狂犬と消失少年   作:火の車

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月が綺麗ですね

 旅館の中庭

 

 綺麗な植物に流れる水の音

 

 当蝋型のライトに照らされて、

 

 風流な雰囲気を醸し出している

 

 そんな庭の中を俺と羽沢は散歩中だ

 

陽介(__ここの雰囲気、好きだな。)

つぐみ「......///」

 

 冷えた空気が心地いい

 

 なんか、頭がすっきりしてくる

 

陽介「羽沢?」

つぐみ「あ、ど、どうしたの?」

陽介「なんかボーっとしてたが、大丈夫か?」

つぐみ「う、うん!大丈夫だよ!」

陽介「そうか。なら、よかった。」

 

 羽沢、結構長湯してたらしいし

 

 若干のぼせてるのかもしれない

 

 それなら、歩くよりゆっくりした方がいいか?

 

陽介「なぁ、羽沢。そこで座らないか?」

つぐみ「うん!いいよ!」

陽介「じゃあ、お先にどうぞ。」

 

 俺は近くにある岩に羽沢を誘導した

 

 羽沢はゆっくりそこに腰を下ろし、

 

 俺も岩に座った

 

つぐみ「ここ、すごくいい場所だね!池もこんな近くにあるよ!」

陽介「あぁ。何と言うか、風流だな。」

つぐみ「ふふっ、ちょっとおじいさんっぽいね。」

陽介「......俺も分かってるから言わないでくれ。」

 

 俺は頭を抱えながらそう言った

 

 羽沢は隣で小さく笑ってる

 

陽介「そう言えば、言い忘れてた。」

つぐみ「どうしたの?」

陽介「羽沢の浴衣、すごい似合ってるな。」

つぐみ「!///」

陽介「こう素朴な感じがして、落ち着く似合い方って感じがする。」

 

 田舎とかの旅館に行ったら、

 

 こういう子が親の手伝いで働いてそう

 

 眩しい笑顔でお客さんを迎えて、

 

 慌てて転ぶまでは想像した

 

つぐみ「い、出水君も似合ってるよ!///す、すごくかっこいい!///」

陽介「あはは、ありがとう。でも、そんな必死にならなくてもいいぞ?」

つぐみ「///」

 

 本当に可愛らしいな

 

 この庇護欲を掻き立てられる小動物感

 

 これは羽沢だからこそだな

 

 ”つぐみ”

 

 ど、どうしよう

 

 今、すっごくいい雰囲気

 

 出水君がこんな近くにいる

 

つぐみ(ひまりちゃんに言ってきなよって言われたけど、まさか、こんなに上手く行くなんて///)

 

 流石の私でも分かってる

 

 今、すごくチャンスだってこと

 

つぐみ(で、でも、どうやって、何を言えば......!?///)

陽介(羽沢、すごい慌ててるな。何かあったのか?)

 

 好きです、なんて恥ずかしくて言えない

 

 でも、それしか......

 

つぐみ(い、いや、ある!きっと、出水君なら知ってる!)

陽介(なんだ、今度は張り切ってる?)

 

 私は小さく息を吐いた

 

 そして、思い切って出水君の方を見た

 

つぐみ「い、出水君。」

陽介「ど、どうした?(真剣な顔だ。)」

つぐみ「き、今日は、月が綺麗ですね......!///」

陽介「え?(こ、これは。)」

 

 ”陽介”

 

 月が綺麗ですね

 

 これって、そういう事なのか

 

 羽沢の表情からしてそうとしか思えない

 

つぐみ「......///」

陽介(ど、どう答える......?)

 

 この返事は『はい』か『いいえ』しかない

 

 そうですか、なんて返してみろ

 

 俺はただの最低男になる

 

陽介(......ここは、正直に言おう。)

つぐみ(ど、どうしよう、出水君黙っちゃった......)

