いつの間にかハイスクールD×Dの木場君?   作:ユキアン

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第4話

サーゼクス様に冥界に連れて来られて数日が過ぎた。この数日でようやく精神汚染によるダメージが抜けた。覚えている術式を全部試してみてだ。だが殆どが効果を示すことはなく一番効果を発揮したのがアーチャーの記録にある精神の解体清掃だったのは悲しく思う。

 

自己催眠によって意識を解体、ストレスを識域もろとも消し飛ばすという荒療治なのだが、これが僕の精神と同化してしまっている部分以外である大半の汚染の原因を吹き飛ばしてしまった。これによってようやく休息による回復が行われる様になり、なんとか動ける様にまで回復した。

 

最も髪の毛は白く染まったままだ。一番汚染が顕著に現れていた所為で元に戻らなかった。まあ気にしないけどね。さすがに全て抜け落ちたとかになると気にするけど、色位で慌てたりしない。いざとなれば染めれば良いだけだしね。

 

ちなみにまだサーゼクス様の屋敷にお世話になっている。僕の体調のこともあったんだけど、問題はあの猫又の少女、塔城白音さんが周囲を威嚇し続けているためにサーゼクス様の妹さんに会わせられないのだ。僕も自分のことで精一杯だったので、会っていないのだ。

 

というわけで様子を見に行くことにする。時間は昼食を摂り終わってしばらくしてから。目的の部屋には結界が張られていて逃げ出せない様になっている。対象は妖怪だけなので僕が出たり入ったりする分には問題無い。それにしても悪魔も天使も使う術式に変わりが見えない。属性の部分とそれを効率的に働かせる部分以外違いが見当たらない。堕天使だとたまにオリジナルらしき物とかあっておもしろかったんだけどね。こっちでもそういう物を捜してみよう。

 

マナーとしてドアをノックして返事を待つ。無反応だったのでもう一度ノックをして反応を待っているが返事はない。仕方ないのでドアを開いて部屋に入ると同時に殺気を感じて普通の大剣を盾として作り出す。

 

「にゃう!?」

 

急に現れた障害物を躱すことが出来ずに顔面をぶつけたようだ。

 

「大丈夫?」

 

「……大丈夫じゃないです」

 

僅かだけど血の臭いがするから鼻血でも出しているのだろう。大剣の向こう側に居る塔城さんにポケットティッシュを渡す。

 

「すみません」

 

しばらくの間、微妙な空気が流れる。なんと言うか、色々と失敗した気がする。この空気をどうしようか考える。

 

「……ありがとうございました」

 

そう言って半分位減ったポケットティッシュが返される。

 

「それで、貴方は何者なんですか?今まで部屋に来た人達とは根本的に臭いが違います」

 

「覚えているか分からないけど、君が気を失う直前に飛び込んだ屋敷のはぐれ悪魔を討伐していたエクソシストだよ。最も、教会はクビになっているからボランティアだけどね」

 

エクソシストという単語に反応して塔城さんが一気に離れるのを感じた。

 

「ああ、大丈夫だよ。君を討つつもりは無いよ。僕は変わり者でね。罪を償おうとしない犯罪者と僕を殺そうと襲いかかってくる者以外を滅するつもりは無いんだ。それにしばらくすれば転生悪魔になるしね」

 

「……本当に変わり者です。何も考えていないんですか?」

 

「そう見えるかい?なら、そうなのかもね」

 

「自分のことなのにそれで良いんですか?」

 

「他人からの評価を気にしないで生きていたからね。そのおかげで教会から追われることになったんだけど、今は関係ないから置いておこう。君のことはサーゼクス様から少し聞いてね。これからどうするつもりだい?」

 

「……それは」

 

「ちなみに僕が考えつく君が取れる道は三つだ。一つ、このまま軟禁生活を続ける。その内無理矢理でも子供を作らされるかもしれないね。絶滅危惧種である猫魈の数を増やすために。あんまりオススメ出来ないけど、安全ではある。

