いつの間にかハイスクールD×Dの木場君?   作:ユキアン

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第12話

レーティングゲームが終了した後、僕らは冥界に連れて行かれた。明後日にはリアス・グレモリーの結婚式が行われるからだ。とりあえず、僕らは冥界の僕の屋敷にて結婚式の準備をすることになった。グレモリー家お抱えの仕立て屋に礼服の準備をして貰い、当日の予定を聞いたら、あとは身体を休めておく様にとのことだった。

 

僕は試合の映像をグレイフィア様に用意してもらい、それを分析して全員の評価を付けていった。こんなことをするのは眷属としては問題だろうが、事実を事実として受け止めてもらう必要がある。グレイフィア様も僕とは別に評価を纏めてくれるそうなので後で確認させてもらう。

 

とりあえずリアス・グレモリーと副部長に関してはマイナス評価しか存在しない。理由は言わなくても分かるでしょうが、あえて試合外も含めて纏めるなら準備不足の一言ですね。力も情報も道具も全てが足りていないです。一騎打ちに関してのやり取りも聞きましたが、安い挑発でした。何かの駆け引きが有った訳でもなく、ライザー様がリアス・グレモリーの眷属を見下し、それに激怒してこちらから一騎打ちを申し込んでいました。愚かです。愚か過ぎて殺したい位です。せめて何か勝算でもあれば奇策として評価していたでしょう。ですが、リアス・グレモリーはバアル家の破滅の魔力によるゴリ押し一択の攻撃しかしませんでした。

 

 

副部長に関しては無駄なプライドによる一騎打ちを行ったことですね。ギャスパーの停止世界の邪眼による援護を受ければ5秒と経たずに勝てたでしょう。それ以外は普通ですね。副部長が堕天使であるバラキエルと人間の間に産まれたハーフであることは勝手に調べさせてもらって知っています。その力が嫌いなことも、その理由も。それに関しては個人の事なので触れないでおきます。ただ、その力を使えば余裕で勝っていたでしょうね。まあ僕も十字架を付けていて能力が落ちていますから人の事は言えません。

 

 

続いて今回の大金星である兵藤君。合宿最終日には、なんとかアトラック・ナチャのページモンスターを倒せる位にまで成長しただけの事はあります。体育館でのチェンソーを持った双子を相手に焦る事なく対処出来ていました。しかし、洋服崩壊(ドレス・ブレイク)は減点ですね。みだりに女性の肌を曝させるのはいただけません。

 

その後のライザー様との戦いですが、やはりフェニックスの不死性に苦戦する姿が目立ちますが、善戦はしていました。僕からの連絡の後、赤龍帝の篭手の倍化の力を貯めながら生徒会室に向かい、女王(クイーン)にプロモーションして屋上に辿り付くと同時に倍化の力を使用して真っ向からライザー様を圧倒していました。

 

しかし、空を飛び慣れていない事と倍化の力が切れてから再び貯めるまでの間にダメージを貰い過ぎ、途中で致命傷になりそうな攻撃を躱す為に力を使ってしまい押される一方になってしまった様です。ここで白音さんが屋上に到着し、白音さんが持っていた回復薬で傷を癒しながら再び倍化の力を貯めて攻勢に移ったのですが、ダメージが予想以上に大きかったのか途中で倒れてしまいました。

 

それでも諦めずに立ち上がろうとする姿にライザー様も兵藤君への評価を改めていたのが印象深いですね。そして何とか立ち上がり駆けだそうとした所で部長の投了(リザイン)宣言を聞き、振り返ってそれを再度確認して悲しそうな顔をして倒れてしまいました。

 

 

次に白音さんですが、一番の評価は不可視の魔法に気付いて兵藤君を庇えた事でしょう。それ以外はまあ普通でしたね。合宿は全て部長のメニューに任せていましたが、普段の物よりも密度が低い物だったのであまり変わっていませんから。

 

 

