いつの間にかハイスクールD×Dの木場君?   作:ユキアン

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いやぁ〜、今回はかなりの難産でした。
白音さんの行動があらぬ方向に走ってしまい、三回程書き直しを行ったりしました。
それでもなんとか当初のプロット通りの方向に持って行けました。


第25話

「さて、今日集ってもらったのは皆さんの力を借りる必要が出て来たからです」

 

「オレ達の力を借りる?過剰戦力だったんじゃないのか?」

 

アザゼルさんが首を傾げながら聞いてきました。

 

「確かに僕とルゥだけで過剰戦力です。ですが、僕とルゥでは2箇所までしか同時に処理出来ないんですよ」

 

「つまり、複数の拠点を攻めるのか」

 

「いえ、『禍の団』の次の行動を起こす日は分かったのですが、どこを襲うのかが絞りきれていないんです。ですので、確率の高い順に戦力を割り振って対処します」

 

「大丈夫なのか?」

 

「大丈夫です。絞りきれていないと言っても本命と次点ともしかしたらあるかもしれないのと、大穴です。まず、本命には僕とアザゼルさんそれから白音さんです」

 

「あいよ」

 

「……分かりました」

 

まあ、この本命が正解ですけど目撃者は少ない方が良いですからね。

白音さんは何かを覚悟した顔で返事をしてくれました。どうか、僕の手にかかる様な答えは出さないで下さいね。

 

「次点の場所、ルゥとヴァレリーさんと紫藤さん。指揮はヴァレリーさんが取って下さい。ルゥ、あまりやりすぎない様に。力を解放するときはヴァレリーさん達を逃がしてからですよ。ヴァレリーさんと紫藤さんも危ないと思ったら全力で逃げて下さいよ」

 

「「は~い」」

 

「分かりました」

 

「もしかしたらあるかもしれない場所、グリゼルダさんとゼノヴィアさんとギャスパー。指揮はグリゼルダさんに任せます。たぶん、大丈夫でしょうけど一応気をつけて下さいね」

 

「お任せください」

 

「任せておけ」

 

「頑張ります」

 

「最後、大穴はミッテルトさん」

 

「うええええぇぇぇ!?なんで一番弱いウチが一人なんすか!?」

 

「とりあえず、昨日までの修行結果からミッテルトさんの運用方法を決定しましたから。この後、研究室まで来て下さいね。色々とミッテルトさんには覚えてもらう必要がありますから」

 

「危なくないっすか?」

 

「危険は少ないですね」

 

「とりあえずやれるだけやってみます」

 

「はい、頑張って下さい」

 

「それで、編成が終わったみたいだが何時頃テロリストが来るんだ?」

 

「明日」

 

「はあああああああ!?なんでそんな急に言うんだよ!!」

 

「候補を絞るのにギリギリまで待っていましたからね。拠点の奇襲を繰り返していた所為で奴らの行動パターンが変化してきたんですよ。やれやれ、殺りすぎましたね」

 

「全部お前の所為じゃねえかよ!!」

 

首を振る僕にアザゼルさんからツッコミとハリセンが飛んで来ます。連絡事項は済んだので解散してミッテルトさんを研究室に連れて行きます。とりあえずイスを勧めてから話を始める。

 

「正直に話しますが、ミッテルトさんは僕が望む戦力のラインに達するまで時間がかかり過ぎます。ですので逆にその弱さを利用させてもらいます」

 

「弱いのを利用っすか?」

 

「ミッテルトさんが弱いのは力の総量が少ないからです。逆に言えば隠れる際に簡単に隠れれると言う事です。なのでミッテルトさんには隠密系統の魔剣を特別に支給します。持っているだけで存在感が薄くなる物と、魔力を通している限り周囲の気配に溶け込む物と、魔力を通している限り景色を歪めて姿を見えない様にする物です」

 

最小サイズの三本の魔剣を作ってそれをミッテルトさんに渡します。

 

「つまり、奇襲要員っすか?」

 

「いいえ、違います。ミッテルトさんには結界士になってもらいます」

 

「結界士?」

 

「その名の通り結界のスペシャリストです」

 

「でも、結界なんてそれほど役に立つもんじゃないでしょ?」

 

「それは悪魔や天使、堕天使が結界に関しての研究を怠っているからです。僕から言わせてもらえばあんな物は結界の初歩の初歩の初歩です。結界の基本を抑えれていませんから」

