いつの間にかハイスクールD×Dの木場君?   作:ユキアン

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久々の更新〜

レーティングゲーム終了まで一気に行きます。


第27話

とうとう始まるソーナ・シトリーとのレーティングゲーム。会場入まで後数分と言った所で僕と白音さんが一番最後に会場の入り口になる魔法陣が設置されている部屋に到着する。そしてそんな僕達を見て眷属の皆が驚き唖然としている。そんな中で一番復帰が早かったアザゼルさんが一歩進み出る。

 

「あ~、とりあえず全員が言いたい事があると思うからオレが代表して聞く事にする。なんで前よりも重傷でミイラみたいに包帯でグルグル巻きな上に車いすで運ばれてるんだよ!!」

 

「あ~、若さ故の過ちと言った所でしょうか。無理矢理治療しようとして失敗してより重傷を負いました。見ての通り自分で動けません。短時間、2分程度なら回避位は出来ると思いますけど期待しないで下さい。魔法も殆ど使えません」

 

「相変わらず無茶をしやがって。お前が倒れると色々と面倒な事になるんだぞ。それを分かっているのか?」

 

「分かっていますよ。ゴミがまた色々と活動している情報が上がって来ているので出来るだけ速く復帰しようとしたんですよ。とりあえず、重傷は負いましたがむしろ自然治癒力は向上してますから最終的には若干のプラスですので問題ありません」

 

魔力の経路の一部が正常な形に戻りましたからね。実際はかなりプラスなんですよ。左腕でなら色々と細工も出来る様になりましたから。

 

そして間もなく転移の魔法陣が光だし、レーティングゲームの会場に転移する。周囲を見渡すと数多くのテーブルとイスが並べられている。ここは、確か駒王にあるデパートのフードコートでしたっけ?

 

『皆様、このたびは断罪の剣とシトリー家のレーティングゲームの審判役を仰せつかりました、ルシファー眷属の女王グレイフィアでございます。今回のフィールドは駒王学園の近隣に存在するデパートを用意させて頂きました』

 

グレイフィアさんの話を聞き流しながら眷属の皆に指示を出していく。フードコートを調べさせて何処まで再現されているのかを確認する。

 

「水も電気も通ってるし、ガスボンベも中身が入ってますね」

 

「レジの中身もしっかりあるな。材質も変わらんが、これって偽造になるのか?」

 

「冷蔵庫とかの中身もしっかりありました。個人的なメモみたいな物も」

 

ふむ、中々芸が細かいですね。白音さんが壁に掛けてあった館内案内図を外して持って来てくれたのでそれを見ながら作戦を組み立てる。

 

『本陣は、断罪の剣の本陣は二階東側、ソーナ様の本陣は一階西側となっております。また、フェニックスの涙を各陣営に一つずつ支給させて頂きます。なお、今回は特別ルールが設けられております。ご確認を忘れない様に。作戦を立てる時間は30分です。この間、相手チームとの接触は両者退場となります。それでは、ゲームスタートです』

 

どうしようかな?一瞬でゲームを終わらせる奇策があるんだけど。まあ、今回は止めておこう。下部組織として使えるかどうかを確認するゲームだからね。それから特別ルールね。えっと、一定以上の器物破損で退場か。大したことは無いね。全員に特別ルールのことを説明してから詳しい作戦について話し始める。

 

「案内図から見てもらえば分かる通り、侵攻ルートは屋上、立体駐車場、中央の吹き抜けの三方面になります」

 

「なら私は屋上だな。細かい事など考えずに戦えそうなのは屋上だけだからな」

 

ゼノヴィアさんがそう発言しますが、却下します。

 

「ゼノヴィアさんには他に役目があるので却下です。屋上には白音さんとギャスパーとグリゼルダさんとルゥが向かって下さい。ルゥは攻撃禁止ですよ、あと、ページモンスターの召還もです。グリゼルダさんの言うことを聞いて下さいね。基本的には足止めで構いませんので。中央の吹き抜けには紫藤さんとヴァレリーさんと久遠さんが向かって下さい。ただし、吹き抜けになっている場所だけで戦って下さい。店内に逃げ込まれた場合は放置で構いません」

 

「どうして?」

 

