狂犬と消失少年   作:火の車

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3話です。


嘘を知る

ますき「__おい!出水!」

陽介「......どうした?」

ますき「大丈夫、なのか?」

陽介「何がだ?」

ますき「何がって、お前の親は......」

 

 佐藤は言いずらそうにしてる。

 多分、佐藤も俺が親に捨てられたってことを分かってるんだろう。

 ほんとに、優しいやつだよ。

 

陽介「これ、見てみ。」

ますき「携帯?なんで___これは!」

 

 携帯画面には『名義変更』という文字が書かれていた。

 名義はもちろん『出水陽介』だ。

 

ますき「こ、これって......」

陽介「そういう事だよ。あいつらは本気で俺を捨てたんだよ。」

ますき「で、でも、おかしいじゃねぇか!なんで、急にお前を捨てるなんて!」

陽介「あぁ、そうかもな。」

ますき「いや、それはこの際いいんだよ。一番おかしいのはお前が平気そうなことなんだよ。」

陽介「......そうか?」

ますき「普通、親、その、なんだ、そんな事されたら悲しいもんじゃねぇのかよ!」

陽介「......もちろん、悲しいよ。」

ますき「なら!__」

陽介「悲しくて、こうしてないと、気が狂いそうなんだよ......!」

ますき「!!」

陽介「俺は小さい時から家族に愛されてると思ってた。事故の日の朝だって、母さんの作った朝食を食べて、気持ちよく学校に行ったんだ。なのに......!」

ますき「出水......」

陽介「......悪い。取り乱した。」

 

 俺は一旦、頭を落ち着かせた。

 でも、落ち着けば落ち着くほど、現実が見えてくる。

 小さい時から当り前にあったものが一瞬で消えた、その事実は俺の心に重くのしかかってくる。

 

?「__いた。」

陽介「?」

 

 俺が少し落ち着くと、知らないおじさんがこっちに来た。

 ほんとに全く面識のない、赤の他人だ。

 

同僚「僕は君のお父さんの同僚だったものだ。」

陽介「父さんの?あと、だったって?」

同僚「......君のお父さんは不貞行為がおおやけになりなり、解雇されたんだ。」

陽介「え......?」

同僚「見知らぬ女性とホテルから出てきたところを偶然、君のお母さんの知り合いが目撃しその写真を撮って、報告した。」

ますき「浮気、ってことか。」

同僚「あぁ。そこから、お互いの両親を巻き込んだ話し合いが始まった。結果は離婚だった。」

陽介「......そうですか。」

同僚「そこからお金の話などはスムーズに決まっていき、話し合いは終わると思われた、だがまだ大きな問題が残されていた。」

ますき「まさか!」

同僚「そう、親権だよ。」

陽介「!」

同僚「あの二人の親権争いは立ち会った身から言わせてもらうとひどいものだった。二人の頭に子供を引き取るって言う頭なんてなかったんだ。」

陽介「......」

同僚「言いたくないが、擦り付け合いだった。そして、君の両親が最後の方に言った言葉は、到底、子を持つ親とは思えない最悪のセリフだった。これが、音声だ。」

陽介「......聞かせてください。」

同僚「......分かった。」

 

陽介父『お前が引き取れ!俺があいつに使う金はないんだよ!』

陽介母『私もよ!引き取ったら好きなことも出来なくなるわ!』

 

 時間にしてほんの数秒、だが、俺にはその数秒が永遠にも感じられた。

 いつもと違う、両親の声色、そこから放たれる拒絶の言葉。

 これを聞いて、ずっとなかった自覚が芽生えてきた。

 

陽介(......俺は二人にとってずっと、邪魔だったんだな。)

同僚「そして、話し合いは平行線のまま2日目に持ち越し......のはずだった。」

ますき「だった?」

同僚「次の日の朝には二人はどこかに消えていたんだ。」

ますき「なっ!」

同僚「つまり、失踪したんだ。親権を獲得しないために。」

ますき「く、腐ってやがる!」

同僚「あぁ、彼らはもはや人間じゃない。クズだ。」

陽介「......そうですか。」

同僚「僕はこれで失礼するが、君に行っておきたいことがある。」

陽介「なんですか?」

同僚「......今まで君が感じてた両親の愛情などは忘れた方がいい。」

 

 そう言って、同僚の人はどこかに歩いて行った。

 佐藤は怒ったような顔をしてる。

 

ますき「クソが!」

陽介「怒り過ぎだぞ、佐藤。」

ますき「でも、お前は今まで親を信じて___い、出水、お前、泣いてるのか?」

陽介「......ほんとに、なくなったんだな。」

ますき「お、おい!どこ行くんだよ!」

陽介「分かんね。取り合えず、生きることは考えてるよ。」

 

 俺はどこに向かうのか分からないがともかく歩き始めた

 

ますき(まずい、今のあいつはほっとくには危うすぎる、どうしたら......って、考えてる場合じゃねぇだろ!)

   「おい!出水!」

陽介「どうしたんだ?」

ますき「お前、私の家来いよ。」

陽介「え?」

ますき「今日、泊る場所ねぇんだろ?だったら家に来い。」

陽介「でも、迷惑だろ?」

ますき「大丈夫だっての!......あれだ、命を救ってもらった、礼ってやつだ!」

陽介「でも__」

ますき「うるせぇ!行くぞ!」

陽介「お、おい。」

 

 俺は佐藤に引っ張られ行った。

 

 俺は、これからどうなるんだろう......




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