 

「結界の基本ですか?」

 

「そうです。結界の基本、そこに結界があると感じさせない。これが全く出来ていません。少しでも力を感じれる者なら誰でも気付いてしまいます。それに隔離結界ばかりでほとんど発展もしていませんしね」

 

「えっ、結界ってそういうもんじゃないんすか?」

 

「違いますね。隔離結界は初歩の初歩の結界ですサイズや強度にもよりますけどね。初歩には浄化結界が来ます。中級には防御結界、増幅結界辺りですね。そして上級は攻性結界と反転結界、最上級は結界同士を組み合わせて作り上げる工房です。例外も幾つかありますが、何かの儀式を行う為に特殊な空間を用意する為に使う結界とかですね。ミッテルトさんには1年以内に最低でも攻性結界まで完璧に取得してもらいます。これがその教材です」

 

広辞苑並の厚さの本を棚から取り出してミッテルトさんに手渡します。

 

「なんすか、これ?」

 

「『下級でも使える結界全集』です。僕が執筆している魔術書です。冥界の書店でも購入出来ますが、あまり売れてないんですよね。攻性結界まで使える様になれば下級の子供でもケルベロス位簡単に処理出来るんですけどね。増幅結界の回復系だって悪魔でも恩恵が受けられる様に調整してるんですけど知られていないのか売れないんです。これに関しては大赤字を出しているので黒字になる様にミッテルトさんに結界で活躍してもらおうなんて全く思っていませんから」

 

「いやいやいや、明らかに思ってるでしょう!?」

 

「赤字は気にしませんよ。魔剣販売で、最近は天界の方でもやってるんで聖剣販売もですが、とにかくお金には困っていませんから。あまり溜め込みすぎるのも経済に悪影響を及ぼすので使わないといけないので赤字は気にしていませんよ」

 

「つまり赤字以外は気にしていると」

 

「まあ、これでも研究者の端くれですから」

 

「ダウトっす」

 

「失礼な。その結界全集の八割は僕が新規製造した結界ですよ。とにかく自分の研究成果が認められないと言うのは結構くるものなんですよ。性能は僕が自分自身で試していますから」

 

「いや、まあ、分からないでも無いっすけど、どれだけ効くんっすか?」

 

「攻性結界の中で中級位の結界で上級が抜け出せずに死ぬ位ですね」

 

「えっ?それってウチでもやれるんっすか?」

 

「出来ます。基本的に空気中と地脈に流れる力を使って発動する結界ですので、結界を書く時に多少の魔力を使う以外は一切の魔力を使いません。その分結界が大型で複雑になっています。その運用方法を新しく開発したりもしていますからこちらの本も読んで下さいね」

 

『下級でも使える結界全集』の半分位の厚さの本を渡す。タイトルは『実戦で使える結界運用・基礎編』だ。応用編は現在執筆中です。

 

「つまりウチは今の所は嫌がらせ要員でおk?」

 

「そうなります。今の所は。まあ、回避能力と体力を付ける為に今の訓練も並行して続けないと命が簡単に無くなりますね」

 

「うぅ、やっぱりアレは続けるんっすね」

 

「死んでも良いのならやらなくても良いですけど」

 

「やらせていただきます」

 

「頑張って下さい」

 

「はぁ〜、やる事が多いっすね。まあ、あのまま下っ端をやってるよりは断然良いんすけど」

 

二冊の本を持って立ち去るミッテルトさんを見送ってから、明日の準備を始める。体内の聖剣を抜き出して新たに魔剣を埋め込んでいき、稼働するかを確認する。問題はなさそうですね。最後に、理論しか完成していない術式を搭載した二本の魔剣を体内の無限の剣製に近い位置に埋め込む。これが上手く稼働してくれなければ明日が僕の命日ですかね。一応、十字架を普通の物に変えておきましょう。後は神頼みですね。死なない事を祈っておきましょう。ああ、念のために遺言状も書いておきましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、冥界のグレモリー領の外れにある高級ホテルの屋上に僕は居る。白音さんはホテルの入り口付近に、アザゼルさんはパーティ会場で警備を頼んでいる。サーゼクス様には話を通してあるのでアザゼルさんを中に配置するのは簡単だった。

 

