狂犬と消失少年   作:火の車

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朝日六花

陽介「__朝か......」

 

 連日のデスクワークで俺はかなり疲れてたらしい

 

 珍しく熟睡出来た

 

陽介(それにしても、昨日は何だったんだ?)

 

 昼休憩が終わって、氷川さんが帰ってから

 

 六花の様子がおかしかった

 

 妙に避けられてると言うか、チラチラ遠くから見られてたり

 

陽介(何なんだろう?そう言う年頃なのか?)

 

 俺はそんな事を考えながら服を着替えた

 

 そして、朝ごはんを作りにキッチンに行った

__________________

 

陽介(......やっぱり駄目か。)

 

 昨日の氷川さんの弁当から味を感じるようになったと思ったけど

 

 やっぱり、何も感じないな

 

陽介(あれは何だったんだ?超常現象か?)

 

 俺は考え事をしながら手を動かしていた

 

 しばらく、準備をしてるうちに2人が起きて来た

 

パレオ「__おはようございます!」

チュチュ「......Good morning。」

陽介「おはよう、2人とも。」

 

 俺は2人の様子を確認して

 

 すぐに朝ごはんを仕上げた

 

陽介「おーい、出来たぞー。」

 

 俺はそう声をかけながらテーブルに料理を並べた

 

 2人とも席に着いた

 

陽介「それじゃ、俺は行ってくるよ。」

チュチュ「今日行けば、2日休みになるんだったわね?」

陽介「そうだぞ。」

パレオ「頑張ってくださいね!」

陽介「あぁ、ありがとな。」

 

 俺は家から出た

 

 そして、ギャラクシーに向かった

__________________

 

 今日はデスクワークとは別に腰に来る仕事、機材運びだ

 

陽介「__重っ!」

 

 機材や他の色々な物を楽屋に運び込む

 

 この仕事は大変だな

 

六花「だ、大丈夫ですか、出水さん......?」

陽介「大丈夫だ。」

 

 こういう時に俺が頑張らないと

 

 重いし、六花と店長がケガしてもやばい

 

 それから俺は、昼休憩まで荷物を運び続けた

__________________

 

 昼休憩の時間だ

 

 俺は従業員スペースに置いてる机に伏せていた

 

陽介「......死ぬ。」

 

 もう腕が上がらない、棒みたいだ

 

 そして何より、腰が痛い

 

陽介(恐るべし、重い物。)

六花「__出水さん、いますか?」

陽介「六花か。」

 

 俺は顔を挙げた

 

陽介「どうした?」

六花「お弁当を作っていたので、食べてくれませんか?」

陽介「弁当?六花が?」

六花「はい!」

 

 最近、店長が買ってきてる昼ご飯の出番がない気がする

 

 まぁ、家で食べる分が出来て財布に優しいって言ってたけど

 

六花「ますきさんに出水さんの事は聞いているので、栄養が豊富なメニューです!」

陽介「ありがとう。いただくよ。」

六花「はい!」

 

 六花はそう言って、俺の隣に座った

 

 そして、弁当箱を開けた

 

陽介「おぉ。」

 

 一見すれば、女の子らしい可愛い弁当

 

 よく見てみれば、すごく栄養が考えられてる

 

 そんな事を考えてると、六花に箸を渡された

 

陽介「いただきます。」

六花「どうぞ!」

 

 俺は箸でおかずを掴んだ

 

 だが、今の俺は腕が死んでる

 

 箸を持つ手がかなり震える

 

六花(出水さん、食べずらそう?)

陽介「__!」

 

 なんとか、震える手で口まで運べた

 

 その時、また、衝撃が走った

 

陽介「味を感じる?」

六花「え?」

陽介「う、美味い。」

 

 朝は確かに何も感じなかった

 

 氷川さんの時と同じ、なんでだ

 

陽介「まぁ、悪い事でもないし、いいか。」

六花「は、はい。でも。」

陽介「?」

六花「あの、食べずらいですか?」

陽介「え?」

 

 六花は俺の手が震えてるのに気づいたらしい

 

 俺は頷いた

 

陽介「午前の荷物運びで腕がな。」

六花「頑張ってましたもんね。」

 

 六花はそう言いながら、俺が持ってる箸に手を伸ばしてきた

 

 そして、俺から箸を取った

 

陽介「なにするんだ?」

六花「はい、あーん。」

陽介「!?」

 

 六花は予想外な行動に出た

 

 え、六花ってこんな子だったか?

 

陽介「あの、六花?流石にそこまでは。」

六花「食べずらいんですよね?だから、お手伝いを。」

 

 やめる気はない

 

 そんな感じの雰囲気だ

 

陽介「じゃあ、食べるぞ。」

六花「はい!」

 

 俺は六花が差し出してきてる料理を口に入れた

 

 相変わらず、味も感じるし、美味しい

 

六花「美味しいですか?」

陽介「あぁ、美味しいよ。」

六花「そうですか♪」

 

 それから、六花は俺に弁当を食べさせ続けた

 

 俺もそれを受け入れていた

 

六花(出水さん、喜んでる。)

陽介「悪いな六花、全部食べさせてもらって。」

六花「大丈夫です!こちらこそありがとうございました!」

陽介「え?あ、うん。」

 

 何故かお礼を言われ、困惑した

 

 六花の表情は明るいし、なんでだ?

