狂犬と消失少年   作:火の車

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適度な衝突

 朝の俺の行動は一定だ

 

 朝5時に起床、2人の朝食とお弁当を作り

 

 制服とかを畳んで準備する

 

 こんな感じで俺は朝の時間を過ごす

 

チュチュ「__Good morning」

陽介「あ、おはよう、チュチュ、パレオ。」

パレオ「おはようございます、ようさん!」

 

 この2人の起きる時間も覚えた

 

 毎日同じ時間に起きてくれるし、

 

 準備する身としては本当にありがたい

 

パレオ「今日も美味しそうです~!」

陽介「あはは、ありがとう。」

チュチュ「いただくわ。」

陽介「あぁ、どうぞ。」

 

 俺は席に着いた2人の前に料理を置き

 

 一緒に朝食を食べ始めた

 

チュチュ「陽介、ロックとは上手くいっているかしら?」

陽介「ん?それはまぁ、上手くいってると思うけど。」

 

 六花と付き合い始めて、3か月ほど

 

 ここまで喧嘩などは特にない

 

 関係も良好だし、上手くいってると言える

 

パレオ「この間も仲睦まじく歩いていましたね!」

陽介「なんで見てるんだ?え、てか、いつ?」

パレオ「私が見たのは、一週間前でしたね!まさしく学生カップルという感じでした!」

チュチュ「いい感じなの。ならいいわ。」

 

 チュチュはそう言いながら食事を進め

 

 パレオもこっちを見てにこにこしてる

 

 ていうか、俺ってそんなに心配されてるのか

 

 マジで母親すぎる

 

パレオ「ですが、ようさん?」

陽介「?」

パレオ「喧嘩をしない事=上手くいってる、ではないのですよ?」

陽介「え?」

パレオ「適度な衝突も必要なんですよ?」

チュチュ「そんなの必要かしら?」

 

 チュチュは首をかしげてる

 

 俺もかなり疑問に思ってる

 

 喧嘩なんてしないに越したことないし

 

 喧嘩をして何かあるとも思えない

 

パレオ「はい!最近呼んだ漫画に描いていました!」

陽介「漫画の影響か。」

チュチュ「どうせそんな事だと思ったわ。」

 

 チュチュは呆れたようにそう言った

 

 俺も少しだけ肩透かしを食らった気分だ

 

 パレオってそう言うところあったな

 

パレオ「お二人とも呆れていませんか?」

チュチュ「その通りよ。」

陽介「あ、あはは。」

パレオ「もう!これは的を射ているのですよ!」

チュチュ「そうね、私もそう思うわ。」

パレオ「すごい棒読みです!?」

 

 こんな調子で会話をしつつ

 

 食べ終えた後は食器の片づけをし

 

 バイトの時間を待った

__________________

 

 時間になり家を出て

 

 俺はギャラクシーに向かってる

 

 春になって桜も咲いてて

 

 去年の事が嘘のように穏やかだ

 

明日香「__あ、出水先輩。」

陽介「あっ、明日香。こんにちは。」

明日香「こんにちは。」

 

 六花と付き合うようになってから

 

 明日香とも何かと話すようになった

 

 一緒に裏方の仕事もするようになったし

 

 学校でも会えば世間話もする

 

明日香「これからギャラクシーに向かうんですか?」

陽介「そうだよ。これからバイトだから。」

明日香「じゃあ、一緒に行きましょう。私も用があるので。」

陽介「そうなのか?じゃあ、一緒に行くか。」

 

 俺は軽く頷き

 

 明日香と一緒に歩き始めた

 

明日香「先輩は相変わらず六花と仲が良いですよね。」

陽介「まぁ、俺もそう思うよ。」

明日香「学校でも公認のカップルですから、男子は六花に話しかけちゃいけないって言う暗黙の了解が出来てますよ。」

陽介「え、そんなのあるのか!?」

 

 正直、すごく助かる

 

 六花と俺は学年が違うし

 

 いつもかなり心配してたんだ

 

明日香「......本当に六花の事を大切にしてるんですね。」

陽介「え?」

明日香「安心したって言うのが態度に滲み出てましたよ?」

陽介「そ、そうか?」

 

 そんなのが出てるのか

 

 いや、そんなことあるのか?

 

明日香「六花は幸せ者ですね。こんなに思ってくれる人がいて。」

陽介「明日香にもいい人が現れると思うけど。」

明日香「私、先輩よりは程々な人でいいです。」

陽介「あの、俺が程々以下なんだが......」

 

 俺は頬を掻きながらそう言った

 

 明日香はそれを見て溜息を付き

 

 少しだけ遠くを眺めてる

 

明日香(六花の話を聞くたび、この人、聖人君主なんだよね。それで実際に放したらまんまその通りだし。)

陽介「明日香?」

明日香「あっ、なんでもないです。少し急ぎましょうか。」

陽介「そうだな?」

 

 明日香にそう言われ

 

 俺達は少しだけ歩くのを速くした

__________________

 

 決して遠くない距離を歩き

 

 ギャラクシーまで来た

 

 俺は階段を降りてる

 

明日香「__きゃ!」

陽介「っ!(明日香!?)

