始まりの日
佐藤と話したあの日
俺は自分の心を打ち明けた
その時に自分が好きな子の名前も口にした
陽介(__落ち着け、俺。)
それで今、俺はその子を待ってる
目的は一つ、告白の返事だ
まだ冷える夜の公園に立ってるだけ
それなのに変な汗が止まらない
今までにないほど緊張してる
もう本当にどうにかなってしまいそうだ
陽介「......」
かなり待たせてしまった
でも、その間も俺の事を好きでいてくれた
だからこそ、俺は真摯に答えるんだ
六花「__出水さん。」
陽介「来てくれたか、六花。」
俺がここに来て十数分が経った頃
落ち着きのない俺の前に六花が現れた
急に呼び出したからか、よく見る服装で
俺は少しだけ心が落ち着いた
陽介「急に呼び出して悪いな。」
六花「い、いえ!大丈夫ですよ!」
六花は明るい笑顔を向けてくれる
でも、今の時刻は夜の8時17分
常識的に人を呼び出す時間ではない
それでもこの対応なんだ
本当に何と言うか、助かる
六花「そ、それで今日は何の用で......?///」
陽介「えーっと、その。」
告白の返事をしたいです
とか、そんな事をあっさり言う男気
生憎、俺には備わっていない
その証拠に今にも俺は意識したら心臓が止まりそうだ
陽介「......きょ、今日はいい天気だったな。」
六花「え?あ、はい、そうですね?」
陽介「こ、この感じなら明日も晴れそうだな。」
ビビッてこんな言葉しか出てこない
ヘタレな自分が恨めしくなる
陽介(こんな事ばかりしてられない。)
俺は一度、大きく呼吸をした
自らの心を言葉にすること
これは決して簡単なことじゃない
でも、俺はそのための準備はしてきた
出来ない事なんて絶対にありえないんだ
陽介「......言いたいことがある。」
六花「!」
陽介「今日はそのために呼んだんだ。」
六花「......はい。」
六花は緊張した面持ちになった
もう大体のことは分かってるんだろう
そして、迷っているんだ
受け入れられるのか拒絶されるのか
六花(この感じ、ダメだったのかな......)
陽介「......」
六花の顔から不安の色が見える
言おう、言えば、この表情は変わる
その姿は可愛らしくて綺麗なものになる
俺はそんな事を思いながら
次の言葉を口にした
陽介「俺は、六花が好きだよ。」
六花「......え?」
俺がそう言った瞬間、
六花は目を見開いて俺の方を見て来た
俺はそれを見て少しだけ口角を上げた
陽介「あれ、聞こえな__」
六花「出水さん!」
陽介「!」
俺が言葉を発しようとしたとき
六花は俺に抱き着いてきた
力が強い、これがギタリストか
陽介「......よかった、聞こえてたみたいだ。」
六花「当り前、です......!///」
六花の抱きしめる力が強くなる
この強さが六花の思いの大きさ
伝わりすぎて、痛みすら感じる
六花「大好きです!///私も、出水さんが!///」
陽介「ありがとう、六花。」
俺は静かに抱きしめ返した
暖かい、まるで冬じゃないみたいだ
これが人間の温かみ
佐藤にも負けていない
陽介「これからよろしくな、六花。」
六花「はい!///」
六花は元気な声でそう答えた
さっきまでの不安の色は全くない
喜びに満ちた、綺麗な声だ
こんなに喜んでくれるんだから
これだけで六花を選んでよかったって思う
陽介「今日は帰ろう。そして、また明日会おう。」
六花「......それは、嫌です。」
陽介「え?」
六花「今日はもっと、一緒にいたいです......///」
六花の控えめな声が聞こえてくる
でも、もう夜だ
これからどこかに行くことは難しい
六花「......私の家に行きましょう///」
陽介「!」
六花「お願いします......///」
陽介(う、うーん......)
これは、どうしたものだろうか
六花の願いは叶えるべきなんだけど
これは倫理的に大丈夫なのか?
陽介「......き、今日だけだぞ?」
六花「!///」
陽介「行こう、六花。」
六花「はい!///」
それから、俺達は旭湯に移動し
六花の部屋で一晩過ごした
この夜は本当に色々あって
絶対に一生忘れる事はないだろう
それくらいに濃密な時間だった
__________________
翌日、俺と六花は家に来た
そして、チュチュ達に報告をしたんだが
チュチュ「__それで、一晩も家を空けたのね。」
陽介、六花「申し訳ありません......」
家の主は怒り心頭の様だ
あまりの迫力で俺達は何も言えなくなってる
本当に母親より母親らしい
パレオ「まぁまぁ、チュチュ様!そんなにお怒りになられなくても~!」
チュチュ「怒ってないわよ!心配してるのよ!」
パレオ「それにしても、お二人とも同じ匂いがしますね?」
陽介、六花「!!?」
チュチュ「......あんた達。」
チュチュの声の棘が増した
俺は振り向くことを拒否する首を動かし
ゆっくりチュチュの方に顔を向けた
チュチュ「まさか、交際初日に......なんてことないでしょうね?」
陽介「そ、そそそんなまさか!?な、なぁ!?」
六花「で、でですよね......!?」
パレオ(分かりやす過ぎますよ!?)
チュチュ「あんた達......!!」
やばい、チュチュの後ろに何か見える
これはマズい
こんなに怒ったチュチュは初めて見た
チュチュ「そんなに二人が好きなら、罰としてプール周りの掃除してきなさい!!!」
陽介、六花、パレオ「え?」
チュチュ「Hurry up!!!」
陽介、六花「は、はいぃぃぃ!!」
俺達はチュチュにそう言われ
外にあるプールに向かって走って行った
”チュチュとパレオ”
チュチュ「はぁ......」
2人が走って行ったあと、
チュチュは大きなため息をついた
その表情は疲れと呆れを含んでいる
チュチュ「全く、あのcrazy couple......」
パレオ「まぁまぁ、良いではありませんか!ようさんもあの様子でしたし!」
チュチュ「別に、本気で怒ってたわけじゃないわ。」
パレオ「あら?」
パレオはチュチュの態度に驚いた
さっきまでの表情とは打って変わり
優しげな眼をして外の方を眺めてる
チュチュ「今、陽介のfamilyは私達だけよ。」
パレオ「えぇ、そうですね?」
チュチュ「だから、ああ言った姑みたいなことを言うのも悪くないでしょ?」
パレオ「チュチュ様......!」
チュチュ「ちょ、抱き着かないで!」
パレオはチュチュに抱き着いた
チュチュは嫌そうな顔をしながらも
目は外の陽介たちに向いてる
陽介『六花!?それホースの蛇口!』
六花『え__きゃぁ!!』
陽介『うわぁ!!』
チュチュ(あの2人はもう少し、見守っていないと駄目ね。)
パレオ「チュチュ様~♪」
チュチュ「離れなさいよ!」
正しく前途多難
これが、2人の始まりだ
チュチュの見守る2人はこれから、
一体、どうなっていくのだろうか