続いてギャスパー。評価する部分はライザー様の女王(クイーン)を上手に足止めしていた所ですね。停止世界の邪眼を一瞬から数秒間だけ発動させて、その間に移動する事で高速移動の様に見せかけて相手に常に周囲を警戒させていました。中々おもしろい使い方ですね。

 

 

僕の評価はどうでも良いです。正直、今回のレーティングゲームでの目的は達成していますから。単純な戦績で言えば僕一人でほとんどの敵を仕留めていますから酷い評価にはならないと思っています。まあ酷い評価でも気にしないんですけどね。

 

 

 

 

翌日、兵藤君が目を覚ましたと報告があったので顔を見に行きます。

 

「酷い顔ですね」

 

ベッドの上にはミイラ男一歩手前の兵藤君が寝かされていました。

 

「……なあ、木場」

 

「はい」

 

「部長が投了(リザイン)したのは、オレの所為なのか?」

 

「さあ?僕は部長ではありませんからね。その場にも居ませんでしたし」

 

「お前なら、勝てたんだよな」

 

「ええ、僕はゲーム終了間際にライザー様の妹であられるレイヴェル様を含め眷属の大半を倒しています」

 

まあレイヴェル様が予想以上に打たれ弱かったのも原因なんですけどね。ライザー様ならあの結界にも耐える事が出来たでしょう。

 

「……ごめん、ちょっとだけ一人にしてくれ」

 

「分かりました。遮音結界、張っておきますから」

 

それだけを告げて部屋から退室する。おそらくは今頃泣いていると思う。その涙はどんな理由で流れているのでしょうね?ライザー様に勝てなかった自分の弱さになさなのか、それとも部長に信用されなかった情けなさなのか、それとも別の何かなのでしょうか?

兵藤君、君はこの後どんな未来を見せてくれますか?それが僕には楽しみですよ。

 

 

 

 

 

 

そしてその日の深夜に兵藤君は僕の屋敷にやってきました。

 

「木場、頼みがある。オレにライザーを倒せるだけの魔剣をくれ!!」

 

そう言って屋敷に訪れた兵藤君は土下座をしました。

 

「ええ、構わないですよ。ですが、兵藤君は何を代価に捧げてくれるのですか?」

 

「色々、本当に色々考えたんだ。合宿の初日に、露天風呂で言われたときから。自分の全てを賭けてでも成し遂げたい何かを」

 

「ええ、それで何か見つかりましたか?」

 

「ライザーに負けた時、部長は泣いていた。オレが弱かったから。オレは弱い、少し前までスケベなだけの高校生だったから。だけど、好きな人を泣かせたままでいる弱い男にはなりたくない!!これからも泣かせてしまうかもしれないけど、それでもそれを笑顔に変えてみせる!!オレは部長の笑顔を作り続けてみせる!!」

 

顔を上げた兵藤君の顔はもの凄く綺麗な顔だった。純粋でどこまでも欲望を追い求める悪魔らしく、人間らしく、男らしい顔です。

 

「だから、守る為に必要な物以外、好きなだけ持っていけ!!」

 

ですが、どこまでも顧みないのは減点ですね。

 

「それがどういう意味か分かっていますか?もう一度良く考えて下さい。前提知識として教えますが、僕は部長のことはどうでも良いと思っています。何が欲しいのか明確にしないのならライザー様倒せるギリギリの力を持つ魔剣を与えて、全てを貰っていきますよ。記憶や寿命、そう言う物も僕は徴収出来るのですよ」

 

「なら今はあの炎を、フェニックスの炎に対抗出来る力をくれ!!フェニックスを倒す力は赤龍帝の篭手でなんとかする。それの代価に相応しいのはなんだ?」

 

「そうですね。フェニックスの炎を限定にするならそこまでの対価は要らないですね。ですが2週間、僕の実験に協力してくれるのなら雷撃以外の魔法を無効化する物をあげましょう。どうします?」

 

「どんな物なんだ」

 

