”友希那”
友希那「__だ、大丈夫?陽介?」
とある休日の朝
私はソファでうなだれてる陽介にそう尋ねた
陽介は私の声を聞くと顔だけを動かした
陽介「大丈夫だよ......あはは。」
陽介は苦しそうな声でそう言った
表情からも今の陽介の状態が伝わってくる
陽介「い、いやぁ、不覚だった。まさか、麗奈と壮馬を抱っこしようとしたら腰をやるなんて。」
友希那「もうっ、2人も大きくなっているのに。」
陽介「まだいけるかなと思って。」
陽介は子供を抱っこしようとして
その時に腰を痛めた
麗奈と壮馬は双子で、もう2人とも6歳
来年には小学生になる
そんな子供を同時に抱っこしようとすれば
こうなるのは目に見える
麗奈「パパ、大丈夫?」
壮馬「大丈夫?」
陽介「大丈夫大丈夫。いやぁ、2人とも大きくなったな。」
友希那「湿布を貼るわね?」
陽介「ありがとう。」
私は陽介の腰に湿布を貼る
陽介は太ると言う事を知らないと思う
それほどに腰回りが細い
もしかしたら私より細いかもしれない
友希那「はい、出来たわよ。麗奈と壮馬は向こうで遊んでなさい。」
麗奈、壮馬「はーい!」
麗奈と壮馬はテレビの前に走って行った
私はそれを見て一息つき
陽介の頭の近くに座った
陽介「よかった。」
友希那「?」
陽介「今日のロゼリアの皆に出す料理、全部できた後で。」
友希那「あなたは......」
私は頭を抱えた
こんな時も自分の事を気にしない
こういう所は何年たっても変わらない
頭は良いはずなのに、本当にバカ
友希那「そんなこと気にしなくていいのよ。自分の身を案じなさい。」
陽介「案じてる案じてる。でも、自分の仕事はちゃんとしたい。」
友希那「そう言うところよ......」
本当に呆れる
陽介にもこういう所も好きと思う私にも
段々と毒されて行ってるわね
陽介「まぁまぁ、そう怒らないで。」
友希那「怒ってはないわ。ただ、自分の旦那に呆れてるのよ。」
陽介「こ、これは手厳しい。」
友希那「ふふっ、もう、優しいだけの私じゃないわよ?」
陽介「それは、喜べばいいのか......?」
陽介は複雑そうな顔をしてる
私はそれを見て笑った
友希那「もうすぐ皆来るけれど、陽介は動けないわね。」
陽介「申し訳ない。」
友希那「いいのよ。知らない人が来るわけではないし。」
私はそう言いながらソファから立ち上がり
それと同時に家のインターフォンが鳴った
友希那「出て来るわね。」
陽介「あぁ。」
私はそう言った後、玄関に行き
ロゼリアの皆を迎え入れに行った
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”陽介”
友希那が玄関に行ってすぐ
友希那とロゼリアの皆が入ってきた
みんな、高校の時から成長してて
あこなんて身長が宇田川と同じくらいになった
あこ「あれ、どうしたの?陽介さん?」
陽介「いやぁ、2人を抱っこしようとしたら腰をやって。」
あこ「えぇ!?」
燐子「だ、大丈夫なんですか......?」
陽介「さっきよりはマシになりましたよ。」
俺はそう言いながら体を起こした
座るくらいならもう大丈夫だと思う
お客さんの前でだらしない体勢でいたくない
リサ「いやー、年取ったねー☆」
紗夜「私達より年下よ、今井さん?」
リサ「それ言っちゃダメなやつだよ!?」
陽介「あ、あはは。」
一応言うが、俺は今年で29歳になる
そこから考えて、年上の人たちは......
いや、失礼だからやめておこう
麗奈「あー!リサおばさん!」
壮馬「こんにちは!リサおばさん!」
リサ「ちょ、まだ20代だから!おばさんはやめてよー!」
麗奈「でも、ママが何でもいいって。」
壮馬「ちゆ姉さまがおばさんだって。」
リサ「チュチュ!?」
家の子供たちは地雷を踏みぬいて行った
ていうか、チュチュは何を教えてるんだ
勘弁してくれ......
