いつの間にかハイスクールD×Dの木場君?   作:ユキアン

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遅くなって申し訳ありません。
引っ越しの準備などでバタバタとしていました。
今話ではちょっとだけ予想外の人(?)達の登場です。


第20話

断罪の剣(ジャッジメント)』の設立と同時に僕が始めたのは屋敷に改築だった。冥界にあるのと人間界にあるのと両方だ。冥界の方は土地が余っているので問題無かったけど、人間界の方は普通の住宅地に建ててるから周囲に住んでいる人達と交渉して大金と、新しい住居を用意して買い取らせてもらった。

 

人間界の屋敷の改築にはドクターと覇道財閥に協力して貰い、魔術的にも強固な造りで、地下もかなり手の込んだ造りとなっている。デモンベインの格納庫の他にも研究室や特訓場、書庫に礼拝堂や大浴場等々も用意した。福利厚生はしっかりとしておかないとね。

 

屋敷の方の外観は変わっていないけど、あちこちに細かい結界式を書き込んであるのでかなり頑丈になっている。リアス・グレモリーの魔力弾程度ではびくともしないよ。サーゼクス様クラスになると罅が入りそうだけど、自動修復の術式も書き込んでいるから問題無いはず。ちなみにエネルギー源はデモンベインの『獅子の心臓』だ。人間界と冥界、二つの屋敷の術式を維持出来るなんてチートだよね。

 

内装もあまり変わりはないけど、各個室は空間に干渉して広げてある。大体20畳程の空間を自分で好きな風に弄れる様にしてある。それをこれからの事も考えて40部屋程用意し、リビングや食堂や厨房なども屋敷の広さに合わせて作ります。

 

そして最後に浄化と状態保存の結界を屋敷全体に敷いて完成です。建設期間三日、総費用が3120億9350万円ですんだのはドクターのおかげですね。ついでとばかりにデモンベインの調整も行っていってくれましたし、ドクターには感謝しても仕切れませんね。

 

 

 

 

 

「久しぶりだな。これから世話になる」

 

「やっほ~、お久しぶり」

 

夏休みに入った初日、ゼノヴィアさんと紫藤さん、それから報告にあったグリゼルダさんがやってきた。

 

「お久しぶりです、ゼノヴィアさん、紫藤さん、それから初めましてグリゼルダさん」

 

「初めまして、二人のお目付役も承りましたグリゼルダと申します。木場さんの噂は教会に所属していた頃から聞いていました」

 

「まあ、あまり良い噂ではないでしょうね。引き蘢って研究ばかりしていましたから。さて、立ち話もなんですから屋敷の方へどうぞ」

 

「「「失礼します」」」

 

荷物を持った三人をリビングに案内し、お茶とお菓子を用意してから色々と説明を始める。

 

「『断罪の剣(ジャッジメント)』の体制に付いては全員が揃ってから話そうと思っているから数日間はゆっくりと身体を休めていてね。部屋の方は最低限の家具とかは用意してるけど、足りない様なら用意するから遠慮なく言ってね。屋敷の方はこの後案内するけど、基本的に好きに使ってもらって構わないよ。それから事前に言い含められてると思うけど、出来るだけ仲良くしてね。背中を預けれる位とまでは言わないけど、背中を見せれる位にはね。僕からは以上だよ。何か質問はあるかい?」

 

「はいは~い、ミカエル様達から武器は貰う様にって言われてるんだけど」

 

「ゼノヴィアさんと紫藤さんの分は用意してありますよ。殆ど能力の変わらない破壊と擬態の名剣です。破壊の方はデザインが変わっていますがこちらの方が本来の姿ですので慣れて下さい」

 

形状が刀になった破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)を二人に手渡す。

 

「グリゼルダさんはどうします?生憎と僕がすぐに用意出来るのは剣か、ちょっとした銃か符位ですが」

 

「そうですね。私は基本的に後衛向きで盾役をこなす事もありますので、出来れば符などを拝見させてもらいたいのですが。あとは、二人から木場さんは特殊な術を使ったりすると聞いていますのでそちらの手ほどきを受けたいのですが」