「銘を鎧の魔剣。鎧化(アムド)の呪文で詠唱者を包む鎧となる魔剣です。魔力を通さない金属で構成されていますが、金属故に雷撃だけは防げない物です。熱や浸水はカバーしてくれるんですが」

 

「それで十分だ」

 

「ではこれがその魔剣です。明日、結婚会場に向かうまでに慣れておいて下さい。傷の治療と送迎はサービスしておきますよ」

 

鎧の魔剣を作り出して手渡し、治療の魔剣で兵藤君を斬りつけて残っている傷を全て癒す。

 

「木場、ありがとう」

 

「気にしないで下さい。僕は君の事が気に入っているんですよ。イッセー君」

 

「ははっ、初めてだな。お前が名前で呼んでくれるの」

 

「ふふっ、そうですね。言ったでしょう、君の事が気に入っているって。その欲望に忠実なまま、何処まで駆け上がれるのか。それを僕は楽しみにしてるんですよ。歴代の赤龍帝は悲惨な末路しか辿っていません。ですが、今代の赤龍帝は規格外過ぎますからね。どうなるのか予想が出来ない。それがもの凄く楽しみなんですよ」

 

基本性能は論外な程低いのにも関わらず成長率はかなり高いですし、何より歴代の赤龍帝と違い転生悪魔になっていますからね。基本性能の脆弱さが逆に利点になった様ですね。

 

「さて、時間はまだ有りますからね。少しでもフェニックス相手に戦う為の技も教えましょう」

 

「代価に何をすれば良いんだ?」

 

「これに関しては実践でフェニックス相手に使ってもらうだけで良いですよ。自信は有りますが、そもそも効くかどうかも分からない物ですから」

 

「つまり実験して来いと」

 

「そうですね。この技の開発というかこれを思いついた理由を説明します。それを聞いて納得出来なかったら使わなくても良いです。対フェニックス用の技ですが、別にフェニックスが相手でなくても通用する技です。覚えておいて損はないでしょう。時間操作は面倒なのでさくさく行きましょう」

 

「時間操作まで出来るのかよ!?」

 

面倒だからしませんけどね。効率も悪いですし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白音さんやルゥを結婚会場に送り出した僕はイッセー君の最後の調整を始める。ボロボロの身体を治癒系の魔剣で斬りつけて癒し、疲労回復の薬と魔力回復の薬を口に流し込み、風呂に放り込んで身体を綺麗にさせている間に代価を追加で貰って用意する事になった防御術式を織り込んだ服を脱衣室に置いておき、一番良いタイミングで乱入する為に監視の術で会場を覗き見ています。

 

会場は既に招待された悪魔で一杯の様ですね。明らかに不自然に広く用意されている通路に何人かが眉を潜めてもいる様です。そして部長の眷属が居なければならない所に僕とイッセー君が居ない事で機嫌が良さそうなサーゼクス様が見えます。

 

あっ、目が合いました。気付かれた様です。

 

他に変わった物は、ライザー様の眷属が何やら深刻そうな顔をしていますね。何かあったのでしょうか?

風呂から上がって来たイッセー君は僕が用意した服を着込んで鎧の魔剣と改造した魔力貯蔵用の魔剣の二本を持って僕の隣にやって来て会場の映像を覗き込みます。

 

「イッセー君、Boostを貯め始めて下さい。限界まで貯めてから会場に乗り込みます」

 

「もう始めてる」

 

イッセー君はいつの間にか左腕に赤龍帝の篭手を装備して力を貯め始めていました。やる気は十分ですね。それにしても会場に入って来たライザー様の顔が気になりますね。何処か不満そうな顔をしています。

 

『Boost!!』

 

「貯まったぞ」

 

「では、派手に行きましょう」

 

転移の魔剣ではなく空間接続の魔剣を振り、会場の天井に空間の穴を繋げます。

 

「よっしゃあ、行くぜ!!」

 