リサ「友希那ー!」
友希那「いいじゃないの。子供のすることだし。」
リサ「それでもあの言葉は響くんだよー!」
今井さんがこれもかと嘆いてる
にもかかわらず麗奈と壮馬は気にしてない
この鈍感さは間違いなく俺の子だ
あこ「麗奈に壮馬ー!久しぶりー!」
麗奈「あこちゃんだー!」
壮馬「久しぶりー!あこ姉さま!」
紗夜「相変わらず元気ですね。」
燐子「そうですね......可愛いです。」
みんな、麗奈と壮馬に構ってくれてる
あの2人はロゼリアの皆が大好きで
来てるときは嬉しそうにしてる
麗奈はあこ、壮馬は白金さんに特に懐いてる
壮馬「燐子姉さま、この本一緒に読みたい!」
燐子「うん......いいよ。」
麗奈「あこちゃんゲームしよ!」
あこ「いいよー!なにする?」
麗奈「スマ〇ラ!」
麗奈と壮馬は2人を引っ張り
それぞれがしたい事をし始めた
その様子を見て今井さんはまた嘆きだした
リサ「なんで、燐子はお姉さん呼び......?」
友希那「2人とってリサは叔母みたいなものだもの。仕方ないわ。」
リサ「そういう事じゃないんだよー!」
紗夜「まぁ、いいじゃない。もういい年なんだから。」
リサ「いーわーなーいーでー!」
そう言いながら今井さんは耳を抑えた
想像以上にダメージを受けてるな
まぁ、与えてるのは他でもない家の子なんだが
リサ「もう!今日は飲むぞー!」
友希那「飲み過ぎないでね。今日は陽介が動けないから介抱できないのよ。」
紗夜「無理でしょうね。十中八九酔いつぶれます。」
陽介(ふ、二人とも辛辣だなー。)
こうして、ロゼリアの5人の飲み会が始まった
俺はリビングのソファに座ったまま
この5人の生末を見守っていることにした
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リサ「__zzz......」
飲み会が始まって3時間
案の定、今井さんは酔いつぶれた
これはいつものパターンだ
友希那も知ってたと言わんばかりに
眠ってる今井さんの方を見てる
友希那「今日はやけに飲んでたわね。」
あこ「リサ姉、なんか彼氏と別れたみたいですよ。」
紗夜「あら、そうなの?」
あこ「なんか、価値観が合わないからーって。」
陽介「通りで。」
確かに、今日はやけに荒れてた
子供たちの前で態度に出さないけど
眠ってからは凄かった
飲んで飲んで飲みまくってた
友希那「勿体ないわね。相手はかなり有望な人だったのに。」
陽介「うーん、そうかな。」
友希那「?」
陽介「あの人は多分、かなりの男尊女卑をしてそうだったし。別にそんなに仕事がうまくいってるように見えなかったけど。」
燐子「そうなんですか......?」
陽介「俺の人を見る目が確かなら。」
高校のとき体験とかで
俺の人を見る目はかなり養われた
あくまで憶測レベルだけど
多分、的を射てると思う
友希那「あなたの職場にいい人はいないの?」
陽介「うーん、どうだろう。世間的にいい人でも、今井さんにとっていい人とは限らないから。」
燐子「今井さんの相手は......どんな人がいいんでしょうか?」
紗夜「そうね、ある程度しっかりしてるけど、支えがいあって。」
あこ「理解とかし合えて、趣味が合う......って。」
燐子、あこ、紗夜(それ、なんて友希那(湊)さんか陽介君(さん)?)
陽介、友希那(そんな人いるか(かしら)?)
3人がジッとこっちを見てる
何か変なところがあるんだろうか?
紗夜「ま、まぁ、今井さんには湊さんたちがいますし。」
燐子「きっと、大丈夫です......!」
あこ「う、うん!もう、2人と実質家族だし!(?)」
陽介、友希那「?」
なんか、3人が目をそらしてる
ていうか、シレっと諦めるとやめてあげて
今井さん、本当にいい人だから
本当なら引く手あまたになるはずだから
紗夜「も、もう少し飲みましょうか。」
あこ「そ、そうですね!」
燐子「私もまだ大丈夫です......!」
陽介、友希那(あっ、飲み過ぎる奴だ(わ))
俺はそんなこと思いつつ、
3人が飲んでるのを見守った
なんだか、皆いつもより飲んでて
1時間ほど経つと......