「それはこの後説明します。最後、ゼノヴィアさんとミッテルトさんと僕は立体駐車場と店内にトラップの巣を作ります。立体駐車場には分かりやすい上に近づきたくない様に思わせる罠を大量に、店内には分かり難い様な罠を仕掛けて回ります。ゲーム中も隠密行動をとりながら積極的に罠を作っていきます。ゲームの進行具合では追加で指示を飛ばしますので通信のラインだけは絶対に開いておいて下さいね。迷えばすぐに確認をとってください。そして最後にアザゼルさんには最も重要な役目を与えます」

 

「おいおい、オレはゲームに参加しないんじゃなかったのか?」

 

「ええ、戦闘に使う気はありませんよ。アザゼルさんは、今からこの本陣付近を破壊してください」

 

「はぁ?」

 

「どの程度の器物破損で退場になるのかを確認します。これを知っているのと知らないのでは戦術に大きな差が出て来ます。最初から戦闘に使えないのなら確認の為の捨て石にするのが有効ですからね」

 

「理屈は分かるが、ずいぶんはっきりと捨て石扱いにするんだな」

 

「実戦ならこんな事はしないんですけどね。あくまでこれはゲームですから」

 

「分かったよ。それじゃあ、壊し始めるぞ」

 

「ああ、ちょっと待って下さい。白音さん、ちょっと宝石店まで行って高価な宝石を幾つか持って来て下さい。面積ではなく被害総額の可能性もありますから」

 

「分かりました」

 

しばらく待ち、白音さんが持って来た宝石をアザゼルさんに壊してもらってからフードコートの壁を光の槍で壊してもらう。お店一軒ほどの壁を破壊した所でアザゼルさんだけに警告が送られ、更にテーブルとイスを5組程壊した所でアザゼルさんが退場になる。

 

『断罪の剣、スペードのJ、規定によりリタイア』

 

ああ、そういう風に放送されるんですか。個人の特定が楽ですね、それ。別に構いませんが。

 

「これで色々と分かりましたね。被害総額ではなく面積と言うか量ですかね?とりあえず一定以上の破壊でリタイア。警告もあり。何より一番知りたかった物も知れました。これで僕達の勝ちは揺るぎませんね」

 

「一番知りたかった事かにゃ?」

 

「ええ、これのおかげでゼノヴィアさんが活躍出来ます。ゲーム的に言わせてもらうなら変則的なサクリファイスですね。屋上で戦う人達には後で追加指示を行いますので覚えておいて下さい。それでは開始時間になるまで各自解散です。ミッテルトさんとゼノヴィアさんはこれから罠を仕掛けにいきますよ」

 

「了解ッス」

 

「うむ、分かった」

 

ゼノヴィアさんに車いすを押してもらいながら立体駐車場に移動して分かりやすい様にワイヤーと簡単な爆弾を柱と言う柱、車と言う車にセットしていく。たまに飾りとして時間が減っていく時計も置いておく。更に結界内を光力で満たす結界をミッテルトさんのテストの為に仕掛けさせておく。

 

「まだまだ結界を張るのに時間がかかっていますが効力の方は十分ですね。ちゃんと勉強しているようで安心しました」

 

「さすがに命がかかってるっすから。それにレイナーレお姉様の方が命がけらしいっすからウチも負けていられないっす」

 

「ああ、教授から手紙が来ていましたね。そろそろこちらに戻して実際に戦えるか試す様に言われてますから近いうちに会えるでしょう」

 

立体駐車場から移動しながら店内にワイヤーを使ったトラップをミッテルトさんに指示を出して仕掛けていく。こういう知識を持っているアーチャーの記録はかなり便利です。

 

「ところで一つ気になったんっすけど」

 

「どうかしましたか?」

 

「立体駐車場に仕掛けた爆弾で立体駐車場が吹き飛んだ場合、どっちがリタイアになるんっすか?」

 

「さあ?罠を仕掛けたミッテルトさんか、引っかかった相手か分からないからこそ相手も迂闊に手を出せないでしょう。そういう意味があるんですよ、あれは。ワイヤーを切って移動出来ない様に通電が途切れると爆発する物が一番最初に触れる場所に仕掛けてあるのはその為です」