先程、竜王のタンニーンの背中にイッセー君が乗っていたのが見えた。遠目からだったけど、かなり成長したみたいだ。あの成長率は羨ましい。僕はほぼ完成しきってしまっているから、後は魔剣や聖剣の性能を上げて機械的な強化しか出来ないからね。

 

そんな事を考えながらしばらく待っていると、僕の感知結界を操作された感覚がした。どうやら来たみたいですね。体内の魔剣に魔力を充填しながら待っていると、白音さんが森に向かって移動を始める。屋上から飛び降りて着地する間に白音さんの気配が結界に遮られる。見たことのない結界ですね。これが仙術の結界ですか。この目で見れたのは幸運です。体内の魔剣の術式を少し書き換える。これで生存率がかなり上がりました。そして、辿り着いた結界に対結界用の魔剣で切り裂いて中に入る。

 

「あちゃ〜、やっぱり抜かれちゃったにゃ〜」

 

白音さんと対峙する様に黒い着物を着崩している女性が僕を見ながらやれやれといった風に首を振る。

 

「ヴァーリチームの黒歌ですか」

 

「そこまで知ってるなんて反則臭い諜報能力にゃ。それで、私に何か用?」

 

「知っているでしょう、僕達は三勢力の平和維持の為に力を振るうと。討伐対象に含まれていないとでも?」

 

聖剣を両手に産み出して構える。

 

「祐斗さん、少しだけ待って下さい。話がしたいんです」

 

「……逃げられない様に結界を張らせてもらいます」

 

仙術での結界の内側に聖剣を楔にした結界を張り直す。これで逃げられる事は無い。

 

「良いですよ。少しと言わず、納得出来るまで。僕はそこで隠れている猿の相手をしますから」

 

「ばれてたのか。今日はヴァーリを半殺しにした時の姿じゃないようだな」

 

「あの姿はあまり取りたくないのですよ。それに今日はあの姿にも成れませんし、鬼戒神も呼び出せないのでね。今日の僕が基本ですから。それから白音さんの話が終わるまで、存分にやりあってあげますよ」

 

孫悟空である美猴と共に空へと駆け上がる。どうやら二人の話し合いを邪魔するつもりは無いようですね。さて、十八番の持久戦と行きますか。

 

 

 

 

side 塔城白音

 

 

祐斗さんと新しく現れた男の人が空で戦っている。目の前にはお姉ちゃんが、SS級のはぐれ悪魔で私達『断罪の剣』のターゲットに入ってしまっている黒歌お姉ちゃんが居る。力に溺れて主を殺して、私を置いて何処かへ行ってしまったお姉ちゃん。目の前に居るお姉ちゃんを見て、力に溺れて主を殺したんじゃないのは分かる。祐斗さんに紹介して貰った情報屋に頼んで、お姉ちゃんの事やお姉ちゃんが殺した主の事などを調べてもらい、その情報を元に導きだされた答えは私を守る為にお姉ちゃんが主を殺したと言う事。だけど、それならなんで

 

「お姉ちゃん、どうして私を置いていったんですか」

 

自然と涙が零れる。私を守る為ならどうして置いていったんですか。私が急に涙を流した事にお姉ちゃんが動揺する。

 

「お姉ちゃんが居なくなって、私は、悪魔に追われて、私達が拾われる前の生活よりも辛くて、痛いことがあって。理解出来ない悪意をぶつけられて、必死に逃げて、本当にもう駄目だと思った時に、たまたま祐斗さんに出会えたから私は今ここに居るんです」

 

涙を拭い、まっすぐにお姉ちゃんを見据える。

 

「本当に偶然が重なった結果なんです。当時はまだ人間ではぐれエクソシストだった祐斗さんがたまたま私が力つきた場所に居てくれたから。あの屋敷には、S級はぐれ悪魔が居て、邪神と戦う為に作られた外法の一部があって、その外法の力に祐斗さんが耐える事が出来て、弱っていても上級間近の悪魔3人を倒せるだけの力を持っていて、祐斗さんに取っての隣人ではない者とは罪を償おうともしない犯罪者と祐斗さんに襲いかかって来る者なんて考えを持っている。これがどれだけ幸運な、奇跡な事か、お姉ちゃんに分かりますか」

 

「……白音」

 