 

「構いませんよ。今までまとめた研究資料などもありますから参考にして下さい。案内しますよ」

 

グリゼルダさんを地下の研究室に案内するために立ち上がると、二人も少し気になるのか一緒に付いて来た。

 

「ここが共同で使う事になる研究室です。触媒や資材は好きに使っても構いませんが何をどれだけ使ったなどはキチンと記録を取っておいて下さい。無くなるたびに補充しますから。棚に研究資料の方は屋敷からの持ち出しは出来ない様に細工をしてありますから注意して下さい」

 

「何故ですか?」

 

「長期間保管出来て破損し辛い物で作ってありますから貴重品なんです。中の記録は僕の暇つぶしで行ってきた事ばかりですので、何か別の紙に書き出して持ち出すのは構いません」

 

「……やっぱり変わってますよね」

 

「昔からです。それが原因で教会を逐われたのですが、あまり治そうとも思っていませんからね。そうそう、これが件の対堕天使用の術式の基礎理論が納められているファイルですね。それからこっちが対天使用の術式の基礎理論です。これから必要になってくるでしょうから早めに読んでおいた方が良いですよ」

 

「いえいえいえ、可能性の問題だけで追放された対天使用の術式なんて、とてもじゃないですけど使えませんよ!?」

 

「どうせ転生天使を作るトランプも禍の団に流れるでしょうから必要になってきますから読んでおいて下さい。使える物は何でも使わないと周囲を巻き込んでしまうかもしれませんからね」

 

「ですが」

 

「最低でも対堕天使用は読んでおいて下さい。対天使用も根っこの部分は同じですから、戦場で必要になった際にすぐに構築出来る様にしておいてください。僕達『断罪の剣(ジャッジメント)』はあらゆる勢力と敵対する可能性があるのですから」

 

「分かってはいましたが、改めて言われるとやっぱり辛いですね」

 

「それでも僕は逃げずに戦いますよ。僕が戦う事によって誰かを救えるのなら」

 

「……そうですね。確かにそれは素晴らしい事ですよね」

 

納得してくれたのかグリゼルダさんは2冊のファイルを受け取ってくれました。地下に来たのですからついでに案内してしまいましょう。どんどん地下に向かいながら案内して行き、格納庫でデモンベインを見せた後に立ち入り禁止区画の入り口まで案内する。

 

「ここからは僕とルゥ以外は立ち入り禁止区画だからね。入ったら死ぬより酷い目に会うから」

 

まあ普通の人は言わなくても近づかないけどね。現に三人とも立ち入り禁止区画に降りるための階段を見た途端、バックステップで距離を取ったから。

 

「この奥では、この世で上から数えた方が早い位の危険で凶悪な物を取り扱ってるから気をつけてね。この前捕虜にしたカテレアもこれを使って心をボロボロにして情報を引き出したりして、そのまま楽にしてあげる位だったから」

 

「近づかないわよ!!というか、なんでそんな平気な顔してるのよ」

 

紫藤さんが怒鳴っていますが仕方ないのでスルーします。

 

「僕は慣れてしまったからね。それでも気を抜くと一瞬で魂を喰い散らかされるけどね」

 

このままではまともに話も出来ないだろうと最後の施設に案内する。向かうのは訓練場だ。何も無い広いだけの空間をレーティングゲームの会場を作る技術を使って好きな空間を用意出来る場所だ。先程通りかかったときは白音さん達がページモンスター相手に戦っていたのでスルーしたのだ。そろそろ終わった頃だろうと紹介も兼ねて向かっている。

 

「白音さん」

 

ちょうどページモンスターを倒し終わった所なのか、白音さん達三人が呼吸を整えていました。

 

「あっ、イリナおねえちゃんとゼノヴィアおねえちゃんだ」

 

一番最初にルゥが気付き紫藤さん達に飛びつく。

 

「祐斗さん。そちらの方達は、もしかして」

 

「はい。彼女達は天界側から派遣された『断罪の剣(ジャッジメント)』の一員です。今日から一緒に暮らす事になります」

 