 

「うげぇ、えげつない。と言うかウチが生け贄っすか!?」

 

「生け贄とは失礼な。尊い犠牲ですよ。アザゼルさんみたいな」

 

散っていったアザゼルさんの為に十字を切って祈りを捧げる。

 

「いやいや、死んでないっすから」

 

ミッテルトさんからツッコミが入るが無視する。

 

「そろそろ時間ですね。最後にちょっとだけネタのトラップを仕掛けにいきましょうか」

 

準備に少し時間がかかりますが普通に進撃して来るなら間に合うでしょう。

 

 

 

side ソーナ・シトリー

 

 

いよいよ始まったレーティングゲーム。作戦時間中に向こう側が一人リタイアしたことで数の上ではほぼ互角になった。だが、規定によりリタイアしたということはおそらく一定以上の器物破損を行ったのだろう。どこまで壊せばリタイアになるのかを確認する為に。そしてリタイアしたのはおそらくアザゼル様。戦闘に参加出来ないのならと割り切って捨て駒にしたのだろう。匙は笑っていたが、私としては余計に油断できなくなった。

 

木場君は私達を格下だと思っていない。敵としか見ていない、いや、敵として見てくれていると言った方が良いか。それを嬉しいと思っている私が居る。本気で私達の相手をしてくれる。お姉様の妹だと言う見方じゃない、純粋に敵として相手をしてくれる。なら、それに応えてみせないといけない。

 

私達は敢えて戦力を分散させる事無く固まって敵本陣に向けて移動を開始する。先日、木場君は眷属を分散させていましたからそれが出来る位の練度はあるのでしょう。なら、分散させている可能性が、いえ、普通に考えるなら分散させているでしょう。ですからこちらは全員で固まって移動する事にした。

 

目指すは立体駐車場。ここは他の場所に比べて隠れる場所が多く、屋上程広くはないが、いざ戦うとなれば十分に広い箇所も存在する。車も動かそうと思えば動かせる。そう思っていたのだが、これは

 

「大量のワイヤーに、先端は分かりやすい位の爆弾らしき物体」

 

「ここまで分かりやすいと簡単に除去出来そうだけど」

 

「会長、とりあえず一つ除去してみますか?」

 

巡がワイヤーを切って除去するか尋ねてくる。ここまで分かりやすい罠を仕掛けているのが気になります。ここは触れない方が良いでしょう。

 

「いえ、おそらく相手もここでの戦闘を考慮していないでしょうからここを抜ければ裏をかけるでしょうが、怪し過ぎます。あの木場君がこんな分かりやすいだけの罠を仕掛けている以上、他に本命があるはずです」

 

「心配のし過ぎですよ、会長」

 

そう言って匙がワイヤーを引き千切った途端、仕掛けられていた爆弾が爆発して破片が匙を襲う。匙も素早く退いたおかげで大した怪我は負っていないが、幾らかのかすり傷が

 

「ぐあああああ!?」

 

「どうしたのですか、匙!?」

 

かすり傷で済んでいるはずなのに匙が酷く苦しんでいる。よく見れば傷口が爛れている。光力は一切感じなかったはずなのに。

 

 

 

side out

 

 

「おっ、爆発音が聞こえてきましたね。法儀式を施してある爆弾ですからかすり傷でも傷口が爛れてきますよ」

 

本屋に罠をしかけている最中に立体駐車場の方から微かな爆発音が聞こえてきた。

 

「法儀式ってなんすか?」

 

「昔、光剣が無い頃にエクソシストが武器に施していたエンチャントですよ。今は廃れてしまって滅多に見かけませんけど」

 

「なぜ廃れたんだ?」

 

「儀式が面倒なのが一つ、光剣や対魔弾の方が威力があるのが一つ、コストがかなりかかるのが一つですね。メリットは全く力を感じられないので痛い目を見させる事が出来るのと、どんな物にでも施せるってことですかね。ゼノヴィアさん、線が歪んでますよ」

 

「意外と難しいな。もっと楽な物は無いのか?」

 

「じゃあ、はい」

 

収納のカードから直径10cm程の判子を取り出す。

 

「これに魔力を込めたインクを付けて押すとそれだけで魔法陣の完成です」

 