「誰も信じられなくなっていた私に祐斗さんは道を示せるだけ示してくれました。神は試練しか与えてくれないけど、自分たちは手を貸す事が出来る。それは素晴らしい事だからって、たまたま出会っただけの猫魈の私に出来る限りの事をしてくれて」

 

思えば祐斗さんにはお世話に、助けて貰ってばかりだ。いつも笑って手を差し伸べてくれて、迷った時には背中を押してくれた。間違っている事はちゃんと間違っていると言ってくれて、たまに喧嘩みたいなこともして家族みたいに過ごしてきた。

 

だけど、本当の家族じゃない。ギャー君もヴァレリーもルゥと一緒に暮らすのも楽しい。だけど、血の繋がりは無い。私と血の繋がりがあるのはお姉ちゃんだけ。私はお姉ちゃんと一緒に暮らしたい。

 

「一人なのは、もう嫌。嫌なの、置いていかないで」

 

「駄目。白音は弱いまんまだし、アレを相手に出来るの?」

 

お姉ちゃんが指を指した先には傷だらけの男の人といつも通り魔剣の治療に任せたゾンビアタックを続けている。頭だけは守って、他は無視して腕が千切れようがお腹に大穴が開こうがおかまいなしの戦闘スタイルに男の人が押されています。千切れた腕もすぐに繋ぎ直し、お腹の大穴も気付いた時には塞がっていく姿は恐怖するしかありません。

 

「戦えないでしょう。それに私と一緒に行くって言えば、いの一番に白音を殺しにくるよ。裏切るんだから」

 

それにこの場で一番弱いから。だけど、他にも道はある。

 

「お姉ちゃんを捕まえる。そして傍に置く。祐斗さんも皆も説得してみせる」

 

祐斗さんに埋め込んでもらった魔剣に魔力を通して身体を強化する。

 

「行きます!!」

 

最短距離を真直ぐに突き進んで最速の突きを放つ。私が祐斗さんの元で覚えた事の一つ、敵と認識したなら躊躇わない。それを実行する。酷い怪我をさせてしまうかもしれないけど、今は考えない。私の速度に追い付けなかったお姉ちゃんにリバーブローを叩き込む。だけど、捉えたと思った一撃に感触はなく、離れた位置にお姉ちゃんが現れる。これは妖術?

 

「そう、白音がその気なら、死ね!!」

 

離れた所に現れたお姉ちゃんから霧の様な物が発生する。今までの経験から危険な物と判断して対応する。魔法は得意じゃないし、それほど強くもないけど祐斗さんに勧められるまま簡単な炎や水、それと風と光源を作る魔法だけは使える様になった。以前、毒の霧を扱うはぐれ悪魔に対して祐斗さんが対処した方法は水の魔剣で霧ごとまとめて押し流すと言う方法だった。毒なら薄めてしまえば良いらしい。霧なら水の塊をぶつければ全て吸収されるとも言っていた。

 

だけど、私にはそこまでの事は出来ない。だから迫ってくる霧の目の前に水のカーテンを発生させて霧を吸収させながら自分の周りに風を纏わせて防御する。これで多少はマシなはず。

 

「へぇ〜、意外と経験を積んでるみたいね。なら、直接叩き込む」

 

お姉ちゃんは霧を発生させるのを止めて爪を伸ばして飛びかかってくる。早いけど、無駄の多い動きだ。見切って、少し多めに距離を取って躱す。案の定、爪の長さが変わっていた。直接叩き込むと言っている以上、攻撃を喰らうわけにはいかない。

 

悪魔や人外にとって人間は神器位しか取り柄の無い種族かもしれない。普通の動物と比べてみても、力などは劣るだろう。だけど、その人間は成長し、受け継いでいく生物だ。長い時をかけて研鑽されていった技術は悪魔や人外のそれを超える物が多い。達人級と呼ばれる人間は下手な上級悪魔よりも強い。

 

何が言いたいのかと言えば、お姉ちゃんの動きは本能や経験に任せた動きばかりで技術と言った物は見受けられない。だから攻撃を躱すのは難しい事ではない。爪の長さが変化する位なら最初からそれを想定した上で距離を離すか向きを考えれば簡単に躱せる。だけど、こちらの攻撃も当たらない。慌てて躱しているようだから技術ではないし余裕がある訳でもない。なのになぜか当たらない。

 