 

 下についた瞬間

 

 上の方から明日香の叫び声が聞こえ

 

 後ろを振り向くと明日香が落ちて来た

 

 俺は何とかその場で踏んばって

 

 明日香を受け止める事が出来た

 

陽介「だ、大丈夫か?」

明日香「す、すいません。階段を踏み外しました。」

陽介「気にしなくてもいいよ。怪我とか__」

六花「__ど、どうしました!?なにか叫び声が......え?」

陽介、明日香「あっ。」

 

 明日香の無事を確認してると

 

 勢いよく扉が開き六花が顔をのぞかせた

 

 これは非常にマズい

 

六花「......何を、してるんですか?」

明日香「わ、私が階段を踏み外しちゃって、それで先輩が助けてくれただけだよ?」

陽介「きゅ、急なことだったからこんなことに。」

六花「......そうですか。」

 

 やばい、すごく怒ってる

 

 こんな六花は初めて見た

 

 俺は取り合えず明日香から離れ

 

 六花の方を見た

 

六花「早く着替えてきてください。時間になるので。」

陽介「は、はい。」

明日香「私も店長さんに用があるから......」

 

 俺達は建物に入り

 

 俺はバイトの用意、明日香は店長に用を済ませに行った

__________________

 

 バイトが始まり

 

 店長は明日香と外に出て行ってしまったが

 

 俺はいつも通りの業務をこなしている

 

 でも、1つ、おかしい事がある

 

六花「......」

 

 そう、六花だ

 

 いつもなら笑顔で話しかけて来るのに

 

 今日に限って何も話しかけてこない

 

 むしろ、なぜかずっとそっぽを向いてる

 

陽介「ろ、六花?」

六花「ふんっ。」

陽介(ふ、不機嫌だな。)

 

 六花がこうなるのは初めてだ

 

 もう、俺へのダメージは凄い

 

 物凄く胸が痛い

 

 でも、言い訳は六花を刺激するし

 

 これは、どうしたものか......

 

陽介(そろそろ時間か。)

 

 時計を見るともうシフトは終わり

 

 後は店長が帰るのを待つだけだ

 

 でも、帰って来ると言った時間は過ぎてる

 

 俺がそんな事を考えてると店の電話が鳴った

 

陽介「はい、ギャラクシーです。」

美子『あ、陽介君?』

陽介「店長?どうかしましたか?」

美子『今、雨が降ってて帰れないんだよ!』

陽介「え、雨?」

美子『そう、だから、六花ちゃんと一緒に店番お願いしてもいい?』

陽介「あ、はい、分かりました。お気をつけて。」

 

 俺はそう言って電話を切り

 

 六花の方を向いて口を開いた

 

陽介「雨で帰れないから店番お願いだって。」

六花「......」

陽介(へ、返事してくれないか......)

 

 六花は軽く頷いたが

 

 声を出して返事はしてくれなかった

 

 そろそろ心が限界になってきた

 

陽介「あの、六花?本当にあれは事故だったんだよ。」

六花「......」

陽介「決して浮気とかそう言うのではないんだよ。」

六花「......明日香ちゃんは。」

陽介「!」

 

 やっと、六花が返事をしてくれた

 

 俺は少し心が軽くなったが

 

 六花の話を聞くとにした

 

六花「出水さんの話をするたび、いい人なんだねって言います。」

陽介「え?」

六花「ああいう人がいれば私も好きになるかなって言ってました。」

 

 そんな話は初めて聞いた

 

 しかも、そんな雰囲気もなかったし

 

 そんな風に思われてるなんて知らなかった

 

六花「それで、さっきのを見て明日香ちゃんに出水さんを取られちゃうと思って、怖くて......」

陽介「っ!」

 

 六花は涙目になりながらそう言った

 

 眼鏡越しに見える瞳は震えてて

 

 胸が締め付けられる

 

六花「ご、ごめんなさい......!」

陽介「六花!」

六花「......っ!」

 

 俺はバックヤードの方に走る六花の手を掴み、そのまま壁に追い込んだ

 

 今の六花に何を言えばいいのか分からない

 

 でも、体が勝手に動いた

 

 つまり、この行動には意味があるんだ

 

 六花に何かしてあげられることがあるんだ

 

陽介「俺の前からいなくならないでくれ、六花。」

六花「っ!」

 

 俺は最低野郎だ

 

 人に傷つけられることを知ってるのに

 

 それなのに六花を傷つけてしまった

 

 でも、俺から出るのはわがままな言葉だけ

 

 本当に、最低だ

 