「ちょっ!?そんな便利な物があるならウチにも最初からくれても良いじゃないんすか!?」

 

「だめです。魔法陣やそれを使った結界は時と場合によって大きさを変える必要があります。ですので魔法陣は自分で書けないといけません。それから自分で道具を産み出してそれを活用出来る知識を持って初めて一人前だと僕は考えています。ゼノヴィアさんは結界士にするつもりはありませんから、こういった道具を貸しますが、ミッテルトさんはそうではありません」

 

そこで一度区切り溜めを作る。

 

「僕はミッテルトさんがが裏で努力しているのを知っています。先程から仕掛けている結界が、時間がかかっているとは言え張れる様になっているだけで、どれだけ練習してきたのかが分かります。僕の魔法陣に必要なのは正確さのみ。それを様々なサイズで書けるようになるには、ひたすらに書き続けるしかありません。その努力の結果が今、僕の目の前にあります。誇って下さい、ミッテルトさん」

 

「いや、でもウチはまだまだで」

 

「確かにまだまだかも知れませんが、僕の想定よりも上を行っています。それだけミッテルトさんが頑張った証拠です。だから、これからも努力を続けてください」

 

「う、うっす」

 

何故かミッテルトさんの顔が赤くなっていますが何故でしょうか?ゼノヴィアさんの方を見て、視線だけで尋ねても首を捻るだけですし。

 

しばらくの間、無言で罠を仕掛けていき、予定の店の全てに罠を仕掛け終えてから警備室に向かいます。電源を入れてデパート中に仕掛けられている監視カメラを使って会長達の様子を覗かせてもらいます。途中、食料品売り場でおやつと飲み物を調達してきているのでちょっと休憩しながらですけど問題無いですよね。

 

「ふ~ん、罠に引っかかったのは匙君ですか。包帯を巻いている所を見るとフェニックスの涙は使ってないみたいですね」

 

髭が似合うダンディなおじさんがイメージキャラの缶コーヒーを飲みながら関係のないモニターに録画されていた爆発シーンを映し出します。

 

「ありゃ~、迂回しようとしているのに高を括って迂闊に千切って破片をモロに浴びて、あ~あ~、爛れまくりッスね。やっぱりタケノコは美味いっすね」

 

「威力はそこそこだな。何にでも付加出来るのなら価値はあるな。キノコの方が美味いに決まっているだろうが」

 

「タケノコっす」

 

「キノコだ」

 

「はいはい、キノコタケノコ戦争は個人の好みですぐに停戦してくださいよ。答えなんてでないんですから。ちなみに僕はコアラ派ですから勧誘はお断りですよ」

 

飲み終わった缶コーヒーを握りつぶしてゴミ箱に投げ捨てる。この間もモニターから目を外さない。モニターの中では傷の手当てを終えた会長達が再び移動を開始する所です。

 

「戦力は分けずにそのまま吹き抜けをまっすぐ突き抜けるみたいですね。ミッテルトさん、久遠さんに念話を送って下さい。内容は『プレッシャーをかけながら削れるだけ削って屋上に追い込んで下さい。手段は問いません』です。秘匿用の念話を使って下さいよ」

 

「了解っす。もしもし久遠さんっすか、ボスがプレッシャーかけながらボコって屋上に追いつめろって。うん、煮るなり焼くなり好きにしても良いそうっすよ。うぃ~、頑張るっすよ~」

 

「……内容は伝わっているので今回は見逃しますが、実戦でやったら本気で怒りますよ」

 

「すいませんした」

 

土下座をするミッテルトさんをゼノヴィアさんがぐりぐりと頭を踏んでいますが見なかった事にしましょう。

 

「おっ、戦闘が始まりましたね。真羅さんの追憶の鏡(ミラー・アリス)を盾にしながら接近戦に持ち込むつもりの様ですが、相手が悪かったですね」

 

「ヴァレリーはともかく、黒歌じゃない、久遠は技術的に上手いし、イリナの擬態の聖剣なら鏡を避けるのも簡単だからな」

 

「あ~、あの二人から逃げるのは一番大変っすからねぇ~。全く鏡に当たらないっすね」

 