「そうですか。あの、そちらのお二人はコカビエルの時に派遣されてきたエクソシストの方ですか?」

 

「ああ、そうだ。そう言えばあの時校庭に居た一人か。ケルベロスごときに手こずっていたようだが、そんなのでこれから大丈夫なのか?」

 

「あれは部長を庇って出来た物です。自分でやると言っておいてピンチになっていたからキャスリングで庇ったんです。直撃だったのでちょっと防御を抜かれて足をやられてしまって、エクソシストの使う光剣も威力が大きかったので傷を負いすぎましたけどアレ位なら問題無いです」

 

「あれは部長のミスですよ。僕は彼女とは一番長い付き合いですが、普段の彼女ならまったく問題ありませんよ」

 

「そうか。なら、明日にでも手合わせを願おうか」

 

「望む所です」

 

「殺さない様にだけは気をつけて下さいよ。怪我ならいくらでも治しますから。死んでも10秒以内なら簡単に蘇生も出来るので。あっ、でも頭がトマトを潰したみたいになってると蘇生出来ないので頭だけは、正確に言うと脳だけは死んでも守って下さいよ」

 

「首を切り落とされたり、心臓を潰されたりするのは大丈夫なの?」

 

「酸素供給が無くなって1分程で脳へのダメージが確定になりますから、その1分以内に間に合う様に身体を修復するために必要なのが最大で45秒程なので10秒以内に駆けつけれれば後遺症もなく蘇生出来ます。まああまりにバラバラにされるとパズルを解くみたいにしないといけないので、できるだけ綺麗な死体の方が良いんですけどね」

 

時間操作も含めればもう少し猶予はあるでしょうが、代価無しではそこまでしたくはないですね。数日は戦えない位に消耗しますし。戦闘ならともかく、訓練でそんなことはしたくないです。

 

 

 

 

 

 

翌日、白音さんとゼノヴィアさんの模擬戦は調子に乗りすぎて白音さんを殺しかけた所をグリゼルダさんが背後から殴り飛ばして無効試合になりました。結果はあれでしたが、それでも二人の間に変なしこりは残ってはいないので良いでしょう。それにこの一件で仲が良くなったのでマイナスどころかプラスですね。

 

二人の治療を終えてから昼食にうどんを打っている時にアザゼル様から連絡が入りました。

 

「どうかしましたか?」

 

『ようやく人員の選定が終わってな。これからそっちに向かうんだが、受け入れの方は大丈夫か?』

 

「問題無いですよ。ですが、予定よりも早かったですね」

 

『最終手段を使ったからな。それより、三十分程でそっちに着くからな』

 

「分かりました」

 

さてと、四人分追加で打ちますか。本当は一晩寝かせる所ですが、そこは時間操作で省略です。具の天麩羅は揚げる準備だけしておけば良いですね。あとは、『断罪の剣(ジャッジメント)』の体制などの説明を行いますから、皆さんを呼んでおきましょう。

 

昼食前ということで皆さんはすぐに集られ、コーヒーと紅茶とクッキーを用意して雑談をしながら待っていると結界に堕天使が3人触れたみたいなので不思議に思った。まあそれはアザゼル様に直接聞けば良いでしょう。

 

呼び鈴が鳴らされたのでルゥと一緒に出迎えに向かう。玄関ホールまで出向き、魔法で扉を開く。

 

「ようこそ、アザゼル様。後ろの二人が……」

 

「どうかしたか?」

 

アザゼル様の後ろに控えているのは二人の女性で力はかなり弱いみたいですね。一人は白音さん位の背丈でゴシックドレスを身に纏っています。もう一人で見た目は十分美人で腰まである黒髪が特徴的なのですが、問題なのは眠っている才能の貴重さです。

 

「ルゥ」

 

「うん、久郎お兄ちゃんよりすこしひくいぐらい。属性は風?」

 

見事に教授が捜している人材ですね。偶然とは言え運が良い。

 

「なんだ、さっきからレイナーレをじっと見つめて?さては惚れたか?」

 

