狂犬と消失少年   作:火の車

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吐露

 修学旅行1日目の夜

 

 俺は夕食を食べ終えて、風呂にいる

 

 体の傷は周知の事実になったし、

 

 今更隠す必要もなくなった

 

陽介(__はぁ......心休まるなぁ......)

 

 温泉なんて初めて入った

 

 効能があるとか聞いたことあったけど、

 

 本当にあるかは体感しずらいな

 

男子「おーい、出水(小声)」

陽介「ん?どうした?」

 

 湯船につかっていると、

 

 クラスの男子が小声で話しかけて来た

 

 他にも何人か一緒にいて、

 

 何かを企んでる顔をしてる

 

男子「折角、修学旅行に来たんだ。何か思い出を作りたくないか?」

陽介「勝手にできそうなもんだけど。」

男子2「いや、違う!」

男子3「思い出は作りに行くんだ!」

 

 男子たちは凄い剣幕で捲し立ててくる

 

 なんで、こんなに必死なんだろう

 

陽介「な、何が言いたいんだ?」

男子「修学旅行で温泉......やることは一つだろ?」

 

 男子はさも常識のようにそう言ってくる

 

 俺は何のことを言ってるか分からない

 

男子「......覗きだ。」

陽介「......(???)」

男子2「覗きだ。」

陽介「いや、聞こえてないわけじゃないよ?いや、普通にやめとけって。」

 

 俺は溜息を付きながらそう言った

 

 覗きって普通に犯罪だし

 

 ハイリスクハイリターン過ぎるし

 

 ていうか......

 

男子「行くぞ、同志たち!」

男子たち「おー!」

陽介「いや、あの、今は__」

 

 男子たちは垣根の前に集まり

 

 器用に上に登り始め、

 

 顔が一番上に到達すると__

 

男子達「グ八ッ!!!」

陽介「あー......」

 

 向こうから桶が飛んできて、

 

 男子たちは花から血を吹き出しながら、

 

 垣根から落下してきた

 

陽介「今、女湯には宇田川がいるから、覗こうとすると桶が飛んでくるぞ?」

男子「さ、先に言ってくれ......よ。」

 

 桶をぶつけられた男子たちは全員倒れた

 

 宇田川、流石の投桶(?)だな

 

 一人一つで確実に仕留めた

 

巴『__陽介ー!そっちはどうだー?』

陽介「全員気絶したよ。」

巴『あっはは!ざまぁねぇな!』

陽介「あ、あはは......(怖い。)」

 

 よ、よかった

 

 今の俺がこんな性格で

 

 一昔前なら俺もあんな風に......

 

陽介(ご、ご愁傷様です......)

 

 俺は倒れてる男子達に手を合わせ

 

 それからもゆっくり湯船につかった

__________________

 

 ”女湯”

 

巴「__そう言えばさぁ。」

 

 5人が湯船につかっている途中

 

 巴がつぐみとモカに話しかけた

 

モカ「なに~?」

つぐみ「どうしたの?」

巴「2人って陽介の事好きだろ~?」

モカ、つぐみ「!?///」

蘭「ちょ、巴!?」

 

 巴がそう言うと、

 

 モカとつぐみは顔を赤くし、

 

 蘭とひまりは巴に向かって叫んだ

 

ひまり「そういう事今言う!?横にいずみんいるかもしれないのに!」

巴「大丈夫だよ。陽介、そんなに長湯しないって言ってたし。」

蘭「いや、そう言う問題じゃないでしょ。」

 

 蘭は溜息を付きながらそう言い、

 

 巴の頭を軽くはたいた

 

巴「それで、どうなんだ?」

つぐみ「そ、それはー......///」

モカ「好きだけど~......///」

巴「あはは!つぐはともかくモカをそうさせるなんて、流石は陽介だな!」

蘭「それはまぁ、分かる。」

ひまり「モカがねー。」

モカ「ちょっと~、失礼じゃない~?」

 

 モカは不服そうに唇を尖らせている

 

 蘭たちは笑いながら、そんなモカを見てる

 

ひまり「でも、これって、2人ってライバル同士って事なんだよね?」

つぐみ「あっ、そ、そう言えば。」

モカ「......うん~、そうだね~。」

蘭「......」

ひまり「す、すごっ、ラブコメみたい!」

蘭「そんな楽しいものじゃないでしょ......」

モカ「......」

巴「モカ?」

 