一度距離を取って攻撃方法を変える。私が使える魔法の中で唯一攻撃力を持った魔法である水の弾丸を右手を銃の形にして連射する。お姉ちゃんはそれを簡単に回避するけど、それで良い。お姉ちゃんを観察して明らかにこちらの動きを先読みして回避しているのが分かった。だけど、読心ではない。たぶん、魔力や身体の流れを読まれているんだと思う。

 

これは、ますい。持久戦になったら魔剣の維持を行わないといけない私の方が不利だ。お姉ちゃんには魔法以外に仙術も使えるから余裕はある。ここは限界以上に力を発揮して流れを先読みされても反応出来ない位早く動いて仕留めるしかない。

 

水弾を撃ちながら魔力を集めて魔剣に一気に流し込み、瞬歩の要領でお姉ちゃんの懐に飛び込んで拳を振り抜く。しかし、またしても空を切る感覚だけが残る。そして今度は完全にお姉ちゃんを見失ってしまった。直感で前方に転がると背後で風を切る音がした。後ろに回り込まれていたんだ。驚いて術の制御が甘くなったのか一瞬だけ姿が見えたけど、また姿が見えなくなってしまった。

 

どうすれば良い?森の中で木を背にするのは危険しかない。自分で逃げ道を一つ潰す上に真上にも注意を払わなければならない。なら少しでも開けている場所の方が良い。移動しようと動き出そうとした瞬間、横から突き飛ばされ、私を庇う様に祐斗さんがお姉ちゃんの爪で袈裟懸けに切り裂かれた。

 

「ぐっ、馬鹿な、魔力の流れが!?」

 

いつもならすぐに塞がっているはずの傷が塞がらずに手で押さえている。それどころか十字架と聖剣に身体を焼かれている。悪魔に転生した直後にしかそんな事なかったのに。

 

「弱点みっけ〜。なるほどにゃ〜、魔力を断てば回復もしないし力も落ちるみたいね。仙術には流れを変える力もあるからメチャクチャにしてみたんだけど、まさかここまであるなんてね。肉体強化の魔剣とかは見た事もあったけど、痛覚遮断とかの魔剣とかも作れるんじゃない?それに魔力を通せなくなって苦しんでる」

 

「ふふふ、知られてしまった以上余計に逃がすわけにはいかなくなりましたね」

 

身体をふらつかせながらも祐斗さんは立ち上がる。

 

「やせ我慢なんかしちゃって。本当は死ぬ程辛いんでしょう?こっちも美猴がやられてるみたいだからここで手打ちにして上げても良いよ」

 

祐斗さんが戦っていた男の人を指差しながらお姉ちゃんが提案する。

 

「そうもいかないのが僕の立場なんですよ。それにまだ僕は戦える!!」

 

そう言うと祐斗さんは両手の聖剣を自らに突き刺した。同時に悪魔が聖なる物に触れた時に出る煙をあげながら、傷が塞がっていく。そして、新たに魔剣を作り出してそれを身体に突き刺す。

 

「魔力の経路がメチャクチャにされたのなら、新しく経路を作ってやれば良いだけです」

 

祐斗さんはかなり苦しそうな顔をしながらも武器として使う聖剣を手にする。今まで見た事もないその表情に、本当に余裕がないのが分かる。新しく魔力の経路を作ったと言っても、完全に戻った訳じゃない。たぶん、3割。それだけしか魔剣や聖剣に魔力を送れていない。お姉ちゃんに斬り掛かるスピードはいつもより遅く、傷が治る速度も遅い。そしてお姉ちゃんに接触する度にスピードが下がり続ける。そしてとうとう聖剣を握れなくなる。身体から流れる血の量も明らかに危険域だ。

 

「祐斗さん、もう止めて下さい!!」

 

私は倒れそうになる祐斗さんを抱きとめる。

 

「ここまで来たら、もう見逃せないよ。二人まとめてころころしてあげる」

 

「くっ」

 

祐斗さんが辺りに魔剣を大量に産み出して爆破させ、短距離転移でお姉ちゃんから距離を取る。

 

「ごほ……お姉さんとは話が尽きましたか?」

 

血を吐きながら祐斗さんが尋ねてくる。

 

「そんなこと今はいいです。早く手当てをしないと!!」

 

「なら、質問を変えましょう。白音さんはどうしたいんですか?」

 

「だから」

 

「重要な事です。その答えで僕の行動は変わりますから。白音さんはどうしたいんですか。どんな未来が最高の未来ですか?」

 

