狂犬と消失少年   作:火の車

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日菜ルート
必死の宣言


 天才の横に立つこと

 

 それは決して簡単なことじゃない

 

 周りの目、価値観の相違など

 

 様々な問題が生じる可能性もある

 

 ......なんてものは糞食らえだ

 

陽介「__日菜さんが、風邪!?」

リサ「そうなんだよねー。」

 

 そんな意気込みをして学校に来てすぐ

 

 俺は早速出鼻を挫かれてしまった

 

 あの日菜さんが風邪?

 

 あれ、明日世界は終わるのか?

 

リサ「今、明日世界滅ぶかも、とか考えてたでしょ?」

陽介「はい、それくらい意外なので。」

リサ「まぁ、気持ちはわかる。」

 

 今井さんも深く頷いた

 

 この際、俺の決心どうのこうのはいい

 

 驚きの波が収まって心配になってきた

 

 あの人、風邪とか慣れてなさそうだしマズいんじゃ......

 

リサ「それでさ、出水君にお見舞いに行って欲しいんだ☆」

陽介「え、見舞い?」

リサ「日菜のバンド仲間の子達が補修とか仕事で行けないらしくて、安心できる人に任せたいって。」

陽介「なるほど。」

 

 俺が安心できるかどうかは置いていて

 

 見舞いに行けるのは好都合だ

 

 女の人に家に行くのは気が引けるけど

 

リサ「出水君は日菜の見舞い行けr__」

陽介「行きます。」

リサ「いや、すごい食い気味だね。」

陽介「あ、すいません。」

 

 今井さんは苦笑いを浮かべている

 

 ついつい食い気味になってしまった

 

 一旦落ち着かないと

 

リサ「まぁいいや!じゃあ、よろしくね!」

陽介「任せてください。死んでも成し遂げてみせます。」

リサ「今から戦いにでも行くの?まぁ、またね。」

陽介「はい。」

 

 今井さんはそう言って3年の教室の方に行った

 

 俺はそれを見送ってから教室に行き

 

 今日は日菜さんの見舞いに何を持っていこうか考えて過ごした

__________________

 

 放課後、俺はスーパーを経由して日菜さんの家に来た

 

 場所は今井さんに教えてもらった

 

 ていうか、あの人マンション済みだったのか

 

 失礼なんだけど......苦情とか大丈夫なのか?

 

 俺はそんな事を思いながら階段を上がり

 

 チャットで送られてきた部屋番号の部屋に来た

 

陽介「ごめんくださーい。」

 

 俺はそう言いながらインターフォンを押した

 

 すると、家の中から足音が聞こえ

 

 ゆっくりドアが開いた

 

紗夜「あら、もう来たんですか。」

陽介「こんにちは、氷川先輩。」

紗夜「はい、こんにちは。」

 

 氷川さんは行儀良く頭を下げて来た

 

 この人、本当に日菜さんの姉なのか?

 

 イメージが正反対なんだけど

 

紗夜「今井さんから聞いていますよ。どうぞ、入ってください。」

陽介「はい、お邪魔します。」

 

 俺は氷川先輩に通され家に入った

__________________

 

 家の中はマンションって感じだ(?)

 

 どうやら両親は仕事で不在らしく

 

 今、この家には3人しかいないらしい

 

紗夜「来てもらったところ悪いのですが、私もあと少しで出ないといけないんです。」

陽介「あ、そうなんですか?」

紗夜「はい。なので、日菜の面倒を見てあげてください。」

陽介「分かりました。任せてください。」

 

 じゃあ、2人になるわけか

 

 まぁ、心配なことはない

 

 シミュレーションはちゃんとしてきた

 

紗夜「日菜にとっても人生初めての風邪で想像よりもつらそうなので、しっかりと見てあげてください。」

陽介「はい、分かりました(この人、すごくいいお姉ちゃんしてるな。)」

 

 氷川先輩の第一印象は怖いだったけど

 

 こういうの見ると優しい人だって思う

 

 俺がそんな事を考えてると、氷川先輩はギターケースを背負い

 

 こっちに背中を向けて来た

 

紗夜「それでは、よろしくお願いします。」

陽介「はい、いってらっしゃい。」

紗夜「あら、今日帰って来る頃には私は義姉かしら?」

陽介「!?」

紗夜「私はそっちも期待していますよ。」

 

 氷川さんはそう言って家から出て行った

 

 そうだ、あの人ロゼリアの人だった

 

 湊さんに聞いててもおかしくないか

 

陽介「まぁ取り合えず、日菜さんの部屋に行ってみよう。」

 

 俺はそう呟いて

 

 目の前にある日菜さんの部屋の戸を軽くたたき

 

 返事はなかったけど取り合えず入ることにした

__________________

 

陽介「__お邪魔しまーす。」

 

 俺は小さな声でそう言いながら部屋に入った

 

 女の子らしくい内装に日菜さんの匂いがする

 

 これが、日菜さんの部屋か......