土下座を止めて正座のままオレンジジュースを取り出して飲み始めるミッテルトさん。

 

「匙君の黒い龍脈(アブソーブション・ライン)も真正面から飛ばしていては怖くもありませんね。もう少し頭を使えば良いのに」

 

僕も新しい缶コーヒーを取り出して飲み始めます。

 

「そもそも黒い龍脈(アブソーブション・ライン)とはどういう物なのだ?」

 

ゼノヴィアさんは紅茶のペットボトルを開けて飲み始めます。

 

「あ~、簡単に言えば、あの線をつないだ対象から色々な物を吸い上げる事が出来る神器です。研究した事ないので何とも言えませんが、限界以上に使いこなせば劣化版の白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)になりますかね?」

 

「ほう、中々凄い物だな。だが、見る限り」

 

「使いこなせているとは言い難いですね。文献ではラインを複数に分ける事も出来たはずですし、そもそも不視化が出来ていませんから。それに真直ぐ追いかけてもねぇ。せめて周りの人と連携するとか物陰に潜ませるとかすれば良いのに」

 

「あれなら延々と逃げられそうっすね。あれって硬いんすか?」

 

今度は煎餅の袋を開けて食べ始めるミッテルトさん。

 

「それもやっぱり所有者の熟練度次第ですね。たぶん、量産型の光剣なら一本駄目にする気で使えば切れそうですね。一枚貰えますか?」

 

ミッテルトさんに煎餅を貰って齧ります。おや、味が変わっていますね。僕は前の方が好きですね。

 

「つまりあそこに居る三人からすれば」

 

「紙とまでは言いませんが、まあ簡単に、切れましたね。と言うか細切れにされて苦しんでますね」

 

「痛覚はあるのか。身体の一部と言う扱いか?私にも寄越せ」

 

ゼノヴィアさんも煎餅を齧り始めます。

 

「たぶん、そうみたいっすね。こう、腕がもう一本生えてるとかそういう感じっぽいっす」

 

「その感覚で合っていると思いますよ。それにしても勿体ない。真羅さんも匙君も神器を全然使いこなせていませんね。ああ、勿体ない。色々と使い道が思いついてイライラしてきます」

 

「興味があるな。どんな使い道なんだ?」

 

追憶の鏡(ミラー・アリス)なら合わせ鏡の要領で威力を保持しつつ、タイミングを合わせて自分でも鏡を割ってどんどん積み重ねたり、2枚に半分ずつ衝撃を与えて数を増やしたり、それを鏡から鏡に反射させながらのオールレンジ攻撃。黒い龍脈(アブソーブション・ライン)はラインの数を増やす方面に鍛えるのは当然として、見えるラインと見えないラインを組み合わせるのが基本かな。あとは、遊びでラインを編んで魔獣を作り上げたりするのも楽しそうだね」

 

「うわぁ、普通じゃ考えない様な使い方っすね」

 

「考えるのを止めたらそこで終了です。色々と小細工をして格上に立ち向かうのが人間です。それを忘れてしまったようで残念極まりないです。そろそろゼノヴィアさんは移動を始めて下さい」

 

「何処に移動するんだ?」

 

『ソーナ・シトリー様の騎士1名リタイア』

 

「吹き抜け部分の中央に移動して下さい。追って指示を出しますので。あと、この符で隠れておいて下さい」

 

聖剣のオーラを隠す事が出来る府をゼノヴィアさんに渡しておきます。これで奇襲が出来ますからね。

 

「分かった」

 

お菓子のゴミをゴミ箱に捨ててからゼノヴィアさんが警備室から出て行く。

 

「ミッテルトさんは他の皆さんに連絡を。屋上で包囲しながら逃がさない様にして下さいと」

 

「了解っす」

 

『ソーナ・シトリー様の僧侶1名、兵士1名リタイア』

 

「そこそこ脱落しましたね。匙君も限界に近いですし、ゼノヴィアさんに指示を出す頃には半分残ってれば良い方ですかね?」

 

「そうっすか。そう言えば、さっきの神器の話でちょっと気になったんっすけど」

 

「何ですか?」

 

「ボスは神器を完全に扱えてるんっすか?」

 

