今日は文化祭2日目、最終日だ
だが、困ったことがある
陽介(__俺、人前に出れるのか?)
昨日、俺の秘密は自分のせいだが大衆の面前にさらされた
シャッター音も何回か聞こえたし、少なくとも校内で広まってるのは間違いない
陽介(今日は湊さんと回る予定だが、大丈夫なのか?)
十中八九、俺は奇異の目で見られる
どう考えても、湊さんに迷惑だ
陽介(一応、学校には来たけど、湊さんには連絡して断るか......)
友希那「__どうしたの?陽介?」
陽介「み、湊さん。」
携帯を出して連絡をしようとすると
湊さんが教室に入ってきた
友希那「時間になっても来ないから、美竹さんたちに話を聞いたわ。」
陽介「すみません......」
友希那「いいのよ。」
湊さんは優しく微笑んでる
この人は本当に優しい
友希那「あなたの目、見られてしまったみたいね。」
陽介「はい。」
友希那「でも、大丈夫よ。」
陽介「え?」
友希那「だって、あなたの事は皆が説明したもの。」
俺は湊さんの言葉にたいそう驚いた
湊さんは俺に手を差し出して来た
友希那「行きましょう。きっと、大丈夫よ。」
陽介「は、はい。」
俺は椅子から立ち上がり
湊さんと一緒に教室を出た
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廊下に出ると
多少の視線は感じたけど、悪意は感じなかった
時には俺に優しい言葉をかけてくれる人もいた
陽介「__お、驚いた。」
友希那「これは、私達の説得だけじゃ不可能だったわ。」
陽介「?」
友希那「あなたがこの学校に来てからの行いがあってこそよ。」
陽介「そうですか......」
やっぱり、前の学校とは違う
ここには、良い人が多い
友希那「行きましょう、陽介。」
陽介「!」
湊さんは俺の腕に抱き着いてきた
俺は驚いて、湊さんを見た
友希那「今日はデートよ。」
陽介「あ、はい。わかりました(?)」
俺は困惑しながら
湊さんに腕を引かれた
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まず来たのは、湊さんのクラスだった
どうやら、猫カフェをしてるらしい
俺と湊さんは教室に入った
リサ「__いらっしゃーい!って、友希那と出水君じゃん!」
友希那「来たわ。」
陽介「こんにちは。」
店に入ると、猫耳をつけた今井さんがいた
猫カフェって、そういう事?
陽介「ね、猫(がいる)カフェじゃないんですね。」
リサ「そうなんだー、猫(コスプレ)カフェなんだよねー。」
まぁ、学校行事で動物って連れてこれないよな
コスプレカフェってのもまたいいな
リサ「昨日は友希那も来てたんだよ~☆」
陽介「それはそれは、似合いそうですね。」
友希那「ちょっと、2人とも!///」
湊さんは顔を真っ赤にしながら何かを訴えてる
今井さんは苦笑いをしながら俺と湊さんを席に案内した
友希那「陽介あなた、中々、意地悪ね。」
陽介「ははは、すみません。」
湊さんは少し拗ねてるみたいだ
年上だけど、この人可愛いな
友希那「まぁいいわ。注文はどうする?」
陽介「えーっと、一番栄養価の高い物を。」
友希那「あっ。」
俺がそう言うと、湊さんは暗い顔をした
友希那「ご、ごめんなさい。あなたは味覚が......」
陽介「いえ、もう慣れてるので。お気になさらず。」
俺はそう言いながらメニューを見た
女性ウケがよさそうなスイーツが多い
俺はコーヒー、湊さんはケーキと紅茶を注文した
陽介「そう言えば、湊さんは猫が好きだと聞いたことがあるのですが。」
友希那「え?誰に聞いたのかしら?」
陽介「今井さんにメッセージで。」
友希那(リサ......!)
リサ「__お待たせー、コーヒーと紅茶、ケーキだよー☆」
湊さんと話をしてると
今井さんが注文した品を持ってきた
陽介「ありがとうございます。」
リサ「はいはーい!どうぞー!」
友希那「リサ?」
リサ「うん?どうしたのー?って、ひぃぃ!!」
今井さんは突然、おびえたような声を上げた
どうしたんだろう?
リサ(え?友希那が怒ってる!?なんで!?)
友希那「リサ、陽介と仲良くやりとりをしてるみたいね?」
リサ「あっ。」
友希那「それで、猫の事も話したみたいね?」
リサ「い、いやー(え、待って、これどっちで怒ってんの!?)」
今井さんは何を焦ってるんだろう?
別に俺とメッセージのやり取りするくらいだし
陽介(猫好きがばれたのがそんなに問題なのか?)