 そんな会話の途中、

 

 巴はボーっとしてるモカに声をかけた

 

 それに続き、蘭もモカに話しかけた

 

蘭「どうしたの?」

モカ「......あ、いや~、なんでもない~。」

蘭「......ねぇ、モカ__」

モカ「そろそろ上がるね~。」

蘭「ちょっと__」

 

 モカは急ぎ足で湯船からあがり、

 

 脱衣所の方へ歩いて行った

 

 蘭はそのモカを追いかけるように湯船から出た

__________________

 

 ”蘭”

 

蘭「__ちょっと、モカ。」

 

 お風呂から出てすぐ、

 

 あたしは旅館の廊下でモカを呼び止めた

 

 モカはゆっくりあたしの方に振り返った

 

モカ「どうしたの~?」

蘭「少し、聞きたい事あるんだけど。」

モカ「お~、なになに~?」

蘭「モカ、ほんとに陽介が好きなの?」

 

 少し違和感を感じてた

 

 何と言うか、モカから闘争心とかを感じない

 

 つぐみはライバル意識を少なからず持ってた

 

 けど、モカはそれがなかった

 

モカ「......」

蘭「どうなの?」

モカ「......」

 

 モカは下を向いて黙り込んでる

 

 あたしはしびれを切らして、

 

 続けて言葉を連ねた

 

蘭「モカ、あんまりにも身を引き過ぎだよ。付き合えなくてもいいみたいに見える。一応言うけど、半端な気持ちは陽介を傷つけるよ。」

モカ「......蘭はようくんに優しいね。」

蘭「!」

 

 モカはいつもより低い声でそう言った

 

 日頃とのギャップであたしはかなり驚て

 

 変な汗が流れて来た

 

モカ「でも、蘭は分かってない。」

蘭「......分かってないって?」

モカ「本気で好きだからこそ、一歩引いてるんだよ。」

蘭「え......?」

 

 訳が分からない

 

 本気だから、一歩引く?

 

 そんなの、矛盾してる

 

蘭「どういう事......?」

モカ「あたしはよう君に幸せになってほしいんだよ。」

蘭「うん。」

モカ「そう考えたら、あたしは相応しくない。きっと、つぐならよう君を幸せにしてくれる。」

 

 モカは笑みを浮かべながらそう言った

 

 そう言葉を連ねるモカは、

 

 笑みの奥に何か諦めたような感じもする

 

モカ「仮につぐじゃなくても、よう君の周りには素敵な子がいっぱいいるから。別にあたしじゃなくてもいい。」

蘭「い、いや、待ってよ。モカだって陽介と仲いいし、幸せにできるんじゃないの?」

モカ「......そんな無責任なこと、あたしは言えないよ。」

蘭「な、なんで......?」

モカ「......自信がないから。」

 

 モカは小さな、消えそうな声でそう言った

 

 あたしはその様子にひどく驚いた

 

 いつもは自信満々なモカなのに、

 

 今は本当に微塵の自信も感じられない

 

モカ「あたしはよう君が幸せならそれでいい。今までの辛い出来事を埋められる子と一緒になって、よう君が進みたい道に行く......あたしはそれを見守れればいいんだよ。」

蘭「......」

モカ「きっと、それが一番なんだよ。」

蘭「......待って。」

モカ「!」

 

 あたしは歩いて行くモカの手を掴んだ

 

 モカはゆっくり顔をこっちに向けて

 

 あたしの目を見据えてる

 

蘭「なら、陽介を諦めるって言うの?」

モカ「うん、それが一番だから。あたしに踏み込む余地はないよ。」

蘭「誰も、そんな事決めてないのに?」

モカ「っ......!」

 

 掴む手に力が入る

 

 でも、このままモカが諦めたら

 

 あまりにもモカが報われない

 

 ここまで思ってるのに思いを伝えられないなんて

 

 そんなに悲しい事はないから

 

蘭「陽介の幸せは陽介が決める。そして、あたしは陽介を一番思ってるのはモカだって思ってる。」

モカ「蘭......」

蘭「なのに、陽介の選択肢にモカが入らないなんて、あたしは絶対に許せない。」

 

 熱くなって、言葉が勝手に出てくる

 

 あたしはモカの目をじっと見つめ

 

 次の言葉を口にした

 

蘭「告白、しなよ。」

モカ「......っ。」

 