「まだまだですよ。常に成長を続けていますし、どこまで成長するのか分からないのが現状ですね。もうちょっと頑張れば剣以外も産み出せそうなんですけどね。槍とか弓とかなら。消耗は激しいでしょうし、別の方法で産み出せるので意味はないんですけど何処でどう成長するのか分かりませんから鍛えれる限り鍛え続けようとは思ってますよ」

 

そんな話をしていると、屋上のカメラにシトリー眷属を僕の眷属達が囲んでいる様子が映し出された。

 

「さて、このままでは会長に勝ち目は完全にありませんので、少しだけ手を貸してあげましょう。特撮の悪役みたいに」

 

「そして殺られるんっすね、分かります」

 

「頑張って下さいね、ミッテルトさん。僕は戦えませんから」

 

「ちょっ、勘弁して下さいよ!?」

 

慌てるミッテルトさんをわざと放置して放送機器のスイッチを入れる。

 

「これでチェックです、会長。まだ続けますか?」

 

『木場君、ですか。確かに状況的にはチェックでしょうが、まだチェックメイトではありません』

 

会長が相手を指定しない念話で返答してきてくれる。

 

「ええ、そうですね。では、最後の一手を打たせてもらいましょう」

 

そこでマイクのスイッチを切り、ミッテルトさんに指示を出す。

 

「ゼノヴィアさんに最大出力での聖剣砲を真上に撃つ様に、砲撃のタイミングで屋上に居る皆に屋上から飛び降りる様に連絡を入れて下さい。飛び降りる際、建物から離れすぎない様に壁面を滑る様にとも」

 

「了解っす!!」

 

ミッテルトさんが秘匿回線の念話で全員に指示を飛ばし、絶妙なタイミングで逃走させる事に成功する。全員が屋上から飛び降りた次の瞬間、ゼノヴィアさんの本来の愛用武器であるデュランダルから放たれた光力を固めた斬撃がデパートの屋上を吹き飛ばす。

 

『断罪の剣、ハートの7、規定によりリタイア。ソーナ・シトリー様の騎士1名、戦車1名、僧侶1名、兵士1名リタイア』

 

「今のでまだ生きてるんっすか!?」

 

リタイアした中に会長と真羅さんが居ない事にミッテルトさんが驚いていますが、僕はモニターを見渡してその姿を確認しています。追憶の鏡(ミラー・アリス)をただの鏡として扱って、出来る限り姿を隠しながらこの警備室に向かって真直ぐに突き進んで来ています。

 

「真下からの砲撃を見切られていましたか」

 

先程の砲撃の際、僕の眷属達が屋上から逃げ出した時には会長と真羅さんが一箇所に集り、足下に追憶の鏡(ミラー・アリス)と障壁をかき集めていました。そして真直ぐにこちらに向かってくると言う事はここを抑える事は考えていたのでしょうね。

 

「ミッテルトさん、戦闘準備を。すぐにでもここに辿り着きますよ」

 

「せ、戦闘準備っすか!?しょぼい光弾とか光槍しかないっすよ」

 

「そう言えば攻撃方面は後回しにしていましたね。なら、僕が隙を作りますから担いで逃げてくれますか?部屋を出て左に曲がって吹き抜け部分に出たら右です」

 

「防御もお願いします。回避も諦めてスピード第一に考えますから」

 

「構いませんよ。今日は一番頑丈な服を着てきてますから、このまま盾にしてくれて構いませんよ」

 

「いや、それはさすがに遠慮したいんすけど」

 

「仕方ありませんね。適当に捌きますから頑張って逃げて下さい」

 

そろそろ話し合う時間も惜しくなってきた。車いすから降りて収納のカードから符と試験管を取り出します。その後、ミッテルトさんに後ろ向きに担ぎ上げられて準備完了です。

 

「合図を出しましたら扉を蹴り開けて下さい。出鼻を挫きます」

 

「了解っす」

 

モニターを見ながら鏡像と本物を確実に見分け、タイミングを計り

 

「今です!!」

 

「うおっしゃああああああ!!」

 

ミッテルトさんが体内の魔剣に力を流し込み、全力で扉を蹴り開けると同時に走り出します。会長と真羅さんはもくろみ通り驚いて足を止めてしまっていますから逃げ切れれば良いんですが。

