朝、俺はいつも通りバイト前に二人のご飯を作っていた
今日は昼も帰ってこれないし、朝と昼、両方作って行かないといけない
陽介「__よし。」
俺は朝ごはんを二人に出しに行った
チュチュ「おはよう、陽介。」
パレオ「おはようございます!」
陽介「あぁ、おはよう。朝ごはん、ごうぞ。」
俺はテーブルの上に料理を並べた
二人は席に着いた
陽介「今日は昼に帰ってこれないから、お昼ご飯は作ってあるのを温めて食べてくれ。」
パレオ「はい!分かりました!」
チュチュ「OK。」
陽介「じゃあ、もう時間だから行ってくるな。」
チュチュ「行ってらっしゃい。」
パレオ「行ってらっしゃいませー!」
俺はそんな二人の声を背に家を出た
チュチュ「......あっ。」
パレオ「どうしました?チュチュ様?」
チュチュ「そう言えば、あの事を陽介に言うのを忘れてたわ。」
パレオ「あ!」
チュチュ「まぁ、大丈夫ね。陽介、弁当を作る時間がないって言ってたし。」
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外はもう7月なだけあって、かなり暑い
記録的猛暑、なんて毎年聞くけど
本当にそう感じるほど暑いんだよな
そんな事を考えながら、歩いてるうちにギャラクシーに着いた
陽介「__おはようございます。」
六花「あ!出水さん、おはようございます!」
陽介「おはよう、六花。」
建物の中に入るともう、六花がいた
結構ギリギリになったな
陽介「すぐに着替えてくるよ。」
六花「はい!」
俺は更衣室に向かった
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更衣を済ませ、俺は業務を開始した
この時期はなんせ、ライブの予約が多い
陽介(この辺りはある程度サークルに集まるって言っても、それでもすごいからな。)
パソコンの画面には多くのバンドの名前が並んでる
そして、それぞれのセトリ、照明や機材の配置の要望
その他にもまとめる情報が多すぎる
陽介「......あれ、これ。」
Poppin'Party
そのバンドが目に留まった
どっかで聞いたことあるな
陽介「うーん。」
六花「__どうしたんですか?出水さん?」
陽介「六花か。いやな、このバンド、どっかで見たか、聞いたことある気がして。」
六花「あ!ポピパさん!!!」
陽介「!?」
パソコンの画面を見ると、六花が急に大きな声を出した
ポピパ、さん?
あ、思い出した
陽介「そう言えば、いっつも六花が言ってたな。」
六花「はい!ポピパさんはとっても素敵なバンドで、大ファンなんです!」
陽介「へぇ、あの六花が。」
六花の演奏技術は凄く高い水準だと分かってる
そんな六花が好きなバンド、少し興味があるな
陽介「夏休み中にここでライブするらしいな。」
六花「はい!知ってます!」
陽介「まぁ、だよな。」
六花の態度を見れば、もうライブの事を知ってるのは分かる
チケットの発行も明日からだし、六花は最速で取るんだろうな__
六花「もうチケットも頂きました!」
陽介「いや、最速越すのか。」
六花「え?」
陽介「いや、なんでもない。」
驚き過ぎて声が出てしまった
Poppin'Partyのライブの日は六花はバイトの日ではないし
相当楽しみだったんだろうな
陽介「......まぁ、楽しむといいよ。俺はちゃんとお仕事しておくからさ。」
六花「はい!お願いします!」
陽介「じゃあ、俺は作業に戻るよ。」
俺はそう言ってパソコン画面に目を移した
前に結構進めてたから、今日の作業は比較的に楽だ
間違えがないかの確認、急な変更にもある程度対応できるようにしておくとか、それだけだ
陽介(このバンド、セットの内容が多いな。少しならいいが、大幅な変更があったら骨がリアルに折れそうだ。)
六花「......」
内容はバンドで大きく異なる
でも、照明が派手なバンドとか、こだわりが強かったりするバンドは大変だ
まぁ、チュチュよりマシだがな
六花(真面目に働いてる......)
陽介(......ん?)
六花から視線を感じる
やばい、なんかやらかしたか
六花(パソコン、打つの早いなぁ。指も綺麗で、女の子みたい。)
陽介(な、なんだ?ずっと見てるぞ?)
六花(首も細くて......)
陽介「あ、あの、六花?」
六花「ふぇ?は、はい!」
陽介「さっきから、ずっと見てるけど、どうした?」
六花「」
俺がそう聞くと、六花が固まった
そして、段々、顔が赤くなっていった
六花「な、なんでもないんです!///ごめんなさい!///」
陽介「いや、何もないならいいんだ。」
俺はそれだけ言って、作業に戻った
六花(なんで、出水先輩の子と見てたんだろ?)