リサ「ご、ごめん、出水君とやりとりして!」
陽介「え?」
友希那「なっ!?///」
リサ「あれ?」
友希那「私は猫の事を言っているの!///」
リサ「わー!ごめんごめん!!」
湊さんは今井さんを追いかけていった
俺はそんな2人を見ながらコーヒーに口をつけた
陽介(どうしたんだろ?)
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あれからしばらくすると
機嫌が直った湊さんと
少し、疲れた顔をした今井さんが戻ってきた
その時、今井さんが「私はお喋りです。」と書かれたプレートをかけていた
俺は何があったかを抱いたい察した
友希那「__全く、リサは。」
陽介「ま、まぁまぁ。」
俺と湊さんは教室を出て
次にどこに行くか考えていた
友希那「あれは、何かしら?」
陽介「?」
俺は湊さんが指さす方を見た
そこには、黒いカーテンで覆われた教室
看板には恋愛占いと書かれている
陽介「あれは、看板的には占いですね。」
友希那「あれに行きたいわ。」
陽介「え?(意外だな。)」
友希那「行きましょ、陽介。」
陽介「あ、はい。」
俺は湊さんについて行き
カーテンを開け、教室に入った
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教室の中には
いかにもな格好をした生徒が座っている
変な雰囲気だ
?「どうも、こんにちは。」
陽介「えっと、こんにちは。」
友希那「こんにちは。」
?「そこにおかけになってください。」
?さんにそう言われたので
俺と湊さんは前に置かれてる椅子に座った
?「さて、今日は何が聞きたいのですか?」
陽介「えっと__」
?「2人の相性ですね!?」
陽介、友希那「!?」
?「それじゃあ、占いますね!」
陽介「あ、もうそれでいいです。」
そうして、?さんが占いを始めた
正直に言って、怪しすぎる
?「きえ?きぇぇぇぇぇえええ!!!」
友希那(これは何を見せられてるのかしら?)
陽介(奇声を発してるようにしか見えない、いや、見れない。)
十数秒、叫び続けた後
今度は打って変わって、魂が抜けたように静かになった
俺と湊さんは首を傾げた
?「整いました......」
陽介(何がだろう。)
?「2人の相性は最高にいいですね!」
友希那「!///」
陽介「なるほど。」
まぁ、湊さんとはそうだろうなぁとは思ってた
なんか、謎の安心感がある人だったし
?「欠点を補いあえる関係、まさに理想です。」
陽介「そうなんですか(?)」
?「彼女さんはあなたの欠点を絶対に受け入れてくれますよ。」
友希那「そうね。」
陽介「!?(あの、いや、湊さんは彼女というわけじゃないんだけど!?)」
それからしばらく?さんの話を聞いた
まぁ、基本的には良い事だった
確信をつく部分もあったし、
占いって言うのは本当なのかもしれない
?「__そう言えば、君は出水君だってね。」
陽介「あ、はい。」
?「君、かなり迷ってるね。」
陽介「......」
?「この世には、忘れた方がいい事なんて、たくさんあるんだよ。」
陽介「......わかってます。」
友希那「?」
俺は小さくそう答えて、その教室を出た
湊さんも慌ててついてきた
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俺は教室を出て、落ち着くように歩いてる
周りの声が雑音に聞こえてくる
友希那「__陽介!」
陽介「すみません、落ち着きました。」
俺は足を止めて
湊さんを見た
湊さんは少し頬を膨らませてる
友希那「全く、歩くのが早いわ。」
陽介「す、すみません。」
友希那「まぁ、いいわ。行きましょう。」
陽介「あはは、そうですね。」
俺はそう言って
湊さんと次の行先に向かって歩こうとした
陽介母「__陽介。」
陽介「っ!!」
俺は声をのした方に振り向いた
そして、俺の目には見知った姿が見えた
その姿を見た瞬間、全身から汗が噴き出した
陽介「......なんで、ここに?」
陽介母「入れたから入ったのよ。」
たしかに、文化祭期間は警備が薄くなる
だから、前みたいに警備員に止められなかったわけか
完全にこの可能性を捨ててた
陽介「何か、用?」
陽介母「分かってるでしょ?私の所に帰ってきなさい。」
友希那「!」
陽介母「最近のバイトのお給料とかは全部持ってね?」
陽介「......」
母さんはいつも通りのトーンでそう言ってきた
そのあまりの母親らしい態度は
まるで、捨てたことなんて忘れてるみたいだ
陽介母「戻って来ればもう、学校に行く必要もないわ。働きなさい。」
友希那「なんで!?」
陽介母「今まで育てた分、お母さんに恩返しできるチャンスをあげるわ。」
陽介「......」
全部、分かってる
俺に戻って来いと言ったのは一時しのぎの金と
永久に金を生み出すATMが必要なんだって
陽介母「職場はもうあるわよ?あなたの新しいお父さんの所!ビシバシと鍛えてくれるわ!」
友希那「何を勝手な事を言っているの!?」
陽介母「勝手じゃないわ。親子間の問題でしょ?」
友希那「親子?陽介に愛を注いだこともないくせに!!」
陽介「え?」
湊さんはまるで知ってるような言葉を放った
母さんは湊さんを睨んだ
陽介母「......何を言ってるのかしら?」
友希那「今から10年前、あなた、陽介を突き飛ばしてケガさせてたわよね?」
陽介母「っ!なんで、それを!?」
友希那「それだけじゃないわ。あなたが陽介を机に縛り付けて勉強させてたことも、家事を全部やらせてたことも知ってるわ。」
陽介「っ!!」
湊さんが話してる途中
俺は強い頭痛を感じた
なんだ、これ?