イッセー君が迷うことなく穴に飛び込み、僕もそれに続いて穴に飛び込んで空間を塞ぎます。綺麗に床に着地すると、会場の視線が僕達に集る。

 

「部長は渡さねえ、決着を付けに来たぞライザー!!」

 

周りの事など気にもしない様にイッセー君がライザー様に向かって吼える。

 

「来ると思っていたぞ赤龍帝!!あの様な決着で、納得していないのはオレも同じだからな!!」

 

なるほど、ライザー様も不完全燃焼だったという事ですか。ライザー様はイッセー君に向かって小ビンを投げ渡し、自らも同じ小ビンの中身を浴びます。

 

「フェニックスの涙だ。これで条件は同じだ。互いに言い訳は出来ん」

 

「へっ、上等だよ」

 

完全に回復しているイッセー君もフェニックスの涙を浴びる。それを見たライザー様は2本の剣を手元に召還する。これで条件は同じになってしまいましたね。

 

「それで、貴様は何だ?」

 

ライザー様が僕を睨みつけてくる。

 

「僕はこの戦いの見届け人さ。サーゼクス様が用意した余興の邪魔をさせない為にね」

 

「余興?」

 

「それに関しては私が説明しよう」

 

奥の方からグレモリー卿とフェニックス卿、それにグレイフィア様を連れてサーゼクス様が姿を現す。

 

「私の可愛い妹の婚約パーティーを派手にしたいと思ってね。ドラゴン対フェニックス、実に面白い余興だと思いませんか?それに本人達はこの前のレーティングゲームの結果に満足していないようで、この通りやる気も十分」

 

サーゼクス様の言葉に周りで何かを言っていた人達も黙り込んでしまう。

 

「さて、ドラゴン使い君。君はこの戦いに勝ったら、何を望む?」

 

「「「サーゼクス様!?」」」

 

「悪魔なのだから当然でしょう。何かをさせるのですから。何でも良いよ、爵位かい?それとも絶世の美女?それとも使い切れない程の金銀財宝?」

 

周りの方々が驚かれていますが、当然の事でしょう。イッセー君はサーゼクス様から依頼されて戦うのだから。その中で最もサーゼクス様が楽しめる結果はイッセー君が勝つこと。つまりは正統な報酬を得る事が出来るという事ですからね。

 

「部長を、我が主であるリアス・グレモリー様を返して頂きたい」

 

「いいだろう。君が勝てば連れて行くが良い。ライザー君は何を望む?」

 

「今回使ったフェニックスの涙の代金を貰えればそれだけで十分ですよ。この戦いはオレも望んでいる事ですから」

 

その言葉で戦いが行われる事が決まった。この為に予め用意されていたであろう壁際の席以外が退けられて会場中央にスペースが作られる。スペースの中央でライザー様とイッセー君が向かい合い、ライザー様の後ろにはフェニックス家の関係者が、イッセー君の後ろにはグレモリー家の関係者が席に着き、僕は立会人としてイッセー君とライザー様の隣に立つ。

 

「ルールはどちらかが降参するか戦闘不能に陥るまで。死体が残っているなら死んでも10秒以内なら蘇生出来ますから存分にやって構いませんよ。立ち会いは僕、鍛冶師(ブラックスミス)ファングがさせて貰います」

 

魔剣のオーダーを受ける際に名乗っている偽名を告げると殆どの人が目を見開いて驚いている。分かっていないのは部長と副部長とイッセー君だけですね。僕、基本的に依頼は受けても届けるのはそれ専門の個人業者に頼んでますから顔を見せる事が有りませんでしたから。依頼の方法も専用の書類にスペックをかき込んで魔力を通すと自動で僕の工房に転移する様になってますし。サーゼクス様達魔王樣方には直々に持って来る様にと言われているので直接配達していますけど。

 