六花「出水さん......?」

陽介「俺はもう、六花がいないと駄目なんだ。寝ても覚めても、何をしてる時でも六花の事を考えてしまう。一緒にいる時はどうしようもないくらい楽しくて、何もしてなくても幸せな気持ちになる。日ごろの可愛い姿にもギターを弾くときのかっこいい姿にもつい見惚れてしまう。」

六花「っ!///」

陽介「俺は、どうしようもないくらい六花が好きなんだ。愛してる。」

 

 口から出る言葉が止まらない

 

 壊れたダムのように流れて行ってしまう

 

 日頃は恥ずかしくて言えない事が

 

 全部、六花に伝わってしまう

 

陽介「だから__」

六花「も、もう、いいです......///」

陽介「!」

 

 六花は小さな声でそう言うと

 

 俺の背中に手を回して来た

 

 心が満たされていくのが分かる

 

 さっきまでの反動もあるのだろうか

 

六花「ごめんなさい......あんな態度とっちゃって......」

陽介「元はと言えば、俺が原因だから。」

六花「いえ、私が悪いです、だから__」

陽介「!」

六花「ん......っ!///」

 

 視界が六花でいっぱいになり

 

 唇にはやわらかい感触がある

 

 俺は頭の位置を少し低くし

 

 今の行為を遠投する意思を見せた

 

六花「チュ......ぁ、はぁ......んっ///」

陽介(これ、やば。)

 

 六花の舌が口内に侵入してくる

 

 懸命に舌を絡めて

 

 段々と息が熱くなっていく

 

六花「__安心してくれましたか......?///」

 

 数秒ほどして、唇が離れ

 

 六花は恥ずかしそうにそう聞いてきた

 

 妙に色っぽい表情をしてて

 

 さっきとは別の意味で胸が締め付けられる

 

陽介「安心は、出来た......」

六花「よかったです///」

陽介(......一回、落ち着かないと。)

六花「!」

 

 俺は六花から少しだけ離れ

 

 何回か深呼吸をした

 

 嬉しさとか色々な物で心音が凄い

 

 心臓が破裂しそうだ

 

陽介「の、飲み物でも淹れようか。」

六花「は、はい!(?)」

 

 俺はそう言い、

 

 飲み物をとりに店の方に戻った

__________________

 

 店の方に戻ってきて

 

 俺と六花は飲み物を飲んで一息ついた

 

 何とか落ち着きは取り戻せ

 

 六花とも普通に会話できるようになった

 

六花「__あの、出水さん......?///」

陽介「ん?どうした?」

 

 俺は六花に呼ばれそっちを向いた

 

 顔を少しだけ赤くして

 

 俺の方を見てモジモジしてる

 

六花「その、何か今日の私で変わったところはないですか......?///」

陽介「え?六花の変わった所?」

六花「......やっぱり、分からないですか......」

陽介「ピアス開けたんだろ?」

六花「え?」

 

 答えると、六花が目を丸くした

 

 俺は鈍感だと思われてるんだろうか

 

 いや、間違いではないんだろうけど

 

陽介「違ったか?」

六花「せ、正解です///でも、なんで......?///」

陽介「可愛い彼女変化に気付けないようじゃ、恋人失格だろ?」

六花「い、出水さん......///」

陽介「ていうか、それクリスマスに買ったやつだな?つけてくれたのか。」

六花「折角のプレゼントなので、付けたくなって......///」

 

 青色主体のピアスは六花によく似合ってる

 

 俺の見立てに間違いはなかったみたいだ

 

 飼った甲斐があったってやつだな

 

陽介「よく似合ってるよ。」

六花「ありがとう、ございます......///」

陽介(あー、マジで可愛い。)

 

 可愛い子がアクセサリー1つ付けるとこうなるんだな

 

 いつもと少しだけ雰囲気が違うような気がして、また違った大きな魅力が見えてくる

 

陽介「......なぁ、六花?」

六花「はい?」

陽介「俺、また六花にアクセサリー買うよ。」

六花「えぇ!?そ、そんな、悪いです!」

陽介「大丈夫、それは俺にも必要なものだから。」

六花「え?__!///」

 

 俺はそう言いながら、

 

 六花の左手を持ち上げて

 

 薬指に右手を添えた

 

陽介「この指に付ける指輪、必要になりそうだし。」

六花「ふぇ......?///」

陽介「な?」

 

 俺は笑いながらそう問いかけた

 

 六花は一瞬だけあたふたした後

 

 気を取り直した様子を見せた

 

六花「『なりそう』じゃなくて、『なる』ですよ......?///」

陽介「あはは、そうだったな。」

六花「楽しみにしてますね///」

陽介「あぁ、出来るだけ早く用意するよ。」

 

 そんな会話の後

 

 俺と六花は店で2人で並んで座り

 

 楽しく話をしながら店長たちが帰って来るのを待っていた

 

 俺は朝パレオが言ってた、『適度な衝突も必要』という事の意味を理解した

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