陽介(あー、焦った。何かミスしてるのかと思った。)
俺はそうして、昼まで作業を続けた
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陽介「__あー。」
昼休憩の時間になった
陽介(なんとか、昼までに作業が終わった。昼からは、近日中にあるライブの準備しないと。)
美子「__陽介くーん?」
陽介「はい?」
俺が一人で椅子の背もたれにもたれかかってると、店長が顔をのぞかせた
何か用がある様子なので、俺は店長の方に行った
陽介「どうしましたか?」
美子「出水君にお客さんだよ。」
陽介「お客さん?」
思い当たる人物がいない
佐藤なら遠慮なく入って来るし、チュチュとパレオはライブの準備にかかりっきりだし
何者だ?
美子「可愛いお客さん、だよ?」
陽介「?」
俺は訳が分からなかったが、お客さんとやらの所に向かった
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確か、店の方にいるって聞いたけど
どこにいる
陽介(......あっ。)
日菜「よ、陽介君!こんにちは!」
お客さんとは氷川さんの事だったようだ
ひとまず、詐欺とかそういう類じゃない
陽介「どうしたんですか?」
日菜「え、えっとね、チュチュちゃんから陽介君、お昼持って行ってないって聞いて。」
氷川さんはそう言って、カバンの中から弁当箱を取り出した
日菜「その、お昼、作ってきたの......///」
陽介「!?」
この人、料理とかするんだとか、なんでわざわざ作って来たんだとか、そう言うのはいい
どういう意図なのか分からないけど、良い思いをしてるわけだし
何がまずいって、俺、味を感じないんだよ
陽介(だからと言って、断ると、あらぬ誤解を招くし。)
日菜「陽介君......?」
陽介「い、いや、その。」
日菜「やっぱり、いらなかったかな......」
陽介「!」
氷川さんは悲しそうな声でそう言った
女子が悲しむのは良くない
氷川さんは善意でしてくれてるわけだし
そう思ってからの、俺の行動は早かった
陽介「お昼を持ってきてくれたのは、嬉しいですよ。」
日菜「え......?」
陽介「ただ、少し事情があるので、お話しします。」
俺は氷川さんに味を感じない事を話した
それで、わざわざ作ってきてくれたのが申し訳ないとも話した
日菜「__そ、そうだったんだ......」
陽介「はい。わざわざ作ってきてくれたのに、すいません。」
日菜「いやいや!陽介君は悪くないよ!」
陽介「いえ。俺の身体の事です。」
日菜「あと、栄養は考えて作ったから、食べるだけ食べてみて!」
氷川さんはそう言って、弁当箱を開けた
確かに、栄養バランスは見た感じ、すごくいい
陽介「それじゃあ、いただきます。」
日菜「うん!あ、お箸!」
陽介「ありがとうございます。」
俺は氷川さんから箸を受け取った
陽介「それじゃあ、いただきます。」
日菜「うん!めしあがれ!」
陽介「じゃあ、まずはハンバーグから。」
俺はハンバーグを箸で割り、口に運んだ
陽介「!!!」
口に入れた途端、俺の身体に衝撃が走った
信じられない、なんでだ
しばらく、縁遠くなってた間隔、これは......
日菜「よ、陽介君......?」
陽介「お、美味しい?」
日菜「え?」
自分でも信じられない
俺からは味覚が消えてるはず、味を感じるわけない
でも、今......
俺は二口目を口に運んだ
陽介「やっぱり、美味しい。」
信じがたい、けど、俺は確かに味を感じてる
日菜「ほ、ほんとに?」
陽介「は、はい。信じがたいですが、美味しい、味を感じてます。」
日菜「......」
陽介「氷川さん?」
感想を言うと、氷川さんは静かになった
日菜「__やったー!!」
陽介「!?」
日菜「よかった、頑張った甲斐あったよ!」
氷川さんはそう言って、喜んでいた
俺はその姿を見て、心が温かくなった
陽介(......あれ?この感じ。)
感じたことがある
暖かくて、幸せで、楽しく笑いかけてくれる人がいる
陽介「__あ。」
あった
小さいときに、家族でご飯を食べてた時に感じてた
母さんは感想を聞いて来て、父さんはそれを嬉しそうに見てた
俺はそれを思い出しながら、弁当を食べ進めた
陽介(小学校くらいの時、本当に家族で食べるご飯が楽しくて毎日早く帰ってたっけ。それで、父さんの帰りを母さんと一緒に待って。)
暖かい記憶が溢れてくる
優しくて、誰も傷ついてない、優しい時間
陽介(確か、母さんの作ったハンバーグが一番だって、クラスメイトと喧嘩したこともあったなぁ。)
俺はそんな事を思いながら、最後の一口のハンバーグを口に運んだ
そして、弁当箱の中身はすべてなくなった
陽介「ごちそうさまでした。」
日菜「うん!」