 

陽介(それにしても。)

 

 この現象は何なんだろう

 

 味を感じたのは今の所、氷川さんと六花

 

六花「あの、出水さん?」

陽介「うん、どうした?」

 

 考え事をしてると、六花が話しかけて来た

 

六花「眠たくありませんか?」

陽介「え?いや、眠たくはないかな。」

六花「そうですか......」

 

 六花は残念そうな声でそう言った

 

陽介「ど、どうしたんだ?」

六花「昨日、氷川先輩......」

陽介「!」

 

 思い当たる事しかない

 

 まさか、見られてたのか

 

陽介「あ、あれを見てたのか。」

六花「......」

陽介「いやぁ、年上のあんな姿を見るのはきついよなー、あはは。」

六花「そ、そうじゃないんです!」

陽介「?」

 

 六花は慌ただしく手を動かして

 

 言葉を絞り出そうとしている

 

六花「羨ましかったんです......」

陽介「羨ましい?」

 

 どういう事だろう

 

 俺が羨ましかったのか?

 

六花「氷川先輩が出水さんに膝枕をしてるのを見て、羨ましくて。」

陽介「えぇ!?」

六花「私だって、膝枕くらいできますよ......?」

 

 そう言って、六花は顔を近づけて来た

 

 俺は驚いて、後に飛びのいた

 

六花「お弁当だって、私も作れます。」

 

 六花はそう言いながら、また俺に近づいて来た

 

 六花の様子が少しおかしい

 

六花「私の方が出水さんの事を分かってます......」

陽介「!」

 

 六花は俺に抱き着いてきた

 

 どうなってるんだ?

 

 俺は頭を上手く整理できない

 

陽介「ろ、六花?何してるんだ?」

六花「......おかしいんです。」

陽介「え?」

六花「昨日の出水さんと氷川先輩を見てから、ずっとモヤモヤして、胸が苦しくて。」

 

 六花の力が強くなっていってる

 

 抱き着いてる、と言うよりは縛り付けてるみたいだ

 

陽介(ど、どういう事だ?)

六花「私の方が一緒に勉強したりして一緒にいます、メールだってたくさんしました。私の方が出水さんの事を分かってるんです!!」

 

 六花はいつもからは考えられないような表情だ

 

 すごい剣幕だ

 

六花「出水さんは、私の事が嫌いですか......?」

 

 一転して六花は弱弱しい声でそう聞いてきた

 

 腕の力も弱くなった

 

 俺は状況を整理できていなかったが

 

 六花の問いかけには、直ぐに答えられた

 

陽介「いや、六花の事は好きだよ。」

六花「!」

陽介「一生懸命で勉強を教える時も頑張ってくれるし、ギターを弾くときはかっこいいし、仲良くしてくれるし、いい友達だと思ってるよ。」

 

 俺は六花にそう言った、嘘はない

 

 羽丘に転校する前から、六花とは結構な数メールをしてるし

 

 よく一緒にいる、仲が良い友達だと思う

 

六花「そうですか......」

陽介「おう。俺が六花を嫌いなわけないだろ?」

六花「よかった......」

 

 六花はそう言うと俺から離れた

 

 そして、笑顔を向けて来た

 

六花「私も出水さんの事は大好きです!」

陽介「おう、ありがと。」

 

 いつも通りの六花だ

 

 いや、ちょっと違うけどな?

 

六花「また、お弁当を作ってきてもいいですか?」

陽介「いいのか?」

六花「はい!」

 

 六花はそう言うと、扉の方に歩いた

 

 俺はそれを目で追った

 

六花「もう始まる時間ですね!午後も頑張りましょう!」

陽介「そうだなー。」

 

 俺と六花は部屋から出た

 

 そして、午後の業務がすぐに始まった

 

 バイトが終わる頃には、俺の腕と腰は限界を迎えた

__________________

 

 ”六花”

 

 バイトの途中、私はさっきの事を考えていました

 

 少し、出水さんは誤解しています

 

六花(本当は......)

 

 出水さんが思うような、お友達としてじゃない

 

 もっと違う、好きなんですよ?

 

六花(私は出水さんを男の人として、大好きなんですよ?)

 

 私は出水さんの方を見ました

 

 私が見ているのに気づくと

 

 出水さんは小さく手を振ってくれます

 

 その表情はとても優しい笑顔で

 

 行動と相まって、とても可愛らしいです

 

六花(好きだなぁ......///)

 

 私はそんな事を思いながら

 

 バイトを続けました




この作品のタイトルを変更したいと思います
まだ考えてはいないですが......
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