 

陽介(って、ジロジロ見るのはダメだ。日菜さんの様子を見ないと。)

 

 俺は激しく首を振り

 

 本来の目的を果たすため、ベッドの方に近づいた

 

陽介(日菜さんは__っ!?)

日菜「すぅ、すぅ......」

陽介(か、可愛いすぎだろ!!!)

 

 いつもの雰囲気から考えられない寝顔

 

 そうだ、この人すごい可愛いんだった

 

 ていうか、なんで寝てるときこんな静かなんだ

 

 こういうのズルいだろ!!!

 

陽介(落ち着け、この人はアイドル。可愛いのは当然だ。学校でもトップクラスのルックスを持ってるし、日菜さんに憧れを抱く男子も多かったしそう、当然、必然なんだ。)

 

 俺は自分にそう言い聞かせてお落ち着いた

 

 今日はあくまで見舞いに来てるだけ

 

 氷川先輩の言葉で変に意識してしまってるんだ

 

 まずは自分がやるべきことを使用

 

陽介(飲み物が無くなってるから取り換えて......)

 

 いや、やることがない

 

 氷川先輩の仕事が完璧すぎる

 

 飲み物補充以外することがないじゃないか

 

 そんな事を考えながらやることを探してると

 

 ある事に気付いた

 

陽介(あ、冷えピタ取れかかってる。)

 

 俺は軽くそれに触れた

 

 結構ぬるくなってて、長時間貼られているのが分かる

 

 一回変えた方がいいか

 

 俺は日菜さんの額についてる冷えピタをはがし

 

 持ってきたそれを貼った

 

日菜「ん......?」

陽介「あ、起こしちゃいましたか?」

日菜「え、陽介君......?」

 

 日菜さんは寝ぼけた目のままそう言ってきた

 

 珍しく状況がつかめてないみたいだ

 

 こういう姿を見るのは初めてだ

 

陽介「気分はどうですか?」

日菜「ちょっとだけ、辛いかも......」

陽介「じゃあ、安静にしてください。」

 

 俺はそう言いながら日菜さんの頭を撫でた

 

 日菜さんは不思議そうな顔をしながらも嬉しそうにもしてる

 

 しばらくそうしてると、日菜さんが口を開いた

 

日菜「なんで陽介君がいるの?」

陽介「今井さんに頼まれてきたんですよ。」

日菜「そうなんだ、ありがとう。」

 

 日菜さんは笑みを浮かべながらそう言った

 

 もうさ、この人のギャップズルいよ

 

 今メチャクチャ可愛いもん

 

 今すぐ3000m位ダッシュして落ち着きたいもん

 

陽介「今日、何か食べましたか?」

日菜「ううん。」

陽介「何か食べられそうですか?」

日菜「少しだけなら食べられそう。」

陽介「じゃあ......」

 

 俺は買い物袋からモモの缶詰を出した

 

 安定的にこれは美味しいだろうし

 

 風邪の人におすすめって言われたから買ってきた

 

陽介「体起せそうですか?」

日菜「うん。」

陽介「っ!?」

 

 日菜さんは軽く頷いて体を起こした

 

 その瞬間、俺は日菜さんから目をそらした

 

 俺の目飛び込んできたのは日菜さんのパジャマ姿

 

 いやそこまではいい、問題は......

 

日菜「!!///(あ、開いちゃってた!?///)」

陽介「見てないです、俺は何も見てないです。」

日菜「ご、ごめん......///」

 

 向こうからボタンを留める音が聞こえる

 

 まぁ、ずっと布団に入ってたら暑いし

 

 ボタンを緩めたくなる気持ちもわかる

 

 問題は俺の心持ちだ

 

陽介「は、はい、桃缶です。どうぞ。」

日菜「う、うん、ありがと......///」

 

 日菜さんは顔を赤くしたまま缶詰を受け取り

 

 一緒に渡したフォークでそれを食べ始めた

 

 俺は特にやることがないのでその様子を見守ってる

 

日菜「美味しい......るん♪ってする。」

陽介「よかったです。」

日菜「陽介君、いつまでここいるの?」

陽介「そうですねぇ......」

 

 氷川先輩曰く、両親の帰りは遅い

 

 そして、先輩自身もあと3時間は帰ってこない

 

 だとしたら、後3時間はいる事になる

 

陽介「氷川先輩が帰ってきたら帰ります。なので、まだ時間はありますね。」

日菜「そっか......///」

陽介(あーもう!またそう言う顔する!!)