 

二つ、サーゼクス様の妹さんの眷属、つまりは転生悪魔になる。悪魔としての仕事やレーティングゲームを行ったり、はぐれ悪魔の討伐や小競り合いだろうけど天界、堕天使勢との戦闘もあるだろう。そこそこに危険ではあるね。ただし、軟禁生活よりは自由を得られる。元エクソシストだからあまり悪魔のことには詳しくないけど、大体は領地での契約などを行うから領地内では好きに出来ると思うよ。僕が掲示出来る中では一番オススメだね。無理矢理子供を作らされることもたぶん無いと思うし、好きな相手を選ぶことも出来るだろうね。もちろん時期も。悪魔は欲望に忠実であれば良いとサーゼクス様は言っているからね。ある程度は好きに生きれる。上級悪魔になれば独り立ちすることも出来るらしいし。

 

三つ、此所から逃げ出して手配されるか。力が無いとすぐに捕まるだろうし、自由も束縛されるだろうね。逃げ切れたとしても安寧は手に入らない。1年程逃亡生活を続けたけど、結構淋しいんだ。どんどん周囲のことが信じられなくなって人目を避ける様になって、そして疲れ果てるんだ。あれはキツい。まあ運が良ければ似た様な境遇の集団に合流出来るかもしれない。殆ど無理だろうけどね。だからオススメしないよ。だけど絶対に自分の力だけでやりたい何かがあるのなら、これを選ぶしか無い。勢力に縛られない自由を得るにはこれしか無い。悩む猶予は後数日と言った所かな。

 

ああ、もう一つだけあったか。ここで命を絶つかだ。悪魔の駒の蘇生は死後数時間が限界だ。時間さえ計れば、死ぬことは出来るだろう」

 

即死と転生批判の概念を持たせたナイフを作り出して床に置いておく。

 

「死にたいなら、使うと良い。痛みも感じずに逝ける」

 

言いたいことは言ったので盾にしていた大剣を担いで部屋を出る。さて、この大剣をどうしようか?

 

 

 

 

 

 

 

翌日も同じ時間位に部屋を訪ね、ノックをする。

 

「はい」

 

今日は返事をもらえた。部屋に入る前に昨日と同じく大剣を作って姿を隠す。

 

「……どうして姿を隠すんですか?」

 

「姿が見えない方が、言い難いことも言い易いと思ってね。さて、昨日はよく考えてみたかい?これからどうするかを」

 

「……分からないんです」

 

「何がだい?僕に答えられることなら答えよう」

 

「何故、貴方はここまでしてくれるんですか?」

 

「それは僕が元教会関係者で変わり者だからとしか答えられないね。汝、汝が隣人を愛せ。この隣人とは何処までなのかが人にとって違う。家族?友人?同じ宗教の人?昨日も言ったけど僕は罪を償おうとしない犯罪者と僕を殺そうと襲いかかってくる者以外は隣人だと思っている。神は試練しか与えてくれないけど、僕らは手の届く範囲で救いを与えることも出来る。それは素晴らしいことだと思っている」

 

「それなのに悪魔になるんですか?」

 

「悪魔であろうと関係ないよ。公私を分ければ問題無い。契約は契約、奉仕は奉仕」

 

「祈ることも出来なくなるのに?」

 

「祈ることは出来るさ。激痛付きだけどね。それ位は試練として受け入れるさ」

 

「やっぱり変です」

 

「自分でも自覚してるよ。まあ5歳から軟禁生活だったんでね。何処かズレてしまってるんだよ」

 

「……軟禁生活ですか?」

 