 

とりあえず用意しておいた試験管を通路に放り投げて煙幕を張る。特別製の魔力感知をジャミング出来る物ですから少しは戸惑ってくれるでしょう。そう思っていたのですが、煙幕を無視する様に通路一杯の大きさの水で作られた蛇が襲いかかってくる。

 

「ぎゃあああああ、ヤバいっす!?」

 

「ほらほら頑張って。よっと」

 

用意しておいた符を蛇に向かって投げつけて起動させる。蛇を構成する水の半分程を吸収して符は流されていく。

 

「見た目よりも魔力を込めてあるみたいだね。ほぼ全ての魔力を使って作ったかな?」

 

更に続けて2枚の符を投げて蛇を無力化する。これで符は品切れですね。新たに収納のカードから魔力が込められたルビーを4つ取り出して右手に握り込んでおく。僕が会長の立場ならここで札を全て切りますからね。ここがこの勝負の正念場です。間違いなくフェニックスの涙で魔力を回復させています。そしてその魔力で全ての決着を付けるはず。それを凌げば僕らの勝ち、凌げなければやはり僕らの勝ちです。先程の蛇程度なら僕の神父服は抜けません。

 

そう思っていたのですが突然虫の知らせと言いましょうか、悪寒が走り、僅かにだけ使える魔力を使ってミッテルトさんの足を引っかけて転ばせます。次の瞬間、頭の上を何かが通過した様です。

 

「あべし!!」

 

いきなり転けたミッテルトさんが受け身も取れずに顔面から床に突っ込んで滑っていき、変な声を出していますが実際は大したことは無いでしょう。なので先程の魔法に対する対応が先ですね。握り込んでいたルビーをバラまき、起動コードを告げる。

 

「四連炎城壁」

 

4つのルビーに込められた魔力とルビーそのものが分厚い炎の壁を作り出す。その炎の壁を貫いてくる物を横に転がって躱す。床に当たったそれは床を貫通していて、縁が濡れていた。

 

「なるほど、ウォーターカッターと同じ原理と言う事ですか」

 

これはちょっとだけまずい。これだけの威力なら神父服を貫通する。当たり所が悪ければリタイアは確実だ。高圧を掛けるのに集中力がいるのか連射力はないが、速度はかなり速い。万全の状態なら問題無いのだが、今は2分しか逃げ回れない。体内の魔剣も殆どが使用不能だ。追いつめたつもりが追いつめられていますね。これぞゲームでしか味わえない楽しみと言う奴ですね。

 

「あててて、大丈夫っすか?」

 

「ええ、それよりも感覚を尖らせて下さい。来ますよ」

 

「へっ?」

 

状況が分かっていないミッテルトさんを突き飛ばし、その反動で僕もミッテルトさんとは逆方向に飛ぶ。再び撃ち込まれたウォーターカッターを回避しながらどうするかを考える。

 

「なんっすか、今の!?」

 

「ウォーターカッターみたいな物ですよ。直撃だと僕の神父服も貫通します」

 

「げぇ!?ってまた来た!!」

 

ミッテルトさんが転がりながらウォーターカッターを回避し、突如現れた追憶の鏡(ミラー・アリス)によって衝撃をモロに食らって気を失ってしまう。

 

「ちっ、そういう事か」

 

収納のカードから光剣を取り出して通路に仕掛けてあった監視カメラを破壊する。こちらの居場所を知っている種は簡単だ。僕と同じく、警備室のモニターで覗いていたからだ。それだけなら誰にでも出来るのだが、今僕達がいる場所は警備室から一度角を曲がっているのだ。つまり、あのウォーターカッターを一度無理矢理曲げているのだ。想像以上に会長は魔法の扱いに長けている。僕やアザゼルさんや久遠さんでもここまでの事は出来ない。ますます下部組織に欲しくなってしまった。

 

「さて、何処まで耐えれますかね」

 

四連炎城壁の維持は30秒が限界だろう。警備室からここまで15秒程だから、15秒は役に立つ。そこから2分弱で誰かがここまで辿り着いてくれないと僕が負ける確率が高くなる。警備室はデパートの入り口から一番離れた上に少し分かり難い位置にある。間に合うかどうかは賭けです。反撃が出来れば僕一人でも何とかなったんですけどね。やれやれ、自らに枷を用意しなければ良かったね。

