恵と倫也の結婚してから数か月後の、ある休日のお話。

妄想垂れ流しです

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冴えない彼女の育てかた After marriage

 新婚ホヤホヤの倫也と恵に久しぶりに休日が訪れた。と言っても、どこかに出かけるわけでもなく、一日家でゆっくりと過ごしていた。

 そんな休日も夕方に差し掛かった頃、ポスッ、と、恵が倫也の肩に体重を預け、もたれかかってきた。

 

「ふう」

「どうしたんだ恵?もう眠くなった?」

「久々の休みだよ?少しくらい甘えさせてくれてもいいんじゃないかなぁ?」

「そ、そうだな」

 

 いつもは見られない、少し甘えんぼな恵に少しドキッとする。

 

「まあ、その休みも、もう夕方なんだけどね」

「で、でもさ。どこにも出かけずに家で過ごすってのも悪くないだろ?」

「まあ、ここ最近忙しくて休みらしい休みがなかったからね~」

 

 確かに、結婚しても仕事がかなり忙しかったので、こんな風にゆっくり過ごす暇もなかった。

 そんなわけで久々に訪れた休日は恵が甘えんぼになり、倫也はそんな恵と何気なくイチャイチャしていた。 

 しかし、結婚してからイチャイチャすることもできなかった二人は、まだ一度も「あれ」をできていなかったわけで・・・

 

「あ、そういえば私達、結婚してからまだしてなかったね」

「しっ……!?ちょっ、恵!?いきなり何言いだすんだよ!?」

「そりゃあまあ、確かに仕事は忙しかったから仕方ないけどさ。でもさ、せめて二人っきりの時間をもう少し作ってくれてもよかったんじゃないかなぁ。結婚したっていうのに氷堂さんが家に入り浸るのも問題だけどそれについて何も言わない倫也くんもさらに問題だし~

「ああああああ!!!!誠に申し訳ありませんでした恵さん!!」

 

 もはや倫也の十八番みたいになっている全力土下座炸裂。

 

「倫也くんの謝罪は昔から安っぽい(♭8話とか)からなぁ。言葉だといまいち誠意が足りないんだよね~」

「……と言いますと」

「そうだなぁ……言葉でダメだったら・・・行動で示すとか?」

「こ、行動って……?」

「そんなの、自分で考えるべきじゃないかなあ」

 

 付き合いが長いので恵が何を求めているのかは今までの会話からなんとなく分かっていた。けど・・・肝心なとこでヘタレな倫也には難易度の高い要求だった。

 

「え、えっと……」

「…………(倫也を見つめる)」

「じゃ、じゃあ。今夜・・・するか?」

「……何を?」

「ぐっ……!!!そ、その……」

「……あ、そろそろ夕食の支度しなきゃ。話終わりだったらキッチン行くけど?」

 

そう言いつつも恵は倫也にもたれかかったまま立ち上がる素振りもない。……明らかに催促してる。早く言えオーラをめちゃくちゃ感じる。

 

「……そっ、そのっ……!今日……エッチ……をしよう!」

「……あ~、ちょっと途中聞き取れなかったからもう一回言ってくれるかな~?」

「~~~~~!!!!」

 

 嘘だ、絶対聞こえてたじゃん。

 現に恵、耳まで赤いじゃん……。俺も人のこと言えないくらい赤くなってるけどさ……。

 

「……結婚してからだいぶ経っちゃったけど・・・今日、エッチしよう!」

「……あ~あ、そこまでストレートに言われちゃうと、なんだかなぁ、だよね」

「……今までで一番勇気を出したのにひどくないですか恵さん」

「……へ~倫也くん、プロポーズの時よりも勇気出したんだ~」

「嘘です今までで二番目ですすいませんでした!!!」

「あ~あ、そんなこと言われちゃったら聞こえないふりでもう一回言わせるよ?」

「それはもう勘弁して!っていうか今聞こえない『フリ』って言ったよね!?」

 

 いつもながら上手く焦らされてるよなぁ俺・・・。

 

「……それじゃあ私は夕食の支度、してくるね」

「えっ、返事は……」

 

 そう言って恵は、倫也に体重を預けるのをやめて立ち上がった。今日はかなり返事を焦らされる。こんなことなら結婚した時にYES・NO枕を買っておくべきだった……。いや、買ったら買ったで恵に口をきいてもらえない気がする……。

なんて悶々としていると、

 