 あたしがそう言うと、

 

 モカが下を見たまま目を見開いた

 

 あたしは続けて話した

 

蘭「モカなら、大丈夫。幼馴染のあたしが言うんだから、間違いない。」

モカ「......」

蘭「幼馴染を信じて。」

 

 ひねり出すような声でそう言った

 

 すると、モカの手に力が入って、

 

 今度はモカが口を開いた

 

モカ「......蘭は、幼馴染を過信しすぎだよ。」

 

 モカが顔を上げ、

 

 あたしと真っ直ぐ目が合った

 

 モカの瞳は涙で濡れてて

 

 照明に照らされて輝いてる

 

モカ「蘭のせいで、もうあきらめられないじゃん......」

蘭「じゃ、じゃあ。」

モカ「うん......伝えるよ。この修学旅行中に。」

蘭「......良かった。」

 

 あたしはそう言って少し笑って、

 

 モカから少し離れた

 

 やばい、すごい心臓ドキドキしてる

 

 人の背中押すのって、難しい

 

モカ「ありがとうね、蘭~。」

蘭「......頑張りなよ、モカ。」

 

 あたしは笑顔のモカにそう言い

 

 少しだけ息をついた

 

蘭(お願い陽介。モカの気持ち、ちゃんと受け止めてあげて。)

 

 あたしは心の中でそう祈り

 

 歩いて行く幼馴染の背中を見送った

__________________

 

 ”陽介”

 

 風呂を上がった後、

 

 俺は部屋で携帯を見てる

 

 佐藤と六花がメッセージを送ってくる

 

陽介「__ははっ。」

 

 佐藤が送ってきたのはRASの練習風景

 

 チュチュもパレオも和奏も六花も楽しそうで

 

 数日離れる身としては、安心する

 

陽介「ん?六花からも写真?六花が取った練習風景かな__ぶふっ!!」

 

 六花のトーク画面を開いた瞬間、

 

 俺は飲んでたお茶を吹き出し、

 

 手に持ってた携帯を落としてしまった

 

陽介(ちょ、ろろ、六花!?)

 

 俺は落とした携帯を拾い上げ、再度画面を見た

 

 そこには、

 

 『どうでしょうか?』という文章と共に

 

 六花の下着姿の自撮りの写真があった

 

陽介(え、えっと......年頃の女の子がそんな事しちゃだめだろ、っと。)

 

 俺は落ち着きを取り戻し、

 

 六花にそう言う内容のメッセージを送った

 

 すると、すぐに返信が帰ってきた

 

陽介「えっと、『お好きに使ってください......♡』って、なにに!?」

 

 ハートの付いた可愛らしい文章

 

 六花も女子高生だなぁ......って

 

 いや、使ってくださいって何なんだよ

 

陽介「......」

 

 いや、嬉しくないわけじゃないんだ

 

 一応、俺も年頃な男なわけで、

 

 嬉しいことは間違いないんだ

 

陽介(......い、一応?好きなようにしていいって言ってるし?な!?)

 

 俺は心の中でそう言い訳しながら、

 

 周りをキョロキョロしながら、

 

 静かに保存ボタンを押した

 

つぐみ『__出水君?』

陽介「は、はい!出水陽介でございます!!!」

つぐみ『え、ど、どうしたの!?』

陽介「え、は、羽沢か......?」

 

 心臓が驚きで砕けるかと思った

 

 俺はゆっくり立ち上がり、

 

 部屋のドアを開けた

 

陽介「よ、よう、羽沢。」

つぐみ「う、うん。大丈夫?なんだか、すごく汗かいてるけど?」

陽介「あ、あはは、そうか?」

つぐみ「う、うん。」

陽介「ま、まぁ、そんな事は良いんだ。それで、何か用か?」

つぐみ「あ、え、えっと......///」

陽介「?」

 

 突然、羽沢がモジモジしだした

 

 そして、少しして

 

 意を決したようにこう言ってきた

 

つぐみ「ちょっと、お散歩行けないかな......?///」

陽介「散歩?まぁ、いいぞ?自由時間だし。」

つぐみ「じゃあ、行こ!出水君!」

陽介「あ、あぁ?」

 

 俺は大きな疑問を感じつつ、

 

 テンションの高い羽沢に手を引かれ

 

 夜の散歩に出かけて行った

 

 

 

 

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