祐斗さんはボロボロのはずなのに、その目はもの凄く力強く、全てを委ねたくなるような慈愛に満ちていました。だから、はっきりと自分が望む最高の未来を語る。

 

「お姉ちゃんが傍に居て、祐斗さんが傍に居て、『断罪の剣』の皆が居る日常」

 

お姉ちゃんと一緒に暮らしたい。だけど、祐斗さん達とも一緒にいたい。それが私の偽らない本音だ。

 

「なら、これから僕がやることを信じて下さい。絶対にその未来を作ってみせますから」

 

そう言って立ち上がる祐斗さんは、何時になく男らしい姿だった。その姿に私は全てを委ねる決心をする。

 

「お願いします。(キング)

 

 

side out

 

 

 

 

黒歌に接触する度に魔力の経路をメチャクチャにされたせいでこれ以上は無限の剣製以外の維持が難しい状態にまで追い込まれてしまいました。ですが、こちらにはまだ切り札があります。というか切り札を切らないと殺されちゃいますね。

 

「そんなところに隠れてたのかにゃ〜。そろそろ諦めてくれるとお姉さん嬉しいんだけど」

 

「諦めるって言葉、僕は大嫌いなんでね。仙術がここまで厄介だとは知りませんでしたよ」

 

「そうでしょ。仙術は極めれば出来ない事なんてほとんど無いもの。それだけ強力な力だけど扱うのも難しいから廃れていっちゃった」

 

「僕も色々と仙術に関しては調べましたけど、色々と情報が錯綜していましてね。ほとんど分かりませんでしたけど、少しだけ分かった事もあります。仙術で扱う気の中で自然から取り込む外気、これには良い気と悪い気、陽と陰に分かれていると言う事です」

 

「確かにそれは基本中の基本だけど、それを知ったからって意味なんかないでしょ」

 

「いえいえ、僕達研究者からすれば別の答えがあるんですよ。陽と陰に分かれているだけで純粋なエネルギーとしては性質が逆なだけと言う答えが出て来ます」

 

「それで?」

 

「極論で言ってしまえば、性質を取り除けばこれほど莫大なエネルギーは無いってことですよ」

 

周囲から気をまとめて回収して無限の剣製に一番近い所にある魔剣に通していく。

 

「あんた、まさか」

 

「ええ、机上の上では陽と陰を取り除く術式は完成しています。そしてお披露目と行きましょうか」

 

気を通した魔剣は濾過装置の様な物であり、これによって自然の気を純粋なエネルギーに変換する。ここまでは問題無い。問題なのはもう一つの魔剣。こちらは純粋なエネルギーを通す為の経路を作り出す魔剣。経路を造るのは問題ない。問題なのは純粋なエネルギーをちゃんと魔剣に流し込めるか。もし何処かが純粋なエネルギーに耐えられなければ僕の身体は弾け飛ぶ。

 

「そんな、馬鹿な。出来る訳が無い!!」

 

「出来る訳が無いと言う言葉に挑戦し続けてきたのが人間だ。羽や魔力がなくても空を飛び、宇宙にまで出れる様になった。今度は僕がその出来る訳が無いと言う言葉に挑戦し、打ち勝とう!!」

 

経路を生成し、エネルギーを魔剣に流し込む。経路が崩壊しそうになるのを必死に繋ぎ止め、魔剣をフル稼働させる。傷が今まで以上に早く塞がり、力も今まで以上に強くなっていると感じる。

 

「成功です。しかも魔力よりも強力ですね。今ならアレも出来そうですね」

 

「くっ、なら今度は気の流れをメチャクチャにするだけ!!」

 

「いいえ、ここからはずっと僕のターンですよ」

 

右手に産み出すは空間接続の魔剣とエクソシストに支給される銃を構える。そして空間接続の魔剣を振り、黒歌の周囲に幾つもの穴を開け、銃を連射する。銃弾は周囲の穴へと吸い込まれ、別の穴から姿を現す。

 

「にゃ!?」

 

十分な量の銃弾を撃ち放った後、僕は楽団の指揮者の様に空間接続の魔剣を振る。黒歌を取り囲む穴が魔剣を振るたびに、閉じては別の場所で開き、また閉じては開くのを繰り返す。

 