あと、偽名を名乗ったのにはもう一つ訳が有ります。今ここに居る僕はリアス・グレモリーの眷属である木場祐斗ではなく、サーゼクス・ルシファー様お抱えの鍛冶師という宣言の為です。こういった事をちゃんとしておかないと、後々面倒な事があるのが社会という物ですから。

 

「周囲への被害は僕の方で食い止めますので。思う存分、納得がいくまで戦って下さい。このコインが合図です」

 

イッセー君とライザー様に見える様にコインを見せて、それを弾き上げる。弾き上げられたコインが重力に引かれ、速度を落とした所でイッセー君とライザー様以外の魔力の高まりを感じ、実体以外を切る剣ルーンセイヴを産み出してコインを狙った部長の魔力弾を切り捨てる。

 

「なっ!?」

 

「さあ、始まりますよ。あの日の続きが」

 

会場中に聞こえる様に部長の方を向いて笑顔で宣言する。たぶん、部長に向ける今の僕の笑顔は歪んでいるでしょうね。自分でも分かります。聖職者としては最低だと思いますが、悪魔としては良いと思っている自分がいるのもまた事実ですから。

コインが床に落ちると同時に二人が動き出す。

 

「鎧化(アムド)!!」

 

イッセー君が改造した魔力貯蔵用の魔剣を背後の床に突き刺し鎧の魔剣の呪文を唱えて鎧を纏う。それは間違いではないのですがベストな答えではないんですよね。まさかあの剣をライザー様が持っているとは思っていませんでしたから。

ライザー様が2本の剣を一本の剣の様に両手で握り、イッセー君に斬り掛かる。イッセー君はそれを右肩で受け止めて

 

「があああああああ!?」

 

鎧の右肩の部分が砕けて、左肩を軽く斬られただけにしては異常な程の叫び声をあげて後ろに下がる。

 

「鎧砕きと兵士殺し、そこに居る鍛冶師(ブラックスミス)ファングの実験作の二振りだ。父上のコレクションから勝手に持ち出させてもらったが、正解だったようだな」

 

2年前程前に開発した物理的魔術的防御を無効化する鎧砕きと悪魔の駒の兵士(ポーン)を持つ者に対して聖剣で斬られたかの様なダメージを与える兵士殺しを、その性能を知る為に市場に流していたのですが、何処からもそんな噂は聞こえて来なかったので何処かで在庫になっていると思っていたのですがフェニックス卿が買われていたのですか。

 

しかもコレクションでは噂が流れないはずですね。たぶん、他の王殺し、女王殺し、騎士殺し、戦車殺し、僧侶殺しもフェニックス卿のコレクションに含まれているのでしょうね。

 

「くそ、そっちも準備してやがったのか」

 

「当たり前だ。お前なら絶対に来ると確信していたからな。準備は怠っていなかった。その鎧もオレ対策に用意したのなら効果は分かる。オレの炎を無効化する物だろう。鍛冶師(ブラックスミス)ファングはそちらに付いているのなら予想出来る」

 

「なら、これは予想出来るか!!」

 

左肩を抑えながらイッセー君がライザー様に向かって走りだす。どうやらアレを使う様ですね。出来ればまだ残して置いた方が良いんですがね。仕方ないんですよね、この状況では。

 

「何を考えている。だが、これで!!」

 

再び斬り掛かるライザー様。剣を使い慣れていないのか直撃する様な事はないでしょうが掠るだけでもダメージは大きいですからね。イッセー君の手が分からない以上、間違っていないでしょう。

 

「こいつが赤龍帝の篭手の第2の力、ブーステッド・ギア・ギフト!!」

 

倍化の力を他の物に譲渡する力。それが赤龍帝の篭手の第2の力、これによって部分部分の強化を行える様になり、そしてそれを利用した技。

 

「名付けてオーバーブレイク!!」

 

ここに来る前に貯めておいた倍化の力をライザー様の持つ2本の剣の能力に譲渡する。器である剣に収まりきれない力が溢れ、砕け散っていく。

 

「何!?」

 

「儂のコレクション!!」

 