陽介母「そんな事、なかったわよ?」
友希那「ここまで来て白を切るの?」
陽介母「なら、陽介に聞いてみなさいよ。」
母さんがそう言うと
湊さんは俺の方を見た
そして、俺に語り掛けて来た
友希那「陽介、思い出して。あなたは親にどれだけ苦しめられてたか。」
陽介「苦しめ、られてた?」
陽介母「そんな事なかったわよね?」
友希那「黙りなさい!」
苦しめられてた?
俺はただ、ロープで血が滲むくらい椅子に縛られて勉強して
それ以外の時間はほとんど家事をしてただけで
何か失敗した時、躾られてただけ
友人関係だって、上手く言ってた
母さんが外では全部、隠せって言ってたから
陽介「......あれ?」
それだけって言えることなのに
なんで、母さんは隠した
なんでだ?
陽介「......母さん。」
陽介母「なに、どうしたの?」
陽介「子どもって、家の家事を全部したり、暴力を振るわれるのは普通なの?」
陽介母「当たり前でしょ。ただでさえ金がかかるんだから、家族のために働いて、ストレスのはけ口になるのは当然でしょ?何を言ってるの?」
友希那「この......!!!」
陽介「......そっか。」
俺はゆっくりと立ち上がった
視界が揺れてる
頭もグルグルしてる
陽介「......」
陽介母「もういいでしょ?さっさと来なさい。退学の手続きをするわよ。」
母さんはそう言って
俺の腕を掴んだ
ネイルの爪が食い込んでいたい
友希那「陽介!」
陽介(......なんで、今まで信じてたんだろ。)
陽介母「!__きゃあ!」
友希那「!?」
俺は腕を振って
母さんを壁に打ち付けた
俺はその様子を見ながら
静かに呟いた
陽介「目が覚めた。」
陽介母「な、なんですって?」
陽介「母さんと父さんから離れて、優しい家族に出会って、普通の感覚ってのが身に着いたんだと思う。」
陽介母(ま、まさか......)
陽介「ありえない話だけど、俺の事、洗脳してたんでしょ?」
勿論、根拠なんてない、でも
子供なんて、小さい時から言われ続ければそれが普通と思うよな
それは、立派な洗脳だよな?
陽介「母さんはずっと、さっきみたいに教えて来たよね。子供は邪魔なんだから、せめて役に立て。部屋はあげるからって。」
陽介母「そ、その通りじゃない。雨風しのげる場も与えてた!」
陽介「小さいときは俺は2人にいてくれるだけで感謝してた。そう思う風に育てられたから。」
陽介母「そ、そうよ。一緒にご飯も食べてあげたわ。それに、たまには作ってあげたじゃない。」
陽介「そうだね。半年に一回あるかないか。メニューは決まって、火が通り切ってないクソ不味いハンバーグだったね。」
俺は母さんを睨みながらそう言った
母さんは少したじろいだ
俺は続けて話した
陽介「まぁ、味になんて怒ってないよ?俺は偶に作ってくれるそのハンバーグが大好きだったから。」
陽介母「そ、そうでしょ?」
陽介「まぁ、それも過去の事だけどね。」
俺は母さんの前に立ち
静かな声で、こう問いかけた
陽介「母さんは、俺の事どう思ってる?」
陽介母「あ、あなたは愛する息子よ!だから、私の所に来て働いて!ね?」
陽介「冗談キツイね。」
陽介母「ぐぅ!!!」
俺は母さんを蹴り飛ばした
そして、蹴り飛ばした方にゆっくり歩いた
日菜「__ちょっと、騒ぎって何!?」
つぐみ「通してください!」
六花「な、なんだろう?って、出水さん!?」
モカ「あそこにいるのは、ようくんの......!!」
日菜、つぐみ、六花「あれが!?」
周りに人が集まってきた
これじゃ、周りのみんなに迷惑だな
陽介「真面目に答えてよ。愛してるのは、身の回りの事を何でもしてくれて、お金も持ってきてくれる奴隷でしょ?」
陽介母「......そ、そんなこと......」
陽介「あるから、俺の事を捨てたんだろ!!」
俺はそう言って、もう1度蹴り飛ばした
母さんは簡単に飛んでいった
すると、母さんは俺に怒鳴ってきた