「いえいえ、僕の師の一人が求めている才能を有しているみたいでしたから驚いているだけですよ」

 

「私に才能が?」

 

「ええ。それに関しては後で話しましょう。とりあえずは中へ」

 

三人を連れてリビングに戻ると先程と席が替わっていました。入って左手にグリゼルダさん達が、右手に白音さん達、奥に僕とルゥの席があり、手前にイスが4つ置かれている。それを見て各々が自分の席に着いた所で話し始める。

 

「改めてだけど、ようこそ『断罪の剣(ジャッジメント)』へ。僕は君たちを歓迎するよ。まず最初に確認しておきたいんだけどアザゼル様、後ろの二人が『断罪の剣(ジャッジメント)』に派遣する事になった者ですか?」

 

「おうよ。小さい方がミッテルトでもう一人の方がレイナーレだ。それに加えてオレ自身も『断罪の剣(ジャッジメント)』に加入する。これからよろしく頼むわ」

 

その言葉に全員が驚く。というか、堕天使の二人も驚いている。

 

「確認しておきますが『断罪の剣(ジャッジメント)』に加入する以上、意図的に内部の情報を流せばカテレアの二の舞にしますよ。それを分かっている上での発言ですか?」

 

「当たり前だ。引き継ぎも済ませてある。というか、引退するほか道が無かったんだよ」

 

「ああ、なるほど。依然と比べるとどうなっていますか?」

 

「そうだな、とりあえずは我慢弱くなったな。すぐに頭に血が上って当たり散らしそうになってる。あと地味に光力が弱くなってる」

 

「寝ている時に魘されたり、幻視や幻聴や幻痛は?」

 

「たまに幻聴が聞こえるな。まあ何を言われてるのかはさっぱりだけどな」

 

「汚染の初期段階です。治療出来るかは不明ですが、組織の上に立つのは辞めておいた方が懸命ですね。とりあえず専門家の方に連絡を入れておきますから」

 

「専門家なんて居るのかよ?」

 

「居ますよ。邪神ハンターでミスカトニック大学の教授をやってるラバン・シュリュズベリィ教授です。僕の師の一人ですね。まあ治療出来るかは不明ですけど」

 

「期待せずに待っておくわ」

 

「ええ。さて、では改めて『断罪の剣(ジャッジメント)』の体制に付いての話を始めます。『断罪の剣(ジャッジメント)』は三勢力間での平和状況を維持するために設立された独立部隊です。目下の所、戦う相手は『禍の団(カオス・ブリゲード)』と呼ばれるテロリスト集団ですね。

 

それから基本的に誰からの命令も受けずに行動出来ますが、要請を受けて行動するのが基本になります。設立されたばかりなので古株の皆さんからは基本舐められてるので、それをなんとかするためにサーゼクス・ルシファー様の要請を受けて近々行われる若手上級悪魔のレーティングゲームの大会に参加する事になりました」

 

「それは私達が参加しても大丈夫なのですか?」

 

グリゼルダさんが質問をしてくる。それに関する答えはちゃんと確認してあります。

 

「転生天使と転生堕天使を作るトランプは悪魔の駒と性質が違うだけで性能は同じなので参加は可能、むしろそれを確認するために参加しろとアジュカ・ベルゼブブ様からも要請が来ていますので問題ありません。

 

話が反れましたが基本的には自分たちを鍛えながら何か事件が起これば急行して解決するのが仕事となります。拠点はこの屋敷と冥界の僕の領地となります。立ち入り禁止区域と他人のプライベートルーム以外は好きに使ってもらって構いません。それから給与明細はこんな感じで残業手当と危険手当てはでません。危険なのは最初から確定していますし、治療費に関しては経費と名ばかりに僕の基本給与の中に紛れているので」

 