だけど、少しだけ誤算が発生した。兵士殺しの方は灰の様に散ったのに対して、鎧砕きは砕けつつも礫となってイッセー君の鎧の魔剣を削り落としていく。

 

「ちぃ!!」

 

苦し紛れにライザー様が炎を放ち、イッセー君は前転で鎧の魔剣で残っている背中の部分でその炎を受け止めた。そしてそのまま自前の魔力と残っている倍化の力を使った魔力弾でライザー様の顔を吹き飛ばす。顔が再生する間にライザー様の服を掴み、背負い投げで床に叩き付ける。

 

「がはっ!!」

 

叩き付けられた衝撃で肺から空気が抜けて苦しそうなライザー様をさらに床に叩き付ける。イッセー君はそれを繰り返す。

派手な見た目と音はするが、ダメージはそれほどでもない投げ技の連続によって再生が行われないライザー様に確実にダメージが入っていく。

 

これがフェニックス対策に考えだした戦法です。一定以上のダメージが一度に入ると炎となって再生するフェニックスに対して、一定未満のダメージを継続して与える事で倒そうというのがこの戦法です。これが有効だと気付いたのはレーティングゲームの際の最後の結界です。あれは結界内に光力を満たし続けるという物です。それを受けてレイヴェル様はリタイヤされていますが、再生が行われた様子がありませんでした。それは光力によるダメージの入り方にあるのだろうという仮定を立てるには十分でした。

 

ゲームに例えるなら通常攻撃だとHPのバーを一気に削り落とすのに対し、あの結界のダメージの入り方はじわじわと削れていく物なのでしょう。数値に表すならパンチ1発で300削れるのに対して、結界の方は1ダメージを時間ごとに与える物だという事です。相性の関係で1ダメージを与える時間がかなり短いのでしょうけど。

 

叩き付けられながらもライザー様は全身から炎を吹き出すが、本気の時と比べると弱すぎる炎は僕が用意した防護服に全て防がれる。

 

「な、何故再生が」

 

「とっとと気絶しやがれ!!」

 

「くそが!!」

 

最後の気力を振り絞ってなのか今まで以上の炎に防護服が燃える。

 

「ぬうおぉ!!」

 

一部が燃え尽きた事で術式が壊された防護服を脱ぎ捨てて魔力貯蔵用の魔剣の傍にまでイッセー君が下がる。ライザー様はようやくまともな呼吸が出来る様になり、冷静になったのか自分を傷つけて再生する。これで圧倒的にイッセー君が不利になった。残されているカードは2枚。それで駄目ならイッセー君の負けだ。

 

「どうやったのかは分からんが、再生を封じた攻撃は褒めてやる。だが、防護服も無くなったお前の方が不利だ。決着を付けてやる」

 

「まだだぜ、オレにはまだジョーカーが残されてる。木場が立てた予想通りだ、だからあいつがオレにくれた策を使うぞ!!ドライグ、先に交わした契約通りだ、輝けぇっ、オーバーブースト!!」

 

『Welsh Dragon over booster!!』

 

その言葉と共にイッセー君が真紅のオーラに包まれる。そして、真紅のオーラの中から赤いドラゴンを模した鎧を纏ったイッセー君が飛び出して来た。そしてそのままライザー様を殴り飛ばし、止まれずに壁に激突する。殴られたライザー様は口から血を吐き、驚いている。

 

「ごはっ!!何故、そんな攻撃が」

 

「木場からこいつを借りたんだよ」

 

壁に開けた穴からイッセー君が姿を現し、左手に握っている物を見せる。

 

「じ、十字架だと!?だが、力も感じないただの玩具の、なんだ、その十字架は!?明らかに尋常じゃない力が込められているのが目に見えて分かるというのに、力を全く感じないだと!?」

 

「こいつは木場が普段から身につけている聖剣を芯にした十字架だ。あいつが研究の末に触れない限りは完全に無害にする事が出来る術式が施されてる。こいつがどれだけ恐ろしい物なのかは自ら実証済みだ。倍化の力をを使わなくても効くだろう?」

