狂犬と消失少年   作:火の車

81 / 82
4月10日

 蘭と付き合い始めて4年が経った

 

 俺は何の以上もなく高校を卒業し

 

 大学入学と同時にチュチュの家を出た

 

陽介「__んん......朝か......?」

蘭「おはよう、陽介。」

陽介「あぁ、おはよう、蘭......」

 

 それから、俺は大学3年生になり

 

 今はバイトをしつつ、蘭とアパートで暮らしてる

 

 蘭の両親公認の、所謂同棲と言う奴だ

 

 朝起きて愛する彼女がいるなんて、この上なく幸せなことだ

 

 寝ぼけてるのについ顔が綻んでしまう

 

陽介「蘭、起きるの早くないか?」

蘭「陽介の寝顔見てた。」

陽介「見ても楽しいものじゃないだろ......」

 

 俺はそう言いながら体を起こした

 

 時間は朝の5時30分

 

 いつも通りの起床時間だ

 

陽介「朝ごはん、すぐに用意するよ。何がいい?」

蘭「なんでもいい。」

陽介「そう?じゃあ、和食にでもしようかな。」

 

 俺はそう言ってベッドから出て

 

 朝ごはんを作るため台所に行った

 

 ”蘭”

 

 今日は、4月10日

 

 あたしの誕生日

 

 そんな日にあたしは少し不満を感じてる

 

蘭(......陽介、いつも通りすぎじゃない?)

 

 いつも通りを大切にしてるあたしだけど

 

 今回に関しては話が変わる

 

 こういう時は少しくらいソワソワすると言うか

 

 もう少し気にする仕草を見せて欲しい

 

 去年までは、もっと態度に出してくれてたのに......

 

蘭(まさか、忘れてるんじゃ......って、陽介に限ってそんな訳ないか。)

 

 だって、陽介だよ?

 

 自惚れてるわけじゃないけど、あたしはすごく愛されてる

 

 いつも、あたし事を気遣ってくれるし

 

 愚痴を言っても嫌な顔せず聞いてくれるし

 

 一緒に暮らして、あたしの嫌な所なんて何個も見てるのに、それでも付き合った頃と何も変わらない

 

蘭(そんな陽介だもん。きっと、覚えてるよね......?)

 

 あたしはそんな不安を感じつつ

 

 朝ごはんを作ってくれてる陽介の所に行った

__________________

 

 今日の朝ごはんは純和食

 

 いつも通り、陽介のご飯は美味しい

 

 今まで色んな和食食べたけど、贔屓目なしで一番おいしい

 

 いつか、料理の道に進んだりするのかな?

 

蘭「今日も美味しいよ。」

陽介「そうか、よかった。」

蘭「また腕を上げたんじゃない?」

陽介「まだまだだよ。もっと改善できる点はあるから。」

 

 陽介は微笑みながらそう言った

 

 この向上心の高さ、やっぱり料理人向いてそう

 

 本人にとっては至って普通の事なんだけど

 

蘭「陽介、今日何か予定ある?」

陽介「特にないよ。蘭は?」

蘭「あたしはモカ達と集まるよ。」

陽介「?」

 

 あたしは結構わかりやすく陽介に視線を送った

 

 これで気付くかな

 

陽介「そっか。帰りは何時くらいになる?」

蘭「......」

陽介「蘭?」

 

 そうだ、陽介ってこういうのには鈍感なんだ

 

 体調不良とかにはすぐに気付くのに

 

 なんで、こういうのだけ......

 

蘭「......お昼から、結構遅くなる。夕飯も食べるって。」」

陽介「じゃあ、夕飯はいらないか。」

蘭「うん......」

 

 本当に気付いてない......

 

 本気で忘れてるの......?

 

陽介「俺はずっと家にいるから、ゆっくり楽しんでおいで。」

蘭「......分かった。」

 

 陽介にそう言われたあと

 

 あたしは朝ごはんを食べて

 

 お昼まで作曲をしたりして時間を過ごした

 

 陽介はいつも通り、掃除とか洗濯をしてた

__________________

 

 お昼、あたしは家を出て羽沢珈琲店に来た

 

 今日は定休日だけど

 

 あたしが誕生日だからって開けてくれてる

 

 なんだけど......

 

蘭(はぁ......)

モカ「__おやおや~?浮かない顔をしてるねー蘭~?」

蘭「え?そ、そう?」

巴「なんか悩みか?」

ひまり「蘭の悩みなんていずみんの事しかないんじゃない~?」

つぐみ「ふふっ、確かに。」

 

 皆、あたしにどんなイメージ持ってるんだろう

 

 でも、間違ってないあたり正しいのかな?