「だからさ、倫也くんはお風呂、洗ってきてくれる?」

「お、おう……」

 

 時間差で、恵らしい遠回しな返事が返ってきた。

 こちらを振り向かずに返事をしたので表情は見えなかったけれど。その声のトーンと、真っ赤になった耳を見れば簡単に想像することができた。

 

 そして夕食の時間になり。

 

「……ちょっと気合入りすぎじゃないですかね恵さん」

「え~。そんなことないよ普通だよ~」

「……なんで急にフラットな口調に戻ってんだよ」

 

 そんな今日の夕食は明らかにいつもよりも豪華になってて。

 ……なんかローストビーフとかグラタンとかあるし。

 

「……倫也くん。お風呂、汚れどころか水垢すらなかったんだけど。気合い入れすぎじゃない?」

「べ、別にいつも通り掃除しただけだし!……ってか、恵も夕食気合い入ってたじゃん!」

「……気合い入れたってのは否定しないんだね」

 

 俺も風呂掃除に気合が入りすぎて風呂だけ新居みたいになっちゃったし。

 そんなわけで、二人とも内心はめちゃくちゃ舞い上がっていた。

 

 そして場面は寝室へと移り。

 

「倫也くん。まだ、使うの?」

「え?」

 

 いつものように(まあ、久しぶりではあるが)正方形にパッケージされているゴム的な『アレ』を取り出したときに恵が言った。

 

「私達もう、結婚、したんだよ?恋人じゃなくて、夫婦、なんだよ?」

「お、おう」

 

 改めて夫婦って言われると照れるな……。

 

「だからさ、もう、いらないんじゃないかな」

 

 今日の恵はやけに積極的だ。

 

「で、でもさ・・・もしもの事があったら……」

「……もしもの事って?」

 

 

 肝心な時にヘタレな倫也はその言葉を口にする勇気すら出なくて。

 

「別に、私はいいけどなぁ。子供できても」

「………ッ!」

 

 そんな倫也にとって、恵のその一言は今までのどんな言葉よりも鋭くて。

けれど、

 

「……いいのかな」

「……何が?」

 

 今までずっと抱えていた不安を。本心を。口にする。

 

「俺みたいなのが父親になっても。会社も不安定だし仕事忙しいと恵一人にすら構ってあげられないし、そんな俺が父親になっても……」

「確かに不安定だよね~。今はまだ潰れる可能性が高いわけだし」

「……を~い。俺そこまでは言ってないぞ・・・」

「それに倫也くん、私一人との時間すら作ろうとしなかったよね~」

「その節は大変申し訳ありませんでした恵さん!!」

「でもさ、倫也くんなら大丈夫だよ、きっと」

 

 恵の声のトーンが変わる。

 

「なんでそんなにはっきりと言えるんだよ……」

「言葉にするのは難しいけど。でも。不思議とそんな気がするんだよね」

「恵……」

「私もこう見えて不安、なんだよ?でもさ、二人でなら、さ。きっと大丈夫だよ」

 

 よく見ると、少し震えているようにも見えた。

 それでも、恵は覚悟を決めたのだ。それなら、男として、パートナーとして、覚悟を決めないわけにはいかない。

 

「……そっか。なら、俺もちゃんと覚悟を決めるよ。俺一人じゃ無理でも、恵となら頑張れる。恵のためなら、本気で見栄を張るよ」

「…………まあ倫也くんは私が言わなきゃ今夜することすら決められなかったみたいだし~。なかなか覚悟を決められないのはしょうがないと言えばしょうがないよね~」

「せっかく覚悟を決めたのに水を差すような発言やめてよ!?」

 

 ……まあ大学に合格した時(2週目特典小説参照)と同じような流れも、最後の恵のフラットな照れ隠しでぐだぐだになったけれど。

 紆余曲折を経て、俺達は夫婦として初めての『夜』を迎えた。

 

 そして初めての『朝』を迎えて。

 ……まあ、結婚前もそれなりにしていたわけで。二人とも平常運転の朝だった。

 ……この言葉を聞くまでは。

 それは二人で朝食を食べていた時のこと。

 

「あ、そういえば倫也くん」

「なんだよ恵」

「私ね、昨日は出来やすい日だったみたい」

「……え?」

 

 そしてこの三か月ほど後に。

倫也に本当の覚悟を決める時がやってくる。

 

 

 

 

 


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