 

「馬鹿な、それではお前も、何だその左腕は」

 

ライザー様は気付いた様ですね。イッセー君の左腕は、もう人間でも悪魔でもなくなっています。禁手化に足りない力を自らの身体を捧げる事で無理矢理引き出しているのです。そのおかげで左腕はドラゴンになり、十字架なども触れる事が可能になりました。

 

「部長をお前に渡さない為なら、腕の一本や二本くれてやるよ!!」

 

実に男らしいセリフですね。リスクや後の事など考えずに目的の為に突き進む悪魔らしくもあるセリフです。ああ、美しい。絶望をものともせずに突き進む事こそが英雄(ヒーロー)の絶対不変の真実。それが□□□姿を見てみたい。

 

「くたばれや、ライザー!!」

 

「それはこちらのセリフだ!!」

 

イッセー君は再び左手で殴りながら右手に倍化の力を集中させて殴り、ライザー様はイッセー君の左の拳打を右手に魔力を集中させて防ぎながら背中の炎の翼をイッセー君に向ける。互いに死力を尽くして戦う。どちらにも余裕は残されていない。そして戦況が一気に傾く。イッセー君の禁手化が解ける。

 

それを好機と見たライザー様の蹴りが兵藤君の身体を的確に捉えた。ああ、この楽しい戦いもとうとう終幕ですか。惜しかった、本当に惜しかった。勝負は時の運と言いますが、本当にその通りですね。一手違っただけでこの勝敗は逆になっていたでしょう。残念でしたね、ライザー様(・・・・・)

 

「こいつがオレの最後のジョーカーだ!!」

 

イッセー君が蹴り飛ばされた場所は最初に魔力貯蔵用の魔剣を突き刺していた場所だった。この魔剣はとある改造を施してある。イッセー君が最後の切り札として自分のコレクションの全てを代価に支払って作った物だ。

 

「拘束術式解放」

 

パスワードによって魔剣が真の姿を曝しだす。

 

「聖剣だと!?」

 

「行けえええぇぇぇ、グランドクロス!!」

 

刀身と柄によって形成されている十字から込められていた魔力全てを光力に変換し、その進路状にあるもの全てを飲み込んでいく。その射線状には特に誰もいなかったので放っておいたのですが、やはり強力ですね。壁には綺麗な十字が刻まれ、ライザー様は床に倒れられていた。

 

グランドクロスを放った元魔剣の聖剣も粉々に砕け散り、それを杖にしていたイッセー君も倒れる。それでも二人とも意識が残っているのか全身を振るわせながらも立ち上がろうとする。全員が見守る中、先に立ち上がったのはライザー様だった。

 

「見事だよ、本当に見事だよ赤龍帝」

 

立ち上がろうとするイッセー君を見下ろしながらライザー様は呟く。

 

「……オレの負けだ」

 

そしてそのまま後ろに倒れ、完全に意識を失う。その顔は満足したのか綺麗な笑顔だった。そしてイッセー君が完全に立ち上がる。

 

「ああ、オレの勝ちだ。ライザー」

 

勝ち名乗りをあげて、こちらも同じく倒れそうになったので僕が支えると共に周りに分からない程度に回復の魔法をかけてあげます。

 

「すまん、木場」

 

「よく頑張りました、イッセー君」

 

そのまま部長の傍まで連れて行ってあげると自分の力だけで立ち、膝を付いて手を差し伸べます。

 

「部長、帰りましょう」

 

「イッセー」

 

その手を部長が握ると今度は部長の隣に居たグレモリー卿達に頭を下げる。

 

「勝手な事をして申し訳ありません。ですが、我が主を連れて帰らせてもらいます」

 

連れて帰ると言っても僕が居ないと帰れないんですけどね。まあ今回は楽しませてもらったので代価をあげても良いでしょう。

 