 

 可愛いに可愛いをかけ合わせたらどうなる?

 

 そう、可愛いだ(何言ってんだ?)

 

 って、風邪ひいてる人に下心を持ったらダメだ

 

陽介「だ、台所借りてもいいですか?」

日菜「え?」

陽介「日菜さんの夕飯用に食べやすいもの作るので。」

 

 俺はそう言ってドアの方に行った

 

 その時、後髪を引かれる感覚を襲われ

 

 後ろから日菜さんの声が聞こえて来た

 

日菜「行っちゃうの......?」

陽介「え、いや、あの......」

日菜「一緒にいてくれないの......?」

陽介「......」

 

 俺は日菜さんにそう言われ

 

 綺麗な回れ右を決めベッドの横に座った

 

 いや、これは逆らえないよ

 

 だって寂しそうな声出されたらダメだよ

 

陽介(何話そう。)

日菜(......)

 

 そんな事を考え

 

 しばらく、俺と日菜さんは無言のまま

 

 部屋の中で静かに座っていた

__________________

 

 無言のまま1時間が経過した

 

 日菜さんといて無言になるのは珍しい

 

 俺が意識しすぎてるのが大きいけど

 

 なぜか日菜さんも話さないんだが

 

日菜「......ねぇ、陽介君?」

陽介「はい?」

 

 そろそろ間が持たなくなってきたころ

 

 日菜さんが静かに口を開いた

 

 俺はベッドの上に顔を向けた

 

日菜「あたし、陽介君と付き合っちゃダメかもしれない......」

陽介「え?」

 

 日菜さんの言葉を聞き俺は目を見開いた

 

 付き合っちゃダメ?

 

 なんでそんな話になったんだ?

 

 俺が考え込んでると、日菜さんは話し始めた

 

日菜「千聖ちゃんがね、芸能人と一般人が付き合うと苦労するって......」

陽介「っ!!」

日菜「メディアに追いかけられたり、顔が広く知られちゃったりしたら、陽介君に迷惑がかかっちゃう。」

陽介「......」

日菜「陽介君のことは大好きだよ。でも、陽介君の迷惑になってまで自分の気持ちを優先したくない......だから、あの告白は忘れて欲しいの......」

 

 日菜さんの言ってることは考えてた

 

 勿論、苦労だってあるだろう

 

 ファンの嫉妬で実害が出るかもしれないし

 

 記者に追いかけまわされるかもしれない

 

 そんなの分かってる

 

 でも......

 

陽介「一般人はアイドルと付き合ったら苦労する?だから付き合ったらダメ?」

日菜「......?」

 

 俺は拳を握り込んだ

 

 少し、ほんの少しだけ怒ってるかもしれない

 

 今さら忘れるなんてできるわけがない

 

陽介「冗談じゃないっ!」

日菜「っ!」

陽介「なんで周りのせいで俺や日菜さん自身の気持ちを否定されないといけないんですか!?気に入らない!!」

日菜「え......?」

陽介「日菜さんがアイドルだなんて最初から分かってる!ステージに立てば遠い世界の人間、そんなことは俺が一番分かってるんですよ!」

 

 俺は日菜さんの目を真っすぐ見た

 

 こんなに迷った目をしてる

 

 そうさせた民衆が気に入らない

 

 『アイドルと一般人』その肩書が日菜さんをそうさせるんだとしたら、それは間違いなく俺のせいだ

 

陽介「だったら、俺が氷川日菜に負けないくらい一流になればいいだろ!!」

日菜「陽介、くん......?」

陽介「そうすれば誰にも文句は言わせない!!氷川日菜に相応しい人間になって全員黙らせてやる!!」

 

 俺は言葉を言いきると軽く息切れを起こした

 

 でも、まだ言いたいことを言えてない

 

 俺は呼吸を整えた

 