「そう。神器が変質してね。元は魔剣創造、あらゆる属性の魔剣を作れる能力だったんだけど無限の剣製と言う名前をつけた物に変わってね。あらゆる剣を作れる様になった上に、概念の付与まで出来る様になってしまったんだ。その力を天界の勢力の強化のために軟禁されていてね。毎日剣を作って神父としての勉強をして、寝る前に無限の剣製の研究をして。ある程度成長したらエクソシストとしての修行も始めて、高位のエクソシストと一緒にはぐれを狩ったりしていたんだ。まあ、あまり人と関わらない生活だったね。そして、とある概念の剣を作ったことで天使様達に危険視されて殺されそうになったから逃亡したんだ。それが出来るだけの力があったから。そして1年程逃亡生活を続けて今はここに居る」

 

「……苦労してたんですね」

 

「逃亡生活の最後の方以外は苦労していないよ。苦労と認識出来ていなかったからね」

 

「すみません」

 

「謝られる様なことじゃないさ。他に聞きたいことはあるかい?」

 

「……どうして悪魔になろうと思ったんですか?」

 

「……淋しくなったんだ。だから、信用出来そうな相手だったら堕天使でも良かった。一人になるには相当な覚悟が居る。何か信念が無ければ、耐えられない」

 

「……信念」

 

「今日はこの位にしておこうか。何か考えたいことがあるようだしね。明日もこれ位の時間に来るよ」

 

「あっ、はい」

 

昨日と同じく大剣を担いで部屋から出ていく。今日の大剣は中身がスカスカなので普通に折って消滅させる。

 

 

 

 

 

 

翌日、塔城さんの部屋に向かう前にサーゼクス様からの伝言を預かった。3日後にサーゼクス様の妹であるリアス・グレモリー様と顔見せを行うそうだ。だから、塔城さんにそれまでに答えを出す様に決めておいて欲しいと伝えておいてくれと。

 

3日後か。確か悪魔の駒を使っての転生にはコストがあったはず。強い者程、多くの駒が必要になる。強化に使っている魔剣とかを一度取り出しておかないといけないかな。最悪、デメリット満載の魔剣を用意した方が良いかもしれない。僕自身の能力はともかく無限の剣製のコストが分からないから。

 

最悪、一度無理矢理引き抜いて死んでから転生して元に戻してもらうのが一番だろう。抜くだけ抜いて、そのままにするのなら死霊秘法(ネクロノミコン)の写本を自動で放出する様にしておけば良いだろう。派手に自爆するために魔力も注ぎ込んで辺り一面を汚染する様にしておこう。念には念を入れておかなければ。まあ細工は塔城さんの所に行ってからでいいだろう。

 

ノックをして返事をもらってから大剣で姿を隠してドアを開ける。

 

「やあ、今日は先にサーゼクス様からの伝言を伝えるよ。3日後、それまでに答えを出して欲しいそうだ。僕も3日後に転生悪魔になって主の方に着いていかなければならないと思うから相談に乗れるのは今日も合わせて三回だ。さて何か聞きたいことや、悩んでいることはあるかい?」

 

「……ずっと考えていたんです。お姉ちゃんが、主人を殺して、私を置いていって。なんでそんなことをしたのか?分からないんです。あんなに優しかったのに、どうして」

 

「難しい悩みだ。それを晴らすためには本人に聞くしかない。となると初日に掲示した一つ目は無しだね。こちらからもあちらからも接触することが難しい。となると二つ目か三つ目となる。メリット、デメリットは昨日も話した通りだけど、今日はそのお姉さんに直接会うことに視点を合わせてみよう。

 

まずは二つ目の方のメリットから。これはある程度の自由が確保されているということだ。それを使って自分の足で捜すのも良いけど、お金を貯めて情報屋を雇うのが一番だろうね。それなりのお金を積めば確実に情報を集めてくれる。それを使って何とか接触出来るかもしれない。デメリットはある程度の監視もあるだろうから、接触が難しいということかな。お姉さんがはぐれ認定されていることが一番の問題だ。

 