皆に給与明細を配ってみると声に出さないまでも驚いているみたいですね。そんなに多かったですかね?白音さん達は領地をグレモリー家に返還していますからその分の補填を加えていて、それを基準にしてするんですが。まあ『断罪の剣(ジャッジメント)』の経費の一部は僕の懐から出ていますから問題無いでしょう。組織のトップも僕ですし、誰も文句は言って来ないので良いでしょう。もちろん経費の削減はしていますよ。僕は大抵の怪我を治せますから僕が治療してあげれば良いだけですからね。

 

「それから保険の方は各種取り揃えてありますから個々人で入って下さいね」

 

グレモリー家に居た時の物を参考に安くて保証は手堅くしてあります。お金だけはありますから。収入も凄いですしね。

 

「ついでに覇道財閥系列での買い物の際には3割引になる様に臨時総帥に直接交渉してありますので」

 

血の怪異の時に出来た貸し借りやその後にチラシを渡したりしてそこそこの縁がありますから対価の一部として3割引を勝ち取ってきました。貴重品であるフェニックスの涙を2個も取られてしまいましたが必要経費と割り切りましょう。まだ20個程残ってますから。

 

「最後に、希望する魔剣、聖剣、名剣を年間で20本支給します。申請書類はこちらです」

 

普通の依頼書よりも更に詳細な設定を依頼出来る様にしてあるそれを一人20枚ずつ

配る。

 

「なんだこの高待遇は?悪魔はこれが普通なのか?」

 

「いえ、グレモリー家に居た時よりももの凄く良いです。」

 

アザゼルさんが疑問を呟き、白音さんがそれに答えます。

 

「組織の性質上、強者との殺し合いが基本になりますからこれ位の待遇は普通だと思うんですけど。予算上も問題無いですし」

 

僕の眷属が全て揃ったとしても大丈夫な様に予算は組んでありますから、現状は余っている位です。

 

「待遇の方は以上ですが、設立されたばかりの組織の上に小規模ですので細々と変更して行くでしょう。何かあれば相談に応じますので、いつでもどうぞ。何か質問はありますか?」

 

しばらく待っても誰も動かないので次に移る。

 

「では、いよいよ契約と移りましょうか」

 

テーブルの上に悪魔の駒と転生天使を作るトランプと転生堕天使を作るトランプを置く。悪魔の駒が入っているケースから変異の駒(ミューテーション・ピース)である僧侶2個をギャスパーとヴァレリーさんに、普通の戦車1個を白音さんに、転生天使を作るトランプの内、Aを紫藤さんに、7をゼノヴィアさんに、Jをグリゼルダさんに、転生堕天使を作るトランプの内、3をミッテルトさんに渡した所で一度区切る。

 

「さて、レイナーレさん。先程伝えた貴方の才能についての話です。貴女のその才能を開花させれば、貴方は断罪の剣(ジャッジメント)で2番目に強い存在になれます」

 

「私が、2番!?」

 

「ええ。ですが、その才能を開花させれるかどうかは貴女次第になります。才能が有っても挫折した者も何人も居る、そんな修行に貴女は挑戦してみようと思いますか?」

 

「……少し、考えさせて下さい」

 

「ええ、もちろんです。挫折から立ち直れる人の方が少ないですから。よく考えて下さい」

 

「分かりました」

 

「最後にアザゼルさん、保留です」

 

「おいおいそりゃあねえだろう」

 

「一応冥界側と天界側の意見も聞いておかないと面倒になりますからね。それまでは保留です。それでも一応身内として扱いますので」

 

「まあそうなるか。分かったよ」

 

理解してくれたようで何よりです。悪魔の駒とトランプを配り終わり、アザゼルさんとレイナーレさん以外がそれを体内に入れる。グリゼルダさん達が転生し、全員とパスが繋がるのを感じる。

 

「これは?」

 

「どうかしましたか、白音さん?」

 

「ギャスパー君達はどうですか?」

 

「白音ちゃんもですか?」

 

「なんだ、何が起こってるんだ?」

 

白音さん達が困惑しながらも答えてくれたのは予想外の言葉でした。

 

「部長とのパスが切れたみたいなんです。ですが、部長の悪魔の駒の力自体は残っているみたいで」

 