陽介「......今は答えられない。」

つぐみ「っ!」

 

 俺はそう答えた

 

 羽沢は目を見開いて俺を見てる

 

陽介「その理由は他の人にも告白されてるのと、それと......」

つぐみ「それと......?」

陽介「......答えるとしたら、『あなたと見る月だから。』ってなるから。」

つぐみ「ふぇ......?///」

 

 羽沢は顔を真っ赤にした

 

 いや、俺もかなり恥ずかしい

 

つぐみ「そ、そうなんだ......///」

陽介「その、羽沢は可愛いし、優しいし、一生懸命だし。俺の事を気にかけてくれたし、本当に感謝してる。」

つぐみ「そ、そんな!///私は、出水君が好きだから、勝手に......///」

陽介「っ!(か、可愛い。)」

 

 ちょっとでも理性が緩んだらokしそうだ

 

 それくらいに愛らしい

 

つぐみ「出水君は誰に告白されてるの?」

陽介「え?」

つぐみ「ちょっと、気になっちゃった。」

陽介「湊さん、六花、日菜さん。そして羽沢だよ。」

つぐみ「......素敵な人ばっかりだね。」

陽介「俺もそう思うよ。」

 

 本当に俺には勿体ないと思う

 

 もっと相応しい人間がいる

 

 そう思うけど、俺を選んでくれた

 

 だから、逃げ口上は使わない

 

 真っ向から、向き合わないと

 

つぐみ「......でも、私、選ばれたいな///」

陽介「!」

つぐみ「なんて、言っちゃったら我が儘かな?///」

陽介「......可愛い我が儘だと思うよ。」

つぐみ「そ、そっか///」

 

 羽沢は恥ずかしそうに眼を反らし、

 

 岩から立ち上がった

 

つぐみ「__もし。」

陽介「羽沢?」

つぐみ「もし、選んでくれなかったら、とびっきり苦いブラックコーヒー飲んでもらおっかな!」

陽介「!」

 

 羽沢は弾けんばかりの笑顔でそう言った

 

 少しいたずらっぽさも含んでて、

 

 言ってる内容がなんとも可愛らしい

 

陽介「......好物だよ。ブラックコーヒー。」

つぐみ「うん!だからだよ!」

 

 そう言いながら、羽沢は手を握ってきた

 

 小さくて、少しだけ冷えた手だ

 

 すごく女の子らしい手をしてると思う

 

つぐみ「旅館に戻ろ!出水君!」

陽介「あぁ、分かった。」

 

 俺と羽沢は手を繋いだまま、

 

 歩いて旅館に戻って行った

 

 戻るまでの道のり、

 

 羽沢はずっと嬉しそうに笑っていた

__________________

 

 旅館に帰ってきて羽沢と別れ、

 

 俺は自分の部屋に戻った

 

陽介「__あれ、電話?」

 

 部屋に戻ってすぐ、俺の携帯が鳴った

 

 これは、佐藤からだ

 

陽介「もしもし?どうした?」

ますき『お、出たか。』

 

 佐藤はいつも通りの声だ

 

 すごい安心感がある

 

 俺は内心そう思いつつ、話を進めた

 

陽介「どうかしたのか?」

ますき『いや、なんて言うか......チュチュのとこ行ってお前に会わねぇと落ち着かねぇって言うか。』

陽介「あはは、佐藤は意外と寂しがり屋か?」

ますき『は、はぁ!?うっせぇ!///』

 

 佐藤は大きな声を出してる

 

 だが、照れ隠しなのが見え見えだ

 

 きっと、電話の向こうでは、

 

 佐藤が顔真っ赤にしてるんだろうな

 

陽介「それで、どうしたんだ?本当に寂しくて電話してきたわけじゃないんだろ?」

ますき『え?あ、それはぁ......///』

陽介「?」

 

 佐藤の歯切れが悪い

 

 でも、何か隠してる感じでもない

 

陽介「......まさか、マジで寂しいからかけて来たのか?」

ますき『そ、そうだよ!///悪いのかよ!!///』

 

 佐藤はまた大きな声を出してる

 

 ほんとに可愛いやつだな

 

 誰だよ、佐藤のこと狂犬なんて呼んだの

 

ますき『(こっちの気も知らねぇで、こいつは......///)』

陽介「じゃあ、今1人だし。ちょっと話そうか。」

ますき『!』

陽介「俺も佐藤と話すと落ち着くから。」

ますき『そ、そういう事なら仕方ねぇな!///』

陽介「あはは。」

 

 それから俺は夜遅くまで佐藤と電話した

 

 今日あった事とかの話をして、

 

 羽沢の事があって、心臓がやばかったけど

 

 すごい落ち着いた

 

 

 

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