「イッセー君、楽しませてもらったお礼です。使い方、覚えてますね?」

 

転移の魔剣に魔力貯蔵の効果を持たせた物をイッセー君に手渡す。

 

「サンキュー、木場。それじゃあ、皆、また部室で」

 

イッセー君が転移の剣を振り、この場から去っていく。さて、僕は僕で用事を済ませましょうか。ライザー様に向かって一言告げる。

 

「起きていらっしゃるのでしょう、ライザー様」

 

「……ふん、気付いていたのか」

 

「ええ、まあ気絶していたのは確かな様ですけどね。治療、要りますか?」

 

「いらん、この程度、少し休めば治せる」

 

妹であられるレイヴェル様に支えられながらライザー様が立ち上がる。

 

「それにしても、貴様は一体何者だ?あの十字架を普段から身につけているなんて。マゾか?」

 

「いえいえ、僕は教会から追われた身とは言え、信徒ですから。日々主への祈りを捧げ、十字架を身につけ、それによって受ける苦痛は主から与えられた試練と思っています。慣れれば結構どうにかなるものですよ」

 

イッセー君が落としていった十字架を拾い上げて首に掛け、服の中に入れてみせます。

 

「悪魔らしくないとお思いでしょうが、僕の生きる道ですから。どんな環境におかれ様が、僕は主への信仰は止めませんよ。これもまた欲望の一つですから」

 

「……歪んでいるな。それも酷く。だが、欲望に忠実なのは実に悪魔らしい」

 

「お褒めに預かり恐悦至極」

 

恭しく一礼した後に鎧砕きと兵士殺しを作り出してライザー様に差し出す。

 

「フェニックス卿のコレクションだったのでしょう。イッセー君が壊した物の代わりです。壊された物よりも性能は上がっています。それから」

 

間近で見て、触れて、解析したことで産み出せる様になった新たな魔剣。フェニックスそのものと言える新たな概念の魔剣。折れようと砕けようと、炎と共に再生する魔剣。魔剣フェニックスを産み出す。

 

「これは僕の新作です。ライザー様のおかげで完成した、魔剣フェニックス」

 

「魔剣、フェニックス?」

 

「フェニックスの特性を宿した魔剣です。折れようが砕けようがフェニックスの如く蘇る魔剣です」

 

そう言って剣を叩き折り、再生する様を見せてから差し出す。

 

「今日の余興、楽しめましたよ。これはそのお礼です」

 

「ふん、受け取っておいてやろう。それから、貴様の名は?」

 

「木場祐斗。元ガブリエル様直属のエクソシスト兼鍛冶屋、今はサーゼクス・ルシファー様お抱えの鍛治師兼リアス・グレモリー様の眷属最強の騎士(ナイト)。さて、僕達も帰らせてもらいましょうか」

 

「ますたー、もう少しミリキャスさまといっしょでもいい?」

 

「構いませんよ。今日は冥界側の屋敷に居ますから、送って貰って下さい」

 

「は〜い」

 

「ありがとうございます、祐斗さん」

 

「いえ、ミリキャス様。僕の方こそルゥと遊んでもらって申し訳ないです」

 

「そんなことないです。僕の方こそ楽しいですから」

 

「そうですか。これからも遊んであげて下さい。白音さん、ギャスパー、ヴァレリーさん、帰りましょう」

 

「「「はい」」」

 

観客席の方から三人が傍にやって来たのを確認してから転移の魔剣を産み出して構える。

 

「それではいずれまた何処かで」

 

魔剣を振り下ろし、転移する。

実に楽しい一日でした。イッセー君は英雄(ヒーロー)の素質を見せつけた。決して挫けない心、周囲が手を貸したくなる魅力、敵すらも認めさせる力。まだまだ足りないけれど卵としては合格ですね。彼が新たな神話を築く事が出来るのか、それともただ歴史に埋もれるのか。楽しみですね。そして最後は□□□□□□

 

 


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