 

モカ「話してみなよー。」

蘭「......陽介、誕生日忘れてるんだ。」

モカ、巴、ひまり、つぐみ「......え?」

 

 あたしがそう言うと4人は信じられないと言った顔をした

 

 気持ちは分かる

 

 あたしだって、朝はそう思ってたもん

 

巴「よ、陽介が?ありえないだろ。」

ひまり「いずみんだよ!?口を開けば蘭、蘭としか言わない!」

つぐみ「私も、あんまり考えられないかな?」

モカ「うーん、ようくんに限ってあり得るのかな~?」

 

 みんな、口々にそう言ってる

 

 それくらい、陽介はしっかりしてるんだもん

 

 記念日とか、すごいしっかり覚えててくれるんだもん......

 

蘭「陽介、あたしに興味なくしちゃったのかな......」

ひまり「い、いや、それはないでしょ!」

巴「考えすぎだって。一緒に住んでるんだったらそう言う事だってしてるんだろ?」

蘭「え?」

モカ、つぐみ、巴、ひまり「え?」

 

 あたしは巴の言葉に首を傾げた

 

 そう言う事って、なんだろ

 

ひまり「(ま、まさか。)ら、蘭って、いずみんとどこまでした?」

蘭「え?キスは偶にするくらいだけど......」

ひまり「えぇ!?」

巴「そ、そうなのか!?」

つぐみ「ま、まだだったんだ......」

蘭「え、な、何......?」

 

 なんでこんなに驚いてるんだろう?

 

 モカまで本気で驚いてるし

 

ひまり「そ、それは酷いよ!あんまりだよ!蘭!」

蘭「え......?」

つぐみ「ら、蘭ちゃんと出水君が寝てる部屋って......」

蘭「い、一緒だけど......」

モカ「これはー......」

巴「陽介も大変だな......」

 

 なんか、変な目で見られてる

 

 ど、どういう事なの?

 

 陽介が大変って、どういう事......?

 

蘭「な、なに?」

巴「そのな?言いずらいんだがー。」

モカ「蘭、ようくんとエッチしてなかったんだー。」

蘭「!?///」

つぐみ「も、モカちゃん!?」

ひまり「直球過ぎるよ!?」

 

 も、モカはなに言ってるの!?

 

 そ、そう言うのは結婚してからじゃないの?

 

 陽介だって、何も言ってこなかったし......

 

巴「きっと、陽介は優しいから蘭に合わせてたんだろうな。」

ひまり「いずみん、平気で結婚するまで耐えそうだもんね......」

モカ「少し考えてみて?蘭。」

蘭「え、うん。」

 

 モカは真剣な顔でそう言ってきた

 

 あたしはその勢いに押されて

 

 背筋が自然にピンっと伸びてしまった

 

モカ「よう君だって、年頃の男の子なんだよ。だから勿論、性欲だってあるんだよ?」

蘭「う、うん......」

モカ「なのに、2年間そんな雰囲気もないまま、夜は隣で最愛の彼女と添い寝......よう君、きっと、すごく我慢してるよ?」

 

 た、確かに陽介とそんな雰囲気になったことはない

 

 でも、そんなに気にしてる様子もなかった

 

 ......いや、でも、陽介って隠し事上手いし

 

 もしかしたら......

 

モカ「2人の在り方に口は出さないけど、もう少し、よう君のこと考えてあげたら~?」

蘭「で、でも、どうすればいいの......?」

巴「こういう時はひまりだ!」

ひまり「えぇ!?」

つぐみ「ひまりちゃん!」

ひまり「え、えーっと......こ、こう、お酒とか飲んでそう言う雰囲気にする、とか......?」

蘭「お酒......なら、大丈夫かも。」

モカ「ちゃんとアピールしなよ~。それと、ギリギリで寝るなんてテンプレ展開もダメだからね~?」

 

 テンプレ展開って、なんの?

 

 まぁ、それはいいや

 

 取り合えず、アピールすればいいんだよね?

 

 それなら......

 

巴「よし!そうと決まれば準備するぞ!」

つぐみ「行こう!蘭ちゃん。」

蘭「え、ちょっと待っ__」

 

 あたしは4人に引っ張られ

 

 色んな知識を教えられた

 

 この時点ですごく恥ずかしかった

 

 あたし、あんなの出来るのかな......?

__________________

 

 あれから少し時間が経って

 

 時間はもう夜の8時

 

 つぐみの家でお夕飯を食べて

 

 皆に誕生日を祝ってもらって、あたしは家に帰ってきた

 

蘭「__ただいま。」

陽介「あ、おかえり、蘭。」

 

 リビングに入ると、テーブルで本を読んでる陽介が微笑みかけて来た

 

 いつも通りの優しい表情

 

 見てて、すごく安心する

 

陽介「その顔を見る限り、楽しめたみたいだな。」

蘭「うん。」

陽介「どうする?もう8時だし、風呂入って寝るか?」

蘭「そ、その事なんだけど......」

陽介「?」

蘭「お酒、少し飲まない......?」

陽介「え?」

 

 陽介は首を傾げた

 

 まぁ、あたしはそんなにお酒飲まないし

 

 二十歳になってから飲んだ回数多くないし

 

陽介「珍しいな?」

蘭「今日はそう言う気分だから。」

陽介「じゃあ、用意するよ。客用に置いてるのあるし。」

蘭「うん。」

 

