「うわ! この海砂利水魚……じゃなかった。クリームシチュー美味しいね!」
「お気に召していただいて、感無量ですわっ。オーナー冥利に尽きます」
時刻は19時を少し過ぎた頃。オーノー……じゃなかった。オーナーである蜜屋さんが作ってくれた夕食をみんなで食べる。大広間の長テーブルで。
メニューはクリームシチュー、フランスパン、鮭のムニエルなど他多数。お昼をコンビニのおにぎりで済ませた僕にとっては素晴らしいディナーであった。
「蜜屋さんって、お料理が上手なんですね。僕はこのシュウマイが好きです」
「うふふ。ありがとうございます。特にそのグリンピースは最高級のものを使っておりますのよ」
「小さなところにも配慮がされてあるんですね……さすがは若きオーナー!」
「わたくしを煽てても何も出ませんわよ。出るとしたら、その……汚い話になってしまいます」
「じゃあ、言わないでください。食事中なので」
それにしても、このディナー最高だな。他のヒトと食卓を囲んだのはいつ以来だっただろう。大学の学食が懐かしく思える。いや、待てよ。あまり友だちが居なかったから良い思い出じゃないな。よし、忘れよう。
「あ、近衛クン。ショートケーキのイチゴ食べないの? 私がもらっていい?」
「やめてくださいよ。僕は好きなものを最後に食べる派なんです。他をあたってください」
「ちぇっ、ケチだなあ。イチゴくらい口移しで食べさせてくれよな。なんてね、冗談だよ」
「冗談にしては質が悪いですね……イナゴだったらむしろ食べさせてあげるんですけどね」
言いながら、気持ち悪くなってきた。なんでイナゴの話になったんだっけ。あ、僕のせいだ。
「かしわぴょん。はい、あーん」
「あーん! ん~、翼きゅんが食べさせてくれたイチゴ、美味し~(*´ω`)」
「ふふ。かしわプリンセスが満足なようで、僕も幸せですぞ(∩´∀`)∩」
なんだその口調。そしてまた顔だけで会話しているし。蜜屋さんの手作りだって言うことを忘れているだろ。まったく、近頃の熱盛カップルは。いちゃつくなら見えないところでやってくれよ。共感性羞恥がすごい。
「あ、えっと。茂田さんは、いかがですか。わたくしの料理……」
「ふ。美味しいよ。ただ、このカルボナーラは俺さまのほうが上手に作れる」
しん、と空気が静まり返る。人目を憚らずバカみたいにいちゃついていたふたりでさえも、この異変を察知し、押し黙った。
そんな言い方しなくてもいいじゃないか。せっかく蜜屋さんが話しかけてあげたのに。
「だからあのとき、手伝ってあげるって申し出たのに。でもきみは俺さまよりもそこの若いオスを取った」
「そういう訳じゃ……近衛さんは悪くありませんわ!」
「そうさ、きみが悪い。ぜんぶきみが悪いんだ。だからこそ、何も知らないガキどもが、この曰く付きの館にやってきてしまった」
曰く付き……? と金橋さんが小首を傾げる。まさか、茂田さん……昔ここで殺人事件が起きたことを言い触らすつもりなのか?
「せっかくだから、この俺さまが教えてやる。いいか、ガキども。ここは昔、殺人事件があったんだ。それをこのオーナーもどきの若いメスは隠ぺいしていたんだぞ!」
「さ……殺人事件!? それって本当なの!?」
「え、え。嘘ですよね、蜜屋さん!?」
蜜屋さんは渋い顔をして下を向いたまま黙ってしまった。椛館の殺人事件について少しは知っている僕はどうすればいいのか分からなくて、最後のシュウマイを口に運ぶ。うん、美味い。