陽介「ありがとうございました。本当に、美味しかったです。」
日菜「陽介君?」
陽介「はい?」
氷川さんは不思議そうに俺の顔を見ている
何かついてるのか
日菜「なんで、泣いてるの?」
陽介「え?」
頬に触れると、生ぬるい液体の感触があった
涙が流れてる
でも、なんでだろう
陽介「......なんだろ、これ。」
日菜「うーん、疲れてるんじゃないかな?」
陽介「疲れ?」
日菜「うん。少し寝たら?」
陽介「......そうですね。奥に戻って__」
日菜「はい!」
陽介「?」
俺が立ち上がろうとすると、氷川さんは自分の膝を叩いていた
何のサインだろうと思い、俺は数秒その光景を見てた
日菜「あたしの膝、使いなよ!」
陽介「いや、悪いですよ。」
日菜「いいよいいよ!......そもそも、陽介君以外にはしないよ///」
陽介(......ふむ。)
女子の膝枕は正直、かなりの特権だ
ただ、俺と氷川さんは付き合ってるわけでも、ましてや身内でもない
そんな相手にしてもいいものなのだろうか
日菜「あ、大丈夫だよ!お仕事が始まる前に起こすから!」
陽介「いやそういうことじゃ......」
日菜「ほら!おいでおいで!」
陽介「......」
俺はかなりチョロいらしい
疲れてるのもあっただろうけど、結局、日菜さんの膝枕にお世話になることになった
陽介(......柔らかい。)
日菜「ゆっくり寝てね。」
氷川さんは気を使ってか、かなり小さい声で俺にそう言った
陽介「......すいません。」
俺はそう言うと同時に、意識を手放した
”日菜”
陽介君はすぐに寝ちゃった
本当に疲れてたみたい
日菜(それにしても......)
あたしは眠ってる陽介君を見た
穏やかな表情で寝息を立ててる
日菜(か、可愛すぎるよぉ......///)
眠ってる陽介君は、いつもの影がかかってる感じじゃなくて
すごく、幼く感じる
この間まで、こんな姿を見せてくれるなんて、考えられなかった
日菜(す、少しだけ撫でちゃダメかな?///)
起こしちゃうからダメ、そう思っても手は言うことを聞いてくれない
段々と陽介君の頭の方に伸びていく
陽介「......ん。」
日菜「!」
もう少しで触れるところで、陽介君の口が動いた
今、なんて言ったんだろう
陽介「......かあ、さん......」
日菜「っ!」
陽介君がお母さんを呼んだ
確か、陽介君はお母さんとお父さんに捨てられたって言ってた
日菜「よ、陽介君......」
陽介「......」
陽介君の目から、涙が零れて、あたしの太ももにまで滲んできた
その涙はひどく冷たく感じた
まるで、温度がなくなったみたいに
あたしは静かに、陽介君の涙を拭いた
その後、陽介君を優しくなでた
日菜「大丈夫だよ。陽介君。」
陽介「......」
日菜「今の陽介君の周りにいる皆は誰も、陽介君を置いて行かないから。」
そう言うと、陽介君の表情が少し柔らかくなった気がした
こんなに寝てるのに、起きてるんじゃって疑っちゃった
日菜(あたしも、絶対に陽介君を置いて行ったりしない。嬉しくないかもだけど、あたしはそうしたい......)
あたしは心の中でそう呟いた
__________________
”六花”
六花「......」
お昼を済ませて、ギャラクシーに戻って来ると
出水さんと氷川先輩がいた
出水さんは氷川先輩に膝枕をされてる
六花「......」
私は扉の隙間からその光景を見てます
穏やかな表情で眠ってる出水さん
それをいつからは考えられない優しい表情で見てる氷川先輩
そんな、微笑ましい光景
普通なら、そう思うはずなんです、でも......
六花「......っ。」
なんで、こんなに胸が苦しいんだろ......
私だって、膝枕くらいできます
お昼ご飯だって、作って来れます
私の方が出水さんと一緒にいました
一緒にお勉強もしました、メールだってよくします
六花(なんで、私じゃ駄目なんですか......)
黒い感情がずっと渦巻きます
私は氷川先輩よりも前から、出水さんの事情を知ってました
氷川先輩はつい昨日じゃないですか
なんで......
六花「出水さん......っ。」
胸が苦しい
何かに握られてるみたい
美子「__六花ちゃん?」
六花「っ!?」
美子「そんなところで何してるの?入らないの?」
六花「す、すいません、もう少し外に出てます。」
美子「え?六花ちゃん?」
私は店長にそう言って、階段を上がって行きました
美子「六花ちゃん......?」
モニカ新作は準備がおおよそ整いました
自分は最初ましろが好きでしたが、ストーリーを読んで好きなキャラが変わりました
(ただ、ましろも性格に人間味があって好き)
なので、その子をヒロインとします。
明日にでも投稿するのが、良いんでしょうか。