 

「まっ、やれるだけやりますか」

 

四連炎城壁が解除されると同時に、再び水の蛇が襲いかかってくる。素早く収納のカードから魔法陣をかき込んであるカードを取り出して障壁を張る。そのまま後ろに下がりたいんだけど追憶の鏡(ミラー・アリス)で壁を作られてしまっているので下がる事も出来ない。

 

続いて、曲がり角の無効から水で出来た蜂が大量に飛んでくる。曲がり角から手鏡だけが姿を見せている。こちらからの攻撃を警戒しての事だろう。水の蜂を収納のカードから新たに光剣をもう一本取り出して二刀流で切り払っていく。光剣を振っているうちに一番傷が深かった右脇腹の傷が開いたようで血が床に落ちる。

 

それを見て更に攻勢が激しくなる。蜂に加え、蝙蝠と鼠が追加される。捌ききれる量とは言え、激しく動かなければならないので傷口が更に開いていく。思っていたよりも余裕はありませんね。指先の感覚が少しずつなくなっていく。会長の魔力残量は支給されたフェニックスの涙以外に回復薬を持ち込んでいなかったと想定して4割と言った所ですかね。このままなら僕が先に耐えられませんね。

 

そう思っていた矢先に右手に持っていた光剣を落とし、体勢まで崩してしまう。そして、ここぞとばかりに曲がり角から会長が飛び出してきて最初のウォーターカッターを同時に3発同時に放ってくる。あっ、詰んだかも。

 

「祐斗さん!!」

 

後ろから鏡が割れる音が聞こえ、次に白音さんの声が聞こえると同時に背中から押し倒されて、先程足を引っかけたミッテルトさんの様に床を滑る羽目になります。おかげで傷口が更に開きましたがウォーターカッターを回避出来たので良しとします。顔も打っていませんし。

 

続いて、壁を壊す音が曲がり角の向こうから聞こえてくると同時に

 

『ソーナ・シトリー様の女王、リタイア』

 

グレイフィアさんのアナウンスが流れる。残るは会長だけで挟み撃ちの形になる。白音さんの助けを借りて立ち上がる頃には久遠さんとヴァレリーさんとルゥが僕達の壁になってくれる。

 

「ここまでのようですね。リザインを宣言します」

 

「ええ、予想以上に手こずりました。全力だったのを認めます」

 

『ソーナ・シトリー様のリザインを確認。このゲーム、断罪の剣の勝利です』

 

勝ちましたが、反省点は多いですね。特に僕の反省点が。少し、アザゼルさんに相談して色々と考えてみましょうか。

 

 

 

 

 

後日、会長と真羅さんに下部組織への加入許可を送りましたが断られてしまいました。残念です。

 




匙君の冥福を祈ります。

この作品において、赤龍帝であるイッセーがそこまで活躍していない為に匙君がイッセーに対して嫉妬と言いますか、ライバル心と言いますか、とにかく頑張ると言う要素が薄い為にかなり迂闊な行動をとってしまいます。能力的には主人公やれるはずなんですけどね。磨かなければ石ころのままです。今回のゲームで匙君も修行に励んでくれるでしょう。(ネタ倉庫の方に匙君にひょういした物でも書こうかな。今話で木場君がやってみたいと言っていた使い方で)

逆に会長は原作以上に力を入れて修行に取り組んでいるので原作以上に強いです。(あと、作者が好きなキャラなので色々と優ぐ、げふんげふん)
あっ、ちなみに原作で匙君が貰っていた賞は会長が貰っています。木場君からも推薦が上がっています。

本来はもう少しレーティングゲームの会場を利用した戦闘を書きたかったのですが、あまりに外道な戦いになってしまいましたのでボツとなりました。ちなみに今話で木場君が奇策、分かった人は感想までお願いします。正解者には、どうしましょうか?次回のアンケート時に優遇しちゃいましょうか?


珍しく明日も更新します。
次回、『神父と学者と弓兵、時々こいつだれ?』
おたのしみに〜

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