アジュカ様が用意した隠し機能が発動でもしたのでしょうか?連絡しておきましょう。しかし、パスが切れたと言う事はグレモリーの魔法陣での転移が出来なくなってしまったと言う事ですね。お得意様の所には新しく僕の魔法陣が書かれたチラシを配る必要がありますね。

 

ちなみに僕の魔法陣は幾何学式的な物ではなく紋章的な物で本の表紙に歯車と剣で作った十字架が描かれた物です。僕を表すのにぴったりな紋章です。

 

「パスに関してはアジュカ様に問い合わせておきます。他に異変はありますか?」

 

「いえ、ただ祐斗さんの駒の力が強いのか若干感覚が鋭くなっている気がします」

 

「そうですか。では、数日の間は大人しくしていて下さいね。何か異常があるかもしれませんから」

 

「「「はい」」」

 

「他の皆さんはどうです?」

 

他に異常がある人が居ないかを確認してみます。

 

「問題は無いと思うぞ。とは言っても自分では分からないだけかもしれないが」

 

「強くなってるのは分かるんだけどね」

 

「私もそうですね。今の所は大丈夫だと思います」

 

「なんかめちゃくちゃ強くなってる気がするんっすけど、大丈夫ですよね?」

 

「ミッテルトさんは、こう言っては悪いですが元が弱過ぎた所為ですね。他人から見れば上がり幅は他の人と変わっていませんから大丈夫なはずです」

 

「それはそれでへこむんっすけど」

 

「これから頑張って鍛えて下さい。僕の剣をちゃんと注文すれば大丈夫ですから」

 

「うぃ〜っす」

 

「それでは3日程は身体の確認を行っていて下さい。皆さん無理だけはしないでいて下さいね。アザゼルさん達は食事の後に屋敷の案内をしますので」

 

「おう、悪いな」

 

「気にしないで下さい。基本的に朝食と夕食は僕が作ってますから。休みの日には昼食を作る事もありますので。ああ、キッチンの冷蔵庫の中身は好きに消費してくれて構いませんから。ただ、大量に何かを消費したらメモで構いませんから残しておいて下さいね。それから特売に付き合ってもらう事もありますがご了承ください」

 

「なんか急に所帯染みた言葉が出て来たな。特売とか」

 

「えっ?普通じゃないですか。安くて良い物を求めるのは」

 

イスから立ち上がり、収納の魔法陣から三毛猫のアップリケが付いたエプロンを取り出してキッチンに向かいます。

 

「お昼は天麩羅うどんですけど、アレルギーとかは大丈夫ですね?」

 

「あっ、手伝いますね」

 

グリゼルダさんが立ち上がり一緒にキッチンまで付いてきます。グリゼルダさんにうどんの方を任せて、用意しておいた天麩羅をどんどんと揚げていきます。それを大皿に山の様に盛り上げて持っていきます。うどんの方は各個人用のどんぶりに入れて持っていきます。まあ白音さんの分だけが特大サイズなだけで他の人の分は通常サイズなんですけどね。

 

天界側の三人と廊下で祈りを済ませてからテーブルに着いて食事を始めます。むっ、うどんが少々茹だり過ぎていますね。まあ僕の好みが固めなだけですから問題無いのでしょう。皆さんおいしそうに食べてますから。天麩羅の方はどんどんと減っていきますが、皆さんの個性がよく出ていますね。

 

白音さんとゼノヴィアさんはうどんの汁に少しだけ浸けて、紫藤さんとレイナーレさんとミッテルトさんはどっぷりと浸けて食べています。グリゼルダさんはあまり脂っこい物が駄目なのか天麩羅に箸を伸ばさずにいます。意外なのがアザゼルさんです。小皿に塩を盛って、それに付けて食べています。ちなみに僕とルゥは小食なのでうどんだけで精一杯です。

 

昼食が終わってから片付けを任せてアザゼルさん達に屋敷の中を案内します。デモンベインを紹介した時のアザゼルさんの興奮は激しい物でしたが、一応魔導書関係の代物だと言う事を理解しているのか遠巻きに見るだけで済ませてくれました。そして最後に立ち入り禁止区画に案内したのですが、アザゼルさんとミッテルトさんはゼノヴィアさん達と同様にバックステップで距離を離しましたが、レイナーレさんは眉を顰めるだけです。

