礼は出来ないので綺麗な座布団に座らせた

 

日菜「えっと......」

陽介(......なに?)

 

 俺が考えたパターンの内、これは14しかない

 

 妙にしおらしい、何が狙いだ?

 

 加えてあの鞄、女子が出歩くなら持ってても不思議じゃない、でも、今はこれも不安要素の一つだ

 

陽介(どう出てくる。ここから予想されるのは、これは演技でカバンの中に盗聴器がある。この人の性格的にありえる。)

日菜「ご、ごめん、なさい......」

陽介「え?」

 

 想定外

 

 俺の頭にそんな単語が浮かんできた

 

 謝る、それは数あるパターンの内でもほぼ1通り

 

 俺の予想では、目の事について直接、もしくはさりげなく情報を引き出しに来る、だった

 

日菜「あ、これ......」

陽介「え、あ、ど、どうも。」

 

 氷川さんは鞄からお菓子を出した

 

 しかも、かなり高価そうだ

 

 どういう事だ

 

日菜「お詫びには、菓子折り持ってって......」

陽介「な、なるほど。」

 

 見たところ、開封後じゃない

 

 睡眠薬、自白剤の類はありえない

 

陽介(それじゃあ、さっき鞄からこれを取り出すと同時に何かした?いや、相当手馴れてない限りできない。)

 

 思考を整理した

 

 状況から考えて、今までのような目的はない、と考えられる

 

日菜「陽介君の事、何も知らないで、あたし、ずっと......」

陽介「ちょっと!?」

 

 氷川さんは涙を流してる

 

 目で見てるものが信じられない

 

日菜「あんな、事になってるのにぃ......ずっと、ずっと......」

 

 まるで子供みたいに顔をくしゃくしゃにしてる

 

 嘘なんてない、綺麗な涙だ

 

陽介「もう、いいですよ。」

日菜「え......?」

陽介「俺は人に罪悪感を持ってほしいとも泣いてほしいとも思ってない。はっきり言って興味なんてない。」

 

 俺は氷川さんの前にしゃがんだ

 

陽介「俺なんかのために時間を浪費するのは、ただただ無駄だ。もっと有意義な使い方がある。」

日菜「よ、陽介君......?」

陽介「得意不得意を入れても、全人類通して涙なんて誰も似合わない。」

 

 俺は持ってたハンカチを氷川さんに渡した

 

日菜「あ、ありがと......」

陽介「大丈夫。俺は別に気にしていないですよ。」

 

 俺はそっと、氷川さんに微笑みかけた

 

日菜「っ......!///」

陽介「さて、これ以上はご両親が心配するでしょう。帰った方がいいですよ。」

日菜「う、うん。」

 

 そう言って氷川さんは立ち上がった

 

日菜「ね、ねぇ、陽介君?」

陽介「なんですか?」

日菜「陽介君はなんで、ここに住んでるの。」

陽介「っ......」

 

 まぁ、そりゃ気になるよな

 

 チュチュ、パレオと兄妹なんて言われても容姿的に無理がある

 

日菜「陽介君......?」

陽介「捨てられたんですよ。」

日菜「え......?」

陽介「目を失ったと同時に、家族も失った。」

 

 俺がそう言うと氷川さんは何も言わなくなった

 

陽介「ははっ、そんなに気にしなくてもいいですよ。」

日菜「陽介君......?」

 

 俺は笑いながらそう言って、ドアを開けた

 

陽介「今は今で充実した日々を送って、満足はしてますから。」

日菜「うん。」

陽介「どうぞ、玄関までお送りします。」

 

 俺がそう言うと、俺と氷川さんは玄関の方に行った

__________________

 

日菜「__今日はごめんね。」

 

 玄関先で氷川さんはそう言ってきた

 

陽介「いいですよ。こちらこそ、お菓子もらっちゃって。」

日菜「い、いいの!前食べておいしかったから、食べてみて!」

陽介「ありがとうございます。」

 

 俺は軽く頭を下げた

 

日菜「じゃあ、お邪魔しました!」

陽介「はい。夜道にお気をつけて。」

 

 氷川さんはエレベーターを降りて行った

 

チュチュ「__何の話だったの?」

陽介「色々あってな。それの話だ。」

チュチュ「そう。」

陽介「晩御飯にしようか。今日はビーフシチューだ。」

チュチュ「Good。」

 

 俺はそう言って、晩御飯の用意を始めた。

 

陽介(あ、羽沢に一応言っとかないと。80%くらいの確率で羽沢が絡んでるからな。)

__________________

 

 ”日菜”

 

 許してくれた

 

 あんなひどい事したあたしを、叩くことも、怒ることもしないで

 

 陽介君は、優しかった......

 

日菜(ありがとう、陽介君......)

 

 こんなあたしを慰めてくれて、優しくしてくれて

 

 微笑みかけてくれて......

 

日菜「......///」

 

 自然と頬が熱くなる

 

 心臓も動いてうるさいよ

 

 チリン♪

 

日菜「あ、これ。」

 

 鞄の中にこの前貰ったお守りが入ってた

 

 それには縁結びって書いてある

 

日菜(確か、陽介君もこれ、貰ってたような?///)

 

 縁結び、これって、そう言うあれだったよね?

 

日菜「効果、本当にあるのかも......///」

 

 あたしはそのお守りを胸に抱いた

 

 ほんのり、暖かく感じる

 

日菜「あたし、陽介君が好き......!///」

 

 そう小さく呟くと、さらに顔が熱くなって、心臓が激しく動いた

 

 それが、何よりの証拠なんだって思うと

 

 この熱も心臓の音も、全部が愛おしく感じる

 

日菜「陽介君は、あたしの事、嫌いかもしれないけど......」

 

 日菜は胸元を握りしめた

 

日菜「これから、ちょっとずつ挽回する。それで、少しでも、陽介君に好きなってもらえたら......///」

 

 また、あたしに優しく微笑みかけてくれるのかな

 

 あたしはそんな夢を抱きながら、お家に帰って行った




 そろそろ、モニカの方のアイディアも出てきました
 実行も近いかも
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