今までの魔力ではなく純粋なエネルギーによって空間を開閉するので空間自体にダメージが残り難い。空間にダメージが残っていると変な空間に繋がる可能性もあるのでこれまで多用して来なかった。だが、今このとき限りはあまり心配しなくて済む。

 

「これでチェックメイトです」

 

銃弾で弱らせ、体勢が崩れた所に僕自身も穴をくぐり抜けて目の前に飛び出す。左手には何の能力も持たない聖剣を持ち、黒歌に深く突き刺す。目の前に居るのは仙術で作った幻でもない本物の黒歌。その黒歌の身体から力が抜けていく。僕の様な力が無い限り、確実に致命傷になる傷を与えた。

 

「お姉ちゃん!!!!」

 

白音さんが倒れ行く黒歌を抱きとめ、最後の言葉を交わしていく。それと同時に結界内に穴が開き、強大な力を持つ聖剣を携えた男が姿を見せる。もちろん、僕はその男を知っています。

 

「コールブランドですか。さすがにそのクラスの聖剣になると破られますか。アーサー・ペンドラゴン」

 

「おや、僕の事もご存知でしたかって、黒歌!?」

 

「見ての通り、殺らせて貰ったよ。今は姉妹の最後の別れなんだ、邪魔をする様なら覚悟するが良い。大人しく帰るのなら、美猴は返してあげよう」

 

気絶している美猴を指差して選択を迫る。

 

「……退かせてもらいましょう。ですが、僕は貴方を許しません」

 

「許さなくて結構。最初からこの身は平和の為に投げ捨てると決めているんでね」

 

美猴を担いでアーサー・ペンドラゴンが姿を消すのを見送ってから結界を解除する。僕の莫大なエネルギーに気付いた悪魔とアザゼルさんがすぐに駆けつけてきた。その中にサーゼクス様が居られたので目で合図を送る。

 

「どうやら戦闘が行われたみたいだけど、私の記憶に間違いが無ければ、そこに居るのはSS級はぐれ悪魔の黒歌だったと思うのだが」

 

「ええ、こちらではヴァーリチームの一員だと言う情報も得ていますし、本人の自供も取れています。ですので処理しました」

 

「グレイフィア、一応確認を頼む」

 

グレイフィアさんが白音さんと黒歌に近づいて黒歌の死亡を魔法で確認する。

 

「間違いありません。死亡を確認しました」

 

「そうか。もう安全だと思うかい?」

 

「おそらくは大丈夫でしょう。一緒に居た孫悟空美猴も重傷を負わせました。念のためにアザゼルさんを置いておきますが、大丈夫でしょう。僕と白音さんは黒歌を供養しますのでこれで」

 

白音さんの傍まで移動して転移の魔剣を振り屋敷の庭にまで転移し、素早く強固な隠蔽結界を敷く。時間との勝負ですからね。

 

「白音さん、黒歌を蘇生しますから手伝って!!」

 

「ええっ!?けど、お姉ちゃんはもう悪魔に転生していて」

 

黒歌に抱きついて泣いていた白音さんが驚きながらも顔を上げてくれました。

 

「そういう妖刀があるんですよ」

 

そう説明しながらエネルギーと魔力を無限の剣製に叩き込み、とある妖刀を作り出そうとするのだが恐ろしい勢いでエネルギーと魔力を持っていかれる。エネルギーはすぐに底を尽き、僕の魔力も8割程持って行かれた所でようやく妖刀が産み出される。

 

「ぜぇ、ぜぇ、こ、これが、一度だけ死者を蘇生させる、ことの、ぜぇ、出来る妖刀、はぁ〜、天生牙です。白音さん、貴方の手でお姉さんに纏わり付く、死を切り払うんです」

 

消耗しきった僕では刀を振れそうにありませんから。それにやはり自分の手で救いたいと思っているでしょうから。地面に突き刺さっている天生牙を白音さんが抜き取り、黒歌を見る。その目には黒歌に纏わり付く死が見えているのでしょう。天生牙を何度か振り、そして手放す。そこに僕はフェニックスの涙を投げつける。死から逃れられても、致命傷を治さないとまた死んでしまいますから。

 

しばらくすると黒歌が目を覚まし、白音さんがまた泣きながら抱きつく。黒歌は何が起こったのか分からずにぽかんとしていた。このまま感動の再会を邪魔したくはないのですが時間がありませんからね。