 

「おい、まさかこの先にあるのは」

 

アザゼルさんはこの先にある物が何なのか気付いたようですね。

 

「ご想像の通りですよ。ですからこの先は立ち入り禁止なんです。わざと結界を緩めて危険だと分かりやすい様にしているんです」

 

「ちっ、まさか本当にあの時の物が最低クラスだったとはな。いや待て」

 

アザゼルさんは一度レイナーレさんの方を見て、ミッテルトさんと見比べてそれに気付きます。

 

「レイナーレの才能ってのはまさか」

 

「ええ、その通りですよ。それも僕以上の、最高クラスの才能を有しています」

 

「そこまでかよ。おいレイナーレ、修行を受けてきた方がお前のためになるぞ。こいつが言った2番目になれるってのは嘘でも何でもねえ。全て事実だ。潰れる可能性は会っても、このまま燻るよりはマシな人生を送れるぞ」

 

「アザゼルさん、こういうのは本人の意思を尊重しないといけません。特に力ある魔導書に関わるのならね」

 

「確かにそうかもしれんが、レイナーレとミッテルトの力は大体予想が付いてるだろう?いくら魔剣で強化しても上級の中堅位にしか成れない。相手には最上級がごろごろ来る可能性がある以上はリスクを承知で手を出す方が長生き出来る」

 

「ですが、綺麗に死ねるだけ幸せかもしれません。もう僕もアザゼルさんも、まともな死が訪れる事は無いんですから」

 

「死んだ後の事なんか気にするかよ」

 

無知と言うのは悲しい事ですね。甘く見過ぎたのがアザゼル様の失敗です。まあそれも仕方ないのですがね。

 

「レイナーレさん、貴女が力を望むのならそこの線を踏み越えて下さい」

 

「結界を踏み越えろ、か。オレには無理だな」

 

「殆どの人が無理ですよ。それが資格なのですから」

 

「一つだけ聞かせて下さい」

 

「僕に答えられるなら」

 

「踏み越えれば、私は変われますか?」

 

「変わってしまうのがこちらの業界です。変わらないのは生まれながらの狂人のみです」

 

レイナーレさんは少しだけ考えてから言葉を紡ぎました。

 

「……ミッテルト、今までの私の事を覚えていて頂戴ね」

 

「お姉様」

 

「私は変わりたい。だけど根本が歪んだのなら、私が私でなくなるのならその時は私を消して。その判断は貴女に任せるわ、ミッテルト」

 

そう言ってレイナーレさんは結界を踏み越えて来ました。

 

「ようこそ、この世の邪悪が蔓延る世界へ。僕は貴女を歓迎しますよ」

 

転生堕天使を作るトランプのQを差し出す。それを受け取ったレイナーレさんは自分の胸に差し込み、僕との間に深いパスが産まれる。これで多少は気休めになるでしょう。

 

「では、早速ですが貴女の師となる人を紹介しに行きましょうか。しばらくの間はその人の元で生活する事になるでしょう。頑張って生き延びて下さい」

 

アザゼルさん達に、屋敷の案内はここで終了だと伝えて個室の鍵を渡し、レイナーレさんを連れてミスカトニック大学まで転移し、ラバン・シュリュズベリィ教授にレイナーレさんを預ける事に成功しました。

 

その後、覇道財閥の方にレイナーレさんの面倒を頼み、念のために魔導探偵に事情の説明と気が向いた時で良いのでフォローをお願いしておきました。

 

レイナーレさんと再び出会える事を信じて僕は冥界に転移します。面倒ですけど、色々と調整が必要になりましたからね。ああ、忙しい忙しい。タイムセールがある夕方までには帰りたいですね。一応、グリゼルダさんに伝えてあるので大丈夫だとは思いますが、やっぱり自分の目で見て商品を買いたいですからね。

 

 


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