 陽介はそう言って台所に歩いて行った

 

 本当にいつも通り

 

 なにかあったらすぐに動いてくれる

 

陽介「ワインでいいか?」

蘭「うん、いいよ。陽介が用意してるのだもん。」

陽介「あはは、ちょっと過大評価だな。」

 

 そう言いながらも、慣れた手つきでワインを開け

 

 グラスに注いでいく

 

 透明なグラスが綺麗な赤色に染められて

 

 フルーティーな香りが漂ってくる

 

 こんなに良い匂いするんだ

 

陽介「はい、どうぞ。」

蘭「うん、いただきます。」

 

 あたしはワインを口に含んだ

 

 辛口な、あたし好みの味

 

 度数もちょうどよくて、飲みやすい

 

蘭「やっぱり、美味しい。」

陽介「そっか。よかった。」

蘭「陽介も飲めば?」

陽介「じゃあ、いただこうかな。」

 

 陽介もグラスにワインを入れ

 

 少しだけ口に含んだ

 

 そして、何かを確かめるような顔をして

 

 数秒後、少しだけ口角を上げた

 

陽介「満点だ。奮発してよかった。」

蘭「え?」

陽介「あっ(やば。)」

 

 あたしは陽介の言葉に首を傾げた

 

 奮発?

 

 これってお客用って言ってなかったっけ?

 

陽介「あはは、お酒はいけないな。あんまり強くないから、すぐに酔いが回る。」

蘭「陽介?どういう事?」

陽介「えーっと、このワイン、蘭の誕生日の日にちょうどピークが来るのを選んできたんだ。」

蘭「!!///」

 

 じゃ、じゃあ、覚えてたんだ!

 

 やっぱり、陽介だもんね!

 

陽介「朝に言わなかったのは、青葉たちと集まるのを知ってたし、お酒を飲むのは夜でいいと思ったからだよ。」

蘭「......あたし、結構へこんだんだけど。」

陽介「おっと。」

 

 あたしは陽介の胸元に顔を埋めた

 

 陽介の匂いがする

 

 お酒なきゃ、こんなに甘えられないかも

 

蘭「覚えてないかと思って、ちょっと悲しかった......」

陽介「ごめんごめん。」

蘭「......でも、それで気付けたこともあるの。」

陽介「?」

蘭「......っ///」

 

 どうしよう、ドキドキする

 

 自分から誘うのってどうなの?

 

 はしたないとか、思われないかな?

 

蘭「ごめんね、陽介......」

陽介「え?」

蘭「あたし、陽介のこと、何も分かってなかった......」

陽介「え?ど、どういう事?」

 

 陽介は分かりやすく混乱してる

 

 この反応はある意味予想通り

 

 でも、ここで引いちゃダメだ

 

 このまま陽介に甘えてたらダメ

 

蘭「あたしたち、付き合い始めてから結構経つよね......?///」

陽介「まぁ、4年くらいになるな。。」

蘭「それで、同棲を始めて3年目、だよね......?///」

陽介「そうだな?」

 

 こうやって振り返ってみると、結構長い

 

 少し考えてみれば、頃合いだったのかもしれない

 

蘭「......だから、あのね......?///」

陽介「?」

蘭「キスの続き、しようよ......///」

陽介「え?」

 

 陽介は驚いた顔をしてる

 

 あたしは構わず、そんな陽介を抱きしめて

 

 出来るだけ、体を当ててる

 

 お酒なかったら絶対にできないよ、こんなの

 

蘭「陽介も、我慢してたよね......///」

陽介「い、いや、そう言うのは結婚してからの方がいいんじゃないか?」

蘭「あたしは、陽介に全部貰ってほしい///陽介に我慢してほしくない///」

 

 あたしはそう言葉を並べた

 

 陽介はあたしの目を真っすぐ見てる

 

 その隻眼の瞳は真剣で、それでいて奥に優しさが滲んでて、陽介らしい綺麗な目をしてる

 

陽介「そっか......(バレちゃってたか。)」

 

 陽介は少し眉間を抑えた

 

 そして、何秒かして、あたしの肩を掴んできた

 

 顔と顔の距離が近くて、ドキッとする

 

陽介「ごめん、蘭。」

蘭「ううん、こっちこそ__」

陽介「俺、いつもみたいに自分を抑えられる自信ない。」

蘭「__え......?///」

 

 陽介はそう言うと、あたしを無理やり立たせ

 

 そして、ぎゅっと抱きしめてくれた

 

 暖かくて、嬉しくて

 

 あたしも陽介の背中に腕を回した

 

陽介(これは、誕生日プレゼントは明日の朝かな。)

蘭「優しく、してね......?///」

陽介「......あぁ、分かってるよ。蘭。」

 

 そんな会話をした後、あたし達は寝室に入った

 

 そのあとの事は少し、夢みたいでぼんやりとしてる

 

 けど、すごく幸せだったことと

 

 最後、結婚しようって言われたのは確かに覚えてる

 

 これが、あたしの21歳の誕生日の出来事だった

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。