 

「簡単にですが説明してあげますよ、黒歌。貴方は一度死にました。これにより貴方の罪はほとんどが償われました。ですが、ヴァーリチームに所属していたことにより僕達『断罪の剣』ターゲットのままです。ですので僕の眷属に、『断罪の剣』に所属すると言うのなら、ある程度の自由を与えましょう」

 

「私が断ると言えば」

 

「言い方を変えましょうか?敗者は黙って勝者の言うことを聞きなさい。ちなみに勝者の権利は白音さんに譲渡しますよ。白音さん、どうしたいですか?」

 

僕の言葉に白音さんが涙を拭き、泣きながらも笑顔を作ってはっきりと自分の願いを告げる。

 

「……私は、お姉ちゃんが傍に居て、祐斗さんが傍に居て、『断罪の剣』の皆が居る。そんな風に暮らしていきたいです。痛い目に会うのも、怖い目に会うのも耐えれます。だけど、寂しいのは耐えられないんです」

 

そう言って、もう黒歌を離さないとばかりに強く抱きつく。

 

「……白音、ごめんね。寂しいのは辛かったよね」

 

黒歌は抱きついている白音をあやす様に頭を撫でる。

 

「一つだけ条件がある。これでもヴァーリ達には恩義があるにゃ。だから、出来れば戦いたくない」

 

「良いでしょう。ヴァーリチーム相手に限り戦場を放棄する権利をあげましょう。代わりに黒歌と言う名を捨ててもらいます。さすがに黒歌と言う名は三勢力で悪い意味で有名過ぎますから」

 

「分かったにゃ。名前は貴方が決めて。私を縛り付ける意味でも」

 

「そうですね。白音さんの名ともじって黒音では安直過ぎますから読みを変えて漢字も変えて“久遠”。親戚の姉とでもしておきましょうか。苗字はそのまま塔城で良いでしょう」

 

「塔城久遠、か。まあまあかにゃ」

 

「それとちょっとした細工をしておきましょうか」

 

破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)を作って黒歌、じゃない久遠に突き刺して悪魔の駒を取り除く。それを見て久遠が驚いていますが、説明は後です。時間が本格的に少なくなってきました。収納の魔法陣から堕天使に転生させるトランプのAを取り出して久遠に渡します。

 

「こいつは堕天使に転生させる事が出来るトランプです。悪魔のままだと面倒事が多いのでこれで堕天使になれば別人と判断されます。それとも天使の方が良かったですか?」

 

「呆れて物が言えにゃいけど、とりあえず堕天使で良い。すぐに堕天しちゃいそうだし」

 

そう言って久遠はトランプを身体に入れて堕天使へと転生しました。なんとか最低限の説明は終わりましたね。おっと、十字架は外しておきましょうか。

 

「さて、それじゃあ最初の指示です」

 

「猫使いがあらいにゃ。それで、何をすれば良いの?」

 

「僕の治療お願いしますね」

 

「「へっ?」」

 

次の瞬間、全身から血が噴き出す感覚を最後に僕の意識は途絶えた。

 

 




ちなみに白音さんが取ろうとした行動は黒歌に付いていってしまいそうになったり、拉致られそうになったり、寝ぼけてて書いていた所為で木場君?が白音さんをころころしちゃったり、かなりフリーダムになってました。僕の中では白音さんはメインヒロインのつもりだったんですけど、勝手に暴走してましたよ。全く歯止めがかかりませんでした。ちなみに僕はロリコンではありません。好きになったキャラがロリ枠な場合が多いだけです。

次回は冒頭に今回の作戦の反省会を行ってから会長とのレーティングゲームですね。匙君には頑張って貰いたいのですが、かなり厳しいです。簡単にやられる様な人材がミッテルトさんオンリーです。そのミッテルトさん、こそこそ隠れて工作してるので発見する事も難しいと言う非情な現実が待ってます。





一つ皆さんに質問なんですが、原作8巻でありました300イッセーって時系列的にはどの辺りになるんですかね?
原作の方では番外的な扱いになっていますが、この作品では超重要な役割を持たせたい話となっております。このイベントはこの作品において原作12巻での打ち切りエンドを回避するのに必須のフラグとなっております。

タイトルは「神父と学者と弓兵、時々こいつだれ?」

この話が書けない場合、12巻で木場君?死亡により打ち切りです。

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