続いて三つ目の方だけど、接触までの方法は情報屋が一番だ。他にも自分の足を使うのも良いし、はぐれが集っているグループに身を寄せるのも一つの手だろう。何より自由度はかなり高い。デメリットは追手が居る上に、命の危険がかなりあることだ。お金を集めるために犯罪の一つや二つに手を染めなければならないかもしれない」

 

「どうするのが一番だと思いますか?」

 

「僕的には二つ目のプランを推したい。時間はかかるかもしれないけど、お姉さんが無事なら確実に会うことが出来る。情報屋に関してもエクソシスト時代に腕のいい奴と知り合ってるからね。紹介も出来るし、なんならお金も貸そう。正直言って、三つ目を選んでも生きていけそうにないからね」

 

「そこまでして貰う訳には」

 

「そうかい?まあ、気が向いたら言ってくれ。出来る限り力を貸そう」

 

「ありがとうございます。すみません、顔もちゃんとお見せしていないのに、頼ってばかりで」

 

「気にしなくて良いですよ。では、また明日」

 

「あの」

 

「はい?」

 

「明日は、ちゃんと顔を見せてくれますか?」

 

「悩みは晴れましたか?」

 

「まだ、色々と悩んでいますけど、それでも自分がどうしたいのかだけは分かりました。あとは、私が自分で見つけないといけないことだと思うんです」

 

「声に迷いが消えましたね」

 

壁にしていた大剣を蹴り砕いて姿を現す。

 

「改めて自己紹介をしましょう。僕は木場祐斗、元ガブリエル様直属のエクソシスト兼鍛冶屋だよ」

 

「塔城白音です。猫又の妖怪です」

 

どちらからともなく握手を交わす。それにしても、やはり動くんですね、その耳と尻尾。前世の僕もアーチャーも犬よりは猫派だったのでものすごく興味があります。

 

まあ、触ったりはしませんよ。相手は年下の女性ですからね。揺れる尻尾に釣られそうになる視線を何とか固定する。塔城さんは僕の胸にある十字架に視線が釘付けになっています。

 

初めて会った天使様に頂いた十字架ですが、持ち主の居場所を突き止める術式がかかっていたので刺客を撃退した後にルールブレイカーで解呪した所、砕けてしまったのでそのままにしていたのですが冥界に来てから身を守るために聖なる力で身を守る為に、今は僕が作った剣を芯にして構築しているのですが、芯に使った剣がガラティーンの所為で昼間である現在は聖なる力が全開で放たれているのです。それを緩和する術式は施してあるのですが、やはり気になってしまいますよね。

 

「これが僕の力で産み出した聖剣です。今は無理矢理力を押さえつけている状態ですが、僕を冥界の空気から守ってくれる位には聖なる力を発してくれています」

 

魔力効率は最悪ですけどね。聖剣の恩恵無しで体内に埋め込んでいる魔剣の力を解放するよりはマシ程度です。この状態を維持するのに一日1割程削られます。自然回復量が減っていた精神汚染中はある程度緩和するまでは死を覚悟する位でした。

 

「……それを付けたままで居る気なんですか?」

 

「ええ、例え術式で抑えているとは言え、聖剣を芯とした十字架を掛け続ける。それは僕の覚悟です。何を失ったとしても、僕は信者であることをやめはしません。だから簡単に教会から逃げ出しました。祈るだけなら所属は関係ありませんから」

 

それに私の信仰の先は聖書に書かれている神に対してです。つまりは本物ではなく偶像の神に対して。そのことに激怒しそうな人も居ますが、ガブリエル様は特に何も言ってはこなかったので大丈夫でしょう。ミカエル様もです。

もしかして聖書の神って死んでるんでしょうか?深く考えると危険な気がするので忘れましょう。敵が増えると面倒ですからね。

その後は退屈しのぎの雑談をしてから別れ、3日後を待つことになりました。さて、僕達の王となる人はどんな人でしょうね。

 


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