紗夜、燐子、あこ「......zzz」
陽介「__まぁ、そうだよな。」
案の定、酔いつぶれた
なんであんなに飲んでたんだろうか
忘れたいことがあったんだろうか
俺はそんな事を思いながら
ソファにもたれ掛かった
友希那「もう腰は大丈夫なの?」
陽介「大分マシになったよ。」
友希那「そう、ならいいわ。」
友希那は2つグラスを持って横に座り
一つを俺の方に差し出して来た
友希那「一緒に飲みましょう?」
陽介「まぁ、いいよ。」
俺は友希那からグラスを受け取った
あまり酒は得意じゃないけど
少しくらいなら大丈夫だろう
友希那、陽介「乾杯。」
カンっと、ガラスがぶつかる音が鳴り
俺と友希那は酒に口をつけた
なんだか久しぶりに飲んだ気がする
友希那「やっぱり、あまり飲まないわね。」
陽介「得意じゃないから、程々しか飲めないよ。」
友希那「......そう。」
陽介「友希那?」
俺が言葉を言いきった後、
友希那は思い切りグラスを傾けた
口の中に大量の酒が入って行ってる
陽介「友希那?飲み過ぎは体に毒__!!」
友希那「んっ///」
陽介(ゆ、友希那!?)
友希那に注意をしてると
突然、唇を合わせて来た
これはキスと言うより、酒を口移ししてる
あまり飲まないのが面白くなかったんだろう
友希那「これで、いい感じに酔えるでしょう?///」
陽介「友希那の方が酔ってるじゃないか。」
友希那は酔うとスキンシップが過激になる
最初は可愛いものだったけど
今じゃこれだ......別にいいんだけど
友希那「ねぇ、陽介?」
陽介「どうした?」
友希那「リサの事なのだけれど。」
友希那は心配そうな声でそう切り出して来た
やっぱり、気にかけてたみたいだ
これまで、今井さんは付き合ったり別れたりの繰り返しだし
友希那「大丈夫なのかしら.....」
陽介「大丈夫だよ。」
友希那「どうしてそう言えるの?」
陽介「うーん。」
俺は少し考えた
特に根拠があるわけじゃない
何となくそう思っただけだ
陽介「なんとなく、もうすぐ素敵な出会いがある気がする。」
友希那「何となくなのね。」
陽介「もしなくても、俺達が愚痴を聞くことはいつまでも出来るだろ?」
友希那「!」
俺はそう言い、
手に持ってるグラスを揺らした
そして、言葉を続けた
陽介「もし素敵な出会いがあれば、盛大に祝ってあげればいい。」
友希那「そうね。」
俺達はそう言いながらグラスに口をつけ
眠ってる今井さんの方に目を向けた
そして、俺達は小さく笑った
友希那「今は私が見守る側ね。」
陽介「立場逆転、だな。」
得意げそうな友希那に俺はそう言い
俺はそれを見てまた笑った
リサ「__2人とも~!」
陽介、友希那「!?」
リサ「もう2人とも好き~!」
陽介「ちょ、今井さん!?」
友希那「リサ!?」
俺達がそんな会話をしてると、
眠ってた今井さんが目を覚まし
俺達に抱き着いてきた
良い匂いと酒の匂いが混在してる
リサ「あたし頑張るよ~!もういっそ2人の家族がいいよ~!」
陽介「分かった!分かりましたから!」
友希那「は、離れなさい!///」
リサ「もう、2人とも愛してるよ~!」
今井さんはそう言いながら抱き着いてくる
友希那も引きはがそうとしてるが
中々これが離れない
友希那(......全く。)
陽介(これは......)
陽介、友希那(俺(私)たちがまだまだ見守らないと。)
俺と友希那は苦笑いを浮かべながら
今井さんに抱き着かれ続けた
友希那「......仕方ないわね///」
陽介「!」
友希那は小さくそう呟いた
見守ってくれてた人を見守る
すごい立場逆転だが、それも悪くない
きっと、友希那もそう思ってるんだろう
でも、当の今井さんがこの調子じゃ、俺達が安心できるのはまだまだ先みたいだ