陽介母「お、親に向かって何するの!?このクズ!!」
陽介「あぁ、俺はクズだ。クズの子供だからな。」
周りが見えない
俺は今、どう写ってるんだろう
ただの暴力男か
陽介母「あ、あんたなんて昔から、なんのとりえもない不良品のくせに!そんなあなたを育ててあげた恩を仇で返すの!?」
陽介「恩はあっても、仕打ちが酷過ぎてマイナスなんだよ。しかも、俺の高校の奨学金、あんた使いつぶしたよな?大好きなブランドバッグに。」
陽介母「なんでそれを!?」
陽介「チュチュが前の学校の滞納してた学費、払ってくれたからな。その時に分かったよ。」
俺は母さんにゆっくり近づいた
ゆっくりと、恐怖を与えるように
出来るだけ睨みつけて
陽介「知ってるか?俺、家事とお金がないために修学旅行とか行った事ないんだぜ?」
陽介母「......そうね。」
陽介「ここまでしておいてさ、恩とかあるのかな?ないよな?」
俺はそう言いながら足を振り上げた
すると、母さんは両手を前に出した
陽介母「ま、待ちなさい!」
陽介「あ?」
陽介母「あんたは、家族にそんな事をするの!?私は仮にも母親よ!?」
陽介「......家族じゃない。」
俺は振り上げた足を母さんにぶつけた
母さんは腹に蹴りが当たって、悶絶してる
俺はそんな母さんを見下しながらそう言った
陽介「俺の家族はチュチュとパレオだ。あんたはもう、場違いなんだよ。」
陽介母「こ、この......!」
陽介「もう、うるさいんだよ。ごちゃごちゃと。さっさと帰って浮気相手と新しい奴隷でも作れよ。」
陽介母「あ、あんたなんか私の子じゃない!人間じゃない!!この化け物!!」
陽介「そうだよ。」
俺は眼帯を外し、前髪を挙げ
そして、母さんに目線を合わせた
母さんの顔は恐怖で染まった
陽介母「ひっ!!!」
陽介「ほーら、異形の化け物だぞ。あんたはこんなのを奴隷にしたかったんだぜ!」
陽介母「っ!!!気持ち悪い!!!」
パシンっと、乾いた音が廊下に響き
母さんはそう吐き捨て、その場を走り去っていった
陽介「......っ」
友希那「よ、陽介......?」
陽介「湊さん......」
友希那「だ、大丈夫、なの?」
陽介「はい、大丈夫ですよ......」
湊さんが話しかけて来たのを口火に
氷川さん、羽沢、青葉、六花が近づいて来た
皆、心配そうにしてる
日菜「陽介君、さ、さっきの!」
つぐみ「お母さんがいたのに、大丈夫だったの!?」
陽介「別に何もないよ。あんなの。」
俺は軽い口調でそう言った
六花「な、なんだか、変わりましたか?」
陽介「そうか?別に何も変わらないと思うけど?」
モカ「なんだか、違う。眼の光が変わったきがする。」
陽介「そうなのか?」
モカ「絶対に変わったよー。」
陽介「まぁ、そうだとしたら......」
俺は少しうつ向いた
床を見ると、水が落ちてる
頬には生ぬるい感触がある
六花「な、泣いてるんですか?」
日菜「陽介君!?」
陽介「夢が......」
つぐみ「?」
陽介「......夢が、終わったんだよ。」
ずっと、信じてた人たちだから
家族に情がなかったわけじゃない
やっぱり、血のつながった家族は家族だったんだ
あんなことをしたのは、胸が痛むんだ
友希那「頑張ったわね、陽介......」
陽介「湊、さん......」
友希那「あなたは、何も間違えてない。」
俺はそう言われた瞬間
足の力が抜け、その場に崩れ落ちた
湊さんはそんな俺を抱き寄せた
陽介「信じてた、信じてたんだ......俺は......!!」
友希那「いいわよ、好きなだけ泣きなさい。」
陽介「夢が覚めれば、優しい母さんと父さんがいるって、信じてたんだ、ずっと......!!」
俺はそれから、泣き続けた
家族を失った事か、今までの苦痛からか
俺は感情が爆発し、ダムが決壊したように涙を流した
俺はしばらくして泣き止んだ後、
泣き疲れて湊さんの腕の中で眠ってしまった