陽介「俺は日菜さんが好きです。あなたといたいと俺は心から思った。」

日菜「あ、あの......///」

陽介「だから、待っててください。すぐに日菜さんに相応しい人間に__」

日菜「ま、待って陽介君......!///」

陽介「?」

 

 日菜さんは慌てた様子で手を振ってる

 

 俺はそれを見て落ち着きを取り戻し

 

 日菜さんの話を聞くことにした

 

日菜「あのね、あんなにかっこいい事を言ってくれて嬉しかったんだけどね......?///」

陽介「はい?」

日菜「えっと、実は__」

 

 日菜さんは申し訳なさそうに口を開いた

 

 そして、そこから発せられた言葉を聞いて

 

 俺は少し思考が停止し

 

 何秒か経って、俺は大声を出すことになった

 

陽介「__全部演技だった!?」

日菜「う、うん......」

 

 日菜さんの話では白鷺千聖さん?に一般人とアイドルの交際は苦労することもあるかもしれないから、覚悟がないなら止めてあげるのも優しさと言われ今回の事をしろと言われ

 

 それで俺があまりにも必死だったから止められなくなったらしい......

 

陽介(いや、恥ずかしすぎるんだが!?)

 

 俺は頭を抱えた

 

 こんなに恥ずかしいのは初めてだ

 

 いや、嘘は一切なかったんだけど......

 

日菜「ご、ごめんね......」

陽介「いや、もういいですよ。形はどうあれ、言いたいことは言えたので。」

日菜「う、うん///」

 

 俺は日菜さんに目線を合わせ

 

 軽く微笑みかけた

 

 そして、今度はゆっくり口を開いた

 

陽介「俺と付き合ってくれますか?日菜さん?」

日菜「うん、陽介君......!///」

陽介「おっと。」

 

 日菜さんは俺に抱き着いてきた

 

 俺は一瞬焦ったが落ち着きを取り戻し

 

 日菜さんを抱きしめ返した

 

日菜「好き、好き、大好き!///」

陽介(か、可愛い。)

 

 俺はしばらく日菜さんと抱き合い

 

 数10分ほどそのままだった

__________________

 

 あれから1時間30分ほど経ち

 

 そろそろ氷川先輩が帰って来る時間になった

 

 外はもうだいぶ暗くなってて

 

 そろそろ帰らないといけない

 

陽介「__そろそろ帰ります。」

日菜「えー!」

 

 日菜さんはこの1時間30分で元気を取り戻し

 

 なんだかんだでいつもの調子になった

 

 この人の体力どうなってるんだろう

 

 いや、こっちの方が落ち着くんだけど

 

陽介「そろそろ氷川先輩が帰って来るので、今日の所は帰ります。また明日会えますし。」

日菜「でも、もっと一緒にいたい......」

陽介「そ、そう言われても。」

日菜(あっ、そうだ!)

 

 これは上手くいって帰るしかないな

 

 必要以上にいると迷惑になるし

 

 俺はそんな事を考えながら頬を掻いた

 

日菜「よーすけ君♪」

陽介「はいはい、なんですか__ぶふっ!!」

日菜「あはは!すごい驚いてるー!」

陽介「いや、なにやってるんですか!?」

 

 日菜さんに呼ばれ後ろを振ろ向くと

 

 なぜか、日菜さんが下着姿になっていた

 

 水色のシンプルなデザインはむしろ生活感があって惹かれるものがある

 

 って、そうじゃなく!

 

日菜「帰っちゃうの......?///」

陽介「え?」

日菜「まだ、看病は終わってないよ......?」

陽介「......???」

日菜「汗かいちゃったから、拭いて欲しいな?///」

 

 日菜さんは恥ずかしそうにそう言った

 

 いや、拭く?

 

 あー、うん、そういうこともあるよね

 

 俺はまた思考が停止した

 

日菜「陽介君が好きな所、拭いてもいいよ♡」

陽介「っ!分かりましたよ!洗面所はどこですか!?」

日菜「部屋を出て左に行ったらすぐだよ!」

陽介「言っときますけど、拭くだけですからね!?」

日菜「うん♪」

 

 それから俺は最後の看病?をした

 

 その時は色々と危なかったけど

 

 鋼の精神+無類のヘタレっぷりを発揮し

 

 その後は何も起きず、俺は家に帰った

 

 

 後日、氷川先輩に『お義姉ちゃんと呼んでもいいですよ?』と言われたり

 

 パスパレの人たちにあの言葉関連で初対面で弄られたり

 

 楽しくも大変な日々を送ることになった

 

 

 

 

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